七つの大罪シリーズ

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七つの大罪シリーズ(ななつのたいざいシリーズ)とは、mothy(悪ノP)が手掛けるVOCALOID楽曲及び小説のシリーズである。

一部の楽曲はPHP研究所より『悪ノ娘ノベルシリーズ』、『悪ノ大罪シリーズ』として小説化されている。『悪ノ娘』シリーズは【傲慢】の位置付けである。

本ページはニコニコ動画投稿曲、メジャーCD「悪ノ王国」また「七つの罪と罰」、小説により編集される。

現在入手が不可能である同人CDの情報、モチーフキャラクターが断言または紹介されていないキャラクターは不明確な情報として記載しない。

概要

キリスト教七つの大罪をモチーフにし、中世近代ヨーロッパをモデルとした架空の世界の物語を描いた楽曲のシリーズ。動画サイトニコニコ動画、同人CDで、それぞれの大罪をテーマとした楽曲やその関連楽曲の発表が続けられている。メジャーCDとして『悪ノ王国』が発売されている。

楽曲で描かれる物語はボルガニオ大陸西部「エヴィリオス地方」を中心に展開され、時代や国々を跨ぎつつもそれぞれが繋がりのある世界観になっている。登場人物のいくつかは、先祖/子孫といった血縁関係や生まれ変わりなどで前後の物語とつながっており、また、複数の時代にまたがって活躍する長命のキャラクターも存在する。また、本シリーズの楽曲では、ボーカルにVOCALOIDを用いるのみならず、物語の登場人物にVOCALOIDのキャラクターをモチーフとしたキャラクターが多数存在している。

用語

her
hereditary evil raiser(遺伝性悪意栽培者)」の略。
65535分の1で発生し、また出産に至るのはその中でも約1万分の1と極めて低確率で誕生する人間。「悪意」の権化と言うべき本質を持ち、同時に社会に対してもその性向を振りまこうとする極めて危険な存在である。
親が「her」であると子が「her」として誕生する確率が上がり、また「大罪の器」を扱うことで後天的に「her」を生みだすことが出来る。
「サードピリオド」の前に栄えていた「セカンドピリオド」はこの「her」が原因で滅んだ。
イレギュラー
本来シナリオ(世界)に存在するはずのない存在。代表的な人物に、アレン=アヴァドニアがいる。アレンは死後にシックルによって天界に存在する「BLACK BOX」に隔離されていた。
他にも人形館長の胎内やネメシスの持つ「BLACK BOX」内にも、アレン以外のイレギュラーが存在するようだが、詳細は不明。
イリーナは「リリアンヌとアレン」を「偶発的に誕生したもう一つの神の双子」と呼び、イレギュラーであるとしているが、リリアンヌがイレギュラーであるかどうかは不明。
BLACK BOX 
シックルやネメシスの元にある謎の箱。他にも人形館長の胎内に存在が確認されている。またイリーナの体内には「BLACK BOX Type S」の存在が確認されている。("Type"というものが何であるかは不明)
シックルの元(天国庭園)に存在しているBLACK BOX内には、"アカシックレコーダー"と呼ばれるエヴィリオスの歴史を検索できる機能があることが分かっている。

シックル
シリーズの舞台となる世界「サードピリオド」を作り上げた創造神。
創造を為し終えた後の地上においては鎌のように見える形をした蝙蝠の姿で動いている。「シックル(小鎌)」の名はそれを目撃した学者の命名であり、真名は不明。化身からわかるように世界に干渉するという点で見れば完全に無力な立ち位置に自らを置いているが、観察者としては万能の目を持ち、自らが生み出したルールの下で世界がどのように進み、終焉を迎えるかまでを見届けようとしている。
神話のなかでは「太陽神」と呼ばれている。また嫉妬の悪魔には「教授」と呼ばれている。
性質上、地上においては完全に無名の神であり、「セカンドピリオド」時代の友である「レヴィアビヒモ」と「エルド」という三柱の神をかりそめの神として地上に配置した際も干渉を最小限に留めた。善悪や自らの想定を越えるすべての存在を許容し、世界を「物語」と捉えるその姿勢を、悪ノPは世界を誰よりも愛していたからかもしれません、と評した。[1]
レヴィアビヒモ
双子の姉神「レヴィア」とその弟神「ビヒモ」が創造神の手によってまとめられ、双頭の竜として地上に配置された神竜。
創造神にとってはセカンドピリオド時代の友で、当時は透明の肌と髪を持った美しい姿をしていた。レヴィアは「冥界の主」という役目も持つ。二柱の神は元々互いに険悪な仲であり、その姿などの待遇に大いに不満を持った。そのため創造の過程にあった世界で暴れまわったレヴィアビヒモだったが、創造神の手によって封じられる。
創造神のシナリオではエルド同様にあらかじめ設定しておいた時間が過ぎた後、故郷「heavenly yard」への帰還の時を迎えるはずだった。しかし目論見は狂い、レヴィアビヒモは形を取らない塊の姿となってエルルカを憑代として世界に留まり続けている。[1]
大陸で広く信仰されるレヴィン教レヴィア派では信仰の対象とされている。
レヴィア

セカンドピリオドに生まれた。母は後に嫉妬の悪魔となったラハブ=バリーゾール。6歳で大学に入り、人の心について研究した。

ビヒモ

セカンドピリオドに存在した惑星クドネチア出身。レヴィアは双子の姉。

エルド
神話時代から地上に存在する古代神の一柱。旧友の創造神からは「レヴィアビヒモ」の監視と人間以外の生物の保護を任されている。千年樹の森(エルドの森)にそびえ立つ森の守り神として森の精霊達を従える。かつては巨竜だったとも言われるが、巨木に姿を変えた。地神エルド、地竜エルドとも。
故郷「heavenly yard」では緑の髪をした若々しく厳めしい顔をした男性の姿を取り、創造神の手によるエルフェ人のモデルにもなった。「法廷の主」とも呼ばれる。[1]
エルルカとは友人で、彼女からは「ジジイ」と呼ばれよく言い争いをする仲である。レヴィン教エルド派では崇拝される存在で、エルド派の人間には他の人間より悪魔の術が僅かながら効きにくいという特性を持つ。
基本的には人間たちへの干渉を避けているが、自らの森で生まれた「七つの大罪」には危機感を抱き、エルルカに回収を依頼した。
好爺のような口調や一度眠りにつくと一月は目を覚まさないなどから老神と誹られることもあるが、事実500年時点で自身曰く「この世界」に留まるための依代としている巨木に限界が近づいている。そのため密かに眷属の精霊達の中から後継者を選定しており、「大罪の器」の行く末について心残りを持ちながらも地上を去っていった。エルドを最後に古代神はすべて地上から離れたとされている。
heavenly yard
太陽神シックルの故郷であり、終焉を迎えた世界がなるとされる地。
「サードピリオド」で生を終えたすべてのものが辿り着く場所でもある。
hellish yard
「冥界の主」が束ねるも「heavenly yard」にその役目を奪われ、放置されている地。
 シックルが定めたルールにより、大罪の悪魔と契約した「大罪者」たちは「heavenly yard」ではなく「hellish yard」へと送られる。

国家・地理

レヴィアンタ

レヴィアンタ魔道王国(Levianta)
エヴィリオス地方全域で使用される暦「エヴィリオス歴」を定めた国家。崩壊前の別称は「白ノ国」。
013年、魔道研究所の事故、通称「レヴィアンタの災厄」によって王国は崩壊。滅亡後、百年も経過すれば魔術はお伽話や迷信の産物と見なされている現状からは考えられないが当時は国家の管理の下で数多の魔道師を有し、独特の文明を築いていたらしい。
災厄の真相としては当時国内で「her」が通常では考えられない規模で増殖しており、彼らが反社会的・非人道的な行為に手を染めていたため、国家上層部がやむなく処置を取ったらしいが失敗してしまう。結果として王国と「her」は共倒れに終わった。
神聖レヴィアンタ(Levianta)
エヴィリオス地方北部に存在する宗教国家。かつて存在した魔道王国レヴィアンタと直接的な連続性はないとされる。
エヴィリオス地方で広く信仰されるレヴィン教レヴィン派の総本山であり、宗教的制約によって自衛以外に軍事力を行使することは無いものの、軍事的には強国である。
508年の「新生四騎士事件」以降はレヴィン教の国内の影響力は縮小しており、840年頃ではムスビ朝による帝政国家が敷かれている。
国名は「嫉妬」を象徴する悪魔「レヴィアタン」のもじり[2]

ルシフェニア

ルシフェニア王国(Lucifenia)
エヴィリオス地方中部に存在する国家で、商業・工業を中心に様々な産業が盛んに行われている。別称は「黄ノ国」。
「五公」の一人ドートゥリシュが本国ベルゼニアとアスモディン間の長期紛争によって弱体化した機を見計らって独立運動を起こし初代国王ルシフェニアI世としてルシフェン王朝が興る。アルスI世の代には急速に勢力を拡大し、エヴィリオス地方で最大の版図を獲得した。
500年、次代の王女リリアンヌの苛政や隣国エルフェゴートへの無理な侵攻により勃発した革命によってルシフェン王朝は滅亡する。その後は民衆革命に密かに人員を供出していたマーロン国により10年間の統治が行われるが、共和国として再独立を果たす。840年頃には国力が伸び悩んでいる。
国名は「傲慢」を象徴する悪魔「ルシファー」のもじり[2]
ルシフェニアン
ルシフェニア王都。王宮はエヴィリオスで類を見ないほどの壮麗さで知られ、「鏡の間」、「音の間」、「天国庭園(ヘブンリー・ヤード)」など数多くの名所が存在する。
迷いの森
ルシフェニア・エルフェゴート両地方に跨る大森林地帯のルシフェニア側名称。
500年、ルシフェニア王国がエルフェゴート国侵攻の妨げになると見なしたため、進路確保の為に火がかけられ半分ほどを焼失した。

エルフェゴート

エルフェゴート国(Elphegort)
エヴィリオス地方中~北部に存在する国家で、エルフィン王家が治め肥沃な大地から農業・商業が盛んに行われている。かつて魔道王国レヴィアンタから「エルドゴート国(旧名)」として分離し、現存する国家として紀元前より続く最長の歴史を持つ。
国土の四分の一が広大な森林地帯であることと、国民の大半がエルフェ人で構成されておりその髪の色から「緑ノ国」とも呼ばれる。反面、単一民族国家であるゆえに排他的な傾向もある。軍事的には弱国であるものの、軍の統制の高さや大森林「迷いの森」が天然の要塞となっていることによって、ルシフェニアが勢力を拡大した時代にも勢力圏には入らなかった。
首都はアケイド、王城を中心に五つの地区に分かれている。国民は王侯貴族を除き、姓を持たない。
840年頃では王家の統治は続いているものの、共和政に近くなっており、王家の権限は縮小している。
国名は「怠惰」を象徴する悪魔「ベルフェゴール」のもじり[2]
エルドの森/千年樹の森
エルフェゴート・ルシフェニア両地方に跨る大森林地帯のエルフェゴート側名称。
その名の通り中央部には大地神エルドを宿した大樹が鎮座し、古くはエルド派の巡礼地であった。時代の推移により、レヴィン派が宗教分布の大勢を占めるようになると、異神の名を忌む意味で千年樹の森に改称された。
特に整備された道などはなく奥深いという地理を求め、かつてはメータが追跡から逃れ、原罪者が隠れ住み、フリージス家が緊急のため隠れ家を設置するなど、数多くの者が何らかの追跡を逃れ辿り着く場所でもある。
メリゴド高地
エルフェゴート国の最北東に位置する。隆起した土地で天然の要塞として機能する。「プラトーの花」の伝説が残る高原。

レヴィアンタ魔道王国の領地だった時代には反政府組織「アポカリプス」が根城にしていた。エルフェゴート国の領土になった後、首都が陥落した際の避難場所となり、500年頃までは王家の避暑地としても使われていた。行政改革によって王族管理地ではなくなり、選挙で選ばれた民間人が市長となることになった。四番目のシャドウことメイラナ=ブロッサムが8代目の市長である。

アスモディン

アスモディン
エヴィリオス地方東部に存在する国家で、東方との交易が盛んに行われている。別名「紫ノ国」。
ベルゼニア帝国「五公」ドナルド家が皇族の軍備方針に異を唱え分離独立したことで成立した。独立に至った動機の通り軍事に偏重した体制を取っており、少なくとも315年頃まではベルゼニア国境地帯での小競り合いは絶えず、全方面を敵視する好戦的な姿勢を取り続けた。
かつてはルシフェニアと覇を競ったというが、500年時点では往年の勢いは無く、総帥の死により国内のまとまりを欠いている。842年の時点では安定した帝政国家が続いているが、軍事国家としての色合いは薄れており、他国とも穏便な関係になっている。
顔を仮面で隠し人目で晒さないといった独自の戒律を有する集団「アルモガバルス」など、傭兵の輸出が盛んである。悪魔信仰などとの繋がりから数多くの国で忌避されるレヴィン教ビヒモ派の信仰を許容する数少ない国でもある。
国名は「色欲」を象徴する悪魔「アスモデウス」のもじり[2]
霧の山脈

ベルゼニア

ベルゼニア帝国(Beelzenia)
エヴィリオス地方南部に存在する国家で、かつてはアスモディン、ルシフェニアを併せた広大な版図を誇っていた。両国の独立以後も両地方には一定の影響力を保持していたが、隣国国主アルスI世の侵攻により南部以外の領土を失い、急速に勢力を後退させている。620年には帝国が解体し以降衰退時代が続いていたが、820年にベルゼニア王国が誕生してからは急速な工業化が進んでいる。
かつて痩せた土壌の農業には向かない地方とされていた。事実、平時こそ問題ないものの不作の年には幾つかの問題から飢餓が発生しやすい国柄であったが、バニカ=コンチータが地元農民と協力して行った改革によって食糧難から解放され、今に至る食文化を築いた。
別称は「赤ノ国」、「月の生まれた国」など。
斜陽の大国、豊かな食文化などのイメージからモデルはスペインなどの地中海沿岸、南欧とされている。
国名は「暴食」を象徴する悪魔「ベルゼブブ」のもじり[2]
五公(ごこう)
かつてベルゼニア帝国で隆盛を誇った五つの公爵家。
アスモディン地方を統治した「ヴェノマニア」、その没落によって入れ替わりに参入した「ドナルド」、皇家の血統によって取り立てられた「コンチータ」、グレイビア領主「オルハリ」、ルシフェン朝の祖「ドートゥリシュ」などが帝国の歴史上に名を刻まれていた。
しかし「ドナルド」、「ドートゥリシュ」の離反などによって次第に形骸化していき、帝国の弱体化と共にかつての名家の威光は見る影なく、顧みられることなき称号と成り果ててしまった。
三日月海
ベルゼニアの別称「月の生まれた国」の由来にもなった東部内海。沿岸部には白壁で有名な都市グレイビアが接する。
ルコルベニ
バニカ・コンチータ縁の地。また最高級ワイン「ブラッド・グレイブ」の産地であり、トラウベンの生産も盛んである。

マーロン

マーロン国(Marlon)
ボルガニオ大陸の西海「ハーク海」を挟み、存在する島国。「青ノ国」という別称がある。
かつて島の東半分を押さえたライオネス家と勢力を二分していたが、現マーロン王家が島内の覇権を握るに至る。島国らしく海軍力は強いが料理の味は薄く、あまりよくないとされる。収集癖を持つ男性が多いらしい。
貴族は求婚の際に貝殻ペンダントを贈る風習があり、そこで男性のセンスが問われるという。
長くマーロン王家が治めていたが、777年に起きたマイスティア合衆国の独立による国内の内乱で王家を追われており、代わりにヴィワーツ王家が統治するようになる。マーロン家は貴族としての一定の発言力はあるものの、もはや最盛期の面影はない。マイスティア合衆国の発展に危機を抱いており、他国との連合国家成立を考えており後のUSEに至った。
国名は「強欲」を象徴する悪魔「マモン」のもじり[2]
バリティ
マーロン王都。
ライオネス国
300年代に滅ぼされるまでマーロン島の東半分を支配し、百年を越える長きに渡ってマーロン国と相争った国家。別称は「橙ノ国」。
主家であるライオネス公家は薔薇を愛し、領地の庭園を敵の手に渡すことを恥、守り通すことを誉としたという。その名残はライオネス旧領「ライオネス城」に見ることができる。
キャッスルオブヘッジホッグ
通称「ハリネズミ城」。マーロン北部「ブラッドプール地方」に居する古城。
ライオネスにおいて拷問好きとの悪評を残す重臣ヘッジホッグ卿の居城であり、数々の逸話と中心部に聳える巨大な時計塔「心音の時計塔」によって彩られる。後にマーロン王家領有となるが、城にまとわりつく噂や塔が発する騒音などによって好んで使われてはいなかった。
しかしプリム=マーロン皇太后に休養地として度々利用され、後に彼女が「心音の時計塔(ハートビート・クロックタワー)」の特性を活かすための策謀の震源地となる。
その後「針音の時計塔」は、フリージス財団によって世界警察が作られると、フリージス財団によって買収され、世界警察の暗部「取調遂行部(通称 拷問部)」と呼ばれる部署の者たちが常駐する場となる。

