地震列島
地震列島 | |
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監督 | 大森健次郎 |
脚本 | 新藤兼人 |
製作 | 田中友幸 |
出演者 |
勝野洋 永島敏行 多岐川裕美 松尾嘉代 松原千明 佐分利信 |
音楽 | 津島利章 |
撮影 |
西垣六郎(本編) 山本武(特撮) 長谷川光広(特撮) |
配給 | 東宝 |
公開 | 1980年8月30日 |
上映時間 | 126分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
解説
映画製作当時、大規模地震対策特別措置法の施行による地震防災対策強化地域の指定や、同法による警戒宣言時措置の発表などにより、東海地震の発生が現実味を帯びていた[1]。これらの世論の動きに加え、1970年代の『日本沈没』、『ノストラダムスの大予言』など東宝特撮におけるパニック映画の路線を継承し、かつ『大地震』や『ポセイドン・アドベンチャー』などのアメリカのパニック映画に見られる男女の恋愛を加味した作品として製作された。
本作スタッフはよみうりテレビ・東宝映像が制作したテレビ映画『東京大地震マグニチュード8.1』(主演 : 千葉真一、監督 : 西村潔、1980年4月17日放送)を[2][3]、参考試写していた[4]。同テレビ映画の参考資料『大地震』の著者である小板橋二郎・真鍋繁樹・千葉仁志は本作にも協力している。ライター会社とCMタイアップが行われたが、新藤兼人の脚本はこれを逆手に取ってライターをドラマのキーに用いた大胆なものであり、もともとパニック映画とは畑違いの監督である大森健次郎が恋愛描写の方に繊細な味を発揮してユニークな作品となった。
劇中、芦田富子が暮らしていたとされるマンションは、東京都世田谷区内の首都高速道路沿線に実在したマンションである[1][5]。これについて特技監督の中野昭慶は「実在の建物が被害を受ける様子を見せた方が、よりリアリティを持って見てもらえるであろうと考えた」と語っている[6]。ミニチュアセットにおけるマンション以外の建造物は基本的にストーリーに沿って架空の建造物が配置されていた(首都高速の線形も実在のものと異なる)。また、首都高速の爆発や勝鬨橋の倒壊シーンなどは、過去の東宝特撮作品(『日本沈没』等)から流用されている。
あらすじ
現代の東京を関東大震災級の大地震が再び襲う可能性が高いと察知した地震学者の川津陽一は学会や時の政府に訴えるも相手にされなかった。そんな折、いつ地震が来てもおかしくない状態にあることがわかり、翌日に地震予知会議の招集を決めるもとき既に遅し、マグニチュード7.9(相模トラフ震源)の大地震が東京を襲った。
羽田空港では着陸直後の航空機が地割れて盛り上がった滑走路に乗り上げ爆発。都心部も建物が崩壊し、コンビナートや高速道路上の車が爆発し、地上は火の海と化した。一方、地下鉄や地下街は隅田川などが陥没し東京湾からの水が流入し水責めの様相となる。そのため警視庁や東京消防庁、自衛隊の救出部隊は被災地となった都心部への救助・消火活動を行おうにも身動きが取れず、またそれに対応する体制を持っていなかった。そして逆に爆発火災による黒煙や熱風で遮られ、救助のヘリコプターが墜落する二次災害も起きてしまう。政府も次第に打つ手がなくなり、総理大臣や官房長官は川津の警告に耳を貸さなかったことを後悔する。
そんな中で、崩壊したマンションに閉じ込められた橋詰や芦田と地下鉄に閉じ込められた川津夫妻など乗客たちは脱出を試みるが…。
キャスト
- 川津陽一(地球物理学者) - 勝野洋
- 橋詰雅之(ルポライター)- 永島敏行
- 芦田富子(地震研究所所員)- 多岐川裕美
- 川津裕子(川津陽一の妻)- 松尾嘉代
- 梅島一枝(カメラマン) - 松原千明
- 内閣官房長官 - 佐藤慶
- 芦田浩蔵(芦田富子の父)- 松村達雄
- 川津房江(川津裕子の母) - 村瀬幸子
- 統幕本部議長 - 鈴木瑞穂
- サラリーマン - 滝田裕介
- 中年の女 - 小林トシ江
- ヒゲの男 - 草野大悟
- 地下鉄運転手 - 伊藤敏孝
- 国土庁長官 - 稲葉義男
- 一之江教授(地震予知会) - 加藤和夫
- 志村教授(地震予知会) - 浜田寅彦
- 気象庁観測部長 - 草薙幸二郎
- 林(気象庁地震課長) - 山本清
- 地下鉄の客 - 永井玄哉
- 伊藤教授(地震予知会) - 早川純一
- 児玉泰次
- 総理秘書官 - 加地健太郎
- 川津の助手 - 木村四郎
- 村尾幸三
- 川津隆一(川津陽一の息子) - 松田洋治
- 助川象三 - 三木のり平
