宇宙大作戦
『宇宙大作戦』(うちゅうだいさくせん、Star Trek)は、アメリカのSFテレビドラマ。「スタートレック」シリーズの最初の作品であり、NBCネットワークにおいて1966年から1969年まで全3シーズンが制作・放送された。後に、Star Trek: TOS(TOS = The Original Seriesの略)と呼ばれるようになった。
概要
それまでのSFドラマに比べ、人間ドラマとしての側面を強くうち出している。そのため、普遍的なテーマを扱う事が多く、制作から年月が経過しているにもかかわらず十分鑑賞に堪え得るストーリーである物が多い。多くの作者による原作はSF作家のジェイムズ・ブリッシュがノベライゼーションしている。
メインキャラクターには、アメリカ人、アフリカ民族、スコットランド人、ロシア人、アジア人など各民族を配することで、差別のなくなった時代を描いている。中でも、アフリカのバンツー族出身という設定のウフーラを演じたニシェル・ニコルズは、未だ黒人に対する差別意識が強く残る中、黒人の、しかも女性達に大きな希望を与えたといわれている。ハリウッドスターで、本作シリーズの続編にも出演しているウーピー・ゴールドバーグは、彼女に影響され、女優の道を歩み出したという。
放映当時はSF特有の「とっつきにくさ」が災いし、視聴率的にはふるわず、第2シーズンでの打ちきりが囁かれた。ファンによる手紙での継続嘆願運動などにより何とか第3シーズンは放映できたものの、月曜夜8時から金曜夜10時への放映時間の変更やそれに伴うドラマの方向性の変更(そして予算削減による内容の質的低下)が視聴率の低下を招き、結局このシーズンをもって打ちきりとなってしまった。 しかしその後、シンジケートで再放送が始まると、次第にアメリカ全土でファンを獲得。ニューヨークなど大都市でコンベンションが開かれるようになった。
作品の製作権を持っていたパラマウント映画では、創作者であるジーン・ロッデンベリーに続編の製作を依頼。テレビシリーズ『スタートレック:フェイズII』として企画される。しかし1977年の『スター・ウォーズ』の大ヒットに影響を受け、急遽劇場版(Star Trek: The Motion Picture)としてオリジナルキャストの主演で製作されることになった。監督には巨匠ロバート・ワイズを起用、特撮部分の作り直しなどトラブルもあったが1979年末に映画版は公開。莫大な製作費の回収には至らなかったものの、これがスタートレックの作品世界を広げる新たな基点となり、その後もシリーズが継続して作られることになる。
なお、2006年9月現在、特撮シーンをCGに置き換え再合成、画像処理・音響処理(他に、テーマ曲を取り直して差し替え)を施しHD化したデジタルリマスター版がアメリカで放映されている[1]他、iTunes Storeでも販売されている[2]。日本でもNHKがこのデジタルリマスター版を「スター・トレック 宇宙大作戦」と題して2007年7月21日深夜より衛星放送BS2で放送開始、その他にCS放送のスーパー!ドラマTVでも2008年11月26日より放送されている。
国内での放送時間に合わせて一部がカットされた状態で放映されている。旧DVD版ではカットされた部分の吹き替えが無い為、言語+字幕で対応している。デジタルリマスター版のDVDではカットされた部分のみ別の声優が新たに声をあてている。
あらすじ
23世紀、超光速航行技術を開発した地球人はバルカン人(以後のシリーズではヴァルカン人とも表記)などいくつかの種族と惑星連邦を結成していた、カーク船長率いるU.S.S.エンタープライズ号は5年間の調査飛行を行い、様々な生命体、文明、未知の驚異と遭遇し、前人未到の地へ宇宙探検を進める。
登場人物
- ジェームズ・タイベリアス・カーク、愛称“ジム”(ウィリアム・シャトナー)(日本語版での声:矢島正明) - 船長(大佐)。地球人男性。
- スポック(レナード・ニモイ)(久松保夫) - 副長兼科学主任(中佐)。バルカン人と地球人のハーフ、男性。
- レナード・マッコイ(デフォレスト・ケリー)(吉沢久嘉) - 医療主任(少佐)。地球人男性。
- モンゴメリー・スコット、愛称“スコッティ”(日本語版ではチャーリー)(ジェームズ・ドゥーハン)(小林修 / 内海賢二) - 機関主任(少佐)。地球人男性。
- ウフーラ(日本語版ではウラ)(ニシェル・ニコルズ)(松島みのり) - 通信士官(中尉)。地球人女性。
- ヒカル・スールー(日本語版では加藤)(ジョージ・タケイ)(富山敬 / 納谷六朗 / 田中亮一) - 主任ナビゲーター(大尉)地球人男性。
- パヴェル・チェコフ(ウォルター・ケーニッグ)(井上玄太郎) - ナビゲーター(少尉)。地球人男性。
- クリスティン・チャペル(メイジェル・バレット)(公豪敬子 / 北見順子 / 島木綿子) - 看護師。地球人女性。
