京成3600形電車

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京成3600形電車
京成3600形
(2015年1月 / 宗吾参道~酒々井)
基本情報
製造所 東急車輛製造日本車輌製造
主要諸元
編成 8両編成(界磁チョッパ車)
6両編成(VVVF車)
軌間 1,435
電気方式 直流1,500V(架空電車線方式)
最高運転速度 105
設計最高速度 8両編成 110 km/h
6両編成 120
起動加速度 8両編成 3.3 km/h/s
6両編成 3.5
減速度(常用) 4.0
減速度(非常) 4.5
車両定員 先頭車140(座席50)人
中間車140(座席54)人
・6両編成は全車128(座席50)人
自重 ・8両編成
電動車33.0t・制御車28.0t
・6両編成
電動車35.0t・付随車27.0/31.0t
編成重量 8両編成:254.0t
6両編成:198.0t
全長 18,000
全幅 2,760
全高 3,969mm
パンタグラフ付き車両4,050
台車 ・S形ミンデン台車
FS513形・FS013形・FS013A形
・SUミンデン式台車(6両編成電動車)
FS562形
主電動機 直流複巻電動機 140kW
かご形三相誘導電動機 130kW
駆動方式 6両編成:TD平行カルダン駆動方式
8両編成:WN平行カルダン駆動方式
歯車比 界磁チョッパ車 84:16(5.25)
VVVF車 85:14(6.07)
編成出力 8両編成 3,360kW
6両編成 2,080kW 
制御装置 界磁チョッパ制御
GTO-VVVFインバータ制御
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
保安装置 C-ATS
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京成3600形電車(けいせい3600がたでんしゃ)は、1982年昭和57年)から導入された京成電鉄通勤形電車

本稿では2013年3月末まで芝山鉄道リースされていた芝山鉄道3600形電車についても記述する。

概要

輸送力増強および青電形式の210形700形の置き換えを目的に、1982年6月から1989年平成元年)7月にかけて6両編成9本の計54両が製造された[要出典]

本形式の第1編成となる3608以下の編成は東急車輛製造(現・総合車両製作所)で落成し、1982年(昭和57年)6月7日・翌8日に東急車輛から3050形を牽引車として京急線から東京都交通局都営地下鉄浅草線を経由して高砂検車区に搬入された[1] 。その後乗務員訓練等を経た同年7月17日土曜日から営業運転を開始した(当時の1132列車・京成高砂発京成上野行き普通列車より)[1]

当初は京成線内の運用のみで、都営地下鉄浅草線への乗り入れは行わなかった[1]。その後、都営地下鉄浅草線への乗り入れは4年半後となる1987年(昭和62年)1月26日より開始された[1]。なお、本形式は京成通勤車としても都営浅草線を営業運転で走行する車両としても初めての界磁チョッパ制御方式やT形ワンハンドル式のマスター・コントローラーの車両となった(ただし3608編成は落成から暫くは浅草線入線は見送られ、自社線限定での運用だった)[1]

落成当時の編成表
 
第1編成(3608編成) クハ3601 モハ3602 モハ3603 モハ3606 モハ3607 クハ3608
第2編成(3618編成) クハ3611 モハ3612 モハ3613 モハ3616 モハ3617 クハ3618
第9編成(3688編成) クハ3681 モハ3682 モハ3683 モハ3686 モハ3687 クハ3688

車両番号の付番は、成田空港方から第1編成がクハ3601 - モハ3602 - モハ3603 - モハ3606 - モハ3607 - クハ3608、第2編成がクハ3611 - モハ3612 - モハ3613 - モハ3616 - モハ3617 - クハ3618であり、中間4両は2両ずつユニットを構成する電動車である。末尾4と5は将来の8両固定編成時を考慮して、末尾9と0は各編成の末尾番号を揃えるために欠番とされた。京成に限らず都営地下鉄浅草線に乗り入れる各鉄道事業者では上野・押上・西馬込・品川方先頭車の車両番号で編成名を呼称することが多く、第1編成は「3608編成」、第2編成は「3618編成」のように呼称される。製造メーカーは3618・3638・3648・3688編成が日本車輌製造、それ以外はすべて東急車輛製造である。後者は東急8000系8500系と同様に台車付近に凹凸のステンレス板(つりあい梁)が露出しているほか、屋根コルゲートの段差が目立っている。

