予算委員会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Cewbot (会話 | 投稿記録) による 2020年12月25日 (金) 09:49個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (Bot作業依頼: 国民民主党関連のカテゴリ等の改名に伴う修正依頼 (国民民主党 (日本 2020)) - log)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

参議院予算委員会の審議(2007年10月15日国会議事堂にて)

予算委員会(よさんいいんかい)は、日本衆議院参議院における常任委員会の一つ。

概要

予算委員会の所管事項は端的に「予算」とだけ定められている(衆議院規則92条・参議院規則74条)。内閣が提出する予算案の審議を行うことが基本的な役割であるが、予算というものは一年間の国政の在り方を決めるものであり、また予算案の作成と予算の執行は内閣の責任の下で行われるため(日本国憲法第73条)、予算の内容に限らず、広くその執行主体である内閣の政策方針や行政各部の対応さらには閣僚の資質の問題などが問われることになり、結果として予算委員会では国政のあらゆる重要事項についての審議が行われる。実際、予算委員会の審議を通じてこれらの事項について問題点が浮き彫りになることも多い。その反面、予算の内容とは直接的には関係がない議題が広汎に取り扱われることになると、予算内容そのものの審議時間が少なくなるため、より予算内容についての審議を充実させるべきではないかという議論もある[1]

予算委員会は本会議党首討論と並んで国会審議の「花形」として広く認識されており[1]、他の委員会に比べテレビ中継やネット配信が行われる機会が多い。予算案を審議するために全ての閣僚が出席する場合は、その同時間帯には他の全ての委員会は開会されない。また委員長は概ね閣僚級のポストと見なされており、閣僚経験者を充てることが多い。閣僚の席は財務大臣が総理の隣に座ることを固定されているが、鳩山由紀夫内閣野田改造内閣では副総理の役職が存在しており、副総理が財務大臣でなかったため財務大臣は副総理の隣の席に座ることとなる(内閣総理大臣→副総理→財務大臣となる)。また、中央省庁再編以降は官房長官が総理大臣の真後ろに就くことが多くなっている。

時期としては、通常国会前半の1~3月に本予算の審議として集中して開催されるのが一般的である。また、補正予算等の議決が必要な場合の他、特に予算の議決を経る必要がない場合でも「予算の執行状況に関する調査」といった名目で開催されることもある。

予算審議の流れ

本予算審議の流れは、基本的に以下のようになる。

衆議院には予算先議権が認められているため、予算案は、まず、通常国会の召集日に内閣から衆議院に提出され、予算委員会に付託される。本会議において、総理施政方針演説の際、財務大臣は財政演説を行い、その演説の中で予算の説明を行う。委員会では、財務大臣が趣旨説明を、財務副大臣が補足説明をそれぞれ行う。

そして、おおむね2~3日にわたり全閣僚が出席し、基本的質疑が行われる。この際は、各会派の質問が一巡するまでの間、NHKではNHK総合テレビジョン及びNHKラジオ第一放送にて、災害報道を除く全ての通常番組の放送を一切中止して国会中継が優先して放送されるため[2]野党の有力議員が質問に立つことが多い。首相を含めた全閣僚と与野党が直接対峙して論戦を交わす、国会の花形となっている。その後、委員による一般質疑が2週間程度に渡って行われる。

その間適宜、時の政治課題に関する集中審議として総理や担当閣僚出席のもと質疑が行われる。また国会法51条2項により開催が義務付けられている(中央・地方)公聴会も行われる。首相が出席する集中審議はNHKの国会中継が入るなど注目度が高く、また公聴会のうち特に中央公聴会は採決の前提と位置付けられているため、これらの日程を巡って与野党の攻防が展開される。公聴会は、1日半に渡り、各党が推薦する経済学者労働組合の代表、その他時の政治課題を反映した公述人が公述を行い、委員の質疑を受ける形で行われる。

時には、スキャンダル等が明らかになったことにより、それについて参考人招致や証人喚問が行われることもある。

予算審議も終盤になると、各省庁ごとに予算審議を行うため分科会での審議が行われる。通例、所管省庁ごとに最大8つの分科会が設けられ、約1日半にわたって行われる(分科会以降のプロセスではNHKの放送はないが、ネット配信は行う)。分科会と所管省庁は以下のとおり。

そして、最後に全閣僚出席のもとで締めくくり質疑が行われた上で、各党各会派の代表者が予算の賛否について意見を述べる討論を経て採決に付され、予算委員会での審議は終わる。衆院予算委での審議は、おおむね15日前後の審議日数で、のべ60~70時間となることが通例である。

本会議においても、予算委員長報告・各党各会派代表者による賛否についての討論を行った後、記名投票で採決が行われ、賛成多数であれば、予算が衆議院を通過する。3月2日までに衆議院を通過すると、憲法の規定により、参議院で議決が行われなくても年度内に自然成立することになり、ここでも審議日程の決定について与野党の攻防が行われる。

参議院においても、衆議院とほぼ同じような手続で審議が行われるが、趣旨説明は、衆議院通過前に予備審査として行われることが通例であり、参議院では分科会を設けず、各委員会に委嘱するという形で、各省庁別の予算の審議を行う。なお、参議院で衆議院と異なった議決をした場合、衆議院は両院協議会を求めなければならないが、協議が成立しないときは、衆議院の議決が国会の議決とされることとなっている。そのため、参議院で予算が否決されたことは数例存在するが、いずれの場合も協議が成立せず、予算は原案通り可決となっていることが通例である。なお、予算が4月4日まで成立しないと、各省庁の歳出に影響が生じることとなっているため、審議が終わらない場合は暫定予算が組まれることもある。有名な例としては1953年バカヤロー解散があり、次年度の予算が成立しないまま3月14日に衆議院が解散され、結局7月31日まで成立しなかったことから、4~5月分の暫定予算が組まれ、さらに暫定予算補正を組んで7月末まで暫定予算を延長した。