その他

タサン大帝国
かつてレヴィアンタ魔道王国と相並び立つ大国だったが、現在は大陸南西部など一部地域にその名を留めるのみである。全盛期だった頃のの別名は「黒ノ国」。
魔道大国の崩壊と同時期に内紛によって「ラ・タサン」と「レ・タサン」の両国に分裂し、その機を突いたベルゼニア帝国に併呑された。なお、「レ・タサン」はタサンに従属する国の意である。
レタサン要塞
歴史上、数度に渡って大国間国境の軍事的要衝で在り続けた城塞都市。いわゆる星形要塞である。
都市としての歴史は長く、ベルゼニア・タサン間の睨み合いが続いていた時代から存在した。ベルゼニアの隆盛により価値を大きく損なったものの同国の勢力後退によって再びルシフェニア・ベルゼニア両国間の紛争地帯へと返り咲く。
アルスI世のベルゼニア侵攻によってルシフェニア領となるが、ルシフェニア革命にて仮面の男カーチェスに陥落せしめられた。本国を含めマーロン国の大陸制覇の拠点とされるが、それに反抗する旧レジスタンスらと、それの後ろ盾となったベルゼニア帝国に度重なる攻勢をかけられ、紆余曲折を経て旧主ベルゼニアに奪還された。
地名は「憤怒」を象徴する悪魔「サタン」のもじり[2]
USE(United State of Evillious)
878年、アイシケル条約により成立。ルシフェニア、エルフェゴート、レヴィアンタ、マーロンの四ヶ国が連合し形成された国家。
蛇国(じゃこく)
エヴィリオス地方の遙か東方に存在する島国で、大陸には時折「キモノ」、「カタナ」などの珍しい文物がもたらされる。別名「茶ノ国」。
紀元前では「蛇魔台国」と呼ばれており、当時は白髪が特徴的な「熱魔族」による統治が行われていたが、既に蛇国における熱魔族の血筋は途絶えている。
円尾坂(えんびざか)
蛇国の南方にある出島を思わせる島「鬼ヶ島」の中心にある街。鬼ヶ島は蛇国の中で外国人の居住が許されている区域の一つであり、蛇国人と外国人が混ざって住んでいる。
地名は「嫉妬(妬み)」の英語「envy」から来ている。
マイスティア合衆国
592年にフリージス財団によって発見された新大陸。良質な原材料が数多く手に入ることから、エヴィリオスの商人たちがこぞって船を派遣するようになり、フリージス財団の開発事業もあってエヴィリオスから移住する者たちも増えていった。しかし事実上はマーロン国の植民地扱いであり、原住民が迫害されるようになった。
760年にマイスティアの民たちが独立を求めて武装躍起し、戦争の長期化によってフリージス財団とマーロン王家は徐々に力を失っていく。そして776年にエルルカ=‘Ma’=クロックワーカーがマイスティアを訪れたことで沈静化し、マイスティアは合衆国として独立を果たした。
ネツマ族
白髪赤目が特徴的な少数民族。数少ないがエルフェゴートで住んでいる人もいるものの、差別行為を受けることも多い。
紀元前で「蛇魔台国」から落ち延びた一部の熱魔族が移住し、エヴィリオスにおける「ネツマ族」として根付いた。かつてアポカリプスのメンバーだった族長のライサ=ネツマが殺されたことで、怒り狂った一族がエヴィリオス各地で破壊行為を行ったことから、500年代でも強い差別が根強く残ってしまっている。
ループ・オクトパス族
予知夢を見ることができる一族。魔力を持った人間はレヴィアンタ魔道王国に集められていたため、レヴィアンタの災厄でこの一族の人間はいなくなったとされる。

大罪の悪魔

原罪者
「イブ=ムーンリット」のこと。
エヴィリオス歴001年、彼女がとある事件を起こし、その際に「七つの大罪」全てを含んだ「原罪」が生まれた。
イブは年代記初の犯罪者であり、「最悪の罪人」とも呼ばれている。
彼女自身は後に養子である双子によって殺されるが、燃やされた遺骸から七つの罪(悪魔)が分かれ生まれた。この七柱の悪魔を双子が浄罪のためとして様々な形でばら撒いたことから、世界に災いをもたらすようになったとされる。
大罪の器
「大罪の悪魔」を宿した七種の器物。「神の双子」がイブとアダムの身体と魂を素材に、小屋にあった家財を使って作り出した。そのせいか総じて器自体に美術的価値はさほどないとされ、中にはあからさまなガラクタさえ混じっている。これにはセト=トワイライトの作為があったとされる。
宿る悪魔に心を委ねることによって超常的な力を発揮できるが、人格の変容など大罪に関わる様々なデメリットを発する。
悪魔は当初目的意識などを持たず、周囲に災厄をもたらすだけの存在だったが徐々に所有者に似せた人格を得るようになっていった。悪魔自体ははじめ具体的な姿を持たず心弱い人間を誘惑するに留まるが、侵食するにつれ所有者の自我を蝕み、肉体まで翼や爪の生えた異形に変容させることもある。多くの悪魔は「つまらない」が口癖のようである。
悪魔はもともと神々の元に存在した「眷属」と同様のものであった。
どの悪魔も共通して六枚の羽を生やしている。
基本的に「大罪の器」は専門職である魔道師か悪魔に憑かれたことのある者にしか扱えず、力も同類の悪魔でなければ打ち消せない。例外的に悪魔と契約することでその力を十全に振るうことが出来、通常の手段で致命傷を負わせようと殺すことは出来ない。この場合は悪魔じみた姿への変化も本人の意志で行える。
器に宿る悪魔こそが本体と言えるものであり、器の外に出て心弱い人間に囁き寄り憑く悪魔はいわば分身。分身は器から離されると力を損ないやがて消滅するものの、分身自体をいくら祓ったところで本体に影響を与えない。また、器自体も不変でなく悪魔本体が異なった器に移動することもある。そのため悪魔の活動を抑えるには本体が潜んでいる時に、器そのものを魔術的な方法で封ずるしか無い。
基本的には各器に対応する悪魔が宿るが、魔力による刺激を与えると悪魔を強制的に他の器に移し替えることが可能である。また一つの器に複数の悪魔を封じることも可能である。
七つ全てを集めれば願いが叶う、「死者蘇生」も行えるなどの情報が文献によっては見当たるが真相は不明。大罪は七つとされていたが、後に「神の双子」が作った大罪は六つだけであり、「怠惰の器」だけが全くの別物であることが判明する。
ヴェノム・ソード
色欲」を象徴する蛇国様式の刀、鞘に蛇国語が書かれているが製造されたのは蛇国ではないらしい。
所有者は貞操観念や世間体を無視し、恋愛沙汰に衝動的になる。契約者は視線を交えるだけで異性を虜にする力を手にし、刀を媒介とした記憶操作や顔を変える魔術などを行える。デメリットとして異常なほどに性欲が増大し、定期的に性交して精気を摂取しなければならない。
悪魔と化した時は翼による飛行や高い治癒力の他、両手足が歪んだ形に変化し、山羊に似た悪魔の角が生える。ただし戦闘能力という点では他の悪魔に劣る。山羊は色欲の大罪に対応する動物である。
最初は銘を持たなかったが、最初の契約者であるヴェノマニア公にちなんでアイアールによって命名された。
宿る悪魔は成人男性らしき口調をしている。
悪魔の姿は、「羊」のようであるが鳥のような二本の足を持ち、尻尾は蛇のような形をしている。また、大きな羽を二枚、小さな羽を四枚、計六枚の羽を持つ。セカンドピリオド時代の名前はジル。
グラス・オブ・コンチータ
悪食」を象徴するワイングラス。大罪の器としては珍しく、美しいと評されている。
悪魔に憑かれたものは異常な食欲の増大などを見せ、契約者はそれに加えてありとあらゆるものを食することが可能になる。
ベルゼニアの風土病「グーラ病」を発生させる他、それによって死亡したものを生ける屍「屍兵」として蘇らせ操る能力を持つ。
なお、これらの能力はバニカ=コンチータをモデルにした御伽話『吸血娘ヴァニカ』での記述と一致している。
宿る悪魔は赤く禍々しい豚バエムの姿を取っていたが、契約者たるバニカ=コンチータが成り代わった。彼女はグラスの中に潜みつつ、近代に至るまで生前の人格と外見を保持し続けている。その戦闘能力は傲慢に次ぐ程の力だが、バニカの気紛れな性格上契約者にその力全てを与える事は滅多にない。
また器の中には、ヘンゼルとグレーテルの魂(ヘンゼルはE.C.611年、グレーテルはE.C.505年以降)が、「サーバンツ」として存在している。
グーラ病
悪食の器たるグラスと共に発生する奇病。
悪魔を宿したバエムの血肉を身体に取り込むことで発病し、五公「コンチータ」の家人がその犠牲となった。罹患者は絶え間無い食欲に襲われるが、手近に食物が存在しない場合は草や鉄などの異物を胃袋に詰め込み、その結果命を落とす。病名は魔道師AB-CIRが最初に発生した村の名前を取って便宜上名付けたものだが、一日に死ぬのは一人だけ・十年凌ぎきれば完治する・病というには端的過ぎる症状などから分かるように実態は呪いに近い。この症状は悪魔の器となるには身体が抗しきれなかった結果と、悪魔自体の口から語られている。
後にベルゼニアの風土病として定着した。こちらは症状として定期的な高熱を起こす他味覚異常を起こし、異常食に走る。厳密に前者の呪いと同一の現象であるかは不明だが「グラス・オブ・コンチータ」がその発生源であることは確かであり、グラスから作成された病原体と語られている。後のアルスI世が起こしたベルゼニア侵攻を切っ掛けに大陸全土に伝播し、皮肉にもその国王夫妻をはじめとして多くの人物がこの病を得て亡くなっている。特効薬は後世になってプエリック=ログゼによって開発された。
屍兵(しへい)
かつてグーラ病によって息絶えた死体が悪食の器たるグラスの力によって蘇った生ける屍。
漂白されたかのような全身と中空となった眼窩が特徴的な異形の化物であり、行動原理も基本的なゾンビのそれと言って差し支えない。人間以外の動物にも適用可能で死体の状態が白骨であろうと生前を偲ばれなくもない程度は肉付けされた状態となる。基本的にグラスを使用した者の命令には従うが、知性が乏しいのか細かい命令は聞かない。そのため、痛覚がないという利点を活かしても真っ当な軍事利用には不向きであった。現に要塞等の内部での混戦で敵味方の区別なく襲いかかる危険な側面を晒した。
ルシフェニアの四枚鏡
傲慢」を象徴する二対の。自分より美しいものはないという心からか『粗末』と言ってよい手鏡に作られている。
悪魔に憑かれたものは自信が増大するが、過ぎて傲慢となってしまう。
悪魔と化した際には色欲同様の外見の変異を起こし、六枚の翼を生やした飛行や高い戦闘能力を与える。その戦闘能力は大罪の悪魔たちの中でも高く憤怒に次ぐ程だが、他に特殊能力を持たない。
元は一枚だったが、アビスI.R.の手によって四枚に分けられる。鏡を通じて他の器に宿る悪魔を移し替えることが可能で、鏡自体も例外ではない。そのため、四枚全てを封じない限り悪魔の活動に影響を与えることが出来ない。
悪魔の姿は、手のひらに収まってしまうほど小さい。
カヨの鋏
嫉妬」を象徴する和鋏
元は「レヴィアンタの双剣」と呼ばれる剣だったが、「新生四騎士事件」を機にシャルテット=ラングレーの手に渡る。蛇国に移った彼女が追っ手の目を誤魔化すために鋏の形に加工したことから現在の形となった。能力は不明。
以降シャルテットからヴェノマニアに酷似した青年の手へ、その後時を経てカヨの手に渡った。
悪魔の姿は、全身が鱗に覆われていて魚のような形をしている。他の悪魔同様羽(ヒレのようにも見える)は生えているが、飛ぶよりも泳いだほうが速いという特徴を持つ。一人称は「わたくしめ」。正体はレヴィアの母、ラハブ=バリーゾールである。
マーロン・スプーン
強欲」を象徴する
所有者は金運に恵まれ、事業なども順風満帆になる。対象のみを指向して狙って燃やす青い炎を発する事ができる。
クロックワーカーズ・ドール
怠惰」を象徴する人形
原罪者の姿をそのまま象ったぜんまい仕掛けの人形で、全ての大罪の悪魔の「母」と呼ぶべき存在。
所有者は他に所有する大罪の器の力を使うことが出来る。特定の条件の下でなら、魔術の門外漢にも真価を発揮することが可能である。
元の器は人間であり、悪魔はミクリア=グリオニオ及びその先祖達に代々宿っていたが、彼女を模した人形に移し替えたことによって形を得る。他の器とは違い、後天的かつ人為的に作られた存在で、魔具の一種と解釈することも出来る。名も製作者のアイアールの本名に因んで命名されている。
宿る悪魔は一人称「僕」の少年らしい口調だが、怠惰の悪魔らしく面倒くさがりで何をするわけでもなくずっと眠っていたらしい。その正体は原罪者イブ=ムーンリットの魂そのものであり、本来なら存在しなかった「怠惰の悪魔」になりすまして、様々な形で介入していた。他人だけでなく自分自身ですら自分を普通の人間だと思い込んでしまう程の強力な催眠の力を持ち、時代ごとに自身にそっくりな人間として活動していた。
グリムジエンド
憤怒」を象徴する
この器だけは決まった姿を持たず、温度の変化によって十字架状やナイフの形などに変化する。[3]
他の器を押しのけ、最強を目される存在。七種の器で唯一、映画館にない最後の器。
この鍵を削って作られた粉末は強力な毒を持つが、とてもすごいタコのスミと一緒に服用すると万能薬になる。[4]
大罪の器が関わる事件で何らかの形で登場しており、持ち主はいずれも大罪の器の持ち主を殺害しようとする共通点がある。『悪ノ娘』の時代ではエルド派修道院の院長であるイヴェットが修道院に封印していたが、アビスI.R.が修道院を訪れた時には憤怒の器は封印の場所から無くなっていた。[5]
中に宿る悪魔は「セト=トワイライト」であり、彼は元「眷属」でありながら人間に転生、人としての死後に「憤怒の器」の中に宿ったと推測される。また彼と共に「アダム=ムーンリット」の魂も存在しており、大罪の器の持ち主を殺そうとするグリムジエンドの意思でもある。[6]

魔術

Ma(メム・アレフ)
レヴィアンタ魔道王国の母なるもの。『悪徳のジャッジメント』以降登場する『Ma』との関連性は不明
『Ma』計画
レヴィアンタ魔道王国に伝わる神竜レヴィアビヒモの生まれ変わりを人工的に造りだす計画。[7]
転身の術
術者と対象の肉体を入れ換える魔術。相当な技量が要求されるため、魔術の伝承が途絶えたエヴィリオスで扱えるのはエルルカくらいのものとされている。そのエルルカですら「罪」で蘇るまでは使う事ができず、魔術が盛んだった魔道王国でもエルルカ以外で使えた人間は、女王メリーゴーランドとその息子アダム=ムーンリット、原罪者イブ=ズヴェズタ、魔女メータ=ザルムホーファーの四人だけだったという。
精神に影響は出ないものの、魔術的には肉体が持つ素養や「予知夢」などの特性を引き継ぐ。
クロックワークの秘術
対象を異なった時空間に転移させる魔術。非常に難度が高く失敗した時の反動も計り知れないが、現状では人間に宿った「大罪の悪魔」を排除する唯一の方法とされる。 
ぜんまい仕掛けの子守唄(clockwork lullaby)
歌と魔術の親和性は高いのか歌声に乗せて魔術を行使する「呪歌」という手法も存在する。
ミカエラは古い歌と呼ばれるこれを探査魔法を行使する上で利用し、この際に「るりらるりら」という詞が明らかとされている。
とてもすごいネギ
ネギはルシフェニアでも少数だが高品質のものが採れ、エルフェゴートの特産品と言われている。
一方、「とてもすごいネギ」は魔導王国時代に作られた魔具であり、製作者も途絶えて久しい貴重品である。それは『とにかくすごい ひたすらに』とされ、遠隔地と映像を交えた通信に使用される。また、前提として持たせた相手を用件のある通信相手に引き合わせる効果もある。ただし、あくまで野菜のため劣化は早く、長期保管に当たっては専用の箱に収める必要がある。
ジズ・ティアマ/とてもすごいタコ
タコはマーロン国・ハーク海の特産品だが、グロテスクな外見からルシフェニアなどでは好まれておらず、あまり食用には供されていない。単に「アオダコ」とも。
一方でレヴィアンタ魔道王国では魔術の供物とされた他、転じてか再興後も同地域では盛んに食され、時代が移り変わっても七割ほどが消費されている。漁獲されるマーロンにおいても一部薬用に利用される以外、大部分が破棄されていたがバニカ=コンチータによる啓蒙によりベルゼニアに輸出されるようになり、同国における食文化の一翼を担うようになった。
また、前述の通り魔術関係者の間では「とてもすごいタコ」と呼ばれ珍重されている。彼女達曰く『とにかくすごい ひたすらに』らしく、生贄にすることで雨乞いをすることが可能である。また、魔道師の手によって覚醒したとてもすごいタコはクラーケンのような巨大な怪物と化すらしい。
月の満ち欠けは魔術の成否に大きく影響を与え、また新月となればほとんどの魔術が使えなくなる。
これは大罪の悪魔も同じだが、力を大きく損なう一方で満月による強大化は魔術の比ではないとされている。
ガラスの小瓶
シリーズに頻出する物品の一つ。
メータが双子のミルク入れに使用していたもの、『置き去り月夜抄』でヘンゼルとグレーテルが道標としたもの、『悪ノ娘』シリーズでリリアンヌがおまじないとして人に渡し、もしくは海に流していたものなどが存在する。
リリアンヌは「願いを書いた羊皮紙を小瓶に詰めて海に流す」という内容でのみガラスの小瓶のことを覚えていたが、幼少期の記憶を備えていたアレンはそこに「悪食の悪魔」との邂逅が関わっており、悪魔との契約を行うものであると認識していた。
ギネ・ドール
ネチュハという木材を加工して作られた人形の総称。

