大統領 (大韓民国)

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大韓民国の旗 大韓民国
大統領
대한민국의 대통령
(大韓民國의 大統領)
大統領
名前
現職者:
朴槿恵박근혜

(第18代)
就任日: 2013年2月25日
担当官庁 青瓦台청와대
任期 5年(再選禁止)
職務代行者 鄭烘原정홍원
初代 李承晩이승만
創設 1948年7月20日
公式サイト 青瓦台(朝鮮語)
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大韓民国大統領(だいかんみんこくだいとうりょう、朝鮮語: 대한민국의 대통령)は、韓国国家元首である。韓国の政治体制は大統領制のため、国民直接選挙で選ばれる大統領に非常に強力な権限がある。なお、アメリカの場合と異なり、1960年以降の韓国には副大統領が存在しない(後述)。

概要

現在の大韓民国憲法第六共和国憲法、1987年採択)の規定では、大統領は国家元首(第66条1項)かつ韓国三軍空軍)の統帥権保有者(第74条1項)であり、行政権を有する政府首班という地位にある(第66条4項)。また、大統領には非常措置権が与えられているが、その発動には制約が加えられている(第76条)。また、大統領に国会の解散権は無く、公民権の停止も認められていない。

なお、大統領は内乱又は外患の罪を犯した場合を除いて在任中に刑事上の訴追を受けない(第84条)。また、大統領職経験者は身分及び礼遇に関して法律で特別に定められている(第85条)。しかし、過去の大韓民国の大統領は、在任中に暗殺されたり、退任後に自身や身内が刑事捜査によって逮捕・起訴されて有罪判決を受けたり自殺したり、あるいは糾弾を受けて亡命を余儀なくされるなどして、不幸な末路を迎えている例が多い[1]

大統領の選出

大韓民国の大統領
大統領章
大統領章
各種表記
ハングル 대통령
漢字 大統領
発音 テトンニョン
日本語読み: だいとうりょう
アルファベット転写 Daetongnyeong
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韓国の大統領官邸「青瓦台

韓国の大統領選出は、憲法67条の規定に従って行われる。大統領選挙には、国会議員の被選挙権があり、選挙日の時点で満40歳に達している韓国国民が立候補することができる。大統領は、韓国国民の普通平等直接及び秘密選挙によって選出される。投票の結果、最高得票者が2人以上いる場合は、国会の在籍議員の過半数が出席した公開の会議において多数票を得た者が当選者となる。大統領候補者が1名しかいない場合でも、選挙で得票した信任票数が有権者総数の3分の1以上でなければ、大統領として当選することは出来ない。

選挙は、前大統領の任期満了の70日前から40日前までの間に実施される。大統領を欠いたとき、あるいは大統領当選者が死亡もしくは判決その他の事由によりその資格を喪失したときは、60日以内に後任の大統領を選挙しなければならない(68条)。

大統領の任期と職務代行

大統領の任期は5年で、重任(再選)は出来ない(第70条)。仮に、憲法改正により任期延長や重任解禁がなされたとしても、改憲提案時の現職大統領には適用されない(第128条第2項)。重任禁止規定は、長期独裁を許した李承晩時代の第一共和国憲法(1948年採択)、朴正煕政権時代の第四共和国憲法(1972年採択)への反省から、全斗煥政権時の第五共和国憲法(1980年採択)で導入された。これを受け継いだ第六共和国憲法により、盧泰愚以降の歴代大統領はいずれも1期限りで退任している。

何らかの事情で大統領を任期中に欠くか、または大統領が職務不能となった場合には、国務総理(首相)を第1位、法律で定められた国務委員(各国家行政機関の長)を第2位以下とする継承順で大統領の権限が代行される(第71条)。建国以来、韓国では大統領の権限代行が1960年・1979年・1980年・2004年の4回起きているが、いずれの場合も3か月以内に代行が終わっている。詳細は下記参照のこと。

弾劾

任期中、大統領は一部事例を除き刑事上の訴追を受けない(第84条)が、憲法第65条の規定で国会による弾劾の追訴を受けることがある。国会は、国会議員の過半数の賛成を得て大統領の弾劾訴追を発議し、発議から24時間以降72時間以内に無記名投票を行なう。投票の結果、国会議員の3分の2以上の賛成があれば弾劾が決議され、大統領は憲法裁判所による弾劾裁判の判決が出るまで職務が停止される。憲法裁判所は180日以内に審判を行い、裁判官の3分の2以上の支持があれば弾劾が成立し、大統領はその職から罷免される。弾劾追訴の事由によっては、大統領は罷免後に民事・刑事上の責任を負わされる可能性がある。大統領が職務を停止されている間は、国務総理を第1位、法律で定められた国務委員(各国家行政機関の長)を第2位以下とする継承順で大統領の権限が代行される。

