安田屋旅館

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安田屋旅館

安田屋旅館(やすだやりょかん)は、静岡県沼津市内浦三津にある、湯の花温泉の温泉旅館。「日本の宿を守る会」会員宿。

概要[編集]

1887年明治20年)創業で、当初は商人宿だったが、1918年大正7年)に現在の場所で旅館として営業を始めた[1]。木造建物の松棟(1918年(大正7年)築)と月棟(1931年昭和6年)築)は国の登録有形文化財に登録されている[2][3]。 安田屋旅館は、「対岳楼 太宰治ゆかりの宿 安田屋旅館」と称しているが、対岳楼は、明治期の政治家、尾崎咢堂(がくどう)こと尾崎行雄がこの宿に泊まった際に、海に浮かぶ淡島とその対岸の間に富士山が入り込んで一対の絵になっている風景を見て「日本一の絶景」とたたえ、この宿に対岳楼という名前を与えたことに由来している[4]

1947年(昭和22年)2月上旬から約半月にわたり、太宰治が同館の松棟2階・月見草の間(当時の部屋名は「松の弐」)に滞在し、『斜陽』(作品の発表は1947年、昭和22年)の第1章と第2章を執筆した。敷地内にはそのことにちなみ資料室兼記念館の「伊豆文庫」が設けられている[5]。太宰がこの宿に泊まったきっかけは、この地に疎開中だった太宰の弟子、田中英光の紹介によるとされている。旅館側は当初太宰が投宿していたことを知らなかったが、翌1948年の太宰の死後、新聞記者が訪ねてきたことで太宰がこの宿に泊まっていたことが分かったという[6]

また、2015年から展開されているメディアミックス企画『ラブライブ!サンシャイン!!』では、主人公の高海千歌の実家の旅館「十千万」(とちまん)のモデルになっており、聖地巡礼として旅館を訪れる観光客が増加した[7]。宿の入り口付近には同作品関連のパネルやグッズを展示するスペースを設けている[6]。2018年4月1日には、エイプリルフールとして1日限定で旅館の看板が「十千万」に変更された。

アクセス[編集]

周辺の観光地[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 散歩の達人MOOK編集部『伊豆さんぽ』2015年、p. 117
  2. ^ 安田屋旅館松棟 - 国指定文化財等データベース(文化庁)、2018年5月3日閲覧。
  3. ^ 安田屋旅館月棟 - 国指定文化財等データベース(文化庁)、2018年5月3日閲覧。
  4. ^ 旅館のパンフレットによる。http://mitoyasudaya.com/pan.pdf
  5. ^ 館内・客室 - 安田屋旅館、2018年5月3日閲覧。
  6. ^ a b 「【老舗あり】静岡県沼津市 安田屋旅館 にぎわう2つの〝聖地〟 『斜陽』執筆、アニメのモデル」『産経新聞』、2018年8月12日、東京朝刊、10面。
  7. ^ “ラブライブ!サンシャイン!!(沼津市) ヒロインたち躍り輝く街”. 産経ニュース. (2017年8月10日). https://www.sankei.com/article/20170810-HJJX554BS5MWXFVSIL3VJCIK4I/ 2018年5月3日閲覧。 

外部リンク[編集]

座標: 北緯35度1分13.5秒 東経138度53分51.1秒 / 北緯35.020417度 東経138.897528度 / 35.020417; 138.897528