偽装表示

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偽装表示(ぎそうひょうじ)とは、主に生産者流通業者販売者消費者に対して実勢価格より高値で売りつけることを目的として、商品の産地や消費期限などの商品情報を、実際の商品情報と異なるものにすりかえて表示すること。すなわち、故意に事実(実際)と異なる表示をすることを指し、不作為によるミス表示は不適正表示と呼ばれる。
しかし、最近では、両者が混同されて報道されることが多々ある。
なお、偽装の類型は、産地偽装期限表示偽装の2つに大別される。

偽装表示と不当表示

偽装表示とは、主に意図的に虚偽の商品情報を表示した場合であり、不当表示とは意図的か否かにかかわらず、虚偽表示もしくは虚偽ではないものの不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示である。すなわち、偽装表示は不当表示に内包される概念である。

しかし、前述の偽装表示と不適正表示同様に、近年では、両者が混同されて使用されることが多々見受けられる。分かり易い例としては、2段下の「期限表示偽装の構造」の項を参照。「故意ではないとしても偽装表示を行ってしまう~」との記載がある。

なお、国際的には、英語で「偽装表示」は「false labelling (-ll-)」、「不当表示」は「false description」もしくは「false advertising」と表現されることが多い。

産地偽装

昨今の現実的な発生件数から言えば、「産地偽装」が偽装表示のほとんどの場合を占めている[要出典]が、これに関しては詳述が必要とされるため、本記事では産地偽装表示以外の、消費期限偽装危険情報隠蔽などについて述べていく。

産地偽装については別項を参照されたい。

期限表示偽装の構造

売れ残りを再び販売したり、安く仕入れた材料を高い材料と偽って売ることによって、利益を得るために行われる。

また、製造・販売を行う業者がJAS法などの法律知識が不十分な場合、故意ではないとしても偽装表示を行ってしまう場合もある[1]

他には、消費者が期限表示(消費期限/賞味期限)に過剰反応し、少しでも期限が古くなると見向きもしないため、本来であれば日持ちする期限以前に期限表示を設定せざるを得ず、本来なら日持ちする範囲だからと期限を再設定してしまうことが、業者のモラル低下を招いているという指摘もある[1]

危険情報隠蔽の構造

自社で製造・販売している製品(この場合、食品でないことが多い)を、そのまま使用すると爆発など危険な事故を招きかねないと、製品を設計した技術陣があとから気がついても、すでに製品が市場に出回っており、いまさらリコールするとしても多大な告知宣伝費がかかり、しかも、使用中の消費者全員に告知がゆきわたるかどうかわからず、ゆきわたって回収したとしても背負い込む経済的損失は莫大であるとして、結局リコールは行なわない、といった場合がある。

また、リコールを小規模で内々に行なっていても、その情報を一般公開したときに発生する経済的損失を考慮して、そのままリコール隠しのかたちを取るものもある。

事故発生率が些少である場合は、そのまま知らん振りをしても追求される恐れがないとして、そもそも危険情報を外部にもらさないといったケースも見受けられる。

発覚の構造

本来は企業内部の者だけが知りうる、こうした偽装問題を一般に知らしめられるのに、最も確実性の高いのが内部告発による発表である。国際的には、英語でwhistleblowerと呼ばれる。
内部告発は身近な癒着を排して公益を守るため社会正義を貫く勇気ある行動であり、本来、推奨されこそすれ、非難されるべきではない。

しかし、実際には企業の利潤追求的な閉鎖世界の中で、このような内部告発の声を事前に抹消しようとする動きが起こるのが通例である。さらに守秘義務違反の問題がからんで内部の人間としては言えなくなることもある。

また、内部告発がなされた後も、告発された企業のライバル企業にとっては自分のほうにビジネスチャンスが到来すると考えるのが順当のはずだが、ライバル企業も告発された企業と何らかの癒着関係にあったり、連鎖的に暴露されるのを恐れている場合、告発された企業といっしょになって内部告発者を弾圧したり疎外したりするケースも見られる(参照:雪印食品牛肉偽装事件西宮冷蔵)。

上記のような諸要因から、なかなかスムーズに内部告発がなされず、それゆえ発覚も遅れるというのが現状である。

内部告発者の保護

内部告発した人間に対する、企業内部もしくは関係者による陰湿な報復やいじめも、深刻な問題となっている。企業風土のもとでは、内部告発は「和を乱すもの」とみなされ、いったん社内の違法・不正が外部に漏れると、「犯人探し」が始まり、勇気をもって告発した社員がしばしば解雇されたり、不当な処分を受けたりする。