- ジャニス・ランド(グレース・リー・ホイットニー)(此島愛子) - 船長付き秘書。地球人女性。
- オープニング・ナレーション(ウイリアム・シャトナー)(若山弦蔵)
放送当時、日本語吹き替え版では人名を呼ぶ際、必ず、「ミスター」などが付く。例えば、「スポック」は「ミスタースポック」という具合である。このため、宇宙大作戦の人名を言う際には「ミスター」、「ミセス」等を付ける人が多い。これは,准士官以上の部下は絶対に呼び捨てにしない、英米海軍の伝統に沿ったものである。ただし、船医である「マッコイ」は、「ドクターマッコイ」あるいは単に「ドクター」と呼ばれる。
惑星連邦宇宙艦隊は階級呼称を「海軍」に基づいており、Captainは海軍同様、大佐である(陸軍・空軍なら大尉)。なお、TOSや映画版を一貫してカークの呼称は「船長」であり、後のシリーズの指揮官の呼称「艦長」とは厳密に区別される。
各話タイトル
日本での放送は当初日本テレビ系列、途中からフジテレビ系列により放送された。フジテレビではタイトルが『宇宙パトロール』になり、1話を前後に分けて30分番組として放送された。なお、富山県では、放映権がフジテレビ系列へ移行した後も富山テレビ放送へ移行せず、北日本放送が継続して放送した。
- 1969年4月27日~1970年1月11日 29話 日本テレビ
- 1972年4月16日~1974年3月30日 50話 フジテレビ
現在では1時間番組として放映されている。
なお、製作順、本国放映順、日本放送順、リマスター版本国放送順はかなり異なっている。 また、リマスター版の日本での放送は、2007年からのNHK BS2ではリマスター版本国放送順に近い順番に、2008年からのスーパー!ドラマTVではオリジナル版本国放映順に放送されている。
なおTOS第16話「タロス星の幻怪人 The Menagerie」(前後編)は1965年に製作されたパイロット版「歪んだ楽園 The Cage」の映像に新たな映像を追加、再構成して作られている。
製作順 | 放送順 | 各話タイトル | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
オリジナル版 | HDリマスター版 | 邦題 | 原題 | |||
本国 | 日本 | 本国 | 日本 NHK BS2 | |||
1 | 80 | - | - | - | 歪んだ楽園 | The Cage |
2 | 3 | 1 | 17 | 17 | 光るめだま | Where No Man Has Gone Before |
3 | 10 | 2 | 14 | 14 | 謎の球体 | The Corbomite Maneuver |
4 | 6 | 13 | 66 | 33 | 恐怖のビーナス | Mudd's Women |
5 | 5 | 7 | 55 | 32 | 二人のカーク | The Enemy Within |
6 | 1 | 3 | 43 | 30 | 惑星M113の吸血獣 | The Man Trap |
7 | 4 | 5 | 4 | 4 | 魔の宇宙病 | The Naked Time |
8 | 2 | 8 | 38 | 31 | セイサス星から来た少年 | Charlie X |
9 | 14 | 6 | 1 | 1 | 宇宙基地SOS | Balance of Terror |
10 | 7 | 4 | 44 | 34 | コンピューター人間 | What Are Little Girls Made of? |
11 | 9 | 17 | 45 | 35 | 悪魔島から来た狂人 | Dagger of the Mind |
12 | 8 | 9 | 2 | 2 | 400才の少女 | Miri |
13 | 13 | 11 | 42 | 36 | 殺人鬼コドス | The Conscience of the King |
14 | 16 | 10 | 40 | 38 | ゴリラの惑星 | The Galileo Seven |
15 | 20 | 16 | 68 | 40 | 宇宙軍法会議 | Court Martial |
16 | 11 | 25 | 12 | 12 | タロス星の幻怪人(前編) | The Menagerie, Part 1 |
16 | 12 | 26 | 13 | 13 | タロス星の幻怪人(後編) | The Menagerie, Part 2 |
17 | 15 | 27 | 32 | 37 | おかしなおかしな遊園惑星 | Shore Leave |
18 | 17 | 22 | 41 | 39 | ゴトス星の怪人 | The Squire of Gothos |
