国会議員
国会議員(こっかいぎいん)とは、
- 国・国家レベルの議会(立法府)の一般的な呼称である「国会」を構成する議員。有権者によって選出された代表者であるケースが多いが、必ずしも、そうでないケースもある。両院制の場合、上院議員と下院議員とに呼び分けられるケースが多い。
- 日本の国会を構成する議員。衆議院議員と参議院議員から成る。
ほとんどの国会議員は、何らかの政党に所属する。
日本
概要
日本の国会は「全国民を代表する選挙された議員」(憲法第43条)である国会議員で構成される。
日本の国会は衆議院と参議院から構成される二院制をとっており、衆議院と参議院では被選挙権や任期などが異なる。両議院の独立を担保するため、憲法48条により、衆議院議員と参議院議員とを兼ねることが出来ない。
- 衆議院議員
- 任期は、4年であるが、解散の場合、期間満了前に終了する[1]。総選挙の期日から起算するが、任期満了による総選挙が衆議院議員の任期満了の日前に行われたときは前任者の任期満了の日の翌日から起算する[2]。
- 選挙権は、20歳以上の日本国民に、また、被選挙権は、25歳以上の日本国民に与えられる[3]。
- 参議院議員
- 任期は、6年で解散がなく、3年ごとに半数を改選する[4]。前の通常選挙による参議院議員の任期満了の日の翌日から起算するが、通常選挙が前の通常選挙による参議院議員の任期満了の日の翌日後に行われたときは通常選挙の期日から起算する[5]。選挙が行われる年は、(西暦で)必ず3で割り切れる年になる(最初が1947年のため)。
- 選挙権は、20歳以上の日本国民に、また、被選挙権は、30歳以上の日本国民に与えられる[6]。
地位
選挙区選出議員も比例代表選出議員も日本国憲法第43条により、一部の地域、政党団体の代表ではなく、国民全体の代表と規定される。
身分の得喪
身分の取得
国会議員の身分は選挙による当選の効力の発生によって取得される(憲法第43条)。
身分の喪失
次の場合には国会議員の身分を失う。
- 任期満了となったとき
- (衆議院議員のみ)衆議院が解散されたとき(憲法第45条但書)
- 兼職することのできない公務員の職に就いたとき(国会法39条)
- 院(閉会中は議長)の許可を得て辞職したとき(国会法107条)
- 各議院の議員が他の議院の議員となったとき(憲法第44条、国会法108条)
- 法律で定められた被選挙資格を喪失したとき(国会法109条)
- (比例代表選出議員のみ)選挙の際に所属していた名簿届出政党等以外の政党等に所属する者となったとき(国会法109条の2)
- 懲罰による除名処分を受けたとき(国会法122条4号)
- 選挙無効訴訟・当選無効訴訟の判決が確定したとき(国会法204条以下)
- 資格争訟により議員就任後に議員資格を喪失したとの裁判が確定したとき(憲法第55条)
兼任の禁止
原則
国会議員はその本来の職務に専念すべきであるとされ、国会法第39条では原則として国又は地方公共団体の公務員との兼職の禁止が定められている。
例外
国会議員は特に法律で認められている場合には公務員と兼務することができる。
- 内閣総理大臣(国会法第39条)
- 国務大臣(国会法第39条)
- 内閣官房副長官(国会法第39条)
- 内閣総理大臣補佐官(国会法第39条)
- 副大臣(国会法第39条)
- 大臣政務官(国会法第39条)
- 両議院一致の議決に基づき、その任期中内閣行政各部における各種の委員、顧問、参与その他これらに準ずる職に就く場合(国会法第39条)
- 皇室会議議員(皇室典範第28条第2項)
- 皇室会議予備議員(皇室典範第30条第3項)
- 特派大使(外務公務員法第8条)
- 政府代表(外務公務員法第8条)
- 全権委員(外務公務員法第8条)
- 政府代表又は全権委員の代理並びに特派大使、政府代表又は全権委員の顧問及び随員(外務公務員法第8条)
- 検察官適格審査会委員(検察庁法第23条第4項)
- 選挙制度審議会特別委員(選挙制度審議会設置法第5条)
- 地方制度調査会委員(地方制度調査会設置法第6条)
- 国土審議会特別委員(国土交通省設置法第10条)
- 日本学術会議会員(日本学術会議法第7条)
権能
国会法や議院規則により国会議員には議院の活動に参加するための各種の権能が認められている。
- 議案発議権(国会法56条)・動議提出権(国会法57条) - ただし、予算や条約等に関する発議権はなく内閣に属する。
- 質問権(国会法74条以下)
- 質疑権(衆議院規則118条、参議院規則108条)
- 討論権(衆議院規則118条、参議院規則113条)
- 表決権(国会法57条)
特権
国会議員や国会議員の属する各議院の活動等を保障するため、憲法により国会議員には3つの特権が認められている。
- 不逮捕特権
- 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない(憲法50条)。各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない(国会法33条)。
- 免責特権
- 議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われることはない(憲法51条)。
- 歳費特権
- 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける(憲法49条)。歳費や手当については国会法や国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律などに規定がある。
なお、その他の待遇として、
- 個人給与を国費で負担する公設秘書として、公設第一秘書、公設第二秘書、および国会議員政策担当秘書の3人を置くことが132条により認められること