日本においては、かつては原子炉等規制法で内部告発者を保護する規定くらいしかなかったが、2005年に公益通報者保護法が制定され、内部告発者を守る公益通報者保護制度が導入されている[1]

イギリスにおいては、内部告発者を保護する公益開示法(1998年制定、99年施行)があり、法令遵守義務違反誤審、健康・安全への加害、環境破壊、不正の隠蔽等に関して、従業員が雇い主や監督機関に内部告発を行った場合、従業員を解雇や損害賠償から保護することを定めている。

アメリカにおいては、州レベルで類似の制度が導入されている。

影響

対応を誤ると販売元の企業が倒産したり、地域ブランドなど偽装表示を行っていた商品に関連する商品の売り上げが落ちたりする。

法的な扱い

個々のケースは別々であるが、主に不正競争防止法食品衛生法消費者契約法などに違反することになる。法令によっては罰則があるほか、まれに刑法詐欺罪が適用されることもある。

偽装表示事件の歴史

産地偽装事件を除く。

三菱自動車リコール隠し発覚事件
2000年。三菱自動車
ミスタードーナツ無認可食品添加物肉まん事件
2000年。大手清掃用品レンタル業「ダスキン」(大阪府吹田市)が運営するミスタードーナツが無認可の食品添加物(酸化防止剤t-ブチルヒドロキノン:通称TBHQ)を使った肉まんを、2000年10月から販売していた事件で、大阪府警はダスキン本社と近くのミスタードーナツ本部の2か所を食品衛生法違反容疑で捜索した。2000年11月30日に社内で問題が発覚した後も、製造元の中国の工場から、問題の肉まんの在庫約66万個が出荷され、近畿を中心に販売されていたことが関係者の証言でわかっている。製造を委託された金沢市内の業者側は、読売新聞の取材に「指示がない限り、供給を滞らせるわけにはいかなかった」と話しており、関係者によると、問題の肉まんは、金沢市内の業者から再委託された大阪市内の業者の中国現地法人経営の工場で製造されたものであった。
不二家シュークリーム賞味期限切れ事件
2005年。不二家が、賞味期限切れのシュークリームなどを販売。株式会社不二家埼玉工場及び泉佐野工場で製造されたプリン及びシュークリームに、社内基準を1~2日超える消費期限を表示して、プリンについては2005年10月27日から2006年12月25日までの間約10万個を、シュークリームについては2005年7月10日および11日に約19,000個を、また同社の埼玉県新座工場でシュークリームを製造する際にはすでに消費期限が切れた牛乳を使用していた。
このことは、2005年11月までに社内プロジェクトチームの調査によって判明していたが、不二家では「マスコミに知られたら雪印乳業雪印集団食中毒事件)の二の舞になる」として、隠蔽(いんぺい)を指示する内部文書を配布し、自らは公表しなかった。
石屋製菓白い恋人賞味期限改竄事件
2007年。「白い恋人」の賞味期限改ざん問題で、製造元の石屋製菓は8月22日、ミルフィーユ菓子の「美冬」やチョコレート、クッキー、パイ菓子など別の5商品でも返品された商品の賞味期限を改ざんしたり、あらかじめ設定した期限を偽装したりして出荷していたことが社内調査の結果で明らかにされた。これら5商品の偽装方法は、バレンタインデーが終わって返品された商品を2007年4月に、賞味期限を約2ヶ月延長して包装をしなおして、再出荷していた。また、「オレンジコンフィ」260個と「鳴子パイ」253個も包装しなおして再出荷。「美冬」は2006年5月に、ダンボール250箱分について、社内規定から45日後と決められた賞味期限を10日ほど延ばしていた。
赤福製造日・消費期限不正表示事件
伊勢の名物として知られる赤福からは、2007年10月12日に消費期限改竄問題が発覚した。
赤福の場合、配送して残ったり、余分に製造した商品を冷凍保存し、必要に応じて解凍して再包装し、新たな製造日を印字し、34年間もの長きにわたりそのような形で出荷調整を続けてきたものであった。同じように冷凍し、安全面では違いのない商品でも、包装する前か後という基準が偽装の白黒を別けている現実が浮き彫りとなった。 しかし、赤福は無借金経営で知られており、内部留保は200億円強とされている。したがって、その後の急激な経営悪化にはならなかった。なお、赤福は10年前に三重県に対して、「この手法で偽装表示にはならないか」を問うたところ「商品衛生上問題ない」という容認を受けていたことを明らかにした。

関連項目

脚注

  1. ^ a b 『お菓子の違法表示問題、水面下で「鮮度にこだわりすぎ」の声』2008年2月6日付配信 日経ビジネスオンライン