- 渡辺教授(地震予知会) - 岡田英次
- 丸茂教授(地震予知会) - 大滝秀治
- 気象庁長官 - 山崎努(特別出演)
- 内閣総理大臣 - 佐分利信
※映画クレジット順
※クレジット表記なし
スタッフ
本編
- 製作 - 田中友幸
- 脚本 - 新藤兼人
- 特別スタッフ - 竹内均(東大教授)、大崎順彦(東大教授)、諏訪彰(前気象庁地震観測部員)
- 製作補 - 高井英幸
- 撮影 - 西垣六郎
- 美術 - 阿久根巌
- 録音 - 林頴四郎
- 照明 - 小島真二
- 音楽 - 津島利章
- 監督助手(チーフ) - 奈良正博
- 編集 - 小川信夫
- 整音 - 西尾昇
- 音響効果 - 三縄一郎
- スチール - 石月美徳
- アクション・アドバイザー - 風間健
- 協力 - 三立製菓株式会社、MAZDA
- 協力 - 「大地震」(プレジデント社・刊)の著者=グループ915
- 小板橋二郎、真鍋繁樹、千葉仁志
- 音響制作 - 東宝録音センター
- 音響効果制作 - 東宝効果集団
- 現像 - 東京現像所
- 水中協力 - オセアノフィルムセンター
- 資料協力 - NHK
- 製作担当者 - 森知貴秀
- 監督助手 - 橋本幸治、山下賢章、三好邦夫
特殊技術
- 撮影 - 山本武、長谷川光広
- 美術 - 井上泰幸
- 照明 - 森本正邦
- 作画 - 塚田猛昭
- 監督助手(チーフ) - 浅田英一
- 光学撮影 - 宮西武史
- 特殊効果 - 渡辺忠昭
- 製作担当者 - 篠田啓助
- 特技監督 - 中野昭慶
- 監督 - 大森健次郎
※映画クレジット順
備考
- 地下鉄のトンネル崩壊と水の流入による構内水没シーンは地下鉄銀座線赤坂見附駅周辺が舞台として使われた。撮影には製作費1千万円の実物大車輌と2千万円の駅構内セットが用いられた[1][7]。これに対して営団地下鉄からは「耐震構造は基準を充足しており、あのような事態は起こり得ない」とクレームがついた。
- 建築基準法の耐震基準が厳格化されたのは本作の公開翌年の1981年からのため、公開当時ほとんどの建物は厳格化前に建てられたものである。そのため公開当時本当に発生した場合、この作品のようなことまでは行かないまでも木造建築を中心に倒壊の恐れは十分考えられた。事実、公開から15年後の1995年に発生した阪神・淡路大震災で崩壊した建物の大半はその厳格化以前に建てられ、かつ耐震補強されていないものである。また、本作でも描写されている高速道路の橋脚・橋げたも実際に倒壊している。
- 地震発生後の官邸地下の対策室で救助活動が進行していないことに総理大臣が「消防庁は何をしている?」と自治大臣[8]を問い質し、自治大臣が「レスキューにしても消防庁の消防車・救急車にしてもこれだけの大災害に対応する力は元々持っておりません」と弁明する会話がある。『日本沈没』以降、大災害を描いた作品が何度も製作されているにもかかわらず、現実には何ら対策が施されていないことを批判するシーンだが、大災害・大事故に対応する東京消防庁の消防救助機動部隊(通称ハイパーレスキュー隊)が実際に発足したのは、阪神・淡路大震災発生後の1996年12月である。
- 川津陽一がテレビの情報番組に出演するためテレビ局を訪れるシーンでは、当時新宿区市谷河田町に所在したフジテレビ社屋および周辺がロケ地として使われた。
- ららぽーとTOKYO-BAYにあった「地震館」では、震度MAXになると目の前のスクリーンに本作のクライマックス、都市崩壊の特撮場面が映し出された。
脚注
- ^ a b c 『東宝特撮映画大全集』ヴィレッジブックス、2012年、200 - 203頁。ISBN 9784864910132。
- ^ 壬生智裕 (2013年8月4日). “幻のテレビ映画が33年ぶりにスクリーンで上映!千葉真一主演の「東京大地震マグニチュード8.1」”. シネマトゥデイ 2014年12月28日閲覧。
- ^ “秋葉原で「燃えよ特撮!祭」開催へ-「東京大地震マグニチュード 8.1」上映”. アキバ経済新聞. (2013年7月23日) 2014年12月28日閲覧。
- ^ 川北紘一『特撮魂 ~東宝特撮奮戦記~』、洋泉社、2010年1月22日、137頁。
- ^ この舞台となったマンションは2014年7月現在も現存している。
- ^ DVD特典映像での発言。
- ^ なお、作品のごく一部に実際の赤坂見附駅構内でゲリラ撮影を行ったという指摘が、一部マニア誌において当時なされたという。しかし、撮影関係者がそれについて否定も肯定も行っていないことから、真偽は不明のままである。
- ^ 公開当時の消防庁の所管大臣、2001年に総務大臣に移管。