世界アンチ・ドーピング機構

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世界アンチ・ドーピング機構
: World Anti-Doping Agency
: Agence mondial antidopage
略称 : WADA: ama
設立 1999年11月10日 ローザンヌ宣言
種類 非政府組織
法人番号 4700150093983 ウィキデータを編集
目的 スポーツ界におけるアンチ・ドーピング活動の推進
本部 カナダの旗カナダ モントリオール
地図
座標 北緯45度30分03秒 西経73度33分43秒 / 北緯45.50083度 西経73.56194度 / 45.50083; -73.56194座標: 北緯45度30分03秒 西経73度33分43秒 / 北緯45.50083度 西経73.56194度 / 45.50083; -73.56194
公用語 英語フランス語
会長 ポーランドの旗ヴィトルト・バンカ英語版2020年1月1日就任
提携 国際オリンピック委員会
ウェブサイト (英語) www.wada-ama.org/en
(フランス語) www.wada-ama.org/fr
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世界アンチ・ドーピング機構(せかいアンチ・ドーピングきこう、英語: World Anti-Doping Agency, WADAフランス語: Agence mondiale antidopage, ama)は、反ドーピング(薬物使用)活動を世界的規模で推進するために設立された、独立した国際的機関世界アンチドーピング機構世界反ドーピング機構世界反ドーピング機関等とも書かれる。

概要[編集]

WADAは、禁止薬物リスト・検査・分析などの国際的なドーピング検査基準やドーピング違反の罰則規定の統一化、アンチ・ドーピング活動に関する教育・啓発活動等を目的として設立された。現在は、スポーツ界だけでなく、各国政府や公的機関とも協力しながら、アンチ・ドーピング活動を行っている。

1968年のメキシコオリンピック及びグルノーブルオリンピックで初めてドーピング検査が実施されて以降、アンチ・ドーピング活動は国際オリンピック委員会 (IOC)と各競技団体の主導で行われてきた。
しかし1998年のツール・ド・フランスにおいて、チーム主導による組織的なドーピング違反が複数発覚し、選手・チームスタッフ10名以上がフランス警察に逮捕された (通称:フェスティナ事件) 。これをきっかけに、翌1999年に、国際オリンピック委員会 (IOC)の主催で行われた「スポーツにおけるドーピングに関する世界会議」において採択された「ローザンヌ宣言」に基づき、1999年11月にWADAが設立された。

それまでIOCが主幹として取り締まっていたドーピング検査はWADAが行うようになり、2003年3月にはIOC医事規程からWADA規程(WADA Code)が正式なルールとして採用されるようになっている。WADAに反発していた国際サッカー連盟 (FIFA) も[1]、2006年6月に、条件付ながらWADAの統一基準受け入れに合意した。

競技者から採取され検体の分析は、WADAが各国において公認する機関(現在は33機関)に委託されており、日本ではLSIメディエンスが唯一の公認機関となっている。なお、公認機関の検査精度などに問題がある場合は、WADAが公認を取り消す場合もある[2]ドーピング検査は、競技の場で行われるものの他に時間や場所の通告なしで行われる抜き打ち検査がある。プライベートな場で検査を要求される選手側にとっては、不快を感じることやトラブルに発展することもある[3][4]
実際にWADA規程に準拠する国際自転車競技連盟 (UCI) の管轄下のレースで抗議行動が起こる事態に発展した。2008年にロードレース選手のケビン・ヴァンインプに対して通常の抜き打ち検査が行われた。しかし、検査が自身の息子の死と重なったことが波紋を呼び、チームメイトと他チームの選手が団結しての抗議行動となった。[5]

2014年12月、ロシアの陸上選手のドーピング疑惑をドイツの放送局が報じたことを受け、WADAは独立委員会を設置した。2015年11月9日、独立委員会は国家ぐるみでロシアがドーピングを行っているという報告書を発表した[6]。報告書には、検査の際前もってコーチや選手に検査が通告されていた、1400件以上の検体が廃棄されていたなど、ドーピング検査の実態が浮き彫りになっていた。この報告書は、モスクワ反ドーピング研究所の公認取り消し、WADAのロシア反ドーピング機関への不適格認定[7]、さらに、世界陸連のロシアへの出場資格停止処分、2018年平昌オリンピックへの参加禁止など波紋を呼んだ[8][9]

2020年、アメリカ麻薬取締政策局は、世界アンチ・ドーピング機構の改革を提言。行われない場合には、機構への資金拠出を保留することを主張した。これに対して機構側は、資金拠出が停止された場合、アメリカのアスリートがオリンピックを含む国際競技大会に出場できなくなることを示唆した[10]

歴代会長[編集]

<出典:英語版Wikipedia記事>

出身国 会長 在任
1 カナダの旗 カナダ ディック・パウンド 1999年11月10日 – 2007年12月31日
2 オーストラリアの旗 オーストラリア ジョン・フェイヒー英語版 2008年01月01日 – 2013年12月31日
3 イギリスの旗 イギリス クレイグ・リーディー 2014年01月01日 – 2019年12月31日
4 ポーランドの旗 ポーランド ヴィトルト・バンカ英語版 2020年01月01日 –