19 | 18 | 12 | 7 | 7 | 怪獣ゴーンとの対決 | Arena |
20 | 27 | 18 | 49 | 46 | 二つの宇宙 | The Alternative Factor |
21 | 19 | 14 | 29 | 29 | 宇宙暦元年7・21 | Tomorrow Is Yesterday |
22 | 21 | 24 | 50 | 41 | ベータ・スリーの独裁者 | The Return of the Archons |
23 | 23 | 19 | 51 | 42 | コンピューター戦争 | A Taste of Armageddon |
24 | 22 | 15 | 11 | 11 | 宇宙の帝王 | Space Seed |
25 | 24 | 21 | 39 | 43 | 死の楽園 | This Side of Paradise |
26 | 25 | 20 | 3 | 3 | 地底怪獣ホルタ | The Devil in the Dark |
27 | 26 | 29 | 30 | 44 | クリンゴン帝国の侵略 | Errand of Mercy |
28 | 28 | 23 | 5 | 5 | 危険な過去への旅 | The City on the Edge of Forever |
29 | 29 | 28 | 58 | 45 | デネバ星の怪奇生物 | Operation - Annihilate! |
30 | 36 | 30 | 8 | 8 | 惑星パイラスセブンの怪 | Catspaw |
31 | 38 | 31 | 47 | 50 | 華麗なる変身 | Metamorphosis |
32 | 40 | 32 | 15 | 15 | 宿敵クリンゴンの出現 | Friday's Child |
33 | 31 | 33 | 53 | 47 | 神との対決 | Who Mourns for Adonais? |
34 | 30 | 34 | 21 | 21 | バルカン星人の秘密 | Amok Time |
35 | 35 | 35 | 20 | 20 | 宇宙の巨大怪獣 | The Doomsday Machine |
36 | 43 | 36 | 23 | 23 | 惑星アルギリスの殺人鬼 | Wolf in the Fold |
37 | 32 | 37 | 56 | 48 | 超小型宇宙船ノーマッドの謎 | The Changeling |
38 | 34 | 38 | 59 | 49 | 死のパラダイス | The Apple |
39 | 33 | 40 | 10 | 10 | イオン嵐の恐怖 | Mirror, Mirror |
40 | 41 | 42 | 48 | 51 | 死の宇宙病 | The Deadly Years |
41 | 37 | 41 | 6 | 6 | 不思議の宇宙のアリス | I, Mudd |
42 | 44 | 43 | 9 | 9 | 新種クアドトリティケール | The Trouble with Tribbles |
43 | 54 | 44 | 33 | 56 | もう一つの地球 | Bread and Circuses |
44 | 39 | 39 | 19 | 19 | 惑星オリオンの侵略 | Journey to Babel |
45 | 48 | 79 | 69 | 54 | カヌーソ・ノナの魔力 | A Private Little War |
46 | 45 | 45 | 46 | 53 | 宇宙指令! 首輪じめ | The Gamesters of Triskelion |
47 | 42 | 46 | 65 | 52 | 復讐! ガス怪獣 | Obsession |
48 | 47 | 47 | 25 | 25 | 単細胞物体との衝突 | The Immunity Syndrome |
49 | 46 | 49 | 28 | 28 | 宇宙犯罪シンジケート | A Piece of the Action |
50 | 51 | 50 | 60 | 64 | 宇宙300年の旅 | By Any Other Name |
51 | 49 | 53 | 37 | 60 | 地底160キロのエネルギー | Return to Tomorrow |
52 | 50 | 51 | 31 | 55 | エコス・ナチスの恐怖 | Patterns of Force |
53 | 53 | 52 | 57 | 63 | 恐怖のコンピューターM-5 | The Ultimate Computer |
54 | 52 | 48 | 36 | 59 | 細菌戦争の果て | The Omega Glory |