車体は、実用化されつつあった軽量オールステンレス構造を京成で初めて採用した。3500形同様、前面ならびに側面窓上下にファイアーオレンジの帯を配していたが、1991年11月に3668編成、1992年9月から1993年3月にかけて3608 - 3638編成で側面窓上部の帯をファイアーオレンジからブルーに変更。さらに、1993年9月に3648編成で前面・側面窓下帯をファイアーオレンジからレッドとブルーに変更し、1995年6月までに全編成の変更が完了した。なお、当初は側面部分の帯が省略されていたが、塗装変更時に帯を貼付している。側面戸袋部には筆記字体Keiseiロゴを表記したプレートを取り付けている。 2001年3月には、京成グループのCI導入に伴い、全車両の側面にK'SEI GROUPロゴを貼付した。

外観デザインは、基本的に3500形に準じている。

  • 前面が切妻から3面折妻になった。
  • 前面の前照灯尾灯が横並びになり、合わせて急行灯を左右上部に配置し、尾灯・急行灯の視認性が向上した。
  • 前面貫通扉部分に種別表示器を配置し、前面上部中央の表示器は行先のみとした。行先表示器は3500形までの20コマタイプから40コマタイプになった。なお、前面・側面の種別表示幕は2002年10月12日の種別変更によるダイヤ改正に対応させるため、同年7月から9月にかけて全車両の交換を行った。普通=黒、快速=ピンク、特急=赤など各種別ごとに色分けし、前面字幕は白地に種別色文字・側面字幕は種別色地に白文字となった。文字の書体は細ゴシック体ナール小文字併用英字併記タイプとなった。その後2010年7月17日の成田スカイアクセス線開業に伴うダイヤ改正で再度交換され、前面字幕が側面字幕と同じ種別色地に白文字になり快特快速特急=緑に変更と通勤特急の色地変更を行なった(現在の通勤特急は水色の色地でそれまではオレンジだった。現在のオレンジ色地はアクセス特急が使用されている)。
  • 前面向かって左側の窓上に幕式の運行番号表示器を設けているが、2003年8月から2004年9月にかけて、芝山鉄道へのリース編成を含めてLED式に交換している。この際に、列車無線切り替え器に搭載されている非常発報装置が「発報弱め」スイッチ付きに交換された。
  • 客室側窓は1枚下降式になり、窓配置もドア間・車端部とも2枚となった。車端側の窓のみ幅が狭い独特のスタイルとなっている。

前面レイアウトは、1983年(昭和58年)春以降の3150形3200形3300形の更新でも引き継がれた。

室内のカラースキームなどは基本的に3500形に準じているが、天井部のホワイトデコラが荷棚上まで貼られたことや、先頭車乗務員室前の扇風機を廃止したことなどの相違点もある。この形式より車両間の貫通路はすべて狭幅となり、各車両の上野方に貫通扉を設置した。


車内の写真
クハ3638の台車

主制御器は、AE形で実績のある東洋電機製造製界磁チョッパ制御ACRF-H8140-783A(直列15段、並列8段、弱め界磁無段階)を京成の通勤車としては初めて採用した。モーターは140kWと出力の高い補償巻線付複巻電動機が採用され、各編成の車両番号の末尾2と3は東洋製TDK-8500B、末尾6と7は三菱電機製MB-3276-ACで、両者は同一設計であり京成での社内制式名称はKMM8500(出力140kW、端子電圧375V、定格電流415A、分巻界磁電流23A、最弱め界磁率15%、定格回転数1,450rpm)である。駆動装置はWNカルダンとされた。雑誌等で‘3600形は末尾2と3がTDカルダン‘ と記載されていることが多いが、3500形・3600形界磁チョッパ車とAE形は全てWNカルダンを採用している。補助電源装置は電動発電機 (MG) に代わって静止形インバータ (SIV) が初めて採用され、空気圧縮機 (CP) とともに各編成の末尾3と7に配置された。台車はモハがFS-513、クハがFS-013である。

集電装置は下枠交差式パンタグラフで、各編成の末尾2と6に2台設置された。冷房装置は、末尾2と6の車両にCU-15C(10500kcal/h・12.2kW)を3台、それ以外の車両にCU-15B(8500kcal/h・9.88kW)を4台搭載している。

