前嶋信次

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前嶋 信次
人物情報
生誕 (1903-07-20) 1903年7月20日
日本の旗 日本 山梨県笛吹市八代町
死没 1983年6月3日(1983-06-03)(79歳)
出身校 東京帝国大学文学部
学問
研究分野 東洋史(イスラム史)
研究機関 慶應義塾大学
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前嶋 信次(まえじま しんじ、1903年7月20日[1] - 1983年6月3日[2])は、日本のイスラム学者、東洋史家、東洋学者慶應義塾大学名誉教授。

来歴[編集]

現在の山梨県笛吹市八代町に生まれる[1][3]山梨県立日川中学校[1]東京外国語学校仏語科[1]を経て、1928年東京帝国大学文学部東洋史学科を卒業[1]。当時は日本ではほとんど研究する者がなかったイスラム史を志し、アラビア語を学ぶ。卒業後は、台北帝国大学助手や台南州立台南第一中学校教諭を務め[1]、戦時中は南満州鉄道東亜経済調査局に勤めた[1]。戦後、1953年「東西交通史上に於けるイスラム勢力の消長」で文学博士[1]。1954年慶應義塾大学文学部専任講師[1]、1956年同教授[1]1971年定年退職[1]、名誉教授[1]

学会でも日本イスラム協会[4]日本オリエント学会の設立運営に貢献し、日本でのイスラム学オリエント学研究の発展に尽力した。

アラビア語文献に基づいた東西交渉史(シルクロード学)の実証的研究を数多く行う一方で、文学的情趣をあわせもった一般的向けの啓蒙書を数多く著してアラブ文化イスラーム文化を日本に広く紹介した。

初のアラビア語原典での日本語訳となった『アラビアン・ナイト』が名高い。弟子に家島彦一三木亘坂本勉らがいる。多くの編著刊行にも関わった。

主な著書[編集]

  • 玄奘三蔵 史実西遊記』(岩波新書) 1952、復刊1988・2010ほか
  • サラセン文化』(弘文堂、アテネ文庫) 1955 - 小冊子
  • イスラムの文化圏 回教の文化』(至文堂、世界史新書) 1962
  • アラビア史』(修道社) 1958、増補版1971
  • 『アラビアの医術』(中公新書) 1965/平凡社ライブラリー 1996(三木亘解説)。電子書籍 2023
  • 『世界の歴史8 イスラム世界』(河出書房新社) 1968、新版1977/河出文庫 1989。電子書籍 2014
  • アラビアン・ナイトの世界』(講談社現代新書) 1970/平凡社ライブラリー 1995(杉田英明解説)。電子書籍 2017
  • 『シルクロードの秘密国 ブハラ』(芙蓉書房) 1972、新版1977
  • 『生活の世界歴史7 イスラムの蔭に』(河出書房新社) 1975、新版1980/河出文庫 1991。電子書籍(Kindle版ほか) 2014
  • 『世界の歴史10 イスラムの時代』(講談社) 1977/『イスラムの時代 マホメットから世界帝国へ』(講談社学術文庫) 2002 - 改題単著
  • 『アラビア学への途 わが人生のシルクロード』(日本放送出版協会NHKブックス) 1982 - 学問的自伝
  • 『アラビアに魅せられた人びと』(芙蓉書房) 1982/中公文庫 1993(矢島文夫解説)
  • 「東西文化交流の諸相」(誠文堂新光社) 1971 - 著者自選での論考集
    1. 『シルクロード史上の群像』
    2. 『民族・戦争』
    3. 『文化の東西交流』
    4. 『東西物産の交流』 - 最晩年の1982年に全4巻(カバー装)で改訂刊行
  • 空海入唐記』(誠文堂新光社) 1983 - 上記 未収録の論考
  • 日持上人の大陸渡航 宣化出土遺物を中心として』(誠文堂新光社) 1983 - 上記 未収録の論考
  • 『イスラム文化と歴史』(湯川武解題、誠文堂新光社) 1984 - 上記 未収録の論考
  • 『インド学の曙』(窪寺紘一編・解説、世界聖典刊行協会、ぼんブックス) 1985 - 没後刊行の論考
  • 『イスラムの宗教と歴史』(窪寺紘一編・解説、世界聖典刊行協会、ぼんブックス) 1987 - 没後刊行の論考
  • 「前嶋信次著作選」 杉田英明編、平凡社東洋文庫 全4巻、2000。Kindle版 2020
    1. 『千夜一夜物語と中東文化』
    2. 『イスラムとヨーロッパ』
    3. 『〔華麗島〕 台湾からの眺望』
    4. 『書物と旅 東西往還』
※単行本未収録を中心にした論文集、3巻に書誌、4巻に年譜を収録

主な訳書[編集]

関連文献[編集]

  • 『世界各国史11 西アジア史』(編著、山川出版社)1955、新版 1972、1989ほか
  • 『世界の文化史蹟10 イスラムの世界』(編著、講談社) 1969
  • 『メッカ』(編著、芙蓉書房) 1975
  • 『シルクロード事典』(加藤九祚共編、芙蓉書房) 1975、新版 1993
  • 『オリエント史講座』全6巻(杉勇護雅夫共編、学生社) 1982ほか
  • 『西と東と 前嶋信次先生追悼論文集』(汲古書院) 1985 - 弟子達による紹介・書誌
  • 『イスラム学事始 前嶋信次の生涯』(窪寺紘一、世界聖典刊行協会、ぼんブックス) 1989 - 元平凡社編集担当者による詳細な伝記

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l 前嶋信次略歴」『史学』第44巻第1号、三田史学会、1971年11月、112-114頁。 
  2. ^ 前嶋信次』 - コトバンク
  3. ^ 山梨県 2018年8月21日閲覧。
  4. ^ 設立の経緯”. 日本イスラム協会. 2023年11月18日閲覧。
  5. ^ 『東西文化交流の諸相』東西文化交流の諸相刊行会、1971年3月 1971、1178頁。