2016年3月現在、国会から弾劾追訴の決議を受けた大統領は2004年の盧武鉉ただ一人であり、弾劾裁判中に大統領権限を代行したのもその際の高建が唯一の例である。憲法裁判所が大統領に弾劾判決を下した例は未だない。

大統領の権限および義務

主な権限

憲法に規定された大統領の職務権限は下記のとおりである。

  • 国の元首として、外国に対して国家を代表する(第66条)
  • 必要に応じて、外交国防朝鮮統一・その他国家の安危にかかわる重要政策を国民投票にかける(第72条)
  • 条約を締結・批准し、外交使節を信任・接受し、又は派遣し、宣戦布告及び講和を行う(第73条)
  • 憲法及び法律が定めるところにより、国軍を統帥する(第74条)
  • 法律で制限された範囲における大統領令の発令(第75条)
  • 国会を開く余裕がない時の財政経済上の処分、及びこれに関連する範囲における法的効力を持った命令の発令(第76条)
  • 交戦時で国会開催が不可能な祭の法的効力を持った大統領命令の発令(第76条)
  • 戒厳令の宣布(第77条)
  • 公務員の任免(第78条)
  • 恩赦の実施(第79条)
  • 勲章栄典の授与(第80条)
  • 国会の同意に基づき、国務総理を任命する(第86条)
  • 国務総理が提請した国務委員を任命する(第87条)

宣誓と義務

大統領職への就任に際し、就任する者は「私は、憲法を遵守し、国家を保衛し、祖国の平和的統一並びに国民の自由及び福利の増進並びに民族文化の暢達に努力し、大統領としての職責を誠実に遂行することを国民の前に厳粛に宣誓します」と宣誓する(第69条)。

また、大統領は憲法に従い在任中に以下のような義務を負う。

  • 国の独立、領土の保全、国の継続性及び憲法を守護する責務(第66条)
  • 祖国の平和的統一のために誠実に努力する義務(第66条)
  • 法的効力を持つ大統領令を発令した際に発令事由を公布する義務(第76条)
  • 国会への戒厳令布告の報告、及び国会が出す戒厳令解除要求に従う義務(第77条)
  • 一般的な恩赦を実施する際に国会の同意を得る(第79条)
  • 国法上の職務行為を文書によって行う。その際、必ず国務総理及び関係国務委員の副署を得る。(第82条)
  • 兼職の禁止(第83条)

韓国大統領一覧

以下表中、 は歴代大統領、 は何人目の大統領。

大統領の氏名 党派 在任期間 備考 政体
1 1 李承晩
イ・スンマン
이승만
李承晩 韓国民主党

自由党
1948年7月20日
- 1952年8月15日
国会議員による間接選挙にて選出
憲法改正で大統領選挙を直接選挙制に変更




2 1952年8月15日
- 1956年8月15日
直接選挙により選出
憲法改正により三選禁止を撤廃(四捨五入改憲
3 1956年8月15日
- 1960年4月26日
直接選挙により選出
再選の為に大規模な不正選挙を強行。4・19革命失脚し、亡命
4・19革命の後、許政(ホ・ジョン、허정)が大統領権限を臨時代行(1960年4月27日 - 1960年8月12日



4 2 尹潽善
ユン・ボソン
윤보선
尹潽善 韓国民主党

新民党
1960年8月13日
- 1961年5月19日
憲法改正により国会議員による間接選挙によって選出。
新憲法下で議院内閣制に移行した為、政治的な実権は国務総理張勉が握っていた。
1961年5月19日
- 1962年3月22日
5・16軍事クーデター国家再建最高会議が政権掌握。憲法停止。
朴正煕国家再建最高会議議長による軍政(1962年3月22日 - 1963年12月16日
5 3 朴正煕
パク・チョンヒ
박정희
民主共和党 1963年12月17日
- 1967年7月1日
新憲法の下で民政に復帰
直接選挙により選出




6 1967年7月1日
- 1971年7月1日
直接選挙により選出
憲法改正により三選禁止を撤廃
7 1971年7月1日
- 1972年12月26日
直接選挙により選出
1972年10月17日に非常戒厳令(十月維新
8 1972年12月27日
- 1978年12月26日
憲法改正により統一主体国民会議による間接選挙
新憲法下で「維新体制」を標榜し独裁を強化



 
9 1978年12月27日
- 1979年10月26日
統一主体国民会議による間接選挙
在任中に暗殺(朴正煕暗殺事件
崔圭夏国務総理が大統領権限を臨時代行(1979年10月26日 - 1979年12月7日