- 議員会館に事務室が与えられる(132条の2)。
- JR全線無料(新幹線・特急・グリーン車等の料金も含む。ただし、東北新幹線「はやぶさ」のグランクラスのみ運賃・グランクラス料金とも適用除外)(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律10条)。
- 航空機は月4往復分無料(JR全線無料特殊乗車券との選択)
- 家賃が安価な議員宿舎
- 競馬場、競輪場、競艇場の入場料が無料(競馬法施行規則、自転車競技法施行規則、モーターボート競走法施行規則)
などがある。
JRの議員パスや航空運賃の無料分は、民間でいう通勤手当に相当するとの主張がある一方[7]、選挙区に関係なく一律定額支給である点を挙げて異論もある。また、議員宿舎については、地方選出議員の通勤や有事における国会の緊急召集などの観点から存在意義を認めつつも、立地や設備等の面で世間の相場や社会通念に照らし合わせて著しく廉価である点について批判されることが多い。
義務
国会議員資産公開法に基づき、当選後に資産公開が義務付けられており、100日以内に所属議院の議長に対し、任期開始日時点の保有資産の報告書を提出しなければならない。対象は、土地・建物、預貯金、有価証券、ゴルフ会員権などである。
各種記録
- 最年長在職公選議員 尾崎行雄 94歳3ヶ月
- 最年少選出公選議員 原陽子 25歳4ヶ月
- 最多当選回数議員 尾崎行雄 25回
- 最多得票当選議員 石原慎太郎 301万2553票(1968年参院選全国区)
- 最低得票当選議員 川本達 11票(1892年衆院長崎6区)
名誉議員の称号
国会、或いは、都道府県、市町村議会においては、議員として一定年数を務め、功労ある者に名誉議員の称号を贈る制度がある。国会議員としては、尾崎行雄、三木武夫が衆議院名誉議員の称号を贈られた。
国会議員を経験後に地方議員になる例
一般に、政治家にとって地方議員や地方自治体の首長を経験後に国会議員となることが多く、国会議員から退いて地方自治体の首長になることも少なくないものの、地方議員を務めることは、稀なことである。
- (人名太字は存命中)
- 相沢武彦(元公明党衆議院議員・参議院議員→北海道議会議員)
- 荒巻隆三(元自由民主党衆議院議員→京都府議会議員)
- 池田隆一(元日本社会党・民主党衆議院議員→北海道議会議員)
- 伊藤憲一(元日本共産党衆議院議員→東京都大田区議会議員)
- 井上和久(元公明党衆議院議員→愛媛県議会議員)
- 尾形智矩(元自由民主党衆議院議員→苅田町議会議員)
- 鍵田忠兵衛(元自由民主党衆議院議員→奈良県議会議員[8])
- 木内良明(元公明党衆議院議員→東京都議会議員)
- 菊地豊(元日本自由党・民主党衆議院議員→茨城県下館市長→下館市議会議員)
- 木倉和一郎(元自由民主党参議院議員→千葉県議会議員[8])
- 岸本健(元民主党衆議院議員→和歌山県議会議員)
- 工藤万砂美(元自由民主党参議院議員→北海道議会議員[8])
- 熊代昭彦 (元自由民主党衆議院議員→岡山市議会議員)
- 小岩井清(元日本社会党衆議院議員→市川市議会議員[8])
- 竹内譲(元公明党・新進党衆議院議員→京都府京都市議会議員→公明党衆議院議員)
- 田中英夫(元自由民主党衆議院議員→京都府議会議員[8])
- 知久馬二三子(元社会民主党衆議院議員→三朝町議会議員[8])
- 前田政八(元立憲政友会衆議院議員→佐賀県塩田町町長→塩田町議会議員)
- 三上隆雄(元参議院議員(無所属、会派は日本社会党)→青森県議会議員)
- 三上英雄(元立憲政友会衆議院議員、弁護士→東京都杉並区議会議員[8])
オーストラリア
オーストラリア連邦議会では、元老院議員と代議院議員とが存在するが、通常「国会議員」と言えば代議院議員を指す。代議院議員は、150名の定員が小選挙区から各1名選出される。
バングラデシュ
Jatiya Sangsadと呼ばれる国会は、一院制の議会。任期5年、定数345名。その内、45名が女性議員と定められている。
カナダ
インド
- ローク・サバー議員
- 下院。任期5年だが解散がある。定数545名で、その内、2名がイギリス系インド人の中から大統領によって指名され、残りが小選挙区制。
- 選挙権は、18歳以上のインド公民。被選挙権は、同25歳以上。
- ラージヤ・サバー議員
- 上院。任期6年で解散なし、2年ごとに改選される。定数245名で、その内、12名が各分野の専門家を大統領が指名し、残りが単記移譲式投票で選出される。
- 選挙権は、州議会議員にのみ与えられる。被選挙権は、30歳以上のインド公民。
アイルランド
ウラクタスと呼ばれる。
- ドイル・エアラン議員
- 下院。任期5年。定数166名。単記移譲式投票による比例代表制をとる。
- 選挙権は、18歳以上のアイルランド国民およびイギリス国民。被選挙権は、21歳以上。
- シャナズ・エアラン議員
- 上院。任期5年。定数60名。内訳は、11名が首相による指名、6名が大学出身者、43名がドイル・エアランの議員から選出される。
ケニア
一院制。定数224名。その内、210名が小選挙区制、12名が議長による指名を受ける。
マレーシア
マルタ
代議院のみの一院制。定数65名で任期5年。
脚注
- ^ 日本国憲法第45条
- ^ 公職選挙法第256条
- ^ 公職選挙法第9条第1項、公職選挙法第10条第1項第1号
- ^ 日本国憲法第46条
- ^ 公職選挙法第257条
- ^ 公職選挙法第9条第1項、公職選挙法第10条第1項第2号
- ^ 中田宏が著書『国会の中はこうなっている』で述べたところに拠る
- ^ a b c d e f g 国会議員当選前にも歴任