万引き

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万引き(まんびき)とは、窃盗の手口の一種[1]商業施設において店員の目を盗み、対価を支払わずに無断で商品を持ち去る行為を指す。

万引きの由来

江戸時代から使われている語であり、語源の由来としては、

  1. 商品を間引いて盗む「間引き」が変化して、万引き(万は当て字)になったとする説
  2. 「間」に「運」の意味もあるためそれぞれを結合し、運を狙って引き抜くという意味で「まんびき」になったとする説
  3. タイミング(間)を見計らって盗むことから

といった説があるが、1の説が有力であるとしている[2]

万引きと窃盗罪

万引きは日本の刑法235条の窃盗罪の構成要件に該当する犯罪行為であり、その中でもある手法に対する世俗的通称で、安易に行われているとする声がある。窃盗罪の具体的な構成要件については窃盗罪の項目を参照。

万引きは現行犯ではないと逮捕できない」といわれているが、それは間違いである。カメラに映っていたり、何度も繰り返している場合は、万引き犯が店に来た時点で警察を呼ぶことが可能である。証拠があるため、逮捕されることもある。

また、窃盗犯が盗んだものを取り返されることや捕まることを防ぐためなどの目的で店員や警備員に対して暴行・脅迫を加えた場合、事後強盗罪が成立する[注 1][3]。さらに、暴行によって怪我や死亡させたりした場合は強盗致死傷罪が成立する[注 2][3]

なおデジタル万引きとは一部民間団体による造語または概念であり、現行刑法上そのような犯罪は存在しない。

万引き対策

食料品や雑貨などでは店員や警備員(特に私服の警備員は万引きGメンとも呼ばれる)による目視、監視カメラの設置などが一般的である。しかし、店員の監視は人件費や通常の業務などを考えるとどうしても人を割けず、警備員の雇用は警備会社への費用がかさむという経済的な事情もある。監視カメラにも死角があり、いずれも限界がある。

万引き防止システム

電波式の万引き感知ラベル

電子機器やソフトウェアなど高額商品の場合、磁性体(磁気式、EM)[4]ICチップ(電波式、RF)[5]を利用した商品タグや小型のブザーを商品に貼付もしくは装着し、店舗入り口に設置された検知器で検出すると言う方式が一般に採用されている。この方式ではコストはかかるものの、個別に防犯対策を施せることから、各種量販店やレンタルビデオ店などでも普及している。しかし、検知を無効化したり、防犯装置自体を破壊したりして窃盗する者も出現しており、犯行はより巧妙化している。

ゲーム店では上の感知ラベルに加え、売り場に本体やソフトのその物を置かず商品のカードや見本の箱、もしくは本体やソフトを抜いた箱をレジに持って行くことで購入を出来るようにしている。

また、衣類に関しては、洗浄の出来無い染料系インクを加圧封入した特殊なタグを商品に装着し、所定の治具以外で取り外すと商品にマーキングされるという方法で、万引きを抑止している[6][7]

一部の防犯カメラでは、不審者を自動で検知する動作検知機能を伴ったものがあり、不審者を検知した後、アラームや携帯電話に電子メールを送るなどの方法で、店員に警告するシステムがある[8]

また、福井県のディスカウントスーパーPLANTでは、2008年7月から万引の金額に関係なく損害賠償請求を導入し、抑止効果を上げた。このため、東京都内の一部書店や中部地区の三洋堂書店が損害賠償を導入しており、成果が上がりつつある[9]

万引き被害にあった店の被害

書店
全国書店の2007年度の「万引きによるロス額」は約192億円分であると推計されている[8]
1冊の本が万引きされた場合、取次から小売書店)への卸価格定価の77%から80%であるため、マイナス分を取り返すためには同じ本を5冊以上売らないとならない[10]

万引きGメンによる不祥事

2010年4月5日に岡山県倉敷市トライアルで万引きした男性を恐喝して現金を受け取ったとして万引きGメンを含む店長ら3人が逮捕される事件が起こっている[11]

日本国外

米国、カナダ、オーストラリア、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、日本、インドを含む国際的な調査[12]によると、おおむねどの国でも似たようなものが万引きされる傾向にあり、同じようなブランドの商品が万引きされるという。しかし、それらの国々の一般的な消費習慣および好みを反映した違いも存在する。

脚注

注釈

  1. ^ (用例)窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。(刑法第238条 事後強盗
  2. ^ (用例)強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。(刑法第240条 強盗致死傷

出典

  1. ^ 窃盗事案の実態 - 平成21年版 犯罪白書
  2. ^ 万引き(まんびき)”. 語源由来辞典. ルックバイス. 2015年5月19日閲覧。
  3. ^ a b 広報だざいふ11.06-877号 - 防犯だより” (PDF). 太宰府市 (2012年5月8日). 2015年3月11日閲覧。
  4. ^ 磁気式(EM)万引防止システム”. IDECシステムズ&コントロールズ株式会社 (2008年9月1日). 2015年3月11日閲覧。
  5. ^ 電波式(RF)万引防止システム”. IDECシステムズ&コントロールズ株式会社 (2009年4月19日). 2015年3月11日閲覧。
  6. ^ ハードタグ - インクタグ”. 株式会社コージン (2011年10月13日). 2015年3月11日閲覧。
  7. ^ インクタグとは ”. 株式会社キャトルプラン (2011年10月13日). 2015年3月11日閲覧。
  8. ^ a b “不審行動を検知 「サブローくん」が万引きを防ぐのだ!”. J-CASTトレンド (ジェイ・キャスト). (2009年7月3日). http://www.j-cast.com/trend/2009/07/03044299.html 2015年3月11日閲覧。 
  9. ^ “悪質万引きに損害賠償請求 全国で100店以上が実施”. J-CASTニュース (ジェイ・キャスト). (2009年10月2日). http://www.j-cast.com/2009/10/02050913.html 
  10. ^ “本屋が万引で大損害をする理由!あの業界の原価率ってどのくらい?”. マイナビウーマン (マイナビ). (2013年6月25日). http://woman.mynavi.jp/article/130625-023/ 
  11. ^ “万引き男性を恐喝容疑、「Gメン」ら3人逮捕”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2010年4月5日). オリジナルの2010年4月8日時点におけるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20100408212747/http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100405-OYT1T01087.htm 
  12. ^ Bamfield, Joshua A. N. (Centre for Retail Research) (2012). Shopping and crime (Crime Prevention and Security Management). Houndmills, Basingstoke, Hampshire: Palgrave Macmillan. p. 84. ISBN 0230521606 

関連項目