伊豆箱根鉄道7000系電車

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伊豆箱根鉄道7000系電車
7000系
三島田町駅・2007年11月撮影)
基本情報
製造所 東急車輛製造新潟鐵工所
主要諸元
編成 3両編成(MT比2:1)
軌間 1,067
電気方式 直流1,500V
最高運転速度 100
設計最高速度 120
起動加速度 高加速SW未投入時2.4km/h/s
高加速SW投入時[1]3.0
減速度(常用) 3.5
減速度(非常) 4.0
編成定員 389名(座席176名)
車両定員 130名(座席56名)※Mc・Tc
129名(座席64名)※M
車両重量 39t (Mc・M) / 29t (Tc)
編成重量 107t
全長 20,000
全幅 2,950
全高 4,183
台車 住友金属工業FS542N(Mc・M車)
         FS042N(Tc車)
主電動機 直巻電動機
日立製作所HS22535-08RB
主電動機出力 120 kW / 個
駆動方式 中実軸撓み板継手式平行カルダン
歯車比 15:84=1:5.60
編成出力 960kw
制御装置 発電制動併用抵抗制御
三菱電機ABFM-168-15MDHC
制動装置 発電制動併用電気指令式空気制動
(HRD-1D)
保安装置 伊豆箱根式ATS
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伊豆箱根鉄道7000系電車(いずはこねてつどう7000けいでんしゃ)は、伊豆箱根鉄道駿豆線用の電車である。1991年平成3年)と翌1992年(平成4年)に各1編成が新製された。

概要

老朽化した1000系の代替[2]と所有車両の新性能化と冷房車比率向上と、および快速列車(一部座席指定席制)の増発目的と、当時、東海旅客鉄道(JR東海)東海道本線熱海沼津富士等への直通運転が社内で計画されたことにより新製されたもので、3両編成2本が在籍する。

上記の通り、直通運転が検討されていたことから、本系列の設計に際してそれらが色濃く反映された点が特徴である。ただしJRへの直通運転は2012年現在に至るまで実現しておらず、後述の通り一部の乗り入れ対策機器については既に撤去されている。

製造会社

製造は3000系および5000系と同様、東急車輛製造が担当したが、実際は東急車輛の委託で新潟鐵工所が製造した[3]

車両概説

外観

車体寸法等は3000系ステンレス車を基本としているが、前面デザインについては中間部で「く」の字型に折れて後退角が設けられたことで同系とは印象が大きく異なる。前面窓は支柱のない大型一枚ガラスを採用し、前面窓下には一体型ケースに収められた前照灯後部標識灯を配置し、前面窓上部内側には行先表示幕[4]のほか種別表示幕と列車番号表示器が配置された。また、前面下部には小型スカート(排障器)が設置されている。

側面見付については、本系列の運用目的を反映し先頭車と中間車では全く異なる仕様とされている。先頭車は従来車同様の片側3扉構造であるが、後述座席配置の関係から、窓配置は従来車とは大きく異なり、当時JR東海において増備中であった311系と同一とされた。中間車については、快速運用の際に指定席車両として使用することを考慮し、JR213系サハ213形に酷似した片側2扉構造とされ、乗降性を考慮し客用扉幅は先頭車の1,300mmに対し1,400mmと100mm拡大されている。また、伊豆箱根鉄道では初採用となる側面行先種別表示幕が全車に設置された。

なお、車体の配色は3000系ステンレス車と共通であり、ステンレス地に「ライオンズブルー」と称する青帯を巻いている。

主要機器

主制御装置は三菱電機製電動カム軸式抵抗制御装置ABFM-168-15MDHCと3000系二次形と同じ物を使用しているが、主電動機は、駆動方式がそれまでの3000系、5000系で採用された同社標準の中空軸平行カルダン駆動方式ではなく、静粛性の向上と保守の軽減を図るため同社初のTD平行カルダン駆動方式を採用した事に伴い、TDカルダン駆動対応である日立製作所製HS22535-08RBを搭載した。主電動機の定格出力は3000系と同一(端子電圧375V時:120kw)であるものの歯車比が異なり、本系列では15:84=1:5.60と若干高速寄りの設定とされている[5]