主な事件・出来事

「神の双子」の誕生
  • 年号:元年
  • 場所:レヴィアンタ魔道王国
紀元前からレヴィアンタ魔道王国で行われていた「第二次Ma計画」において、被験者であるメータ=ザルムホーファーが神の双子「ヘンゼル」と「グレーテル」を出産。これを機に「エヴィリオス歴」が定められた。しかし、メータが双子を連れて逃亡し、国を挙げて双子を捜索するも見つからず、計画は事実上失敗に終わった。
イブ=ムーンリットによる誘拐・殺人事件
  • 年号:001年
  • 場所:エルドゴート国・エルドの森
エルフェゴート国にあるエルドの森で、木こりであったイブ=ムーンリットが1歳の双子の子供を誘拐し、双子を取り戻そうとした母親を殺害した。これによりイブ=ムーンリットは「エヴィリオス歴」における原罪者として歴史上に名を残すことになる。
レヴィアンタの災厄
  • 年号:013年
  • 場所:レヴィアンタ魔道王国
レヴィアンタ魔道王国の王立研究所において、実験中に事故が発生したとされる。 実際は、エルルカに成りすましたレヴィアの声を聞いたキリル・クロックワーカーがセカンドピリオドから受け継いだ闇の遺産の一つ「罪」にエルルカの亡骸を入れ、クロックワークの秘術を使い、エルルカを復活させようとしたものである。大規模な爆発が起こりその影響は周辺国にまで及び、事実上レヴィアンタ魔道王国は崩壊した。その影響を受け、隣国エルドゴート国では飢餓・疫病が深刻化する。
木こり夫婦殺人事件
  • 年号:014年
  • 場所:エルドゴート国・エルドの森
エルフェゴート国にあるエルドの森で、アダム=ムーンリットとイブ=ムーンリットが養子であった双子に殺害される。
ヴェノマニア事件
  • 年号:136年
  • 場所:ベルゼニア帝国・アスモディン地方
ベルゼニア帝国内で多数の女性が突如行方不明になった事件。国内外問わず王族の女性にまで被害が及んだ為、国際問題に発展しかかる。犯人はベルゼニア帝国アスモディン地方を治めていた「五公」のサテリアジス=ヴェノマニア公爵で、女性を誘拐し屋敷の地下に監禁していた。翌年にマーロンの貴族・カーチェス=クリムがサテリアジス=ヴェノマニアを殺害した事で事件及び犯人が発覚した。
ヴェノマニア公のこの行いは「一夫一妻」を美徳とする敬虔なレヴィン教からの受けが非常に悪く、以後ヴェノマニアの子孫は「アスモディンの悪魔」と呼ばれ長きに渡り迫害される。
人食い娘・コンチータ行方不明事件
  • 年号:325年
  • 場所:ベルゼニア帝国・コンチータ領
ベルゼニア帝国コンチータ領にて、領主バニカ=コンチータが食人行為をしているという噂が立つ。彼女が悪魔と契約している噂もあり、当時の女帝ジュノ=ベルゼニアからの依頼を受け魔道師エルルカ=クロックワーカーが調査に乗り出すが、バニカが行方不明になり調査が中断される。
緑狩り令
  • 年号:500年
  • 場所:ルシフェニア王国
マーロン国の王カイル=マーロンがエルフェ人の一般人女性に好意を抱いた為、ルシフェニア王国の王女リリアンヌ=ルシフェン=ドートゥリシュとの婚姻を破棄、嫉妬した王女による「緑狩り令」が発令する。ルシフェニア軍がエルフェゴート国に侵攻し、エルフェ人女性の大量虐殺が行われる。目的のエルフェ人女性が殺害された為、侵攻が終了する。
ルシフェニア革命
  • 年号:500年
  • 場所:ルシフェニア王国
ルシフェニア国の王女リリアンヌの暴権による圧政によって、三英雄レオンハルト=アヴァドニアの娘ジェルメイヌ=アヴァドニアを中心とした市民による革命が勃発。王女リリアンヌは捕らわれ、革命軍によって処刑された。王女リリアンヌの名はその後「悪ノ娘」という忌み名で後世まで語り継がれることになる。
新生四騎士事件
  • 年号:508年
  • 場所:神聖レヴィアンタ
宗教大国であった当時のレヴィアンタでは、一部の改革強硬派がレヴィン大教会と衝突していたが、大教会の幹部候補ミハイル=アサエフが強硬派三人と接触して「ネオ・アポカリプス」を結成し、国内でテロ行為を繰り返すようになる。大教会は他国にテロ鎮圧を要求するもルシフェニア共和国からの一部隊が派遣されるのみで、逆に「ネオ・アポカリプス」を刺激してしまい、大教会陥落を狙った大規模なテロ事件「新生四騎士事件」にまで発展した。この事件にはルシフェニア革命の中心人物であったジェルメイヌ=アヴァドニアも関わっていたが、彼女はそれ以降姿を消している。
ミハイル=アサエフが強硬派と接触した理由は、自身を差し置いて出世していく同期に対する「嫉妬」が原因だったようで、「嫉妬の器」が関わっていたとされる。「ネオ・アポカリプス」の名前の由来は、かつてレヴィアンタ魔道王国に存在していた犯罪組織「アポカリプス」がもとになっており、「アポカリプス」もペイル=ノエルやメータ=ザルムホーファーを含めた四人が率いていた。
トラゲイ連続殺人事件(トラゲイ奇病騒動)
  • 年号:609年
  • 場所:エルフェゴート国・トラゲイ
エルフェゴート国・トラゲイの街において、住民が次々と死亡する怪事件が発生する。フリージス財団の調査の結果、犯人は医者の娘であった侯爵夫人マルガリータ=ブランケンハイムで彼女による無差別毒殺事件であった事が判明するが、トラゲイの街は既に壊滅しマルガリータも自殺していた。
 犯罪組織ペールノエルの活動が深刻化(ロールド連続殺人事件など)
  • 年号:610年
  • 場所:ルシフェニア共和国・ロールド
 メリゴド高地の決闘
  • 年号:611年
  • 場所:エルフェゴート国・
エルフェゴート北部メリゴド高地にて、エルルカ=クロックワーカーとイリーナ=クロックワーカーの決闘が行われる。
カヨ=スドウによる連続殺人事件
  • 年号:842年
  • 場所:蛇国・円尾坂
東方の島国である蛇国の円尾坂付近で、一家全員が次々と殺された事件。犯人は円尾坂で仕立て屋を営んでいるカヨ=スドウ。
アイシケル条約
  • 年号:878年
  • 場所:マーロン・レヴィアンタ・エルフェゴート・ルシフェニア
マーロン・レヴィアンタ・エルフェゴート・ルシフェニア四国による連合国家USE(Union State of Evillious)が結成。
レヴィアンタの内乱
  • 年号:983年
  • 場所:USE
USE暗星庁の裁判長ガレリアン=マーロンが、民衆殺しの将軍トニー=オースディンの裁判において無罪判決をした為、両者の癒着が発覚。反発した民衆による暴動が「レヴィアンタの内乱」と呼ばれる内乱にまで発展し、両者は惨殺される。
ガレリアン=マーロンの遺産は懇意の脚本家『Ma』が相続し、前年に千年樹の森に建設した映画館に移している。その後映画館にガレリアンの莫大な遺産が隠されているという噂が立ち、何人もの人間が千年樹の森に入るが帰って来た者はおらず、いつしか千年樹の森は呪われた森と呼ばれるようになる。

原罪

原罪物語-第一幕-
エヴィリオス歴を紀元前まで遡り『七つの大罪』、『ヘンゼルとグレーテル』出生を描く物語。[8]
原罪物語-第二幕-
「エルルカ」と「イリーナ」の因縁の始まりを描く物語。[9]


キャラクター

エルルカ=クロックワーカー(Elluka Clockworker)/レヴィア
レヴィアンタの災厄を生き残った数人のうちの一人にして悠久の時を生き続ける魔道師。義妹・イリーナ=クロックワーカーに一度殺されているが、婚約者キリル=クロックワーカーが彼女の遺体を箱舟「罪」に入れたことで不老不死として蘇った。その際に「罪」が神竜レヴィアビヒモも呼び寄せてしまったことで、レヴィアンタ魔道王国は滅亡を迎えた。強い魔力を持っているが、「罪」で蘇るまでは「転身の術」を使うことが出来なかった。
故国の滅亡後に地神エルドの依頼を受け、悪意の拡散を食い止めようと歴史の裏舞台で奮闘をはじめている。人助けをしながら「大罪の器」の影を追って各地を放浪しており、各地の有力者に少なからず影響力を持つ。悪ノP曰く自覚のない根っからのお人好し。
その正体は、イリーナに殺されて死んだ「エルルカ=クロックワーカー」を憑代として蘇ったレヴィア神。レヴィアビヒモが封印されている箱舟「罪」がキリル=クロックワーカーによって解かれたものの、レヴィアビヒモの魂は本来の肉体である双竜ではなく、エルルカの亡骸に宿ってしまった。転生のルールで記憶を失い、身体に残っていた「エルルカ」の記憶から自分が「エルルカ=クロックワーカー」だと思い込んでおり、また僅かながらにレヴィアとしての記憶もあった為、自分とエルドが友人だと思っていた。人間の知り合いがいないエルドは、彼女が記憶を失ったレヴィアであることに気づき、彼女を監視するために「大罪の器」探しを命じた。なお、弟のビヒモ神も同じように「エルルカ=クロックワーカー」に宿っていたが、姉が表に出ていた為に表層意識に出ることができず、レヴィアの魂の奥底で眠り続けていた。
本来は金髪碧眼巻き毛の人形染みた美女の姿で不老不死の身体であるが、「転身の術」で定期的に身体を交換しなければ維持できない。最初はヴェノマニアの事件でルカーナ=オクト(モチーフ:巡音ルカ)と身体を交換し、彼女が持つ強い魔力と「紫の夢」と呼ばれる予知夢の力を手に入れた。その後長い間ルカーナの姿でいたが842年頃には体に劣化が見られ始め、その容姿を羨ましがった首藤禍世(カヨ=スドウ)という黒髪の和風の女性と姿を交換した。なお、楽曲における彼女のパートは、容姿がオリジナルでも巡音ルカが担当している。
エルルカ=チルクラシア
キリル=クロックワーカーの婚約者であり、イリーナ=クロックワーカーの義姉。「her」を治療することのできるライウォッチの巫女であったが、レヴィアンタ魔道王国では「悪神」と呼ばれていたエルドと内通しているとの噂があり、神殿を追い出されてしまった。最もライウォッチの巫女は生涯をレヴィアンタ魔道王国で過ごさなければならないという掟があり、彼女自身はエルドとは面識はなく、そもそもエルドが人間に話しかけること自体がなかった。
その後はキリルの治療と手伝いをしながら過ごしていたが、「第七次Ma計画」の候補者として義妹と共に選ばれ、血みどろの争いを繰り広げる。兄を慕っていたイリーナは自分から「her」としての兄を奪ったエルルカを快く思っておらず、エルルカはイリーナに殺された。エルルカの亡骸はレヴィアの声を聴いたキリルによって箱舟「罪」の中に入れられるも、神やその眷属ではないエルルカは転生することはなく、彼女の身体はレヴィアビヒモの魂の器となった。
イリーナ=クロックワーカー
レヴィアンタの災厄を生き残った数人のうちの一人で「her」の魔道師。ぜんまい使いキリル=クロックワーカーの妹で、彼の婚約者であったエルルカの義妹にあたる。「第七次Ma計画」の候補者のひとりであり、十二番目の「her」であった彼女は義姉や他の候補者たちを殺しその座につくも、レヴィアンタの崩壊によってそれは叶わぬものとなった。
レヴィアンタ崩壊後は、セトにより赤い猫のぬいぐるみにその意志を宿した存在となる。ぬいぐるみは普通の猫と同じ俊敏さを備える以外は魔術も使えない無力な物だが、人間を乗っ取り傀儡とする能力を持っている。魔力の高い者を見つけては己の目的のために自分のものとし、「大罪の器」を狙って名と姿を変えながら陰謀を巡らせ歴史の裏で暗躍してきたが、彼女はエルルカが蘇った事はまだ知らなかった。
炎を操る魔術を好んで使う関係からか、口癖は「消し炭にするぞ」。本体が単独で行動している時はともかく人間を灰にし、一村を簡単に滅ぼすだけの力は有している。傀儡とされた人間が彼女の支配から脱するのは困難で、本体の赤猫が離れている時も糸の切れた人形のようになって本人が意識を取り戻すことはない。ただ、意識の残滓らしきものは本人も感じ取り、僅かなりとも影響を受けるようである。
イブ=ムーンリット(Eve Moonlit)
  • モチーフ:初音ミク
  • 年齢:NO DATA(?-014)
  • 国籍:エルフェゴート国
  • 人種:エルフェ人
旧姓は「ズヴェズタ」。強い魔力の持ち主であった為「第一次Ma計画」の被験者に選ばれ、アダムに選ばれ洗脳された。計画の失敗後001年にアダムとふたりで国を離れ、木こりとして暮らしていたエルドの森で、メータの連れていた双子(後のヘンゼルとグレーテル)を発見し我が子として連れ去り、双子を取り戻そうとした母親のメータもこの際に殺害した。彼女はエヴィリオス歴初の犯罪者にして「原罪者」として歴史に刻まれることになる。その後、レヴィアンタの滅亡による飢餓で生活に困窮し、双子を捨てるが、戻って来た双子に「魔女」として殺された。その後、強い魔力の持ち主であったことから双子によってアダムと共に「大罪の悪魔」の素材にされた。
エルルカによれば「第一次Ma計画」に失敗した彼女には子孫がおらず、にも関わらずイブ(初音ミク)に似た姿の人間(ミクリア=グリオニオやプラトニックなど)が現れている。またその姿を模した存在としてミカエラや「クロックワーカーズ・ドール」が後の歴史に登場している。
実は「怠惰の悪魔」の正体。双子が殺害したイブとアダムを素材に六つの悪魔と器を生み出した際に、イブの魂は本来なら存在しなかった七つ目の「怠惰の悪魔」として世界に飛び立った。その後は「転身の術」を使って時代ごとに違う人間に宿主を変え、宿主を自分に瓜二つな容貌に変えさせていた。アイアールが自分用の器を作ったことで人に乗り移る必要がなくなり、「転身の術」と強力な催眠で「ミクリア」や「プラトニック」などに成りすまして様々な事件に関わってきた。
余談ではあるが、初期の頃には「イヴ」と表記されていたが、現在は「イブ」という表記が多くなってきている。これは作者twitterによると、深い意味は無いとのこと。
アダム=ムーンリット(Adam Moonlit)
  • モチーフ:KAITO
  • 年齢:NO DATA(?-014)
原罪者イブの夫。女王メリーゴーランドの息子であり、かつては「第一次Ma計画」の責任者である科学者だったが、イブと共に国を離れてエルドの森で木こりとして暮らしていた。014年に飢餓による困窮で育ててきた双子を捨てた後、その双子に「魔女の子分」として妻共々殺害される。「転身の術」を使う事ができる程の強力な魔力の持ち主であった為、妻のイブと共に彼の魂と身体は「大罪の悪魔」の素材にされた。彼の魂はセト=トワイライトと共に憤怒の器「グリムジエンド」に宿り、怒りに囚われた持ち主たちが大罪の器の持ち主を殺す際に干渉し力を貸していた。
悪魔達に「アダムの魂」と呼ばれる人間が後世に現れたり、墓場の主は強欲の器マーロン・スプーンのなれの果てである歯車のことを「アダムの魂」と呼んでいるが、関連性は不明。エルルカはアダムと直接的な面識はないものの、正統マーロン王家の祖となったカーチェス=クリムを筆頭に、代々のマーロン王家の血縁者にアダムに似た人間が多いことに対して疑問を抱いている。
メータ=ザルムホーファー(Meta Salmhofer)
  • モチーフ:MEIKO
  • 年齢:NO DATA(?-001)
「第二次Ma計画」の被験者で、「神の双子」の実母。かつてビーカーの中で造り出された三番目の「人造体」であり、「転身の術」を使えるほどの強い魔力を持ち主。好意を抱いていたペイル=ノエルが殺人者であった影響から、彼女も悪行に身を染めていた。恋人が首領を務める犯罪組織アポカリプスの中心メンバーで、「メリゴドの魔女」の異名を持つ。
投獄されていたがセト=トワイライトの手引きで自由の身になり、引き換えに彼の実行していた計画の被験体となり、神の種を植えこまれて父親のいない双子(後のヘンゼルとグレーテル)を出産した。やがて自らの過去を思い出したのと同時に我が子に対する母性が生まれ、自分のように実験体になって欲しくないという思いから双子を連れて逃亡するが、潜伏先のエルドの森でイブに殺される。
彼女の信奉者からは「神の双子」を生んだ聖母として崇められているが、レヴィン教はメータは「魔女」であり犯罪者であったとその説を公式に否定している。
ヘンゼル=ムーンリット(Hänsel Moonlit)
「神の双子」と呼ばれるMa計画の産物。創造神曰くビヒモ神の劣化コピー。赤ん坊の時に母が殺され、ムーンリット夫妻に引き取られるが、その後生活に困窮したため捨てられる。家に戻って来た時に養父母を「魔女とその手下」として殺害し、偽りの母から生まれた「原罪」から「七つの大罪」を生み出し世界にばらまき、グレーテルとともに自ら命を絶った。
「ヘンゼル」の魂は転生を繰り返して後世に現れており、グレーテルと共に双子として生まれていた。しかし転生を繰り返していく中で存在意義を忘れていき、「レミー」として転生したのを最期に、「悪食の悪魔」と共に在り続けている。なおこの転生の際、「グレーテル」は100年ほど早く「ネイ」として転生した。
グレーテル=ムーンリット(Gretel Moonlit)
「神の双子」と呼ばれるMa計画の産物。創造神曰くレヴィア神の劣化コピー。赤ん坊の時に母が殺され、ムーンリット夫妻に引き取られるが、その後生活に困窮したため捨てられる。家に戻って来た時に養父母を「魔女とその手下」として殺害し、偽りの母から生まれた「七つの大罪」を世界にばらまいた。ヘンゼルとともに自ら命を絶った。
「グレーテル」の魂はヘンゼルと共に転生を繰り返して後世の歴史に現れていた。しかし転生を繰り返していく中で存在意義を忘れていき、「悪ノ娘」時代で「リリアンヌ」ではなく「ネイ」として転生し、それを最後に「悪食の悪魔」と共に在り続けている。なおこの転生の際、「ヘンゼル」は100年ほど遅れて「レミー」として転生した。
セト=トワイライト(Seth Twi【R】ight)
「Ma計画」の責任者である「her」の科学者。メータ=ザルムホーファーに、自由と引き換えに「第二次Ma計画」の実験体になるよう取引した。全ての「her」の生みの親であり、当初は自分のクローンという形で「ペイル=ノエル」と「キリル=クロックワーカー」を生み出し、彼らは自分と同様に優れた頭脳と才覚を持っていたが、自分に瓜二つのペイルが犯罪者としてあまりにも有名になりすぎてしまった為、三番目の「メータ=ザルムホーファー」以降は全く別人として作っていた。イリーナ・クロックワーカーは7番目のセトが作ったherである。また「神の双子」に使われている神の種にも細工を施しており、生まれた双子が「her」になるように仕組んでいた。
その正体は神の眷属のひとりであり、『サードピリオド』に紛れ込んできた『セカンドピリオド』を滅ぼした「her」の生き残り。神の目を盗んで記憶を保持しながら人間として転生し、「her」の意思を拡大させていった。レヴィアンタの滅亡後、満身創痍だったセトはイリーナを赤猫にしたあとに人間として死亡。その後は「神の双子」が作った「大罪の器」のうち憤怒の器「グリムジエンド」にアダムと共に宿り、「憤怒の悪魔」として世界の成り行きを見てきた。
ペイル=ノエル(Pale Noel)
歴史上太古の犯罪組織アポカリプスの中心メンバーで、「悪意の主」の異名を持つリーダー格。メータから好意を抱かれていた。セトによって作られた一番目の「her」であり、「her」としての才覚を発揮している。あまりにも有名になってしまった為、セトは「生き別れの双子」だと言って周囲を誤魔化していた。
609年に発生した「トラゲイ連続殺人事件」に関わったとされる犯罪組織「ペールノエル」は、彼の名前が元になっている。
熱魔雷沙(ライサ=ネツマ)
歴史上太古の犯罪組織アポカリプスの中心メンバーで、「蛇国の白鬼」の異名を持つ。蛇魔台国から移住してきた熱魔(ネツマ)族の三代目の長。メータとは親友同士であったが、メータが軍に捕らわれた際に命を落としている。
エゴール=アサエフ
歴史上太古の犯罪組織アポカリプスの中心メンバーで、「黒男爵」の異名を持つ。508年におきた「新生四騎士事件」でネオアポカリプスを創設したミハエル=アサエフの先祖。
キリル=クロックワーカー
エルルカの婚約者で、イリーナの兄。セトによって作られた二番目の「her」であるものの、彼自身はその運命に抗おうとしており、ライウォッチの巫女だったエルルカの治療を受けていた。
ぜんまい使い(クロックワーカー)と呼ばれるオルゴール職人で、その腕前は非常に評判が良かった。しかしエルルカがイリーナに殺されてしまい、悲しみにくれた彼は死んだ筈のエルルカの声を聴く。それは彼女に成りすましたレヴィアの声であったが、彼は恋人を蘇らすためにぜんまい使いとしての知識を使って封印を解き、彼女の遺体を箱舟「罪」に入れてしまった。その結果レヴィアビヒモは蘇ろうとするも、「箱舟」の暴走で彼らの魂はエルルカの亡骸に宿ってしまい、封印が解かれたレヴィアビヒモの肉体であった双竜は魂のないまま暴走してしまい、瀕死のキリルは竜に噛み千切られて死亡。

