吹上御苑
吹上御苑(ふきあげぎょえん)は日本の皇居(東京都千代田区)・吹上地区にある御苑。吹上御所とも呼ばれる。敷地の多くは森林となっており、その中に御所等の建物が点在する。
概要
地理上の位置は武蔵野台地の東端、海岸沿いの土地である。現在は皇居の一部であり、道灌堀を挟み、旧西の丸地区の西側に隣接する。
主な建物として、昭和天皇、香淳皇后の御所であった「吹上大宮御所」、現在の天皇・皇后の住居である「御所」、「宮中三殿」などがある。
江戸城築城後には番衆・代官衆や清洲藩の松平忠吉の屋敷地があり、その後は徳川御三家の大名屋敷が建築された。
1657年(明暦3年)1月明暦の大火で全焼し、当時財政難であった幕府はほぼ壊滅状態であった江戸復旧に際し都市の再建を優先。このあたりは江戸城への類焼を防ぐための火除け地として日本庭園が整備される運びとなった。
明治維新では一時荒廃したが、江戸城に天皇が居住するようになると、庭園が再建され、さらにゴルフ場も建設された。
吹上御苑の転機となるのは1937年で、昭和天皇がゴルフ場の使用を止め、自然のまま残すように希望したため、以後森林が形成された。隅々まで人の手が入った旧西の丸地区とは対照的に、手つかずとなった吹上御苑は、都心においては驚異的な、あたかも人工の原生林とも言える植生を形成、さながらビオトープの様になっている。
吹上御苑の自然
スダジイ、アカガシなど常緑樹とイチョウ、ケヤキなどの巨木が茂り、林床には広葉樹の下にはアズマシライトソウ、カモメギクなど稀少な植物が見られる。これら植物は、かつての日本庭園の樹木がそのまま大きくなったものや、昭和天皇が植えたものが野生化したもの、さらに自然に発生したものなどによって複合的に形成されたものである。
また、吹上御苑の湿度は、近くの気象庁の測定値に比べ、およそ10~20%程高く、衛星の観測データによれば、吹上御苑を含む皇居の森で作られた高湿度の空気が大気を冷やし、銀座、日本橋辺りまで流れ込み、ヒートアイランド現象の抑制にも役立っていることが判明している。
一般公開
毎年5月の休日に宮内庁によって一般に公開されている。
関連項目
- 皇居
- 内井昭蔵 - 吹上御苑の新御所の設計を手がけた建築家。
- 柳沢信尹 - 吹上御苑の前身である江戸城・吹上花畑の営築を行った作事奉行(幕臣)
- 石建嘉一郎 - 吹上御所施工のさい総監督
- 吹上奉行
- 森林
- 武蔵野