10 4 崔圭夏
チェ・ギュハ
최규하
崔圭夏 無所属 1979年12月8日
- 1980年8月16日
統一主体国民会議による間接選挙
粛軍クーデターで軍内部の実権を奪取した全斗煥盧泰愚らによる5・17クーデターによって、軍部に政権を掌握され、辞任。
朴忠勳が大統領権限を臨時代行(1980年8月16日 - 1980年9月1日
 
11 5 全斗煥
チョン・ドゥファン
전두환
全斗煥 民主正義党 1980年9月1日
- 1981年3月2日
統一主体国民会議による間接選挙
第五共和国憲法制定(憲法改正)
12 1981年3月3日
- 1988年2月24日
憲法改正により大統領選挙人団による間接選挙にて選出。
第六共和国憲法制定(憲法改正)。粛軍クーデターや光州事件等により、退任後に死刑判決(高裁で無期懲役に減刑され、後に特赦)。




13 6 盧泰愚
ノ・テウ
노태우
盧泰愚 民主正義党

民主自由党
1988年2月25日
- 1993年2月24日
憲法改正により直接選挙による選出。
粛軍クーデター・光州事件及び大統領在任中の不正蓄財により、退任後に軍刑法違反で懲役刑(後に特赦)。




14 7 金泳三
キム・ヨンサム
김영삼
金泳三 新韓国党 1993年2月25日
- 1998年2月24日
直接選挙による選出
15 8 金大中
キム・デジュン
김대중
金大中 新政治国民会議

新千年民主党
1998年2月25日
- 2003年2月24日
直接選挙による選出。
太陽政策を推し進め、2000年6月北朝鮮金正日との南北首脳会談を実現。在任中にノーベル平和賞を受賞。
16 9 盧武鉉
ノ・ムヒョン
노무현
盧武鉉 新千年民主党

開かれたウリ党
2003年2月25日
- 2004年3月12日
直接選挙による選出。
国会弾劾訴追により大統領権限停止。
権限停止期間
3月12日 - 5月14日
高建国務総理が大統領権限を臨時代行。
2004年5月14日
- 2008年2月24日
弾劾訴追の棄却により、職務に復帰。在任中の収賄疑惑により退任後に捜査を受け、自殺(公式発表による)。
17 10 李明博
イ・ミョンバク
이명박
李明博 ハンナラ党 2008年2月25日
- 2013年2月24日
直接選挙による選出
18 11 朴槿恵
パク・クネ
박근혜
朴槿恵 セヌリ党 2013年2月25日
-
直接選挙による選出
初の女性大統領及び親子2代での大統領。

副大統領

建国直後の第一共和国時代には、副統領(ふくとうりょう、부통령、プトンニョン)と呼ばれる副大統領職が設置され、大統領が職務を継続できない事態になった場合に大統領職を自動的に継承することになっていた。

大統領と同様に、当初は国会議員の無記名投票によって選出されていたが、第1次憲法改正1952年7月7日)によって国民普通平等直接秘密選挙による選出となった。しかしその際、韓国では選出方式として、アメリカ副大統領のように大統領のペアとして選出される方式を採らず、大統領選挙と同時に行われる副統領選挙の結果で選出する方式を採った。そのため、与党への反発から1952年以降は正副大統領が与野党別々の政党から選出されると言うねじれ現象が発生し、高齢の李承晩大統領が職務を継続できなくなったら自動的に与野党が交代する事態が続いていた。1960年の選挙で与党・自由党が大規模な不正行為を起こしたのは、これも一因となっている。

結局、1960年四月革命で李承晩政権が崩壊すると、第3次憲法改正時に大統領と副大統領の役割が見直され、第二共和国体制の発足時に副統領職は不要な役職として廃止された(韓国憲法の改正については、大韓民国憲法#沿革参照)。これ以降、韓国では副大統領に相当する専門職が設けられていない。

副統領の氏名 在任期間 党派 備考
漢字 カタカナ ハングル 就任年月日 退任年月日
1 李始栄 イ・シヨン 이시영 1948年7月24日 1951年5月9日 韓国民主党 国会議員による間接選挙国民防衛軍事件発生により辞任。
2 金性洙 キム・ソンス 김성수 1951年5月17日 1952年5月29日 韓国民主党 釜山政治波動の政府対応に抗議しての辞任。
3 咸台永 ハム・テヨン 함태영 1952年8月15日 1956年8月14日 無所属 憲法改正により直接選挙で選出
4 張勉 チャン・ミョン 장면 1956年8月15日 1960年4月23日 民主党 憲法改正により役職廃止

関連項目

脚注

  1. ^ 辺真一「大統領を殺す国 韓国」(角川oneテーマ21)

外部リンク