ヴェノマニア公の狂気

2010年7月にニコニコ動画に投稿された楽曲。神威がくぽをメインヴォーカルに据え、その他VOCALOIDを多数使用した、ミュージカル仕立ての楽曲。

「大罪」シリーズとしては最古となる話であり、作中の暦では136年の事件である。

2012年12月に『大罪シリーズ』の第一弾として小説が刊行されている。

悪ノPの一言
ものすごく単純に言ってしまえば「男ってホントに馬鹿よね」っていう曲です。しかし男が馬鹿になるのは大概理由があるのです。歪んだコンプレックスは。男をより愚者に変えます。それはもう、いとも簡単に。[10]

ストーリー

エヴィリオス歴136年、ベルゼニア帝国アスモディン地方にて女性連続失踪事件が発生。

美しいという点を除けばまるで被害者の女性に共通点の無い一連の事件は、それを追う者達を嘲笑うかのように犯人の足取りさえも掴ませずに犠牲者を次々と増やしていく。

その魔手は市井の庶民に留まらずに貴族皇族にまで及び、捜査に関与した貴族たちも次々と襲撃される。そんな一人に最初期の被害者であり、事件のショックから邸宅に一人残り使用人さえ身近に置こうとはしない男がいた。

アスモディン領主サテリジアス=ヴェノマニア、彼が自邸の地下室に隠すものは欲望の赴くままに集めた女達の坩堝「ハーレム」である。理想的な貴族として振る舞う彼がなぜ? 何を為したのか? その影には一人の魔道師、そして悪魔の存在があった……。

キャラクター

サテリアジス=ヴェノマニア/ケルビム
  • モチーフ:神威がくぽ
  • 年齢:24歳没(113-137)
  • 国籍:ベルゼニア帝国
  • 人種:アスモディン人
ベルゼニア帝国アスモディン地方を治める公爵
ヴェノマニアは国内では富国強兵を推進した「五公」と呼ばれる有力貴族の一人として知られ、地元での評価は高かった。何らかの絶望から家人を一人残さず虐殺した現場をアイアールが発見したことから彼女と出会い、彼女の持ちかけにより悪魔との契約を行う。その結果一度目を合わせた女性を虜とする力を得、自邸の地下室に一大ハーレムを作り上げる。またアイアールと共に目撃者の記憶を消すための儀式を行っているが、最初に行った時に儀式の失敗で記憶を失ってしまった。
その正体は「サテリアジス=ヴェノマニア」の異母兄であるケルビム。前当主であるイーロット=ヴェノマニア公爵と前妻のニルフォとの間に生まれたが、生まれつき右の頬に人面瘡があり、母ニルフォは前に男性使用人との密通の末に堕胎した子の呪いだと思い、自殺。その事情を知らない父イーロットからは愛する妻を奪ったと憎まれ、「悪魔の子」として地下牢に軟禁された。その後だいぶ成長した頃、後妻の子である本物のサテリアジスが同情して父親に懇願したことで牢屋から解放され、「ケルビム」という名前を与えられ使用人として働くことになったが、醜い顔を持つことから弟サテリアジスと幼馴染のグミナ以外からは忌み嫌われていた。グミナに好意を抱いていたが、弟がグミナの婚約者である事もあり、その思いを隠していた。けれど次第に自分にないものを持つ弟を妬むようになっていく。そしてグミナに罵られたことをきっかけに心が壊れ凶行に至り、アイアールの持つ色欲の悪魔と契約した。
悪魔の力で邪魔をする貴族たちも次々と排除し、目撃者の記憶を改変させることで疑われることなく次々と女性を誘拐するも、悪魔の術が比較的効きにくいエルド派の目撃証言から徐々に容疑がかかり、そのことからアイアールに離反された。そしてそのタイミングで同属である大罪の器を持つカーチェスに暗殺される。瀕死の彼と共にハーレムは瓦解し、薄れゆく意識の中で真実の記憶を思い出し、本当に欲しかったグミナへの愛を伝えることができない絶望を抱えたまま息絶えた。
後年、彼を指して「色情公爵」とも。また、彼の子孫たちは「アスモディンの悪魔」と呼ばれ長きに渡って迫害された。
姓名の由来はそのまま男子色情狂「Satyriasis」と、「毒」、「悪意」等を意味する「Venom」及び女子色情狂「Nymphomania」を合わせた造語から。[11]
サテリアジス=ヴェノマニア
ケルビムの異母弟で、伯爵位を受けたヴェノマニア公爵家の正統な後継者。地元の人たちにも気さくで優しい青年であったらしい。牢屋に軟禁されていた兄を不憫に思い、父親に懇願して牢屋から解放した。
婚約者である幼馴染のグミナに好意を抱いていたが、グミナがその婚姻を破棄しようとしていることを知り、深く落胆する。そしてグミナとケルビムの仲を疑い始め、兄を暗殺しようとしていた。その後、ケルビムに屋敷の者たちと共に殺害され、名と存在を奪われる。
アイアール
  • モチーフ:?(ハル=ネツマ)
  • 人種:ネツマ族
「大罪の器」を集め、世界に悪意をばら撒こうと目論む邪悪な魔道師で、この時代におけるイリーナ=クロックワーカーである。
この時代はネツマ族の少女「ハル=ネツマ」の身体を乗っ取っており、白髪をおさげをした小柄な少女の姿をしている。サテリアジス(ケルビム)が屋敷の人間を全員殺害した現場を目撃し、その「悪」の可能性からサテリアジスに色欲の悪魔との契約を持ち出し、彼の所業を見守ることにした。
強い魔力を持つ「ハル=ネツマ」の身体を気に入っており、しばらくはその身体を活用したいという思いから、サテリアジスと行動する時は本体の「赤猫」の姿で行動している。この時は悪魔と契約したサテリアジスか、悪魔をその身に宿すミクリアにしか声が聞こえない。やや天然なサテリアジスやミクリア、ハル=ネツマの姉であるハクアに振り回されることも多い。
サテリアジスが見境なく気に入った女性を誘拐していき、騒ぎが大きくなってしまった事とサテリアジスに疑惑を抱く者が現れ始めたことから、エルルカが嗅ぎつける前に引き上げることを決意する。その際に強い魔力を持っていることから自分の身体にしようと目論んでいたルカーナに乗り移るも、サテリアジスに止められてやむなく諦めた。事態が収拾した後は、ミクリアから移した怠惰の悪魔を宿す「ぜんまい仕掛けの人形」を手に入れたこと、そしてヴェノマニアの血を引く悪魔の子が三人生まれたという結果に満足し、消えて行った。
エルルカ=クロックワーカー(Elluka Clockworker)
  • モチーフ:なし/巡音ルカ(ルカーナ=オクト)
エヴィリオス地方各地で人助けを行うさすらいの魔道師。金髪に人形のような容姿を持つ。
アスモディン地方でおきた「女性連続失踪事件」に、ユフィーナとメイリスが行方不明になったのをきっかけにマーロン国とベルゼニア皇帝家から捜査を依頼される。この事件に悪魔と「大罪の器」が絡んでいると確信し、ついでにカーチェスが持つ大罪の器「黄金の鍵」を手に入れようと算段するも、カーチェスが独断でサテリアジスを殺害して失踪したことから計画が狂い、結局「大罪の器」を手に入れることができずに終わった。
その後、アイアールに身体を狙われていたルカーナ=オクトに出会い、アイアールの傀儡にされることを防ぐために彼女と身体を交換した。その結果、ルカーナに内包されていた強力な魔力と、「紫の夢」と呼ばれる予知夢を手に入れた。
カーチェス=クリム
マーロン国の伯爵。表向きは国のために尽くす忠義の厚い青年だが、裏では王妃ユフィーナと不義を働いていた。夫の里帰りとしてベルゼニア帝国に向かったユフィーナから、大罪の器「黄金の鍵」を託されていた。
ユフィーナへの愛は深く、彼女が病にかかってベルゼニア帝国から帰って来れないという国の発表を不審に思い、王に迫って真実を吐かせた上に、単身でベルゼニア帝国まで捜しに来た程。地道な現地調査からアスモディン地方の領主ヴェノマニア公爵が怪しいと踏み、国から依頼を受けて合流してきたエルルカから公爵を倒すにはユフィーナが託した「黄金の鍵」が必要であることを聞く。そして女装をして独断でヴェノマニアの屋敷に赴き、「エルルカ」の名を名乗ってヴェノマニアの油断を誘い、短剣に変化した「黄金の鍵」で殺害。ユフィーナを連れて屋敷から脱出し、そのまま駆け落ちした。そのためベルゼニア帝国からは犯罪者であったとはいえ独断で「五公」を殺害した罪で、マーロン国からは王妃と共に駆け落ちした件で指名手配されている。
後にユフィーナが正統なマーロン王家の血筋を引いている事を利用して、周辺貴族を味方につけ「正統マーロン国」を建国した。
トーイ=コンチータ
  • 年齢:30歳
ベルゼニア帝国の男爵で、メイリス王女の直属の臣下。カーチェスとは友人で、ユフィーナとの不倫関係を知る数少ない人物。メイリスの命令で「女性連続失踪事件」について捜査しており、カーチェスを捜査に加えるようメイリスに進言した。
メイリスの我が儘に根を上げないで付いてきた臣下で、彼女から密かに好意を抱かれているが、既婚者で妻とは仲睦ましい夫婦である。妻との間に子宝に恵まれなかった為、後にメイリスが生んだヴェノマニアの子を養子として引き取り、実の娘として育てた。
マルチウス=マーロン
ベルゼニア帝国第二皇子。マーロン王家の正統な後継者ユフィーナのもとに婿養子として嫁いだ、現マーロン国王。他の兄弟同様肥満型。
王としては臆病と称される程の優し過ぎる気質の持ち主で、末妹のメイリスからは密かに軽蔑されている。妻のユフィーナも夫のことは嫌いではないものの、丁寧過ぎる扱いに不満を抱いている。

ヴェノマニア・ハーレム

ヴェノマニア公が気に入った女性たちを洗脳して誘拐し、地下に作り上げたハーレム。悪魔をその身に宿したヴェノマニア公と情交をすると、徐々に精気が悪魔に吸収されていってしまう。ヴェノマニア公がカーチェスに討たれた時点ではひとりが死亡しており、解放された女性たちも何人かはその後間もなく衰弱死している。

ヴェノマニア公との間に子を宿していたのは、ルカーナ、ミクリア、メイリスの三名だけであった。そのうちのミクリアの息子は子孫を残すことなく子どもの頃に亡くなった為、ヴェノマニアの血族はコンチータ家に引き取られたメイリスの娘と、世界各地に散るルカーナの娘から流れることになる(殆どがルカーナの子孫であるとのこと)。またグミナの子孫がコンチータ家に嫁いだ為、バニカ=コンチータの代からはメイリスの子孫にグミナの血筋も汲まれるようになる。