パンタグラフ東洋電機製造製PT48系で、伊豆箱根鉄道における下枠交差型パンタグラフの初採用例となった。制動装置はナブコ(現:ナブテスコ)製の発電制動併用電気指令式空気制動 (HRD-1D) である。
補助電源装置は三相交流440V 120kVAの静止型インバータ(SIV)、空気圧縮機はHS-20形(容量:2000l/min)と言う様に3000系二次型と同じ物を搭載している。

台車は電動車が住友金属工業緩衝ゴム式空気バネ台車FS542N、制御車が同FS042Nを装備する。これは1989年頃から西武新2000系で実用試験が行われていた緩衝ゴム式台車FS542・FS542Aを同社向けに改良したもので、型式末尾の「N」は3000系・5000系が装備するFS372N・FS072N台車と同様、伊豆箱根鉄道向け製品であることを示す。軸箱支持装置以外の形状はFS372系台車とほぼ同一であり、台車枠以上の部品については互換性を有する。なお、FS542系台車は後年西武10000系にも採用されている。

運転台機器は前述直通運転を考慮し、3000系で採用されたワンハンドル式ではなく、JR211系と同一配置の縦横軸併用ツインレバー式が採用された。先頭車の屋根部にはJR列車無線アンテナ取付座が準備され、保安装置もJR東海のATS-STとの切替が可能なものを搭載している。新製当初は運転室内にATS切替スイッチも装備していたが、後に撤去された。

内装

先頭車の車内 中間車の車内
先頭車の車内
中間車の車内

座席配置は、直通運転や快速運用での快適性を考慮し、伊豆箱根鉄道初のオールクロスシート仕様とされた。客用扉間には転換クロスシート[6]、車端部にはボックスシートがそれぞれ設置されている。

座席モケット色は、第1編成の先頭車はベージュ系、中間車は従来車と同様の赤系統のものを採用した。第2編成では先頭車・中間車とも赤・黒・グレーの3色をランダムに配している。座面形状はバケットタイプで、座席の前後間隔(シートピッチ)は910mmであり、中間車の車端部はこれより広くなっている。

中間車は連結面に貫通扉を設置し、前述のように快速運用時の指定席車両としての用途を考慮し、貫通扉窓部分に「座席指定車」の表記が加えられた。また、全車とも側窓ロールカーテンカバー部に座席番号が表示されている。

なお、第2編成では前述シートモケットの差異に加え、戸袋窓部のカーテン省略、荷棚の変更(金網構造からパイプ構造へ)、先頭車の運転室仕切上部と各車両の連結面上部にLED式車内案内表示器を新設する等の改良が施されている。

2010年10月に2編成とも3000系新幹線700系などで使われている音色のドアチャイムが設置された。これにより、予備車の1100系を除く全ての編成へのドアチャイム設置が完了した。

入線後の経緯

数々の新機軸を取り入れ、駿豆線における次世代の代表車両となるべく登場した本系列であったが、直通運転構想が具体的進展を見なかったことや指定席需要が伸び悩んだこと、オールクロスシート仕様ゆえに乗降に不便をきたしたこと等の理由から増備は2編成で打ち切られ、以降の車両増備は再び3000系の新製によって行われることとなった。

運行開始当初は主に快速列車運用に就いていたが、1998年(平成10年)3月の快速廃止後は他形式と区別されることなく普通列車運用に就いている。なお、快速廃止と同時に指定席も廃止されたものの、中間車に設置されていた「座席指定車」表記は後年まで残されていたが、モハ7301は2007年(平成19年)に、モハ7302は2008年(平成20年)にそれぞれ貫通扉ごと撤去されている。また、2007年(平成19年)には全車の客用扉付近につり革が新設され、2008年に各車両の各ドアには車両・ドア位置案内プレートが、各車両の車端部(外側も含む)には号車表記が貼付けられた。号車表記は修善寺側から1号車・2号車・3号車となっている。

その後、駿豆線におけるワンマン運転導入計画が具体化したことに伴い、2008年(平成20年)10月までに全編成の運転台にワンマン・ツーマン切替スイッチ、戸閉め放送スイッチが新設された。2009年(平成21年)4月1日より駅収受方式によるワンマン運転が開始され、同日より運転台の右側に「ワンマン」表記プレートが設置されている。

