世界気象機関

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世界気象機関
WMO本部の入るビル
GICHDGCSPおよびGEOも同居する)
概要 専門機関
略称 WMO
代表 デイヴィッド・グライムズ総裁
ミシェル・ジャロー事務局長
状況 活動中
活動開始 1950年
本部 スイスの旗 ジュネーヴ
公式サイト 世界気象機関
国際連合の旗 Portal:国際連合
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WMOの旗

世界気象機関(せかいきしょうきかん、: World Meteorological Organization; WMO: Organisation Météorologique Mondiale; OMM)は、国際連合専門機関の一つで、気象事業の国際的な標準化と改善および調整、並びに各加盟国・地域間における気象情報・資料の効率的な交換の奨励を主な業務としている。本部はスイスジュネーヴにあり、国連開発グループ(UNDG)の一員である。

1873年に創立された政府間組織である国際気象機関International Meteorological Organization; IMO)が発展的に解消し、1950年WMOとして設立された。翌年、気象学気象気候)およびオペレーショナル水文学等、これらに関連する地球物理学の分野における国際連合の専門機関として登録された。

2015年3月現在、世界の185の国と6の地域[1]が参加している[2]。日本は1953年8月11日に加盟した。

組織

意思決定機関として、4年毎に開催される世界気象会議 (World Meteorological Congress) および年に一度開催される執行理事会 (Executive Council) がある。

また執行機関として総裁の下に事務局、専門委員会、地区協会を置く。

  • 総裁 (President)
    • 副総裁 (Vice-Presidents)
    • 事務局 (Secretariat)
    • 専門委員会 (Technical Commissions)
      • 基礎組織委員会 (Commission for Basic Systems; CBS)
      • 測器・観測法委員会 (Commission for Instruments and Methods of Observation; CIMO)
      • 水文委員会 (Commission for Hydrology; CHy)
      • 大気科学委員会 (Commission for Atmospheric Sciences; CAS)
      • 航空気象委員会 (Commission for Aeronautical Meteorology; CAeM)
      • 農業気象委員会 (Commission for Agricultural Meteorology; CAgM)
      • 気候委員会 (Commission for Climatology; CCl)
      • 合同海洋・海上気象委員会 (Joint WMO-IOC Commission for Oceanography and Marine Meteorology; JCOMM)
    • 地区協会 (Regional Associations)
      • 第Ⅰ地区協会(アフリカ)
      • 第Ⅱ地区協会(アジア)
      • 第Ⅲ地区協会(南アメリカ)
      • 第Ⅳ地区協会(北アメリカ、中央アメリカ)
      • 第Ⅴ地区協会(南西太平洋)
      • 第Ⅵ地区協会(ヨーロッパ)

8つの専門委員会はWMOや加盟国・地域の気象当局に技術的勧告を提供し、事務局長の管理下で事務局は約250人の正規職員[3]と共にWMOの活動を支援し、調整する。

事業

WMO科学技術プログラム

共同プログラム

その他の主なプロジェクト

  • データブイ協同パネル (Data Buoy Cooperation Panel; DBCP) - 海上に展開する各国の海洋気象ブイの共同運用促進を図る - DBCP
  • 水文運用多目的システム (Hydrological Operational Multipurpose System; HOMS) - HOMS
  • 統合洪水管理 (Integrated Flood Management; IFM) - 洪水の未然防止や被害の軽減に関する提言・勧告を行う - IFM
  • 水文情報レファラルサービス (Hydrological Information Referral Service; INFOHYDRO) - 水資源の環境評価や開発・管理を支援するため、加盟国・地域の専門家や公的機関・企業に水文学に関する情報を提供する - INFOHYDRO
  • シビア・ウェザー情報センター (Severe Weather Information Centre; SWIC) - 台風・豪雨/豪雪・竜巻など、災害発生の危険性を伴うような世界の気象に関する情報を提供する。オンラインサービスは香港天文台が運営。 - SWIC
  • 世界農業気象情報サービス (World AgroMeteorological Information Service; WAMIS) - これまでにWMOの参加メンバー間で提起された農業に関する議題、問題等の断片を収集・集積し、公開する - WAMIS
  • 世界水循環観測システム (World Hydrological Cycle Observing System; WHYCOS) - 水文学分野に関するデータの自由かつ国際的な交換の促進 - WHYCOS
  • 情報システム (WMO Information System; WIS) - 気象情報を自由に、制限なく交換できるような国際的システム構築の推進 - WIS
  • 統合全球観測システム (WMO Integrated Global Observing System; WIGOS) - 既存の全球観測システム (GOS) と世界気象監視計画 (WWW) および全球大気監視計画 (GAW) を一体的に運用する試み - WIGOS
  • 極地南極および北極)の観測・研究活動 (Polar Observations, Research and Services; PORS) - PORS
  • 世界各地の気象情報提供サービス (World Weather Information Service; WWIS) - WWIS

気象情報交換の促進

航空気象

WMOは、気象に関する情報を必要とする国際民間航空機関 (ICAO) などと連携して、多くの気象業務に関する規定を定めている。ICAOと共同で世界空域予報システム (World Area Forecast System; WAFS) を設立し、ロンドンワシントンを拠点に世界空域予報センターを設置(指定)して航空気象情報を提供している。

世界空域予報中枢 (World Area Forecast Centre; WAFC)
名称 担当機関 本部所在地
ロンドン世界空域予報中枢 イギリス気象庁 イギリスの旗 イギリス エクセター
ワシントン世界空域予報中枢 アメリカ国立気象局 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ワシントンD.C.