グミナ=グラスレッド
  • モチーフ:GUMI
  • 年齢:21歳
  • 宗教:レヴィン教エルド派
ヴェノマニア公爵家と強い繋がりを持つグラスレッド侯爵の一人娘。ケルビムとサテリアジスの幼馴染みで、サテリアジスの婚約者。貴族らしく絵画等の趣味も持ち合わせる。サテリアジスに強く執着されており、父親の留守中にサテリアジスに屋敷を襲撃され臣下のカロルと共にハーレム入りとなる。典型的な貴族のお嬢様であった為、庶民であるミクリアやローランとは犬猿の仲であったが、ハーレムの人数が増えるにあたって心身共に余裕ができはじめた。
実は親の言いなりになるのが嫌で、サテリアジスとの婚姻を破棄しようとしていた。それが原因でケルビムを暗殺しようとしていることを知ってしまい、サテリアジスが盗み見ている時にわざとケルビムを罵ったが、そのことで彼の心を壊してしまう。洗脳が解けた時に顔が戻りつつあったケルビムを一瞬見たが、その手を取ることなく最後に屋敷から出て行った。ケルビムに好意を持っていたのかは不明だが、カロルの推測に本人は否定はしなかった。
事件終結後は風聞を嫌って縁戚のいるエルフェゴート国に亡命し、官僚として女性の地位向上に努めた。晩年は同国初の女性宰相にまで上り詰める。カルガランドの町ではミクリア(実際は既に死んでいたミクリアに成りすましていた「怠惰の悪魔」)と再会し、領主と結婚した彼女とその夫の肖像画を残している。
グミナの子孫がバニカ=コンチータの母メグル=コンチータである。後にエルルカの弟子となる精霊グーミリアは、グミナの姿をモデルにしている。
ルカーナ=オクト
アスモディン地方ミスティカに住む仕立て屋でルーブ・オクトパス族「女性連続失踪事件」最初の犠牲者である。アイアールが目をつける程の強い魔力を秘めており、「紫の夢」と呼ばれる予知能力を持つ。幼少時代にエルルカと面識があり、水が豊富なミスティカが干ばつする夢を見て誰に話しても信じてもらえなかった中、たまたま街を訪れていたエルルカのみが彼女の話を信じて街を救うために旅立ち、やがて干ばつが街を襲った際に戻ってきたエルルカが「とてもすごいタコ」を生贄に雨乞いで街を救った。
ヴェノマニア公には個人的に好意を抱いており、洗脳されつつも彼の身を案じていた。気配り上手な性格からかハーレム内での人間関係のまとめ役でもあり、ハーレムの女性たちが着ている服も全て彼女が仕立てている。後半に同じくハーレム入りとなった親友リリエンとの再会と、ローランが死んだことに悲しむ素振りすら見せなかったヴェノマニア公に対する憤りから、徐々に洗脳が解けていった。
事件終結後は友人のリリエン、ラージフと共に身籠っていた子を連れてアイアールの追跡をかわすも、彼女の身を案じたエルルカの一計により互いの身体を交換する。
ミクリア=グリオニオ
アスモディン地方アビト村に暮らす農民。
赤ん坊の時、道端に捨てられていたところをある夫婦に拾われる。少々知恵遅れなところがありそのことから愛に恵まれず、自分は高貴な血筋でいつかは不幸な境遇から救ってくれる王子様が現れるのだと本気で信じてしまっている。彼女の無邪気な妄想はヴェノマニア公の凶行を目撃したことにより、口封じに現れた彼の誘惑にあえて乗ったことである意味で叶えられた。
原罪者そのものの姿をしており、彼女の血族は代々「怠惰の悪魔」をその身に宿してきた。祖母の死後ミクリアに「怠惰の悪魔」が宿り、その恩恵からヴェノマニア公の洗脳が効かず、ハーレムの中では唯一洗脳されずに自分の意志でハーレム入りをしていた。後に彼女に「怠惰の悪魔」が宿っていたことに気付いたアイアールから人形を与えられ、ミクリアに宿っていた悪魔は人形に移る。ハーレム生活の後半では長い付き合いであったローランがヴェノマニア公の悪魔のせいで死んだ事で、彼女にも思うところができはじめ、ヴェノマニア公に深入りすることを避けていた。
事件後はラサランドの町で娼婦として暮らし、その後ヴェノマニアの子を出産している。『プラトーの花』では高原のカルガランドの町に移り住んだミクリアが描かれ、領主のギルベルドと結婚しているが、実は本物のミクリアはカルガランドの町に行っておらず、子を産んで間もなくエルルカに看取られて亡くなっている。夫ギルベルドとミクリアが娼婦だったことを知る男と母親を訪ねてきたミクリアの息子を殺害したのは、器を得て催眠で彼女に成りすましていた「怠惰の悪魔」ことイブ=ムーンリットであった。
ローラン=イブ
  • 年齢:32歳
リザ・アの町にある劇場の花形の踊り子。浅黒い健康的な肌の持ち主で、周辺に噂が広まる程の美女だが、同性愛者であった為に男性経験は殆どなかったらしい。彼女の噂を聞いていたヴェノマニア公に誘惑され、ハーレム入りとなる。ミクリアと同じくグミナとは非常に仲が悪かった。
元々の性嗜好を洗脳で無理矢理変えられたことから精神的な負担が多く、そのせいで悪魔の影響を強く受けてしまい、床に伏せがちになってしまった。ある日の晩にヴェノマニア公と情交を交わした後、朝食を運んできたルカーナが死亡している彼女を発見した。遺体はアイアールによって運ばれ、事件発覚時には白骨化した状態で見つかっている。
ハクア=ネツマ
  • 年齢:22歳
ネツマ族の女性。アイアールが使用している身体であるハル=ネツマの姉。悪い魔術師(ハル=ネツマの身体を乗っ取ったアイアール)によって故郷が滅ぼされた後、放浪していたところをヴェノマニア公に出会い、洗脳されハーレム入りとなる。ヴェノマニア公が彼女を選んだ理由は単に「アイアールに似ているから」という理由だったらしく、姉であることを知らずに連れて来たらしい。
ハル=ネツマがアイアールに身体を乗っ取られていることを知らず、妹との再会を喜び彼女にべったりしている。アイアールは常にべったりしてくる事と、ハル=ネツマに残るわずかな意識が「お姉ちゃんを殺すな」と訴えてくることから、ハクアに苦手意識を抱いている。
リリエン=ターナ
  • モチーフ:Lily
  • 年齢:24歳
アスモディン地方ミスティカに住むパン屋の娘。ルカーナの幼馴染であり、農夫の息子であるラージフと共に仲良し三人組であった。
大きくなってからなかなか会う機会はなかったものの、行方不明になっていたルカーナの身を案じていたようで、ヴェノマニア邸で再会した際に互いの再会を心から喜んでいた。同時にルカーナはヴェノマニアに抱かれるリリエンの身を案じるようになっていき、ルカーナの洗脳が徐々に解けていくきっかけとなった。
ヴェノマニアが討たれた後は、ヴェノマニアの子を身ごもっていたルカーナ、そして幼馴染みのラージフと共にミスティカを離れて各地を転々としている。
カロル=シールズ
グラスレッド侯爵に仕えるグミナの従者。赤毛の髪が特徴的で、スレンダーな身体に反して武芸の腕を持つ。サテリアジスとケルビムとも顔見知り。
ヴェノマニア公がグミナを奪うためにグラスレッド邸を強襲した際、悪魔と化したヴェノマニアに対抗するも洗脳され、グミナと共にハーレム入りとなった。グミナへの忠誠心は高く、洗脳されてもヴェノマニアの命令よりもグミナの指示を優先させる程。ヴェノマニアが討たれた後は、グラスレッド侯爵やグミナと共にエルフェゴートに移り住んだ。
ユフィーナ=マーロン
  • 年齢:26歳
マーロン王国の王妃。当時のマーロン王家の血を引く唯一の後継者で、ベルゼニア皇帝家の次男マルチウスを婿養子に迎えた。しかし、その一方で夫に対してやや不満を抱いており、マーロン国の貴族カーチェス=クリムと不義の関係にある。
大罪の器のひとつ「黄金の鍵」の持ち主で、そのことが理由でアイアールに目をつけられ、ヴェノマニアに洗脳されハーレム入りとなった。彼女を捜しにきたカーチェスがヴェノマニアを打ち取ったことで解放され、そのまま駆け落ちした事で、マーロン国及びベルゼニア帝国から追われる身となる。後にカーチェスは周辺貴族を味方につけ、彼女が正当なマーロン王家の血を引いていることを利用して「正統マーロン国」を建国。様々な経緯を経て結果的に「マーロン国」と「正統マーロン国」は統合されることになった。
テット=セトラ
  • 年齢:31歳
ベルゼニア帝国士爵(騎士)
魔道師アイアールのシンパの一人で、貴人を誘拐する前提として情報の漏洩や数々の裏工作に協力していた。
引き換えに執着していた若さという恩恵を得ており、三十代に関わらずとてもそうは見えない。が、次第に見境をなくしたヴェノマニアの誘惑によってハーレム入りとなり、その事からアイアールの情報網に瑕疵が出ることになってしまう。
ネルネル=ネルネ
  • 年齢:19歳
ベルゼニア帝国に仕える工作員。
「女性連続失踪事件」の調査をしておりメイリスに定期的に報告を届けていたが、ヴェノマニアの魔手にかかる。
その繋がりからメイリスをヴェノマニアの足元へと案内した。
メイリス=ベルゼニア
  • モチーフ:MEIKO
  • 年齢:22歳
ベルゼニア帝国第三皇女。年の離れた末子であったため、父の皇帝からは甘やかされ育った、好奇心が強いじゃじゃ馬姫。
肥満体である他の兄姉達とは違ってスレンダーでありながら肉感的な女性であり、そのこともあって内心では隔意を持っていた。世話役であり、既婚者であるコンチータ男爵に好意を抱いており、初恋と失恋を経験した事でじゃじゃ馬ぶりは影を潜めていた。しかし義姉のユフィーナがカーチェスと不倫関係にあると知って、それを羨ましく思うようになり、好奇心とユフィーナを案じる両面からコンチータ男爵を通じて事件に首を突っ込む。
意を決してヴェノマニアの懐へ飛び込むものの術には逆らえず、ハーレム入りとなった。事件解決後にヴェノマニアの子を宿していた事が判明し、周囲の反対を押し切って女児を出産。しかし皇家の子とは認められず、思案の果てにコンチータ夫妻に託す事にした。
アンリー=スイーツ
  • 年齢:62歳
ヴェノマニアがローランの死をきっかけにハーレム構成員の健康を気遣って連れてきた医師。
容貌に見るべきところはあるが、年齢が示す通りに明らかな老女であり肉体関係を結ぶために連れてきたわけではないと明言されている。

悪食娘コンチータ

2009年3月にニコニコ動画に投稿された楽曲。10日足らずで再生数が10万を超え、3年をかけて、MEIKOオリジナル曲としては初めて100万再生を突破した。悪ノPお得意のハードでダークなサウンド、中世的な世界観の物語風音楽にのせて食を極めた若き女領主バニカ=コンチータを描く。[12]。 MEIKOをメインヴォーカル、鏡音リン・レンをサブヴォーカルとし、『七つの大罪シリーズ』の【悪食】がテーマ。なお、七つの大罪としての罪の名前は本来は「暴食」であるが、誤って「悪食」としてしまったという[13]

悪ノPの一言
「美味しいものを食べたい」というのは生物の根源的な欲求ですが、どれだけ極めても満足できないのが人間の悲しい性です。頂上までたどり着いた者は、あとは果てしない地下を目指すより他になくなります。欲望とは底なしなのです。バニカ様の胃袋のように。[14]

ストーリー

エヴィリオス歴325年、ベルゼニア帝国コンチータ領にて女領主バニカ=コンチータ失踪。

コンチータ領の食文化の改善、発展を目指し、自らも様々な食を積極的に試す良き領主、バニカ=コンチータ。暗い過去から“食"へ強い探究心を示す彼女だが、やがて自身の夢をかなえるために、悪魔と契約を交わしてしまう。これがコンチータ領、そしてベルゼニア帝国を震撼させる混乱の始まりだとは、知る由もなかった……。

キャラクター

コンチータ公爵家

バニカ=コンチータ
  • モチーフ:MEIKO
  • 年齢:29歳没(296-325)
  • 国籍:ベルゼニア帝国
  • 人種:ベルゼニア人
ベルゼニア帝国コンチータ七代目領主。メイリス=ベルゼニアの血を引くヴェノマニアの子孫であり、同時にグミナ=グラスレッドの子孫でもある。500年時点で残っているお伽話吸血鬼伝説『吸血娘ヴァニカ』のモデルとなった人物。
ムズーリ=コンチータ公爵の長女として生まれたが、自分が生まれて間もない頃に両親や屋敷の者が悪食の器であるワイングラス(後の「グラス・オブ・コンチータ」)を宿した幻のタサン豚「バエム」を食べてしまった事で、グーラ病を発症してしまった。バニカはグーラ病ではなかったが、狂乱した母親に胃袋が満たされるまで無理矢理食べさせられたり、逆に他の者に優先させて殆ど食べられなかったりと、幼い頃から自由な食事ができなかった。そのため、グーラ病が完治した父親たちが生き残った後は、暗くて大人しい性格に反して食に対して異常に貪欲になり、14歳でマーロン国第三皇子カルロスとの縁談が持ち上がるも、両家の者が臨席しての会食の場で食べ物をひたすら貪り尽くした為、翌年破談となった
その後はコンチータ家が領土を剥奪されていたこともあって、食道楽に磨きがかかり、20歳を前にして国内のすべての料理を口にしたとされ、諸外国へ食の探求の旅に出て多くの料理を自国に紹介し同国の食文化の発展に大きな影響を遺した。その功績が認められ帝国から領土が返還され、父の死後に領主位相続したが、食道楽に拍車がかかり遂には体重が100kgを越え、長年公爵家に仕えていたロンが行方不明と時を同じくして「食べ過ぎによる内臓異常」で倒れてしまった。自身の余命を悟った直後、双子によって再び屋敷に持ち込まれたワイングラスの悪魔の呼びかけを受け、新たな食に対する好奇心から契約を交わした。
悪魔と契約したことで体格は一転してスリムになるが、今度は蟲や汚物などを食べるようになったことで会食の場には一切姿を見せなくなり、翌年には病を理由に外部からの接触を絶ち、公務への指示はふたりの使用人を介してのみ伝わることになる。そしてとうとう食人行為を働くようになり、屋敷周辺にワイングラスの力で屍兵が徘徊していた事と食人行為の噂から外部の人間は殆ど屋敷に近づかなくなった。後に屋敷を取り囲んできた皇帝軍を相手に屍兵をけしかけた為、事実上コンチータによる領土統治は崩壊し、領土内の各町が自治体制をとって屍兵に対処していた。
その中でAB-CIRのスパイとして15人目のコックとして雇われた、ヨーゼフことかつての婚約者カルロスと再会し、互いに想いを交わしあった。カルロスはバニカを止めようと長年服用してきたマーロン王家に伝わる秘薬の材料である毒の粉末で心中しようとしたが、バニカにはその毒が効かずカルロスのみが死亡。バニカは涙を流しながら愛する人を残らず食らいつくしたが、実はその粉末は憤怒の器黄金の鍵を削ったものであり、それを長年服用してきたカルロスを食べた事で毒が効いて悪魔の力が弱まり、何を食べても満足できなくなってしまった。屋敷に食糧を届けていた行商人も使用人のポロとアルテも食べたことで、やがて屋敷の食糧がなくなってしまった。そんな中でカルロスの子どもを出産し、悪食の悪魔に助かりたければ黄金の鍵に対するワクチンとなる赤ん坊を食うように強制されたが、彼女はそれを拒否し空腹を満たす為に悪魔を宿した自分自身を食べて骨も残さずに消えた。
悪魔を喰らったことでワイングラスに宿った悪魔に成り代わっており、後世ではかつての使用人であったポロ(ヘンゼル)やアルテ(グレーテル)の転生体を気に入り、彼らには存分に悪魔の力を貸している。『悪徳のジャッジメント』の時代ではこの世の全てを喰らい尽くす事を夢見ながら、「墓場の主」として世に出る時を待ち望んでいる。なお、カルロスとの間に生まれた赤ん坊は屋敷に突入したエルルカとプラトニックによって発見され、ジュノ皇帝の使用人の養子として引き取られており、その赤ん坊の子孫が『悪ノ娘』に登場した赤き鎧の女剣士ジェルメイヌ=アヴァドニアと言われている。
動画中のキャストでは「偉大なるコンチータ様」と記載。
ムズーリはバニカが生まれた当初バニカの名前を「ムララムラジャコタスポポポ」に決定しようとしたとされている。
名の由来は「カニバリズム」のもじり。[11]
ムズーリ=コンチータ
  • 年齢:?歳没(?-321)
ベルゼニア帝国コンチータ六代目領主で、バニカの父。メイリス=ベルゼニアの血筋を引くヴェノマニアの子孫。コンチータ公爵家は皇家の血を引いている故か、半ば形骸化しているとは言え「五公」の一家に数えられている。民想いの人望の厚い領主であり、食道楽としても有名であった。
娘のバニカの誕生会で、贈り物を運んできた馬車の中にいつの間にか紛れ込んでいた幻のタサン豚「バエム」を見つけたことで、神からの贈り物だと感動し、バエムの中からワイングラスが出てきても気にせずに妻や屋敷の者たち全員に食べさせた。しかしそれ以降屋敷の者が異常食によって1日につき1人ずつ死んでいき、屋敷を訪ねてきたAB-CIRに悪食の悪魔の器を宿した「バエム」を食べたことで「グーラ病」を発症してしまったことを知らされ、生き残るには10年間胃袋を満たし続けなければならないと宣告される(実は「バエム」はレヴィン教では「悪魔の使い」として食することを禁じられているものであり、かつてバエムを乱獲して好んで食べていたタサン大帝国の皇帝も国ごと滅びの道を辿ったのだが、レヴィン教の信者ではなかったムズーリはそのことを知らなかった)。
その後は領民から食べ物を奪うような形で使用人を含む自身達の食事を何とか維持してきたが、そのことを拒否し食べなかった者や、無理な食事で身体が耐え切れなくなった者は次々と死亡していった。が、悪夢から解放されるまで残り二ヶ月と迫ったところで大飢餓が領土を襲う。とうとう追い詰められた屋敷で妻が死体を食べようとしたが食人行為だけは許すことができなかった為、自分たちはこうしてまで生き残るべきではなかったと悟りながら娘の目の前で妻を刺殺した。
結果的に侍従長のロンと元々「バエム」を食べてなかったバニカと共に生き残ったが、長年の重税による領土の乱れから帝国に領土を剥奪された上に、長年の心労から衰弱しきってしまった。その後、娘のバニカがベルゼニア帝国の食文化の発展に貢献した功績で、領民の支持を得てコンチータ家に領土が返還されたことを知って喜び、ロンに看取られながら息を引き取った。
メグル=コンチータ
ムズーリの妻で、バニカの母親。旧姓は「グラスレッド」で、元はベルゼニア帝国と国交のなかったエルフェゴート国宰相の息女であり、彼女に一目惚れしたムズーリが婚姻を切望し、様々な障害を乗り越えて結ばれた。
聡明な貴族の女性であったが、「バエム」を食べてグーラ病を発症した事で狂い始め、娘のバニカに無理矢理食べ物を食べさせるなど攻撃的な性格に成り果ててしまった。残り二か月で大飢餓が領土を襲った際、食べる物を探し求めた結果使用人の死体を食べようとした為、食人行為だけは許すことができなかった夫に娘の目の前で殺された。公には心臓病で死んだことになっている。
使用人
ポロ
コンチータ家に仕える召使で、「神の双子」ヘンゼルの生まれ変わり。ベルゼニア帝国のグレイビア領の出身で、両親は幼い頃に亡くなっている。双子の姉のアルテと比べて性格は良いが、頭はあまり良くなく要領がかなり悪い。「ゲヒヒ」という変な笑い方をする。食べ物は質より量を重視。
年齢はバニカと同い年だが、アルテ共々10年以上経っても外見は14歳のままで、バニカの異常な行動で周囲の人間が離れていく中でも特に気にする素振りもなく付き従っていた為、バニカも普通の人間ではないことに薄々勘付いていた。悪食の悪魔からは「我らの仲間であり、親であり、息子である者たちの生まれ変わり」と言われており、AB-CIRが一度手放した悪食の器であるワイングラスを再びコンチータ家に持ち込んだ張本人である。最終的には悪魔の力が弱まったバニカに食べられており、アルテ同様に普通の人間とは違う味をしていたとのこと。
動画中のキャストでは「頭の悪い召使」と記載。コンチータのある日の朝食に特製ブリオッシュを作った。
アルテ
コンチータ家に仕えるメイドで、「神の双子」グレーテルの生まれ変わり。ベルゼニア帝国のグレイビア領の出身で、両親は幼い頃に亡くなっている。双子の弟とは違い、短気でわがままな性格で「戦争よ戦争‼」が口癖。食べ物は量より質を重視し、弟とは違って調理は出来るが、気まぐれな性分ゆえに手を抜くことが多々ある。
年齢はバニカと同い年だが、10年以上経っても外見は14歳のままで、バニカに付き従い屍兵たちを指揮して皇軍と戦うこともあるなど、普通の人間とどこか異なっている。AB-CIRが一度手放した悪食の器であるワイングラスを再びコンチータ家に持ち込んでおり、自分たちの部屋でそれを発見したロンを口封じの為殺害し、バニカに契約を委ねるように仕向けた。グレーテルであった時の記憶もあるようで、飢餓で自分たちを捨てた養父母を「魔女とその子分」として殺害した事を話しており、またポロ共々養父であったアダム=ムーンリットに瓜二つの容姿を持つヨーゼフを嫌っている。最終的には悪魔の力が弱まったバニカに食べられた。
動画中のキャストでは「性格の悪いメイド」と記載。コンチータのある日の昼食に適当にパンを作った。
カルロス=マーロン/ヨーゼフ
  • モチーフ:なし/KAITO(ヨーゼフ)
当時のマーロン国第三王子で、バニカの元婚約者。生まれつき病弱だが同時に自信過剰な態度であったため、周囲から鼻つまみ者にされていた。ふくよかな体格のバニカを見下すことはあったがそれなりに好意を抱いていたようで、婚約が破棄された後も何かと気にかけていた様子。病気に関してはマーロン王家に伝わる特殊な粉末を、ジズ・ティアマ(とてもすごいタコ)のスミと一緒に服用することで毒を抑え、定期的に発作を抑える秘薬にしていた。
後にAB-CIRによって敵国であるライオネス国のヘッジホッグ卿のもとに捕らわれてしまうが、牢獄でAB-CIRとプラトニックの会話でバニカの異変を知り、彼女の真意を確かめるべくAB-CIRのスパイになることを志願する。色欲の器ヴェノム・ソードを使って、AB-CIRがかつて誤りで殺した有名なコック「ヨーゼフ」(モチーフ:KAITO)の顔に変えることで、コンチータ公爵家に雇われの身で潜入する事となった。料理はそこまで上手い訳ではなかったが、バニカの味覚が異常だった上に逆に料理人としての誇りがない為おぞましい料理の調理に耐えることができた為、バニカに気に入られていた。しかし、逆にアダム=ムーンリットに似たその容姿から、ポロとアルテには毛嫌いされていた。
後に自分の正体に気付いていたバニカと想いを交わしあうが、ポロとアルテと共に痺れを切らした皇帝軍を相手に屍兵をけしかけたバニカを見て、自分がいかに異常な状況下にいることを実感し恐怖を覚える。一度は逃げようとして失敗したがそれでもバニカへの愛は変わらず、長年自分が服用してきた憤怒の器「黄金の鍵」から作られた粉末で心中を計ろうとするが、バニカには毒が効かずカルロスだけが死亡した。その後バニカに食べられたが、彼の体内に溜まっていた憤怒の器黄金の鍵の粉末がバニカの力を弱めるきっかけとなった。
動画中のキャストでは「うだつのあがらないコック」と記載。
ロン=グラップル
ムズーリの代からコンチータ公爵家に仕える侍従長。「バエム」を食べた事でグーラ病となるが、10年間食べ続けることでムズーリと共に生き残った。その後はムズーリの命令でバニカを支えるようになり、バニカと年の近いポロとアルテを侍従として雇った。カルロスとの縁談が破綻した後も、ポロとアルテと共に諸国を旅するバニカのことを何かと気にかけており、屋敷の留守を任されていた。
ムズーリが亡くなってバニカが公爵家を継いでからしばらくした後、バニカたちが旅に出ている間に双子の部屋の掃除をしていたところ、かつてAB-CIRが持ち去った筈のワイングラスが暖炉の穴に隠されていたのを見つけてしまう。それを処分しようとするが、直後に旅に出ていた筈のポロとアルテが現れ、それと同時に双子が10年前に雇われて来たのではなく、何故屋敷にいたのかを思い出し呪いは終わってなどいなかったことを知るが、既に時遅く翌日から行方不明になった。
その後、バニカのワイングラスの力で屍兵と化し領土内を徘徊するが、他の屍兵より比較的おとなしかった為、領土内の町で生け捕りにされていた。そしてエルルカの魔術によって起こった出来事を断片的に話し、ワイングラスを割ってバニカとバニカの赤ん坊を助けて欲しいと懇願し白骨死体へと戻った。