その他特筆事項

2009年(平成21年)6月24日から8月21日にかけて、沿線自治体(三島市函南町伊豆の国市伊豆市)で開催される花火大会をPRするヘッドマークを2編成とも装着した。第2編成ではそれらに加えて客用扉部および戸袋部へのラッピングや、中吊り広告を専用のものにするなどの装飾が加えられた。

上記イベント終了後、第2編成先頭車戸袋部にグループ全体での『エコ活動推進』をPRするステッカーの貼付が行われた(すでに終了)。また、同年12月12日より伊豆の国市で開催されるいちご狩りをPRするヘッドマークを装着して運行された。現在は、客用扉にセブンティーンアイスのラッピング広告が施されている。また、中吊り広告が、一日乗車券旅助(たびだすけ)』や伊豆・三津シーパラダイスなどの、自社のピーアール広告に変更されている。

一方、第1編成は、2009年(平成21年)10月12日から2010年(平成22年)3月31日まで、駿豆線沿線に近在する静岡県立大仁高等学校の90年の歴史を振り返るラッピング電車『大仁高アルバム電車』として運行された[7]。同校のシンボルマークをあしらったヘッドマークを装着し、客用扉部にも同シンボルマークがラッピング装飾された。戸袋窓部には同校卒業生の描いた絵や撮影した写真が飾られ、中吊り広告部分には同校の90年の歴史を刻んだ写真が展示された。4月に伊豆総合高校が開校したあとこの設備は撤去され(原型に復元)、同月下旬から、客用扉と戸袋窓部に『朝日テレビカルチャー』のラッピング広告が施されていたが、2011年(平成23年)6月に施工された全般検査の際に撤去(契約期間満了のため)された(原型に復元)。この全般検査の時に正面の種別表示器と列車番号表示器が撤去され、正面と側面の方向幕が英字併記のものに交換された。[要出典]

編成・車歴

主要機器凡例
  • CONT:主制御器
  • SIV:静止形インバータ
  • CP:空気圧縮機
伊豆箱根鉄道7000系 編成表
 
三島
形式 クモハ7100形
(Mc)
モハ7300形
(M')
クハ7500形
(Tc)
機器配置 SIV CP CONT  
編成 車番 竣工年月
第1編成 クモハ7101-モハ7301-クハ7501 1991年(平成3年)3月
第2編成 クモハ7102-モハ7302-クハ7502 1992年(平成4年)3月

脚注

  1. ^ 通常2.4km/h/s(低加速側)に設定されている。
  2. ^ 1000系自社オリジナル車のうち、新性能化されることなく吊り掛け駆動のまま残存していた第1編成・第2編成がその対象となった。
  3. ^ 第1編成 1990年度甲種鉄道車輛輸送 輸送番号:甲271 1991年2月17日東新潟港駅14:54発 2月18日逗子駅12:18着 荷送者:新潟鐵工所 荷受者:東急車輛製造。1991年度甲種鉄道車輛輸送 輸送番号:甲8 1991年3月12日逗子駅14:09発 3月13日三島駅13:41着 荷送者:東急車輛製造 荷受者:伊豆箱根鉄道。 第2編成 1992年度甲種鉄道車両輸送 輸送番号:甲13 1992年3月22日東新潟港駅10:48発 3月23日三島駅13:14着 荷送者:新潟鐵工所 荷受者:伊豆箱根鉄道。
  4. ^ 前述JR線への直通運転計画を反映し、自社線内の行先表示に加えて「熱海」「沼津」「富士」表示も用意されているが、第1編成は2011年(平成23年)の全般検査時に、この3駅は削除されている。[要出典]
  5. ^ 3000系は86:15=5.73
  6. ^ ただし、客用扉付近のシートは固定式とされている。なお、京急2100形などに見られる自動転換装置は設置されていない。
  7. ^ 同校が2009年度限りで静岡県立修善寺工業高等学校と統合され、静岡県立伊豆総合高等学校に改変・消滅することに伴って実施された。