以下に落成時期毎の相違点を記す。

  • 1986年(昭和61年)6月落成の3628編成から、網棚を樹脂パイプからステンレスパイプに変更、また室内照明で1両あたり4基の充電式予備蛍光灯(停電時の)を設置する代わりに予備白熱灯を廃止した[2]。後につり革増設試験が行われたため、他編成との差異が目立っている。
  • 1987年(昭和62年)6月落成の3638編成から、同年春の3200形モハ3268・モハ3265の更新時に試用された電子警報器を本格的に採用。後に3618編成も変更された(1994年11月施工)。
  • 1988年(昭和63年)1月落成の3648編成より側灯と尾灯がLED化され、客室内の客用扉上部は手をつかめるような構造とされた。
  • 1988年3月落成の3668編成では、空気圧縮機を従来の直流電源のC-2000-Mに代わり、旧・日本国有鉄道201系などで実績のある交流電源のAC-2000-Mを試用し、翌1989年6 - 7月落成の3678・3688編成で本採用された。
  • 1989年6月落成の3678編成から選択扉開閉装置が搭載された。この機能は、既存編成にも追設されている。

8両編成化に伴う編成変更

優等列車の8両編成化促進を目的に、1997年(平成9年)から本形式の8両編成化が行われた。6両編成3本をばらして他の6両編成に電動車ユニットを組み込むことで8両編成を組成、余剰となった制御車のうちの4両をVVVFインバータ制御方式で電装化して新たに6両編成を組成した。これにより、界磁チョッパ制御の8両編成6本とVVVFインバータ制御の6両編成1本という構成になった。この際に8両編成車は上野方から3両目に弱冷房車を設定して、車両にシールが貼られた。

界磁チョッパ編成

  • 1997年6月に、3638・3648編成に3628編成の中間電動車ユニットを各々挟むことにより、以下の8両固定編成を組成した。この際に、モハ3636とモハ3646の成田側のパンタグラフが撤去された。
← 上野・押上
成田空港 →
休車扱い
クハ3638 モハ3627 モハ3626 モハ3637 モハ3636 モハ3633 モハ3632 クハ3631 クハ3621、クハ3628
クハ3648 モハ3623 モハ3622 モハ3647 モハ3646 モハ3643 モハ3642 クハ3641
  • 1998年12月に、3678・3688編成に3668編成の中間電動車ユニットを各々挟むことにより、以下の8両固定編成を組成した。この際に、モハ3666とモハ3662の成田側のパンタグラフが撤去された。
← 上野・押上
成田空港 →
休車扱い
クハ3678 モハ3677 モハ3676 モハ3667 モハ3666 モハ3673 モハ3672 クハ3671 クハ3661、クハ3668
クハ3688 モハ3687 モハ3686 モハ3663 モハ3662 モハ3683 モハ3682 クハ3681
  • 1999年9月に、3618・3658編成に3608編成の中間電動車ユニットを各々挟むことにより、以下の8両固定編成を組成した。この際に、モハ3606とモハ3602の成田側のパンタグラフが撤去された。
← 上野・押上
成田空港 →
休車扱い
クハ3618 モハ3617 モハ3616 モハ3607 モハ3606 モハ3613 モハ3612 クハ3611 クハ3601、クハ3608
クハ3658 モハ3657 モハ3656 モハ3603 モハ3602 モハ3653 モハ3652 クハ3651
  • 2000年9月に、京成本線鬼越駅付近にて3648編成が踏切上で自動車との衝突事故に遭い、モハ3643-モハ3642ユニットは復旧作業のため休車とされた。その後2001年3月に復帰して元の8両固定編成に戻すまで、以下の暫定6両固定編成で営業運用に入った。暫定編成時のみモハ3646に一旦撤去した箇所にパンタグラフを搭載した。
← 上野・押上
成田空港 →
クハ3648 モハ3623 モハ3622 モハ3647 モハ3646 クハ3641
  • 2002年1月に3618編成が定期検査に入った際、モハ3607-モハ3606の台車に不具合が発見された。復旧作業が終わるまでの間、3618編成は落成時の6両編成で運用され、2002年8月下旬に本来の8両固定編成に戻った。
  • 上記の6両編成運用時は、(8両編成に設定されている)上野方3両目に設定されている弱冷房車シールははがされていた。

