冷陰極管

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冷陰極管(れいいんきょくかん)とは陰極からの電子の放出に外部から加熱用エネルギーの供給を必要としない電子管の総称である。代表例としては、古くはクルックス管ガイスラー管ネオンランプ光電管、最初期のブラウン管等があり、冷陰極を使用した小型蛍光管が液晶バックライト用の光源として急速に発展し、その後LEDが一般的になるまでは、多くの液晶パネルに搭載されていた。以下特に冷陰極蛍光管について述べる。

冷陰極蛍光管の特徴

最も重要な特徴は容易に調光(輝度調節)できるということである。2015年現在では 輝度、消費電力、長期間の劣化特性、耐衝撃、製品の形状とサイズの自由度、コストがLEDより劣るため日本では新発売の液晶に搭載されることはないが、2008年以前は小型の液晶バックライトに主要な技術であり 調光できる光源として多く生産されてきた。調光を行うためには特殊な調光回路(冷陰極管インバータ回路)が必要となる。調光は冷陰極管の管電流を増減して明るさを変える管電流調光方式、間欠的に点灯と消灯を繰り返して平均輝度を増減するバースト調光方式がある。

電極の電子放出原理

一般の蛍光管は熱陰極蛍光管(Hot Cathode Fluorescent Lamp-HCFL)と呼ばれるもので、電極を加熱して積極的に熱電子放出を行うのに対して、冷陰極蛍光管(Cold Cathode Fluorescent Lamp-CCFL)は陰極を加熱せずに電子放出を行う。

このために、熱陰極管に比べて冷陰極管は陰極降下電圧が大きく、その陰極降下電圧は蛍光管の発光に寄与しないのでそのまま熱的な損失となる。このため、冷陰極管は熱陰極管に比べて発光効率が若干悪く、「日中の部屋においては冷陰極管のバックライト液晶では最大の明るさにしても光っているのかわからない」ということがよくあった。 しかし、陰極材料が改善され、陰極降下電圧が下がる目処がついたため、冷陰極管の発光効率は大幅に改善され、最大でLEDの半分以上程度は光るようになった。

冷陰極蛍光管の点灯用インバータ回路

ノートパソコン用のインバータ回路例

冷陰極管の点灯用に使われるインバータ回路は、ノートパソコン用や液晶テレビ用バックライトの点灯回路として独自の発展を遂げており、小型化と効率改善のために、比較的細長い形状の共振型トランス(共振変圧器)が使われるようになった。共振型トランスは同一形状の一般用トランスと比較して体積率にして1/3以下の大きさであり、また信頼性が高い。この共振型トランスを用いたインバータ回路は液晶技術の発展に伴い、冷陰極管点灯用として急速に発展し続けている。

インバータ回路の出力は高電圧(概ね1000V前後)であり、高周波であるために比較的電撃を感じにくい一方、不用意に分解して触れると高周波火傷を負う危険があるために注意が必要である。

今後の見通し

必要とされるすべての要素で結果的にはLEDの方が優れているため、LEDを光源とする器具への移行が進んでいて、メーカーでは冷陰極管を使用したパーツは生産中止となっている場合も多い。 しかし、日本も含め世界中には冷陰極管のニーズと在庫があるので、光り方の近い蛍光灯の代わり、後進国の新製品など、用いられることもありうる。

近年では蛍光体の選択による植物の生育に適した波長特性[1]と耐久性、省電力により植物工場での人工光源として活路を見出しつつある。[2][3]

近年は植物工場に植物の育成に特化した高演色LEDが導入されつつあるが、LEDには硫化ガスとマイグレーションによる劣化という特有の問題があるが冷陰極管はこのような劣化はないとされる。[4][5]

関連項目

脚注

  1. ^ LEDでも波長を植物の生育に適した波長特性に変えられるが、蛍光体の変更の方が容易で自由度が高い
  2. ^ LEDに代わる第3の節電省エネ蛍光灯「CCFL」環境にやさしいエコな省エネ照明(CCFL/LED)
  3. ^ 液晶画面バックライトに利用するCCFL(冷陰極管)に空気中の浮遊菌・付着菌を滅菌する機能を/植物工場や電照キク専用ライトも開発中
  4. ^ 森康裕, 高辻正基 & 石原隆司 2015, pp. 50–69.
  5. ^ 但し、蛍光体の経年による劣化での波長の遷移はある

特許

外部リンク