嫌煙

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嫌煙(けんえん、anti-smoking)とは、受動喫煙を本人の可否にかかわらず強いられることについて異を唱えること、あるいは受動喫煙を避けることで、1970年代の日本において、未だ公共施設や飲食店の禁煙・分煙化や列車飛行機の禁煙席設置がほとんどされていなかった時代に作られた造語である。

この言葉は、生活環境への意識が高まりをみせた1978年に、市民運動「嫌煙権の確立を目指す人びとの会」が発足したときに使われ、以後一般語としてしだいに普及していった。

用語

「煙草を嫌う」ないし「喫煙者を嫌う」、もしくは「煙草の存在を否定する」などのニュアンスで「嫌煙」という言葉が用いられる事が多い。しかし単に好き嫌いの問題に収斂(しゅうれん)されない場合も多く、このような場合には、分煙弱煙の表現が用いられている。

嫌煙権

歴史

嫌煙権(けんえんけん)とは、1978年に「嫌煙権確立を目指す人びとの会」の共同代表でコピーライター中田みどりが提唱し広まった言葉である。英語では、"nonsmokers'rights"が対応する語彙である。

嫌煙権確立を目指す人びとの会は、「たばこの煙によって汚染されていないきれいな空気を吸う権利」、「穏やかではあってもはっきりとたばこの煙が不快であると言う権利」、「公共の場所での喫煙の制限を求めるため社会に働きかける権利」の3つの嫌煙権をかかげスタートした。

他人のタバコの副流煙を間接的・強制的に吸わされた結果、慢性及び急性の健康被害を受けることは、非喫煙者の基本的人権である「健康権」や「幸福追求権」の侵害と考えられた。特にぜんそくなどの呼吸器疾患を持つ患者にとっては生命の危機につながりかねず、「生命の尊厳」の侵害ともなる。このため、嫌煙権運動は一種の人権運動として定義される。嫌煙権運動は喫煙者に喫煙をやめることを要求するものではなく、公共の場所や職場などの共有の生活空間について、社会的・制度的に受動喫煙防止措置を講ずることにより、非喫煙者の権利を保護することを目的とした運動である。1980年代には嫌煙権運動が一般的に認識され始め、同運動に賛同した場所では次第に受動喫煙防止が進んだ。

しかし前述のとおり、1990年代以降は、嫌煙という言葉が単に煙草を嫌ったり存在を否定することと混同する向きもあったため、問題を矮小化しかねないため嫌煙という言葉は使用を避けられるようになっている。

嫌煙権運動

嫌煙権運動では、公共スペースでの受動喫煙防止を進めることで非喫煙者の権利を保護すること、非喫煙者や煙草の煙が苦手である人が、自らの立場を明確にする(→カミングアウト)ことで社会的理解を求めること、喫煙者に対する啓蒙、などの活動が行われた。

喫煙者からも嫌煙権運動の広まりに危機感ないしその趣旨に理解を示し同運動への賛同する者がみられた。

喫煙者も被害者という観点からたばこ病訴訟などの裁判支援なども行っている。

嫌煙権と諸学会

嫌煙権運動とは別に、医学界では受動喫煙の危険性の知見が確立していった。このため、多くの医学系学会が「禁煙宣言」を発表し、嫌煙権運動よりもさらに強い喫煙規制を求めている。(→詳細はETS及び受動喫煙に関する声明

「嫌煙権」 対 「喫煙する自由・権利」

2005年11月8日、日本たばこ産業は、第19回厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会で、

  • (喫煙は)個人の嗜好としてたのしむ自由がある

と主張する内容を含む資料を提出した[1]

2007年5月31日の世界禁煙デーにおいて、WHOは「たばこ産業の作り話をあばく」と題した発表において、

  • 「毒の含まれない空気を吸う権利」は、「公共の場で喫煙して他人の健康を脅かす喫煙者の権利」よりも優先する。これは、都合のよさの問題でも、合法製品を使う自由といった問題でもない。他人の健康を脅かすことを避けるため、どこで喫煙すべきかという問題である」とした。[2]

喫煙と嫌煙

非喫煙者全てが受動喫煙を問題視しているわけではないが、喫煙者に於いても状況により他喫煙者の副流煙を望まない者も見られるなど、単純ではない。健康影響については、受動喫煙の人体影響に関する学術的見地が例示され、紫煙により頭痛などの体調不良を起こす受動喫煙症患者も居る。近年では喫煙に対する社会的認識が進み、日本の健康増進法施行やタバコ規制枠組み条約発効などから、病院役所学校施設などの公共施設や、百貨店、飲食店、娯楽遊戯店などにおいても禁煙や分煙が取り組まれている。

脚注

関連項目

外部リンク