化け草履

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百鬼夜行絵巻』にある草履の妖怪(室町時代
十返舎一九 『運次第出雲縁組』
境港市水木しげるロードに設置された「化け草履」のブロンズ像

化け草履(ばけぞうり)は、日本妖怪の一種で、草履の妖怪。

概要

草履の妖怪の歴史は古く、室町時代妖怪絵巻百鬼夜行絵巻』にはすでに、藁の手足を持つ草履の妖怪が、藁の甲冑を身にまとい、トカゲ状の馬にまたがった姿で描かれている[1][2]

江戸時代に入ると、草履などの履物が擬人化された姿で黄表紙に登場している。寛政12年(1800年)の十返舎一九による黄表紙『運次第出雲縁組』では、雪駄夜鷹草鞋下駄の妖怪に声をかける場面が描かれている[1]

昭和平成以降は、妖怪漫画家・水木しげるにより、大きな草履に手足が生え、鼻緒の付近に目玉が一つと、その下に口がある付喪神として描かれている[3]。九十九年使われた草履に魂が宿り、百年目に妖怪と化したとされる。仕事は主に捨てられた履き物に宿った霊の整理だが、履き物を粗末にする人間の家に懲らしめにくることもあるという[4]

また水木の著書では、履き物を粗末にする者の家で、夜間に履き物が化け草履となって「カラリン、コロリン、カンコロリン、まなぐ三つに歯二ん枚」と歌い出したという怪異が述べられている[3]。この原典は民話研究家・佐々木喜善の著書『聴耳草紙』にはある「履物の化物」だが、原典では草履ではなく単に「履物」とのみ述べられており[5]、草履かどうかは定かではなく、草履ではなく下駄の話だとする指摘もある[6]。妖怪研究家・村上健司はこれを民間の伝承ではなく、教訓のために作られた昔話とみている[6]

脚注

  1. ^ a b アダム・カバット『ももんがあ対見越入道 江戸の化物たち』講談社、2006年、236頁頁。ISBN 978-4-06-212873-5 
  2. ^ 湯本豪一『百鬼夜行絵巻 妖怪たちが騒ぎだす』小学館〈アートセレクション〉、2005年、37頁頁。ISBN 978-4-09-607023-9 
  3. ^ a b 水木しげる妖鬼化』 5巻、Softgarage、2004年、51頁頁。ISBN 978-4-86133-027-8 
  4. ^ 水木しげるロードの妖怪たち【15】ばけぞうり”. さかなと鬼太郎のまち 境港市観光ガイド. 境港市観光協会. 2009年2月14日閲覧。
  5. ^ 佐々木喜善『聴耳草紙』筑摩書房ちくま文庫〉、1993年、464頁頁。ISBN 978-4-480-02754-2 
  6. ^ a b 村上健司編著『妖怪事典』毎日新聞社、2000年、268-269頁頁。ISBN 978-4-620-31428-0