その他

プラトニック
本名は不明。エヴィリオス全土に名の知れ渡る凄腕の女盗賊で、貴族を中心に狙っていた。自分の腕に絶対の自信を持ち、殺しはしないというポリシーを持つ。もとはメリゴト高地出身で良家の娘であったが、田舎の貴族に過ぎないにも関わらず体面を気にする実家に嫌気がさし、自由に生きるため家出して盗賊の道へ入った。夢はお金を貯めて都会でマイホームを買う事。
AB-CIRとはプラトニックの師匠の代からの懇意であり、彼の依頼を受けてコンチータ公爵家にワイングラスを盗みに侵入するが、化け物や双子に殺されそうになり辛うじて逃げ延びた。その後はAB-CIRから別の依頼でベルゼニア帝国のルシフェニア領に渡り、教会からエルルカの手に渡った嫉妬の器「レヴィアンタの双剣」を盗もうとしたが、エルルカに捕まり駒使いにされた(ちなみにエルルカの持っていた「レヴィアンタの双剣」は偽物だった)。その後、コンチータ公爵家へ侵入したことがある経験を買われて、ジュノ皇帝の命令でエルルカと共にコンチータの屋敷に向かうが、そこは既にもぬけの空になっていた。エルルカの隙を見てワイングラスを回収しており、後にAB-CIRの手に渡っている。
本人の言によるとミクリア=グリオニオの子孫であり、彼女と同様に「原罪者」そのものの姿をしているが、魔術の才能は全くない。先祖が代々「怠惰の悪魔」の器であった為、身体には「怠惰の残りカス」程度の影響を残しており、そのため他の大罪の器との相性が悪く憑依対象には向いていないらしい。
その正体は、本物のプラトニックに成りすましていた「怠惰の悪魔」ことイブ=ムーンリットである。
エルルカ=クロックワーカー
悠久の時を生き続ける魔道師。大罪の器を捜して各地を放浪しており、ベルゼニア帝国のルシフェニア領では教会から「レヴィアンタの双剣」を譲り受けたが偽物だった。それを盗みに来たプラトニックを「予知夢」で予知して迎え撃ち、自分の小間使いとして利用している。一方でプラトニックが、彼女の先祖であるミクリア同様に子孫がいない筈の「原罪者」そのものの姿をしていることを気にかけており、エルドに問い詰めていた。
ベルゼニアのジュノ皇帝の依頼を受けてプラトニックを連れてコンチータ公爵家の調査に乗り出したが、屋敷は既にもぬけの空となっており、皿の上に置かれた赤ん坊だけが残されていた。
AB-CIR
  • モチーフ:なし
常に赤猫を肩に乗せている黒髪の男性魔道師。全身黒づくめ、右手だけに黒の手袋を身に着けている。グーラ病を発症したコンチータ家を訪れ、悪食の器であるワイングラスと引き換えにグーラ病の乗り切り方をムズーリたちに教えた。プラトニックとは彼女の師匠の代からの懇意であり、金の羽振りが良いためプラトニックも彼の依頼を優先的に受けているが、いつも周囲にはきな臭い話がついてまわる。
ライオネス国の重臣であるヘッジホッグ卿の下に身を寄せているが、彼自身は島内の覇権争いには興味なく自らの目的のために動いているようである。
正体はこの時代におけるイリーナ=クロックワーカー。憑代としている肉体は「アイアール」時代の元部下の男性であったが、大罪の器に目がくらみアイアールことハル=ネツマの肉体を殺害した為、やむを得ずイリーナが彼の肉体を乗っ取ることにした。しかし本来は女性である筈のイリーナが男性の身体となった為、魔術師としての本領を十分に発揮することができず、一度ワイングラスを手に入れたものの不覚を取ってマーロン国に捕まり、やむを得ずワイングラスを手放さざるを得なくなった。実力を発揮することができない為、この時代では特に目立った動きをすることができず、新しい器を捜すことも兼ねつつ、プラトニックや盗賊たちを使って双子の手で再びコンチータ公爵家に渡ったワイングラスの回収を目論んでいる。
ジュノ=ベルゼニア
ベルゼニア帝国を治める当時の女帝。代々のベルゼニア皇帝家の例に漏れず肥満型。コンチータ家との親交も深く、バニカのことも実の娘のように気にかけていた。各国の食文化をみてまわったバニカの話を聞き入れ、彼女のベルゼニアの食文化発展の貢献を支援した。
その後バニカにコンチータ領を返還し領主に任命するが、彼女はやがて公に姿を現さなくなり、コンチータ領に蔓延る屍兵やバニカの食人行為の噂からエルルカに捜査を依頼する。しかしエルルカがプラトニックと共に屋敷に突入した時にはバニカは失踪しており、屋敷には彼女の赤ん坊だけが残されていた。その赤ん坊を養子として引き取ろうとしたが周囲の猛反発にあった為、自分の使用人に託すことにした。
ヨカヅキ=オースディン
五公「ドゥートリシュ」公爵の側近にして、敵国ライオネスを睨むハーク海沿岸警備部隊隊長という重責を担う男。
ムズーリの旧友という私的な関係にあるとはいえ、爵位に及ばず明らかに目上の立場にある「五公」当主を相手に気安く、言い換えれば無礼な口を利く粗野な男として、オルハリ公からは嫌われている。

悪ノ娘

2008年4月にニコニコ動画に投稿された楽曲。鏡音リンをヴォーカルとし、七つの大罪の【傲慢】のストーリーを描く。 2009年11月にミリオン再生を達成、2012年8月にはダブルミリオン再生が達成された。

眠らせ姫からの贈り物

2011年5月にニコニコ動画に投稿された楽曲。七つの大罪の【怠惰】のストーリーを描く。「悪ノ娘」の時代から100年以上経過しており、「悪ノ娘」の時代で活躍した人物たちも名前のみで登場していることが多い。

悪ノPの一言
この曲の主人公は「怠惰」を「求める」のではなく、「与える」側に回っています。その点で他の大罪契約者とは一線を画しているといえるでしょう。[15]

ストーリー

シュブルク新聞社に勤める記者ハンネ=ローレは、ユキナ=フリージスも小説の題材にしたミクリア=カルガランドこと「プラトーの花」について取材するため、エルフェゴート国のカルガランドを訪れる。公立図書館で喪失リストにあるユキナ=フリージス著「プラトーの花」を見つけたハンネは、図書館司書を問い詰めた結果、犯罪組織「ペールノエル」が関与するトラゲイの裏市場が関わっていることを知り、スクープのためにトラゲイに向かった。

訪れたトラゲイで彼女を待ち受けていたのは、眠っているかのように穏やかな表情をしたカスパル=ブランケンハイム侯爵の死体だった。

「この事件はこれで終わりではない」

そう確信したハンネが事件の調査を進める裏で、【怠惰】の悪魔も静かに動き出す――。後に「トラゲイ連続殺人事件」と呼ばれることになる悲劇の始まりであった。

キャラクター

ブランケンハイム家とフェリクス家

マルガリータ=ブランケンハイム
侯爵夫人で旧姓「フェリクス」。生まれた時から眠らない体質の持ち主。富裕な医師の娘として生まれ、互いの家の事情による政略結婚でカスパルと夫婦となる。医師免許を持っており薬の調合も自分で行うほか、夫や父によく処方を出していた。
幼い頃からカスパルと一緒に過ごしてきたマルガリータは彼に好意を抱いていたが、カスパルは結婚した直後から眠らない体質のマルガリータを気味悪がるようになり、他の女性と遊びほうけてフェリクス家の財産を浪費していった。そんな中仕事でカスパルのもとを出入りするようになったエルルカ=クロックワーカー(を名乗っていたメイラナ)と親しくなり、よく眠れる薬「gift」の製法を教わり、それを夫や父親、トラゲイの街すべてに幸福のためと称してばら撒いた。「gift」は彼女の血液が材料であった為、彼女の周辺から毒物から見つからず捜査を難航させていた。
実はジュリアが首魁を務める犯罪組織「ペールノエル」の構成員で、三番目の眠らせ姫。緑1号とも呼ばれている。しかし彼女にはその自覚は殆どなく、同じく「ペールノエル」の構成員であった夫の仕事に関しても殆ど把握していなかった様子。快楽殺人者に成り果て、改良を重ねた「gift(毒)」を使って街の人間のほとんどを永遠の眠りにつかせ、街を壊滅させた後に「ペールノエル」の拠点のひとつであったカルガランドに向かう。そして訪れてきたエルルカたちの前で自らも「gift」を服用し、命を絶った。その後遺体は行方不明になったが、後に千年樹の森でエルルカの前に死んだ筈の彼女が現れた。
その正体は、雷に打たれて死産した本物のマルガリータと入れ替わり、催眠で周囲の人間たちを欺いていた怠惰の器「クロックワーカーズ・ドール」であり、原罪者イブ=ムーンリットその人。強力すぎる催眠から彼女自身も自分を普通の人間だと思い込んでいたが、7つ目の「gift」を服用したことでマルガリータとしての人格が消え、イブ=ムーンリットとして覚醒した。
名前の由来は実在した悪女ド・ブランヴィリエ侯爵夫人[11]から。
カスパル=ブランケンハイム
トラゲイを治める侯爵。マーロン王家に連なる一族であったが、「悪ノ娘」の時代でプリム皇后によってエルフェゴートに追いやられ、その後元々トラゲイを治めていたフェリクス家が失脚したことで、ブランケンハイム家がトラゲイを治めるようになった。
浪費家で財産が底を尽きかけた為、裕福な医者の娘であるマルガリータと政略結婚するが、財産目当ての結婚だった為に妻を顧みず遊び呆ける毎日を送っていた。情緒不安定だった為、マルガリータが処方した第四の「gift」を受け取り、その後部屋に連れ込んでいた女性たちと共に死亡した。
実は「ペールノエル」の構成員で、二番目のディーラー。フェリクス家からの財産もなくなりかけた時に、「ペールノエル」から「裏市場」を任され取り仕切るようになり、莫大な利益を得る。しかし組織としての規定を裏切り利益を独占しようとしたため、エルルカ(を名乗るメイラナ)と揉めており、彼女はマルガリータをそそのかし「gift」を渡した。
マルクス=フェリクス
トラゲイの裕福な医者で、マルガリータ=ブランケンハイムの父親。フェリクス家は元はトラゲイを治めるエルフェゴートの伯爵家であったが、500年のルシフェニアからの侵略に伴い失脚した為、失った家の権威を取り戻すべく娘のマルガリータをブランケンハイム侯爵家に嫁がせた。このところ体調がよくなかった義理の息子カスパル=ブランケンハイムの主治医でもあったが、彼が亡くなり屋敷を訪れてきたハンネから取材を受けている。そして警察と検死した後に部屋で休んでいたところ、訪れてきたハンネが彼が息をしていないことに気づく。アケイドから呼ばれてきた医者が救命処置をし、その後ルシフェニア共和国の名医プエリック=ロクゼのもとに運ばれ奇跡的に一命を取り留めた。
彼もカスパルと同じようにマルガリータによって「gift」を服用されたが、カスパルと違い第五の「gift」は改良の失敗で効力が薄まった為、すぐには死なずに済んだ。その後エルルカが再び訪れた時に意識を取り戻し、同時に催眠が解けて本物のマルガリータは妻と共に生まれた瞬間に死んでいたこと、赤猫を連れた魔女(ジュリア=アベラール)が残した「人形」が催眠でマルガリータに成りすましていたことを思い出したが、その直後に死亡した。

