加越能鉄道デ7000形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Starbacks (会話 | 投稿記録) による 2015年5月24日 (日) 09:09個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (7073号の画像追加)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

万葉線標準色のデ7071
「ネコ電車」こと「アニマル電車」デ7072

加越能鉄道デ7000形電車(かえつのうてつどうデ7000がたでんしゃ)は、加越能鉄道(現・加越能バス)が製造し、同社の高岡軌道線新湊港線を引き継いだ万葉線が保有している路面電車車両

本記事ではほぼ同形のデ7060形デ7070形電車についても記述する。

概要

製造当時、加越能鉄道と相互乗り入れを行っていた富山地方鉄道射水線で使用されたデ7000形とほぼ同形の設計となっている。1961年(昭和36年)にデ7000形7051 - 7053の3両、1965年(昭和40年)にデ7060形7061・7062の2両、1967年(昭和42年)にデ7070形7071 - 7076の6両、計11両が製造された。製造メーカーはすべて富山地方鉄道の7000形と同じく日本車輌製造東京支店である。

基本構造は富山地方鉄道の7000形に準じるが、富山地方鉄道の7000形は扉が前端と中央に配置されているのに対して、加越能鉄道の7000形は扉が両端に配置されているのが主な相違点である。

1971年(昭和46年)以降、営業用車両はこの7000形のグループに統一され長く推移してきたが、2003年(平成15年)以降、超低床電車MLRV1000形の導入に伴い廃車が進んでいる。

構造

ここでは主に各形式に共通の特徴について記述する。

車体

東京都電8000形をモデルとして設計された全鋼製車体である。

前面は3枚窓となっている。側面両端に片開き扉を配し、側面窓は上部をHゴム支持の固定式とし、下部を上昇式としたいわゆる「バス窓」となっている。扉の隣の戸袋部の窓のみ上部・下部ともHゴム支持の固定式となっている。

車体塗装は上半分クリーム色、下半分と前面最上部がオレンジ色という塗装であったが、万葉線に移管された後に黄色地に白・青・グレーの新塗装に塗り替えられている。また全面広告ラッピングを施された車両もある。

車内

車内はロングシートで、形式により定員は異なっている。1971年(昭和46年)に後乗り前降り・整理券式でワンマン化されており、運賃箱運賃表示器・整理券発行機が取り付けられた。

機器

富山地方鉄道の7000形と同様、駆動方式は吊掛式で、制御器は間接非自動制御の抵抗制御方式である。

形式により台車が異なっている。

なお、鉄道線である新湊港線(六渡寺 - 越ノ潟)にはATSが設置されているため、関連する機器を搭載している。

形式別概説

デ7000形

1961年(昭和36年)にデ7051 - デ7053の3両が製造された。富山地方鉄道7000形から中央扉を最後部に移設したような外観で、中間に車掌用小窓が存在する。これは前中扉の構造を後から前後扉に改造したものではなく、車掌用小窓もふくめて製造当初よりこの窓配置である。床は板張りとなっている。

形式称号はデ7000形であるが、番号は富山地方鉄道のデ7000形との重複を避けて7051から付けられており、「デ7050形」と記述されることもある。

MLRV1000形の投入により全廃された。

デ7052は千葉県御宿町の養鶏業者「村石養鶏場」が購入し、同社が2011年(平成23年)5月1日にいすみ市に開設した観光農場「いすみポッポの丘」の農産物直売所として他に購入した北陸鉄道モハ3752いすみ鉄道いすみ204と共に利用されている[1][2]

デ7060形

1965年(昭和40年)にデ7061・デ7062の2両が製造された。車体構造は7000形とほぼ同型だが、製造当初は射水線乗り入れ時に連結運用するための連結器があり、総括制御可能であった。のちに連結器は撤去されている。

床は板張りからリノリウムに変更された。座席定員は7000形と同じ28名だが、立席定員は7000形に比べ14名減って56名となった。

MLRV1000形の投入により全廃された。

デ7061は2004年に廃車、高岡市内の「二塚かっぱ村」に静態保存されている。

デ7062は2008年に廃車、JR貨物系の運送業「北陸ロジスティクス株式会社」が引き取り、JR伏木駅の旧貨物ヤードに留置されている。

デ7070形

加越能鉄道時代のデ7071
新「アニマル電車」デ7073

1967年(昭和42年)にデ7071 - デ7076の6両が製造された。設計の変更で側面中間部にあった車掌用小窓がなくなり、すっきりした窓配置になり、これによって座席の長さも延長されたため座席定員が増加している。

万葉線移管後の2002年(平成14年)から音声アナウンステープのデジタル化の工事、さらに2004年(平成16年) - 2006年(平成18年)にデ7071・デ7073の2両の冷房化改造と行先表示付運賃表示機の取替え工事がされている。

デ7072は加越能鉄道時代の1994年(平成6年)から車体正面にネコ、側面に十二支の動物の絵が描かれた。これには「アニマル電車」という正式な愛称があるのだが、正面の絵柄から「ネコ電車」と呼ばれている。但し非冷房のため、冷房付きのデ7073が2代目として2009年(平成21年)12月26日に運用を開始し、同日から2日間にわたり新旧アニマル電車の競演が見られた。

MLRV1000形と新型除雪車6000形の導入により、デ7072は2011年に廃車、車庫内に留置されている。

主要諸元

  • 全長:12,500mm
  • 全幅:2,440mm
  • 全高:3,830mm(7000形)/3,832mm(7060形・7070形)
  • 自重:15.3t
  • 車体構造:全鋼製
  • 定員:
    • デ7000形:98名(座席28名)
    • デ7060形:84名(座席28名)
    • デ7070形:102名(座席34名)
  • 台車形式
    • デ7000形:N-105
    • デ7060形:N-110A
    • デ7070形:N-110B
  • 電動機
    • 形式:NE-50B
    • 出力:50kW×2基
    • 駆動方式:吊掛式
    • 歯車比:68:14
  • 制御方式:間接非自動制御
  • 制動方式:空気・電気

関連項目

参考文献

  • 交友社鉄道ファン』1985年12月号(通巻296号)松原淳 シリーズ 路面電車を訪ねて 7 加越能鉄道

脚注

  1. ^ 朝日新聞 千葉首都圏版「いすみポッポの丘 来月1日オープン」 2011年4月27日
  2. ^ ファーム・リゾート 鶏卵牧場