委員

予算委員会の員数は、衆議院が50人(衆議院規則92条)、参議院が45人である(参議院規則74条)。いずれも委員長1名、理事9名が選出または指名される。

事件・エピソード

※肩書きはすべて当時。

「バカヤロー」事件
1953年(昭和28年)の衆議院予算委員会にて、右派社会党議員の西村栄一の発言に怒りを感じた首相の吉田茂が「バカヤロー」と発言し、この後の衆議院本会議にて衆議院は解散された。
宮本顕治は「人殺し」事件
1988年(昭和63年)2月6日の衆議院予算委員会での質疑で、日本共産党議員の正森成二に「過激派の泳がせ政策」を肯定する自由民主党本部放火襲撃事件直後の発言を引用された浜田幸一委員長が、その発言を認めたうえで「我が党は旧来より、終戦直後より、殺人者である宮本顕治君を国政の中に参加せしめるような状況をつくり出したときから、日本共産党に対しては最大の懸念を持ち、最大の闘争理念を持ってまいりました」と主張。更に浜田とのやり取りを打ち切って大蔵大臣である宮澤喜一への為替介入に係る質問をしていた正森を突如遮り「昭和8年12月24日、宮本顕治ほか数名により、当時の財政部長小畑達夫を股間に……」「針金で絞め、リンチで殺した。このことだけは的確に申し上げておきますからね。いいですね。」「私が言っているのは、ミヤザワケンジ[注 1]君が人を殺したと言っただけじゃないですか。」等と不穏当発言を始め[11]、委員会は大荒れとなった(参照:日本共産党査問リンチ事件)。浜田はこの件で委員長を辞任した。

※その他、1990年代前半頃までTVやラジオの放送内容や世相について一言とりあげられる機会もしばしばあり、マスコミ業界では委員の発言に一喜一憂することも多かった。

YouTubeで質問募集
2019年令和元年)10月10日第200臨時国会会期中に行われた衆議院予算委員会での質疑で、YouTuberとしても活動する国民民主党代表の玉木雄一郎が、自身のYouTube個人チャンネルを利用し、視聴者からYouTubeコメント欄とTwitterにて質問を募集し(「全部は無理!」と断り付き)、それらを元に当日の質問を行った[12][13]。その後も不定期で同様の企画が行われている[14]
新型コロナウイルスによる変則日程
通常、1日に2度開催される事はないが、第201通常国会会期中の2020年(令和2年)4月29日は、新型コロナウイルスに伴う大規模経済対策を盛り込んだ2020年度第1時補正予算を4月30日までに成立させる必要性から、祝日返上の上、午前中に衆議院の予算委員会を行い、総務委員会財務金融委員会本会議を行って衆議院で可決させた後、午後に参議院の予算委員会を実施して予算成立の迅速化を図った。
また、改正・新型インフルエンザ等対策特別措置法32条による緊急事態宣言を延長した事に伴う集中審議も同様に、午前中に衆議院[15]、午後に参議院[16]の順で1日2度開催された。

脚注

注釈

  1. ^ 宮本顕治を宮沢賢治と言い間違えた。

出典

  1. ^ a b 【予算委員会】なのに、なぜ予算の話をしない? - YouTube たまきチャンネル 2020年3月14日
  2. ^ 並行して国会インターネット審議中継ニコニコ生放送YouTube Liveによるライブストリーミング配信も行う
  3. ^ 予算委員会第一分科会の会議録議事情報一覧 - 衆議院
  4. ^ 予算委員会第二分科会の会議録議事情報一覧 - 衆議院
  5. ^ 予算委員会第三分科会の会議録議事情報一覧 - 衆議院
  6. ^ 予算委員会第四分科会の会議録議事情報一覧 - 衆議院
  7. ^ 予算委員会第五分科会の会議録議事情報一覧 - 衆議院
  8. ^ 予算委員会第六分科会の会議録議事情報一覧 - 衆議院
  9. ^ 予算委員会第七分科会の会議録議事情報一覧 - 衆議院
  10. ^ 予算委員会第八分科会の会議録議事情報一覧 - 衆議院
  11. ^ 第112回国会 予算委員会 第7号議事録”. 国会会議録検索システム (1988年2月6日). 2017年9月30日閲覧。
  12. ^ 玉木代表がYouTubeで安倍首相への質問募集 - 日刊スポーツ 2019年10月4日
  13. ^ 【告知】政治を身近に。安倍総理に質問したいこと、募集! - YouTube たまきチャンネル 2019年10月4日
  14. ^ 【週刊たまき】6/1〜5のまとめ解説、来週6/8〜の注目する出来事は? - YouTube たまきチャンネル 2020年6月6日
  15. ^ 《緊急事態宣言延長受け集中審議》【国会中継】衆議院 予算委員会 ~令和2年 5月11日~ - ニコニコ生放送
  16. ^ 《緊急事態宣言延長受け集中審議》【国会中継】参議院 予算委員会 ~令和2年 5月11日~ - ニコニコ生放送

関連項目

外部リンク