和訳名[編集]

この組織の日本語翻訳名は、以下のようなものがある[11]

一部では、「アンチ」「反」を省略し、「世界ドーピング機構(機関)」とも表記される[24][25][26]

WADAの読み方は、「ダブリュー・エイ・ディー・エイ」と「ワダ」の二通りがあるが、放送業界では「ワダ」が一般的である。

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ WADAが規程する制裁措置「出場停止2年」が、選手寿命が短いサッカーには影響が大きすぎるとして、独自ルールのドーピング規定を行っていた
  2. ^ ソウル検査所を資格停止 世界反ドーピング機関”. 共同通信. 2011年12月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年5月24日閲覧。
  3. ^ 柔道金・松本薫が明かすドーピング検査の実態…女性も立ったまま、覗きこまれ”. デイリースポーツ (2016年12月31日). 2019年7月23日閲覧。
  4. ^ 血液検体を金づちで破壊、孫楊がドーピング検査を妨害か”. AFP (2019年7月14日). 2019年7月23日閲覧。
  5. ^ チクリッシモno.17 別冊付録 P25
  6. ^ BBC NEWS JAPAN2016年3月19日閲覧。
  7. ^ 毎日新聞2016年3月19日閲覧。
  8. ^ ロシアNOW2016年3月19日閲覧。
  9. ^ スポーツナビ2016年3月19日閲覧。
  10. ^ 米国、WADAへの資金提供停止すれば五輪出場停止も”. 2020年9月4日閲覧。
  11. ^ 新・ことば事情5945「WADAの訳語2」
  12. ^ 2000年(平成12年)9月13日文部省告示第151号「スポーツ振興基本計画を定めた件」
    2006年(平成18年)9月21日文部科学省告示第135号「スポーツ振興基本計画の全部を改正した件」
  13. ^ 世界アンチ・ドーピング機構の成り立ち”. アンチ・ドーピングの連携. 公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構. 2021年8月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月19日閲覧。
  14. ^ 「五輪後のスポーツを考える」(1) ドーピング問題 浅川伸・日本アンチ・ドーピング機構専務理事”. これからの記者会見. 日本記者クラブ. 2022年3月16日閲覧。
  15. ^ “WADAが15歳ワリエワのスタッフなど周辺の成年者を調査へ”. 日本テレビ. (2022年2月13日). https://news.ntv.co.jp/category/sports/77211459b0e5469abd1eaba4fd943ee6 2022年3月16日閲覧。 
  16. ^ “ワリエワ出場継続 IOC メダル授与式行わないことに理解求める”. NHK. (2022年2月13日). https://www3.nhk.or.jp/sports/news/k10013485461000/ 2022年3月16日閲覧。 
  17. ^ “「失望している」ワリエワ選手の裁定にWADAが反論”. テレビ朝日. (2022年2月14日). https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000244816.html 2022年3月16日閲覧。 
  18. ^ 世界ドーピング防止機構(WADA)について”. スポーツ界の透明性,公平・公正性の向上. スポーツ庁. 2021年5月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月19日閲覧。
  19. ^ “【独自解説】ワリエワ選手“ドーピング問題”でCASが文書を公表、食い違うロシアとWADAの主張…今後の動きを現役・CAS仲裁人が解説”. 情報ライブ ミヤネ屋 (読売テレビ). (2022年2月20日). https://www.ytv.co.jp/miyaneya/article/page_ysepveyw7z4iaggn.html 2022年3月16日閲覧。 
  20. ^ “ワリエワの五輪出場認める CAS裁定”. 産経新聞社. (2022年2月14日). https://www.sankei.com/article/20220214-XIYFBFETMZKKPKAIGPUM36QPNE/?outputType=theme_beijing2022 2022年3月16日閲覧。 
  21. ^ “ワリエワ出場認めた裁定「残念」”. 朝日新聞社. (2022年2月14日). https://www.asahi.com/articles/GCO2022021401001451.html 2022年3月16日閲覧。 
  22. ^ “ワリエワ検査結果遅れでロ側反論 WADAの指摘と食い違い(共同通信)”. 熊本日日新聞社. (2022年2月15日). https://kumanichi.com/articles/560099 2022年3月16日閲覧。 
  23. ^ “ワリエワ、個人戦も出場可能 CAS裁定「要保護者」を考慮”. TBSテレビ. (2022年2月14日). https://www.tbs.co.jp/olympic/news/202202141506.html 2022年3月16日閲覧。 
  24. ^ ㈱梅丹本舗製造の「古式梅肉エキス」からWADA禁止物質の含有が確認された件について 公益財団法人日本健康・栄養食品協会
  25. ^ アンチ・ドーピング委員会コラム_10全日本剣道連盟
  26. ^ 第9章 学校における健康教育愛知県医師会

関連項目[編集]

外部リンク[編集]