乗り物酔い

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乗り物酔い
概要
診療科 救急医学, 神経学, 耳鼻咽喉科学
分類および外部参照情報
ICD-10 T75.3
ICD-9-CM 994.6
OMIM 158280
DiseasesDB 11908
MeSH D009041

乗り物酔い(のりものよい、: motion sickness: Bewegungskrankheit)は、航空機列車自動車船舶・遊園地の遊具など、各種の乗り物が発する振動が原因で、体の内耳にある三半規管が体のバランスを取れなくなって引き起こす身体の諸症状である。

原因

一定の速度で全く揺れずに直進している乗り物では酔いは起こらない。乗り物の動揺によって、或いは加速・減速・カーブの際に体に加速度が加わって三半規管、特に耳石器系が刺激された結果引き起こされる自律神経失調状態である。そのため、医学的には動揺病または加速度病と呼ばれる[1]

乗り物に乗っているとき以外でも、同様の状況にさらされることにより、同様の症状を発する場合がある(例:3D酔い地震酔い[2])。

症状

最初はめまい、生あくびなどの症状から始まり、次第に冷や汗、動悸頭痛、体のしびれ吐き気といった諸症状を催す。さらに悪化した場合嘔吐が起こり下痢が起こることもある。あまりにも嘔吐を繰り返すと、極端な場合は脱水症状に陥り、点滴が必要になる場合も起こる。最悪死亡したケースもあるが(1999年3月兵庫県立香住高校漁業実習中の船酔い死亡事故)、そこまでの状態になるケースは極めてまれである。

なお、乗り物から降りた場合、しばらくすると症状は回復し、後遺症も残らない。

乗り物酔いの例

乗り物別の酔いやすさには個人差があり、例えば自動車には全く酔わない人でも船舶には酔いやすかったり、列車や飛行機には全く酔わないのに自動車には酔いやすいという人もいる。近年では無重力下での動揺刺激による失調も問題視されている。

発生しやすい状況など

  • 乱暴な運転・渋滞・上り勾配・つづら折りのカーブ・効き過ぎる暖房・効きが悪い冷房等が長時間続いた場合に発生しやすい。特に日光伊香保箱根等の峠道や、名阪国道首都高等の、速度が出やすいあるいは渋滞が発生しやすい、カーブの連続した道は特に注意が必要である。
  • きつすぎる衣服(特に着物)・帽子・ヘルメット・日本髪等を長時間着用する場合、祭りの山車に乗っていても酔う場合がある。
  • 視覚も関わっており、乗り物の中で読書や携帯メール、携帯ゲーム機のプレイなど、眼球の動きを細かくするような行為をすると酔い易い。逆に、から遠くを眺めるなどすると酔いにくい。個人差があり、進行方向を注視していれば酔わないが、横を見るなどして加速度の加わる方向と視線がずれると酔うという場合もある。
    • そのため、進行方向を向いて座る座席のほうが酔いにくくなる。
  • 身体が振動しなくても、視覚的な振動の刺激(振動するビデオカメラ撮影した動画を見るなど)だけでも「酔う」ことがある(映像酔い)。特に上下動や上空の視界の悪さによる効果が大きい。視覚と三半規管の感覚とが不一致を起こすためといわれる。
  • 上と同様にして、3DCGを利用したシミュレータコンピュータゲームによって酔うことがある。「3D酔い」と呼ばれる。
  • 睡眠不足・空腹・食べ過ぎ・酒や乳製品、炭酸飲料の飲み過ぎ。
  • 振動では酔いにくい人でも、車中のタバコや石油の匂いがある場合、酔いやすくなる場合も多い。
  • バスはエンジンのレイアウトがミッドシップとリアエンジンが多いため、後ろの席は振動が多くなり前の席より酔いやすい。
  • 気温の高い車内で厚着をするなどにより、いわゆる「のぼせ」が起きていると、そのまま乗り物酔いに変化しやすい。
  • 地震で長時間の揺れが生じ、余震が何度も続くことにより酔うことがあり、「地震酔い」と呼ばれる[2]

対策

搭乗前の対策

  • 睡眠をしっかりとる[1]
  • 空腹を抱えたり、食べ過ぎ、飲み過ぎた状態での搭乗は避ける[1]

搭乗中の対策

  • バスの場合、車両前方は後方より揺れが少ないため酔いにくい[1]
  • 換気を良くする[1]
  • 友達と話す、合唱などで気分をそらす[1]

その他

ヒポクラテスの時代から知られる病態であり、平安時代の書物の中でも牛車で乗り物酔いを起こす貴族の姿が描かれている。

脚注

関連項目

外部リンク