55 | 55 | 54 | 67 | 69 | 宇宙からの使者 Mr.セブン | Assignment: Earth |
56 | 61 | 55 | 77 | 77 | 危機一髪! OK牧場の決闘 | Spectre of the Gun |
57 | 68 | 56 | 63 | 67 | トロイアスの王女エラン | Elaan of Troyius |
58 | 58 | 57 | 22 | 22 | 小惑星衝突コース接近中 | The Paradise Syndrome |
59 | 57 | 58 | 64 | 68 | 透明宇宙船 | The Enterprise Incident |
60 | 59 | 59 | 26 | 26 | 悪魔の弟子達 | And the Children Shall Lead |
61 | 56 | 60 | 34 | 57 | 盗まれたスポックの頭脳 | Spock's Brain |
62 | 60 | 61 | 62 | 66 | 美と真実 | Is There in Truth No Beauty? |
63 | 67 | 62 | 78 | 78 | 恒星ミナラの生体実験 | The Empath |
64 | 64 | 63 | 24 | 24 | 異次元空間に入ったカーク船長の危機 | The Tholian Web |
65 | 63 | 64 | 18 | 18 | 宇宙に漂う惑星型宇宙船 | For the World Is Hollow and I Have Touched the Sky |
66 | 62 | 66 | 52 | 61 | 宇宙の怪! 怒りを喰う!? | Day of the Dove |
67 | 65 | 65 | 35 | 58 | キロナイドの魔力 | Plato's Stepchildren |
68 | 66 | 77 | 16 | 16 | 惑星スカロスの高速人間 | Wink of an Eye |
69 | 72 | 67 | 61 | 65 | 無人惑星の謎 | That Which Survives |
70 | 70 | 68 | 54 | 62 | 惑星セロンの対立 | Let That Be Your Last Battlefield |
71 | 69 | 69 | 70 | 70 | 宇宙の精神病院 | Whom Gods Destroy |
72 | 71 | 70 | 71 | 71 | 長寿惑星ギデオンの苦悩 | The Mark of Gideon |
73 | 73 | 71 | 72 | 72 | 消滅惑星ゼータの攻撃 | The Lights of Zetar |
74 | 76 | 72 | 76 | 76 | 惑星アーダナのジーナイト作戦 | The Cloud Minders |
75 | 75 | 73 | 73 | 73 | 自由の惑星エデンを求めて | The Way to Eden |
76 | 74 | 74 | 74 | 74 | 6200歳の恋 | Requiem for Methuselah |
77 | 77 | 75 | 75 | 75 | 未確認惑星の岩石人間 | The Savage Curtain |
78 | 78 | 76 | 27 | 27 | タイムマシンの危機 | All Our Yesterdays |
79 | 79 | 78 | 79 | 79 | 変身! カーク船長の危機 | Turnabout Intruder |
米NBCネットワークでの放送期間は次の通り。
- 第1シーズン 1966年9月~1967年4月 29話
- 第2シーズン 1967年9月~1968年6月 26話
- 第3シーズン 1968年9月~1969年6月 24話
逸話
- アマチェアによるパソコンゲーム化
- 過去に、本作をゲーム化した『スタートレック』が製作されている。アマチェアの手によるものであり、非公式だが、当時としては手軽に遊べる数少ないシミュレーションゲームだった。日米で非常に多くのスタートレックゲームが作られ、日本では1980年代初期まで人気定番ゲームの一つだった。
- UNIXの設計自体がこのゲームのために企画されたという説もある[1]。しかしこれは、ゲーム『スペーストラベル』(en:Space Travel (video game))にまつわるエピソードが誤って伝えられたものと思われる(『スペースウォー!』も同様に間違えられる)。
- また、本放送以降、映画1作目の日本公開時まで再放送されなかった首都圏では、スタートレックの知名度が低く、「スタートレックは海外ドラマでなく、オリジナルゲームだ」と勘違いしていた者も多かった。
- 『アメリカ横断ウルトラクイズ』
- テーマ曲のアレンジバージョン(演奏:メイナード・ファーガソン)が使用された。