フリージス財団

ハンネ=ローレ
フリージス財団の傘下にあるシュブルク新聞社に勤める記者で、公にはされていないがフリージス財団の総帥ショウ=フリージスの曾孫。組織に縛られない気質を持ち、見た目は若いが実年齢はかなり上の緑髪の美女。ユキナ=フリージスが残したとされる「プラトーの花」について取材を進めるうちに、トラゲイの街で起きた事件に徐々に巻き込まれていく。
その正体は、悠久の時を生き続ける魔道師エルルカ=クロックワーカー。「三英雄のエルルカ」として有名になりすぎてしまった為に一時的に歴史から姿を消すべく、「悪ノ娘」の時代からの付き合いであるショウ=フリージスに薦められて、病で亡くなったショウの曾孫「ハンネ=ローレ」に成りすまし、特徴的な桃色の髪も緑色に染めていた。長い間使用してきたルカーナ=オクトの身体に限界が近づき始めており、魔力が全盛期よりも劣ってしまっており、本人も「年を取ってしまった」とかなり気にしている。
やがて事件の真相に辿りつき、原罪者イブ=ムーンリットと対立し、彼女の魂を「転身の術」で自分の中に取り込み溶かそうと試みる。その決着がついた後、帰りを待っていたグーミリアとミカエラの前に何事もなかったように現れ、一瞬瞳の色が緑に変わったが2人はそれに気づくことはなく、グーミリアと共にルシフェニア共和国に向かった。
ハイデマリー=ローレ
  • モチーフ:GUMI(グミナ=グラスレッド)
フリージス財団の総帥ショウ=フリージスの曾孫で、ハンネ=ローレの妹。フリージス財団を中心に組織された世界警察マーロン本部の国際実働部「ユステア」に所属している。無口で感情の起伏は少ないが、気性は非常に激しい。あちこちで家屋を破壊する上に、勝手に容疑者を拷問したり、業務中にサボってリン=チャンのコンサートを観に行くなど問題行動も非常に多いが、たまに強引な捜査のおかげで予想以上の功績も出すため、大老の曾孫だからという理由以外にも奇跡的に首を免れている。
その正体は、エルルカの弟子グーミリア。エルルカと同じ理由で、本物のハンネと共に病で亡くなった妹の「ハイデマリー=ローレ」に成りすましていた。以前よりも魔術を使いこなせるようになっており、彼女の活躍ぶりをみたエルルカが引退しようかとぼやいたほど。マルガリータと決着をつけに千年樹の森の小屋に向かっていったエルルカを見送り、戻ってきたエルルカと共にルシフェニア共和国へ向かう。
ショウ=フリージス
フリージス財団の総帥にして100歳を超える「大老」。ハンネとハイデマリーの曽祖父だが、跡継ぎ問題を避けるために二人の曾孫のことは公にはしていない。生真面目な性格でハンネたちのよき理解者でもあり、彼女たちに対して惜しみない援助をしている。
幼少の頃に両親や姉が関わった「大罪の器」に危機感を抱いており、情報収集や「曾孫」としての戸籍を与えてエルルカたちの活動を支援してきた。かつて老いと死に対する恐怖から不老を求めて千年樹ことミカエラに願った事があり、幼少時代からの彼を知るミカエラは同情してしまい、神の力を行使した結果不老にこそならなかったものの、人並み以上の寿命を手にした。しかしその寿命も限界が近づき始め、ハンネたちがトラゲイで起きた事件の捜査をしている最中に寿命を迎え、眠るように亡くなった。
アーイ=フリージス
フリージス財団の総帥代理の女性。ショウ=フリージスの妹であるアイル=フリージスの孫で、新大陸の開発事業などで財団に貢献してきた手腕を持つ。ショウの死後、正式にフリージス財団総帥の座を継いだ。
ブルーノ=マーロン
フリージス財団の幹部にして、ショウの側近。「ブルーノ」は本名ではなく、かつてエヴィリオスの裏社会に存在した「組合」と呼ばれる組織の長が名乗ってきた名で、「組合」がフリージスの傘下に入った際にフリージス家が最も信頼する側近に与えられる名となった。ショウとは50年ほどの付き合いであり長年組織を支えてきたが、彼の曾孫であるハンネとハイデマリーを快く思っていない。本物のブルーノ=マーロンはカイドル=ブランケンハイムに殺害され、カイドルが七番目の手品師の協力で顔を変え、成りすましていた。実は「ペールノエル」と繋がりを持っており、「ペールノエル」が関わっていた裏市場に関する調査に圧力をかけていた。メイラナたちからハンネことエルルカの処分を条件に「二番目のディーラー」の座を与えると約束されており、ショウの死後本性を露わにしハンネとハイデマリーを無実の罪で拘束するも、二人には結局逃げられてしまった。その後アーイ=フリージスが総帥に就任した際に、ノブ=ニコールと共に副総帥に選ばれている。なお、「ペールノエル」側からは捨て駒程度にしか思われていない様子。
ノブ=ニコール
ブルーノと同じくフリージス財団の副総帥。現在は新大陸に関する事業を中心に行っている。真面目な人物であり、先代の「五番目の道化師」に弟を殺されたことから、ペールノエルを何よりも憎んでいる。
エイン=アンカー
世界警察に所属するネツマ族の男性。階級は巡査。かつてハイデマリーと付き合っていたが、上手くいかず別れている。ハンネに苦手意識を抱いているが、ハンネの方は彼のことを基本的にお人好しと見ている。トラゲイで起きた殺人事件について調査し、その過程で裏市場に関する情報も入手した為、圧力をかけられながらも調査していた。その後はかつて自分が関わっていた「五番目の道化師」についての事件に関わるようになる。
祖父は世界警察の初代総監で、祖父を尊敬していた父から同じ名前を与えられた。捨て子だったネツマ族の祖父の名付け親は、同じくネツマ族でありクラリス修道会の創設者シスター・クラリス。当時フェリクス伯爵に使えていた勇敢な兵士にして、クラリスの幼馴染であったエルフェ人の「エイン」という男性の名前が由来。
ホブ=ホーマー
世界警察マーロン本部の国際実働部「ユステア」の部長。ハイデマリーの上司だが問題行動ばかり起こす彼女に常に頭を抱えており、何度も彼女の首を上層部に打診してもたまに出すハイデマリーの功績と、大老の曾孫という身分からなかなか通らずにストレスを溜めている。
ブルーノの命令には忠実だが「ユステア」のリーダーであることに誇りを持っており、彼がハンネとハイデマリーを無実の罪で拘束した際にはエインと共に彼女らを救出した。しかし2人を巻き込みたくなかったハンネことエルルカによって結局気絶させられてしまった。
その後もブルーノから捜査中止の圧力がかかるものの、ブルーノを見限りウィルスやエインの捜査を助力していた。ウィルス曰く「減給と左遷を何よりも恐れているが、それ以上に「正義」を歪められるのを嫌う人」。
ウィルス=ゾラック
世界警察マーロン本部の国際実働部「ユステア」の一員。勤務中に二日酔いに悩まされる程いい加減な面もあるが、かつて先代の「五番目の道化師」を射殺したことからわかるように、高い実力と洞察力を持つ。「五番目の道化師」の事件を任されたエインのお目付け役。心音の時計塔の地下に眠る悪意の種を監視する一族の出身

ペールノエル

エヴィリオス各地で暗躍する暗殺組織。名前は紀元前から活動していた犯罪組織「アポカリプス」の首領ペイル=ノエルが由来。中心メンバーは七人で構成された「セプト」と呼ばれる人物たちであり、それぞれ称号を持つ。

ジュリア=アベラール/一番目のサンタクロース
  • モチーフ:MEIKO(ジェルメイヌ=アヴァドニア)
ルシフェニア共和国の貴族。最年少で初の女性大統領に就任し、民衆から絶大な支持を受けているが周囲からのやっかみも強い。レミー=アベラールの義母であり、側には常に赤猫がいる。
その実態は犯罪組織「ペールノエル」の首魁「一番目のサンタ」にして、「ジェルメイヌ=アヴァドニア」の身体を乗っ取った魔道師「アビス I.R.」。コンチータの血族の肉体であるため今までのどの身体よりも魔力に優れており、洗脳などで手にした構成員を手駒に大規模犯罪を行なっていた。一番目のサンタの正体を知る者は組織内でも少なく、殆どの場合は影武者であるメイラナが表に出ている様子。自分がかつて子供を産めなかった事から、義理の息子であるレミーに対する愛情は深く、不器用ながらも本当の息子のように接していた。リン=チャンを助けるために人を殺したレミーを「正しいことをした」と言い、「五番目の道化師」として組織に迎え入れた。
「ペールノエル」の地位を確立させるべく、フリージス財団の副総帥であるブルーノ=マーロンを組織に引き入れ、もうひとりのフリージス財団副総帥であるノブ=ニコールをレミーに殺害させようとするも、ユステア捜査官のウィルスとエインによってブルーノの過去の罪を暴かれてしまい、大統領としての信頼も揺らいでしまった。
その最中に、母の役に立ちたいという名目で快楽殺人者に成り果ててしまったレミーが、「ペールノエル」の一員として迎えたエルルカとグーミリアに射殺されるという事態が起きる。「悪食の悪魔」と契約したレミーは生きていると知りつつも、自分と「エルルカ」との運命に決着をつけるべく、本名であり素性の「イリーナ=クロックワーカー」を遂にエルルカに名乗り、メリゴド高地のペイル=ノエルの墓場を舞台に決闘を申し込む。途中から母を追ってきたレミーがグーミリアと戦い始めるも、「憤怒の悪魔」の力を借りたグーミリアによって完全に死亡。息子の死に涙を流しながら、エルルカとグーミリア二人を相手にしていたジュリアは限界であり、最後にジェルメイヌの身体を解放し赤猫の身体に仕込まれていた『BLACKBOX TYPE S』を発動させる。
異空間にグーミリアと、「ルカーナ=オクト」の身体に宿っていたレヴィアとビヒモとイブ=ムーンリットを閉じ込めたイリーナは、イブ=ムーンリットこと「クロックワーカーズ=ドール」の中に眠る「法廷の主」としての力を目覚めさせ、異空間全てのものを平等にさせ「神」を殺そうとするも、「法廷の主」の力を手中に収めていたことで「悪食の悪魔」の妨害に遭う。そして力がぶつかり合った衝撃で、イリーナは「エルルカ=“Ma”=クロックワーカー」の中のひとりとなった。
ジェルメイヌ=アヴァドニア
500年に「ルシフェニア革命」を起こした赤き鎧の女剣士。ヴェノマニアの血を引くコンチータの子孫。508年に起きた「新生四騎士事件」でアビス I.R.との戦いで敗北し、彼女の器にされてしまった。それから100年以上時が経ち、611年にアビス I.R.ことイリーナがエルルカたちに敗れたことで、長年使ってきた身体へのせめてもの償いとしてジェルメイヌの身体を解放する。しかし、イリーナの魔力を失ったジェルメイヌの肉体は急速な老化が進み、世界警察に「ジュリア=アベラール」として発見された時には余命二ヶ月と宣告された。エインに車椅子に引かれながら100年以上経った祖国ルシフェニアの平穏な風景を見渡しながら、自分たちのやってきたことは無駄ではなかったと満足そうに微笑んでいた。
カスパル=ブランケンハイム/二番目のディーラー
トラゲイを治めていた侯爵。マルガリータによって「gift」を飲まされて死亡した。
ブルーノ=マーロン/カイドル=ブランケンハイム/二番目のディーラー
フリージス財団の副総帥。カスパルの死後「二番目のディーラー」の地位に就いた野心家。その正体はカスパルの実父であり、本物のブルーノ=マーロンを殺し「ヴェノム=ソード」で顔を変えて成り変わっていた。ジュリア曰くマーロン一族は「敵に回すと厄介だが、味方にすると使えない」。
ノブ=ニコールを殺し自らの地位を確立させようとするも、ウィルスとエインによって自らの正体と、不倫した妻に逆上して殺した罪を暴かれてしまい、緊急逮捕された。その後口封じのためガット=クーロンに殺害される。
マルガリータ=ブランケンハイム/三番目の眠らせ姫
カスパルの妻。その正体は「怠惰の器」であり、原罪者イブ=ムーンリットそのものである。現在はエルルカことルカーナ=オクトの身体の中に取り込まれている。イリーナが発動させた『BLACKBOX TYPE S』にエルルカ(レヴィア)と共に飲み込まれ、「エルルカ=“Ma”=クロックワーカー」の中のひとりとなった。
メイラナ=ブロッサム/四番目のシャドウ
  • モチーフ:MEIKO(ジェルメイヌ=アヴァドニア)
本物のジュリア=アベラールの弟子。表向きにはエルフェゴート国のカルガランドの市長ジュリア=アベラールとして活動しており、メータ=ザルムホーファーを聖母として崇める信奉者である。レミーはジュリアから叔母だと説明されている。
組織の中では彼女の次に古参だが、四という数字を好みその座についている。影武者の役割通りジュリア=アベラールによく似た容姿を持つが、ガットやレミーによれば以前とは姿が違う。これは一番目のサンタクロースと同じ顔にするよう七番目の手品師に依頼したためである。なお、七番目の手品師は意図してサンタクロースとは少し違う顔に変えた。マルガリータの友人として彼女に「gift」の製法を教えた「ジュリア」はメイラナであり、一番目のサンタの影武者として活動するときは「エルルカ=クロックワーカー」を名乗っている。ジュリアが執心しているエルルカに嫉妬し彼女をトラゲイの惨劇に巻き込み、後に自らの手で殺そうとするも、グーミリアによって殺された。
レミー=アベラール/五番目の道化師
この時代における「神の双子」ヘンゼルの最後の転生体。 元は孤児であり、孤児院で過ごしていたところを富豪であるジュリアに引き取られた。ジュリアからは惜しみない愛情を注がれており、レミーも彼女を慕っている。ジュリアによれば実母は娼婦だったらしく、客の子どもを産んだ後真冬の河に捨てたらしい。屋敷で偶然開いていた蔵に忍び込んだ時に「赤いワイングラス」に触れており、それ以来「ネイ」という少女の声が聞こえるようになり、記憶力の悪さを何度も「ネイ」にフォローしてもらっている。
ある日ジュリアと共にサーカスを見に行ったところ、同じ孤児院出身のリン=チャンを本人の歌声によって気付くも、黒髪にそばかすの容姿だった彼女が自分そっくりの金髪の少女の姿になっていたことに驚愕する。サーカスが終わった後、用事があった母と別れひとりで帰ろうとした時に人攫いに攫われそうになり、そこを道化師(ピエロ)の恰好をした男性に救われる。人攫いたちが彼を「五番目のピエロ」と呼んでいたことから、自分の命を救ってくれた「五番目のピエロ」に恩義を抱くようになる。
ジュリアが大統領に就任した祝いのパーティで再びリンの姿を見る者ものの、今度は声が別人のものになっていたことに気付く。そして母の知り合いであるブルーノ=マーロンから彼女の後見人トン=コーパについて、何人もの孤児を引き取っては無理やり働かせて口封じに殺しているという噂を聞き、リンの身を案じてピエロの恰好でコーパ家の屋敷に忍び込む。そして再会したリンは過剰労働によるストレスで歌えなくなり、口パクがバレたことでトンが自分の代理で歌っていた子を殺したこと、そしてリンも殺そうとしていることを知る。その直後にトンが現れ、追い詰められたレミーは「ネイ」の全てを委ねなさいという声に従いトンを殺害。レミーは叔母のメイラナを頼りにエルフェゴート国のカルガランドに向かい、そこで待ち伏せていた義母と再会する。リンをメイラナに託した後、レミーは悪人であったトンを殺したことは正しいことだったと母に言われ、悪を倒すために母が率いる「ペールノエル」に迎えられ、かつての恩人と同じ「五番目の道化師」を襲名する。
ジュリアの命令の下、組織を裏切りリンの顔を変えた「七番目の手品師」ことユーゼット=オラを探すべく、連続猟奇殺人鬼としてルシフェニア共和国ロールド領で活動し娼婦たちを片っ端から殺害していた。目的のユーゼットを殺した直後、かつての「眠らせ姫」ことエルルカ=クロックワーカーが現れ、彼女と母を引き合わせた。その後、ブルーノの正体の露見で母が窮地に追いやられてしまい、自分が母の指示通りブルーノを殺せなかったことでジュリアに見限られ、或いは自分もジュリアにとって捨て駒としか思われていなかったと思い悩むようになる。そんな中、新たに「七番目の手品師」を襲名したエルルカが「幼いあなたにはまだ未来がある。だから自分と一緒に蛇国へ逃げよう。」と誘われるも、それを拒否し母やガットに報告するがエルルカたちに逃げられてしまった。この頃には「正義」と称して「ペールノエル」を邪魔する者を次々と暗殺しており、母を追い詰める世界警察のエイン=アンカーの前に現れるが、この時のエインの発言でかつて人攫いにあったレミーを助けてくれたピエロは、「本物の五番目の道化師」を追ってサーカスにピエロとして潜入していたエインであったことが判明。自分が慕っていた「正義の恩人」が自分とは逆の立場の人間であった事実を受け入れられず、エインを殺そうとするも、その直後に「八番目の狙撃手」グーミリアに胸を撃たれる。そして現れたエルルカに「悪」の道を自ら選んだレミーはもはや助けるに値しないこと、母やリンのためにという大義名分で人を殺してきたただの快楽殺人鬼だったと罵られながら意識を手放した。
しかし、「悪食の悪魔」と契約していたレミーは死ぬことはなく、意識を取り戻す。そして「ネイ」の言葉に従い母を助けるためにメリゴド高地のペイル=ノエルの墓に向かい、母ジュリアと交戦していたエルルカとグーミリアに襲い掛かる。契約者であるが故に死ぬことのないレミーは徐々にグーミリアを追い詰めるも、「憤怒の悪魔」ことセト=トワイライトの助力を受けたグーミリアの弾丸の前に今度こそトドメを刺される。死に際に自分の身体を抱えて泣き叫ぶジュリアの姿を見て、自分は息子として本当に愛されていたのだと知り満足するも、その魂は「グラス・オブ・コンチータ」に取り込まれ「墓場の主」であるバニカ=コンチータとグレーテルの転生体であるネイことアルテと共にあり続けるようになった。
ガット=クーロン/六番目のヴェノム
かつて「アスモディンの悪魔」と呼ばれたガスト=ヴェノムの曾孫であり、ルカーナ=オクトの血筋を汲むヴェノアニアの子孫。サムライのような喋り方をする。表向きの顔はアスモディン国の副将軍であるが、メイラナに頼まれカルガランド市内の図書館司書としてハンネをトラゲイに誘導していた。メイラナと共に勝手にエルルカを殺そうとしたことをジュリアに咎められ、罰として雑用係として草刈りを命じられた。
その後、世界警察に囚われたブルーノ=マーロンを口封じに殺害するも、そのことが露見し追われる身となる。その後はジュリアの屋敷に残されていた「憤怒の器」を刀に変えてメリゴド高地に向かうエルルカとグーミリアに襲い掛かるも、エルルカの反撃で半殺しにされ、ロープで木にくくりつけられて「黄金の鍵」を奪われる。その後エルルカからの連絡を受けた世界警察に身柄を拘束された。
ユーゼット=オラ/七番目の手品師
元ペールノエルのメンバーの娼婦。色欲の器「ヴェノム・ソード」の持ち主であり、その能力を使って占い師の傍らで顔の整形を営んでいた。元は港町に住む平凡な女性であったが、ある日ジュリアとその弟子メイラナに出会い、魔導師に憧れて彼女らに付いて行く。しかし、魔術の才能が全くなかった為捨てられ、占いで生計を立てていたところジュリアと再会し、「ヴェノム・ソード」と契約することを条件にペールノエル入りを果たした。
しかし再び自分が切り捨てられることを感じ、命惜しさにペールノエルから逃げ、娼婦としてお金を貯めた後に蛇国へ亡命しようとするが、レミーに見つかり殺される。
マルガリータ=ブランケンハイム/エルルカ=クロックワーカー/七番目の手品師
ユーゼットが務めていた娼婦のオーナー。マルガリータことイブ=ムーンリットを取り込んだエルルカであり、その影響で足が不自由になり車椅子に乗っている。ユーゼットが死んだ後、レミーに自分が「三番目の眠らせ姫」だったと名乗り、ジュリアと再会する。その後彼女の下に付くのに新しい姿になったからという理由で、「七番目の手品師」を名乗るようになる。
実際は人格の主導権は「エルルカ」の方にあり、「怠惰の悪魔」を取り込んだことで固有能力である催眠術が使えるようになるも、力は大幅に弱くなり一定時間経つと効果が切れてしまう。また、エインたちにブルーノ=マーロンの正体に繋がる手がかりを残したのも彼女である。その後ジュリアが大統領としての地位が弱まった後、レミーに一緒に逃げようと誘ったが、レミーはジュリアに告発した為翌日から消息を絶った。しかしグーミリアに撃たれて死の淵に立ったレミーの前に現れ、快楽殺人者と成り果てたレミーの「正義」を否定していた。
その後、ジュリアこと義妹イリーナから果たし状を受け取りメリゴド高地に向かう途中、襲撃していたガット=クーロンを返り討ちにし、彼から奪った「黄金の鍵」をグーミリアに託す。そしてイリーナとの戦いがはじまり、グーミリアがジュリアを追ってきたレミーを殺害したことで決着がつくものの、イリーナが発動させた『BLACKBOX TYPE S』に飲み込まれてしまう。そこで本来の「双子神の姉レヴィア」の姿になり、自分が「エルルカ=クロックワーカー」を憑代に蘇った際に転生のルールで「レヴィア」としての記憶を失ったこと、「エルルカ=クロックワーカー」の身体に残されていた記憶から自分が「エルルカ=クロックワーカー」であるとずっと思い込んでいたこと、そして僅かながらに「レヴィア」としての記憶もあった為に自分(エルルカ)が地神エルドの友人であったと思い込んでしまったこと、そしてイブ=ムーンリットを取り込んだことで本来の記憶を取り戻したことを、イリーナやグーミリアに明かした。そして「法廷の主」の力を発動させたイリーナに対抗するべく攻撃をしかけようとするも、乱入してきた「悪食の悪魔」の力とイリーナの力もぶつかりあい、巨大な力のぶつかりあいの結果、「レヴィア」「イリーナ=クロックワーカー」「イブ=ムーンリット」の魂が融合し、新たな人格「エルルカ=“Ma”=クロックワーカー」が生まれた。
グーミリア/八番目の狙撃手
  • モチーフ:GUMI(グミナ=グラスレッド)
エルルカの弟子であり、七人しかいなかった「セプト」で新たに「八番目」の称号を得た。エルルカの催眠術にかけられており、ジュリアたちを敵と認識しなくなっている。
しかし実は催眠は「エルルカがマルガリータを取り込んだことを忘れる」ということしかかけられておらず、実際は自分の意志で彼女に従っていた。レミーを射殺した後、エルルカがガットから奪った「黄金の鍵」を託され、イリーナとの決闘に挑む。その途中でジュリアを追ってきたレミーと交戦になり、「契約者」であったレミーを殺すことが出来ず徐々に追い詰められていく中、「黄金の鍵」に宿る「憤怒の悪魔」ことセト=トワイライトの呼びかけを受け、「セカンド・ピリオド」時代の記憶がない精霊のグーミリアは自分を知る「憤怒の悪魔」の呼びかけに戸惑うも、一度きりの契約という言葉を信じる他なく、セトの力を借りてレミーにトドメを刺した。
その後、イリーナが発動させた『BLACKBOX TYPE S』に飲み込まれ、神殿で本来の姿のイリーナ、レヴィア、ビヒモ、イブと対面する。そこでエルドから「エルルカ=クロックワーカー」の正体を知らされていたこと、レヴィアが記憶を取り戻したらミカエラと共に再び封じるよう厳命されていたことを打ち明けるも、師匠として慕う「エルルカ」を裏切ることはできなかったと涙ながらに語った。そして力のぶつかり合いで異空間が不安定になりグーミリアはビヒモや「黄金の鍵」に宿っていたセトと共に冥界に飛ばされてしまう。神であるビヒモと違い、生きたまま冥界に飛ばされてしまったグーミリアは『heavenly yard』に行くことができず、このままでは瘴気に蝕まれてしまうため、セトと融合しいつか来る師匠レヴィアを冥界で待ち続けることを選択した。

