双眼鏡

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双眼鏡

双眼鏡(そうがんきょう、英語:binoculars)とは、望遠鏡の一種で、二つの鏡胴 (対物レンズ接眼レンズを連結して保持し、レンズ以外からの光線の入射を防ぐ筒)を平行にならべ遠方のものを両眼で拡大して見る光学器械である。

双眼鏡の種類

双眼鏡にはその構造によっていくつかの種類に分かれる。

レンズ・プリズムの構成

ポロプリズム式双眼鏡の構造
1 - Objective
2-3 - Porro prisms
4 Eyepiece
ガリレオ式
対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凹レンズを使用した双眼鏡である。2枚のレンズだけで構成されることが多い。軽く作れるが、倍率はあまり高くできない。玩具や安価なオペラグラスに使われる。
ポロプリズム式
対物・対眼レンズとも凸レンズを使用する。そのままだと倒立像になるので2個または3個の直角プリズムで反転させて正立像を得る。もっともよく使われている。ダハプリズム式より重く嵩張るが、対物レンズが大きい分、明るい。スタジアムで売られるような安価な製品には、プリズムを一対の鏡で代用したものがある。
ダハプリズム式
対物・対眼レンズとも凸レンズを使用する。像を2つのルーフ(屋根型)プリズムで反転させるものである。プリズムを山型にして、左右をそれぞれの面で反射させる。プリズム部分が嵩張らないので全体がコンパクトに仕上がるが、大口径の対物レンズは使えないことと、比較的高価になるという欠点がある。

その他

  • 防水双眼鏡
  • 防振双眼鏡(手ぶれ補正機能つき)

双眼鏡の性能

ポロプリズム式双眼鏡のプリズムカバーに表示されている性能諸元

対物レンズ有効径とは、対物レンズの径のうちレンズ固定リングなどに遮られない径をいい、双眼鏡の性能を決定する最も重要な要素である。倍率と対物レンズ有効径とは、ポロプリズム式双眼鏡では右側の鏡胴のプリズム部分に7x35などと表示されていることが多い。 対物レンズ有効径を倍率で割ると射出ひとみ径 (en)が得られる。射出ひとみとは双眼鏡を眼から離し対物レンズを明るい方に向けたとき接眼レンズに写る明るい円をいう。射出ひとみ径は双眼鏡の明るさの指標となる。人間のひとみ径は昼間の明るい場所で2mmほど、暗夜で7-8mmとなるので夜間用ないし天体観測用の双眼鏡には射出ひとみ径が7mm程度のものが要求される。通常の野外用のものなら5mm前後が普通。視野の広さもまた重要で、視野角あるいは1,000m視界(1,000m先の視界の幅)が単位として使われる。視野が広いと観察の対象を見つけだすのが容易である。

雑誌や新聞の広告によくあるような素人向けに高倍率を特にアピールした双眼鏡では、ひとみ径が小さく視野角が狭くさらに手ぶれも大きくなるので、実際にはとても使いにくい。

使い方

眼幅の調整

玩具や防振型、固定架台上の大型双眼鏡を除き、ほとんどの双眼鏡は中心軸(左右の鏡胴の中間にあり、双方を連結しているピン)のところで蝶番のように全体を折り曲げることで眼幅(左右瞳孔の間隔)に接眼レンズの光軸の間隔を合わせるようになっている。一度正しく調整した後は中心軸の接眼側にある目盛によって眼幅を知り、次回からすぐに合わせることができる。

焦点距離の調整(ピント合わせ)

多くの双眼鏡ではセンターフォーカス(CF)方式といい、中心軸にあるリングで両方の鏡胴の焦点を同時に変更できるようになっているが、防水型では左右両方に調整リングがあり、それぞれ独立に調整するようになっている(独立調整(IF)方式)。動物とくに野鳥の観察には、すばやく焦点距離の調節が出来るCF方式が便利だが、防水式の主な用途である海上及び軍用では焦点の素早い調節はあまり必要でないため、左右独立式でも大きな不便はない。同様に天体観測用の大型双眼鏡もIF方式が多い。双眼鏡によって最短合焦距離は1メートル程から80メートル以上と様々で、特に短いものは美術品の鑑賞にも使われる。

視度の調整

左右の眼の視力に差がある場合、両目ともにピントの合った像を得るためには左右の鏡胴の焦点距離に差を付ける必要がある。中央の調整リングで左右の焦点距離を同時に調整するタイプでは、片方の接眼レンズの近くにあるダイヤルで視度の調整を行う。一度調節すれば以後行う必要はないが、眼幅と同様、目盛を憶えておけばよい。左右独立に調整するタイプではもちろん毎回どちらかの調整リングで行う。

測距と採寸

レチクルとよばれる照準目盛が描かれている双眼鏡では、距離を測定したり、相手の大きさを計ることができる。また、応用として相手の速度の算出も可能であるが、あくまで概略を簡易計算する程度に過ぎない。測距では、相手の大きさをすでに知っている必要があり、採寸では相手までの距離をすでに認知していることが前提条件となる。

持ち方

陸上では両手の指を全て(親指は下に)鏡胴にまわし、軽く掴むように持つのが普通だが、漁船など小型船舶では船の揺れに抗して対象を視野の中央に保つため、指をほとんどあるいは完全に開いて、両手の指の付け根あたりで鏡胴を左右から挟んで保持する方法も場合によっては使われる。

用途

など

オペラグラス

真珠層でコーティングされたオペラグラスと、そのケース

観劇用、スポーツ観戦用の双眼鏡のことを、オペラグラスと呼ぶことがある。

原義

元々はオペラを鑑賞する際、観客席から役者の表情などを見るために使用したレンズ付き器具を指す言葉である。当時、オペラ観賞に行くことができたのは市民階級から上流階級のある程度裕福な人々であった。とりわけ、一般客席とは隔離された貴賓席から観賞する上流貴族にとってはオペラグラスは必需品ともいえる存在になった。その後、オペラグラスは単なる観賞の道具から、オペラ観賞・スポーツ観戦という外出の場におけるファッションアイテムの一つとして認識されるようになり装飾の施されたものも使用されるようになった。

仕様

多くが双眼鏡だが、単眼鏡のオペラグラスも存在する。倍率は3倍から8倍程度のものが多い。高倍率のものも存在するが、倍率を高くすると視野が狭くなってしまうため、低倍率でも広い範囲を見られるものが普及している。双眼鏡とオペラグラスの区別は明確でないため、動物観察用の高倍率双眼鏡を観劇用に使う人もいる。

装飾としてはシンプルなものから、細かい彫刻が施されたものなど様々である。富裕層の間では象牙やマザーオブパール(白蝶貝)と呼ばれる真珠の母貝、宝石類で装飾されたものなどが使用された。また、長時間の観賞で手が疲れないようにハンドルの付いたものや、劇場内でパンフレットを見るためにライトがついているものなどもある。

劇場等における貸出

大きな劇場では、観劇用にオペラグラスを貸出しているところもある。無料貸出のところもあるが、多くは使用料と保証金を預けることになっている。保証金は、破損・紛失などがない限り返却時に返還される。宝塚大劇場ではレンタル料500円、保証料5000円、新国立劇場では使用料500円、保証金3000円である。

主要なメーカー

日本以外

日本

関連項目