指定気象機関

WMOの科学計画のうち、特に重要なものとして世界気象監視計画(WWW)があり、各国の気象機関が実施している観測、気象通信、データ処理および予報センターの機能を統合し、より気象情報等を効率的に提供することを目的としている。特に、全球的・地域的なレベルの気象情報を各国気象機関へ提供する為、世界気象センター (WMC) および地域特別気象センター (RSMC) をそれぞれ指定し、各国気象機関間で効率的な情報交換が行われるよう調整している。[4][5]

WMC

RSMC

以上が地理的な位置関係から地域に特化した機関 (RSMC with geographical specialization) として地域特別気象中枢に指定されている気象機関である[4]。また、ヨーロッパでは広域をカバーしているヨーロッパ中期予報センター (ECMWF) も指定を受けている。

これらの指定されたRSMCの一部および別途に指定された複数の気象機関は、その活動内容に特化した機関 (RSMC with activity specialization) として、特殊な気象観測活動および情報配信の任務を担っている。以下に一覧を記す。

  • 地域特別気象中枢 (Regional Specialized Meteorological Centre; RSMC) - 14ヶ所

NMC

  • 国家気象中枢 (National Meteorological Centre; NMC)

各加盟国・地域における中核的な気象機関が指定される。

その他

観測された気象データや予報データを送受信する気象通報式についても定めている。地上の気象観測地点で気象データの送信方式として用いられているSYNOP、海上の気象観測地点で用いられるSHIP、航空分野で用いられるMETERTAFのほか、気象衛星のデータを送信する方式など、数十種類がある。それぞれ、二進数で表現するBUFRと文字で表現するCREXの2方式が別々に定められている。

  • 国際気象機関賞 (IMO賞) - 国際気象機関賞は気象学における顕著な業績に対し授与される。1955年に創設された。最初の受賞者はラグナル・フィヨルトフト (Ragnar Fjortoft) であった。また、2010年には海洋研究開発機構松野太郎博士が受賞した[6]
  • Professor Dr. Vilho Vaisala Award
  • Norbert Gerbier-Mumm International Award
  • WMO Research Award for Young Scientists

世界気象デー

1950年3月23日に世界気象機関条約が発効されたことを記念して、発足から10周年を迎えた1960年に毎年3月23日世界気象デーWorld Meteorological Day)と定めた。世界気象デーは国際デーの一つであり、毎年同日には気象知識の普及や国際的な気象業務への理解を促すキャンペーンを実施している[7]

加盟国および地域

  WMO加盟国
  WMO加盟地域

2015年3月現在、世界気象機関の加盟メンバーは国連加盟国のうち185の国とクック諸島およびニウエ、加えて6つの加盟地域をあわせた191の国と地域である。[8]

国連に加盟しているがWMOには非加盟の国は、アンドラグレナダ赤道ギニアリヒテンシュタインマーシャル諸島ナウルパラオセントクリストファー・ネイビスセントビンセント・グレナディーンサンマリノツバルバチカンおよびその他一部の国家の承認を受けていない国々である。

加盟地域は、イギリス領カリブ地域(共同気象機関および加盟地域[9])、フランス領ポリネシア香港マカオオランダ領アンティルアルバ(共同気象事業および加盟地域)[9]ニューカレドニアである。

関連項目

出典・脚注

  1. ^ なお、香港マカオは国家としては中国の一部であるが、WMOでは中国とは別の地域として加盟しており、世界気象会議等での投票権も中国とは独立し同等に扱われる。
  2. ^ 世界気象機関構成員一覧 2015年3月10日閲覧
  3. ^ WMO Strategic Plan May 2007
  4. ^ a b WMO Manual on GDPFS, Appendix I-1” (PDF). WMO (2007年12月10日). 2012年2月2日閲覧。
  5. ^ 山本孜 (1966年1月). “世界気象監視 (World Weather Watch-WWW) について” (PDF). 日本気象学会. 2012年3月20日閲覧。
  6. ^ 気象庁平成22年報道発表資料
  7. ^ "3月23日は世界気象デー". 平成25年報道発表資料 (Press release). 気象庁. 13 March 2013. 2013年3月14日閲覧
  8. ^ WMO参加国および地域
  9. ^ a b WMO National services

外部リンク