VVVFインバータ制御編成

VVVFインバータ制御編成(京成高砂)
  • 余剰で休車扱いとなっていた制御車のクハ3621・クハ3628・クハ3661・クハ3668を1999年2月に電動車化し、暫定的に以下の4両編成を組んで営業運転を再開した[3]。4両編成ということで金町線でも運用された。
← 上野・押上
成田空港 →
モハ3668 モハ3621 モハ3628 モハ3661
  • 制御装置は、東洋電機製造製GTO素子使用のVVVFインバータRG633-A-Mをモハ3628とモハ3668に搭載した。主電動機はTDK-6170-Aかご形三相誘導電動機(社内制式名称KMM6170,出力130kW)、駆動装置はTDカルダン、台車はFS-562形で、これら電装品は3700形と同一のものを用いている[4]。パンタグラフは8連化の際に撤去した余剰品を流用の上でモハ3628とモハ3668に搭載したが、設置スペースを捻出するために連結面側のクーラーを1台撤去し、残りの3台もCU-15BからCU-15Cに変更している。電動発電機と空気圧縮機は廃車になった3100形・3150形の流用品で、ともにモハ3621とモハ3661に搭載された。電動発電機は容量75kVAタイプのCL-355-B1、空気圧縮機はAC-1000という組み合わせは3200形・3300形と同じである。
  • 1999年8月には3668編成にクハ3601・クハ3608を中間車化した上で組み込み、以下の6両編成を組成した。
← 上野・押上
成田空港 →
モハ3668 モハ3621 サハ3608 サハ3601 モハ3628 モハ3661
  • サハ3608にパンタグラフを搭載した。クーラー関係はモハ3628・モハ3668と同じである。電動発電機と空気圧縮機は3150形の廃車発生品をサハ3601に搭載した。空気圧縮機は在庫の関係上、直流電源のC-1000であったが、2000年6月に交流電源のAC-1000に交換された。台車は一部改造され、FS-013A形となった。

リース

芝山鉄道にリースされた3618編成
(2007年3月 / 京成立石駅)

3618編成は、2002年10月に帯色変更(芝山鉄道のイメージカラーである赤と緑のカラー帯に変更[5])とKeiseiロゴプレートの上から芝山鉄道の社名貼り付けなどを行った上で、芝山鉄道にリースされた。カラー帯は赤色は太陽を、緑色は芝山の緑の大地(緑色は芝山町の色でもある)をイメージしたものである[5]

運用は京成の車両と共通運用となっていた。8両編成のため、自社を走るのは朝夕に限定される[6]。また、北総鉄道にリースされた7260形7300形7808編成と異なり、車内の路線図、中吊り広告は引き続き京成車と同じものになっていた。

2013年4月より、リース車両が3500形3540編成に変更されることになり、2013年3月末をもって芝山鉄道へのリースは終了した[7]。その後は京成電鉄に返却され、芝山鉄道の社章や社名などが外されたが、帯色はそのままで運用に就いていた[8]。しかし、後の2013年12月に宗吾工場を出場した際、従来のレッドとブルーの帯色に戻された[8]

運用

8両編成は先頭車が制御車であることから都営浅草線押上 - 西馬込間は入線可能だが、京急線には入線できない。また、北総線成田空港線(成田スカイアクセス)には対応しておらず、6両編成が最長である千葉線千原線や、4両編成に限定される金町線にもそれぞれ入線できないなど、運用が限定されている。そのため、本線京成上野 - 成田空港間の快速特急・特急運用や西馬込 - 京成佐倉間の快速運用に充当されることが多い。2010年7月17日ダイヤ改正以前は日中の快速は羽田空港発着であったため上野発着の特急運用中心であったが、同改正で日中の快速が西馬込発着に変更されてからは快速での運用も増えた。

6両編成は新3000形とともに普通運用が主体である。京急線乗り入れ運用は存在しないが、先頭車が電動車であることから京急線乗り入れが可能である。このため、東急車輛製造からの新車搬入の際には付随車を抜いた[9]全電動車編成の牽引車としても使用され、金沢八景まで入線したほか、改造直後の1999年には付随車が組み込まれるまで半年程金町線にも入線したことがある。

脚注

  1. ^ a b c d e 交友社「鉄道ファン」2000年4月号「京成3600形ショートヒストリー 明日を走る3600」記事。
  2. ^ これは1985年(昭和60年)夏以降進行していた3200形の更新でも実績があった。
  3. ^ 鉄道ジャーナル』第33巻第5号、鉄道ジャーナル社、1999年4月、91頁。 
  4. ^ 鉄道ピクトリアル2007年3月臨時増刊号より
  5. ^ a b 日本鉄道運転協会「運転協会誌」2003年1月号ニュース 芝山鉄道「芝山から都心へ芝山鉄道開業」記事。
  6. ^ 日中は4両もしくは6両編成の運用のため。
  7. ^ 所属車両を変更します - 芝山鉄道ホームページお知らせ 2013年3月28日
  8. ^ a b 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」2014年4月号Topic Photos「京成電鉄3611編成塗色変更」97頁記事。
  9. ^ 各中間車とも運転機器は残されているため、分割が容易である。

参考文献