その他

リン=チャン
  • モチーフ:鏡音リン(リリアンヌ=ルシフェン=ドートゥリッシュ)
ルシフェニア共和国の歌姫。決め台詞は「さぁ、跪きなさい!」で、ハイデマリーも彼女の大ファンである。実は口パクで全部裏で別人が歌っており、エルフェゴートでのライブが終わった直後に元マネージャーがシュブルク新聞社に告発した為、表に出れなくなった。その後行方を晦ましている。
元はレミーと同じ孤児院の出身であり、黒髪にそばかすの少女であった。レミーがジュリアに引き取られた後、彼女はルシフェニアの貴族トン=コーパに労働力として引き取られ使用人として働かされていたが、優れた歌唱力を見込まれ歌手としてデビューさせられた。その際に顔がパッとしないという理由で、「手品師」ことユーゼットによってかつての「悪ノ娘」リリアンヌの顔に変えられた。当初は顔も華やかになり歌も歌えるということで喜んでいたが、全く休みのない重労働によるストレスで歌えなくなってしまった。そのため、トンは当初新たに連れて来たシャンソというネツマ族の少女を同じように顔を変えて代理に仕立てようとするも、ユーゼットが店をたたんで行方不明になってしまった為、やむをえず裏で歌わせるようになった。
その後口パクがばれて騒ぎになってしまい、トンが口封じの為にシャンソを殺して自分も殺されそうになる中、リンの様子を心配して屋敷にやってきたレミーに助けられる。レミーがトンを殺した後、彼に連れられてエルフェゴート国のカルガランドの市長メイラナに匿われた。その後トラゲイの事件を追ってきたエルルカたちがメイラナを倒した後、彼女たちと共に市長邸を出た。その後はブルーノが関わった事件の参考人として世界警察に保護されており、ペールノエル壊滅後は再び歌手活動を再開する。
御者
トラゲイの街に住む御者で、ハンネを馬車でカルガランドやトラゲイに連れて行くうちに意気投合するようになる。トラゲイが封鎖された際には街に残っている母親のことを案じ、世界警察に通して欲しいと懇願しているところをハンネことエルルカと再会し、トラゲイに入ることを条件に彼女たちに協力する。
ブリギッタ
トラゲイで宿を営んでいる女性で、ハンネを案内してきた御者の母親。ハンネの印象としては口は悪いが根は悪い人ではないらしい。トラゲイが伝染病で壊滅に陥った際には一時は死を覚悟するものの、エグモントが所持していた「gift」に効果的な薬のおかげで50名程の住民と共にブランケンハイム邸の地下で生き延びていた。
リタ
トラゲイにあるクラリス修道会の慈善院の院長。元は助産師でありマルクス=フェリクスともその縁での知り合いで、設立の際には多額の援助を受けている。マルガリータの出産に立ち会っており、雷に打たれて母親と共に死んだと思われた彼女が、赤猫を連れた「神の使い」によって生き返ったことで、眠らない体質も含めてマルガリータは神の慈悲を受けたと信じている。マルクスを尊敬しマルガリータを可愛がっている一方で、マルガリータの夫カスパルのことをはっきりと「クズ」と呼ぶほど嫌っていた。
マルガリータは頻繁に子供達に食事を振る舞うために慈善院に通っており、そのために慈善院の子供達と共に第六の「gift」を投与され、子供達が眠るように死んでいくのを狂乱しながら、彼女もまた眠るように死んでいった。
エグモント
トラゲイ唯一の薬屋「ラ・ブラ薬局」の薬剤師。商売人気質で、トラゲイ唯一の医者であるマルクスやその娘であるマルガリータによく薬や原材料を売っていた。以前裏市場で「ペールノエル」が関与しているとは知らなかったもののとある栄養剤を購入しており、第六の「gift」が空気感染で伝染していった時に他の生き残りたちと共にブランケンハイム邸の地下に避難し、それでも死者が出てしまった中で手当たり次第に薬を試した結果、その栄養剤が効果的であることを突き止めた。その栄養剤の原料には千年樹ことミカエラの樹液が使用されており、「ペールノエル」は資金調達のため未知の伝染病に対する特効薬を買い求めさせるために敢えて売っていたのだが、エグモントが売人に原材料を聞いていたことでプエリック=ロクゼによって正式に特効薬開発着手をされてしまい、目論見は失敗に終わっている。
プエリック=ロクゼ
ルシフェニア共和国の首都ルシフェニアンに住む老薬学医。ロクゼ家はかつてのマーロン皇后プリム=マーロンの出身家でもある大貴族だが、彼は兄たちと違って政治の道に進まずに医学の道に進み、その過程でグーラ病に対する特効薬を開発し、薬学の権威として世界中にその名を知られるようになった。世界警察とも繋がりを持つ。
ハンネことエルルカとも昔馴染みであり、彼女の依頼で「gift」を投与されたマルクスの容体から原因を調べていた。その後伝染病こと「gift」に対する特効薬が千年樹(ミカエラ)の樹液であることが突き止められた為、樹液を使わずに済むよう似た成分の開発に取り掛かるようになった。

神とその眷属たち

ミカエラ
  • モチーフ:初音ミク(イブ=ムーンリット)
千年樹の森の象徴である新たな千年樹であり、先代であったエルドの後継者。80年前にエルド派の信者が今まで信仰していた千年樹が枯れていて騒動になるも、同時に新たな大木があることに気づき、その樹であるミカエラが新たな信仰対象になった。再び信仰対象を失うことを非常に恐れたエルド派の信者たちや、ミカエラの友人であったかつてのシスター・クラリスの千年樹を傷つけてはならないという言葉によって、千年樹の入り口に教会が立てられ森に入るには通行証が必要になるなど、これまで以上に厳重で保護的になってしまった。
エルルカやグーミリアとは大昔からの友人だが、人間になっていた頃からの付き合いであるショウ=フリージスの寿命を引き延ばしたことでエルルカと口論になり、やや疎遠になっていた。それでも友人であるエルルカやグーミリアが訪れた時は、打ち解けたように話していた。その直後に死んだ筈のマルガリータが現れ、マルガリータと二人きりで話がしたいと森の奥へと行ってしまったエルルカをグーミリアと共に見送った。その後戻ってきたエルルカに僅かに違和感を抱きつつも、それを強く指摘することはなくエルルカとグーミリアの旅立ちを不安そうに見送る。
バニカ=コンチータ
かつては「悪食の悪魔」の契約者でありながら、悪魔を食らい「悪食の悪魔」に成り変わった女性。イリーナが使用している身体であるジェルメイヌ=アヴァドニアの先祖にあたる。現在は器である「グラス・オブ・コンチータ」の中に潜み、ヘンゼルの転生体であるポロことレミーの魂が手に入る時を待っている。
イリーナとは利害の一致で協力関係にあったが、「法廷の主」の力を発動させた彼女を自分の障害になると判断し、神もろとも葬り去ろうとする。力のぶつかりあいで異空間は崩れてしまうも、彼女自身は無事に現世の器の中に戻ることができ、次の機会を伺うことにした。
ネイ/アルテ
神の双子グレーテルの転生体。バニカ=コンチータに仕えていた頃はアルテ、そして500年代ではネイと名乗っていた。レミーが「赤いワイングラス」に触れたころからレミーは彼女の声が聴けるようになり、記憶力の悪い彼をフォローしている。
セト=トワイライト
「黄金の鍵」に宿る「憤怒の悪魔」のひとり。神の眷属の中で「セカンドピリオド」時代の記憶を持つ唯一の存在で、「サードピリオド」における全てのherの生みの親。本来の姿は仮面である。グーミリアに対しては、昔のよしみということで特別に力を貸す。
『BLACKBOX TYPE S』の異空間が力のぶつかりあいで不安定になってしまった際、グーミリアとビヒモと共に冥界に飛ばされてしまった。その際に昔の顔ぶれがいる『heavenly yard』に行くことを拒否し、冥界について調べるため、瘴気による侵食を防ぐためにグーミリアと融合した。
アダム=ムーンリット
「黄金の鍵」に宿る「憤怒の悪魔」のひとり。「大罪の器」の持ち主を殺そうとする「憤怒の器」の意思そのもの。持ち主が「大罪の器」の持ち主に怒りを抱いた時に、契約の有無関係なく「悪魔」の力を貸すことができるが、怒りのなかったグーミリアには干渉できなかった。
『BLACKBOX TYPE S』の異空間が力のぶつかりあいで不安定になってしまった際、セトが冥界に飛ばされてしまったのに対し、彼は無事に逃げ切り現世に留まっている。
ビヒモ
レヴィアの双子の弟である神竜。かつて創世神の方針に従わなかった為に姉と共に箱舟「罪」の中に封印される。レヴィアがキリル=クロックワーカーをそそのかして死んだ恋人エルルカを蘇らせようと箱舟の封印を解きエルルカの亡骸を入れるが、箱舟の暴走でレヴィアとビヒモの魂は本来の双龍ではなくエルルカに宿ってしまい、魂のない龍はその体が崩壊するまで暴れまわりレヴィアンタ魔導王国を滅ぼし、更に「エルルカ=クロックワーカー」はレヴィアの意識しか表層に出すことができなかった為、ビヒモは姉の魂の奥底で眠り続けていた。ちなみに女装趣味があり、双子でありながら姉レヴィアとの仲は険悪である。
後にエルルカことレヴィアが『BLACKBOX TYPE S』に飲み込まれたことで眠りから覚めるも、力のぶつかりあいでグーミリアやセトと共に冥界に飛ばされる。その際、彼自身長い眠りについていたことや、人間が昔以上に増えたことでもう世界を滅ぼすという気がなくなっており、あとは姉次第であると語りながら『heavenly yard』に向かい世界の動向を見守ることにした。
エルルカ=“Ma”=クロックワーカー
『BLACKBOX TYPE S』の中で起きた力のぶつかりあいの結果、「レヴィア」「イリーナ=クロックワーカー」「イブ=ムーンリット」の魂が融合し、三人の記憶を持ちながら誰でもない新たな人格がルカーナ=オクトの身体に宿った存在。ルカーナの身体が長年「エルルカ=クロックワーカー」を名乗っていたことから、その名前が一番ふさわしいと思いエルルカを名乗っている。
レヴィアがイブ=ムーンリットを取り込んだ副作用であった足の不自由は回復するも、巨大過ぎる魔力に反して「転身の術」以外の魔法が使えなくなってしまい、更に元々限界が近かったルカーナの身体はもって200年以内となってしまった。何故自分がそこまでして生きようとしているのかも理解できないまま、この強大な魔力を収めることのできる器を探すべく旅に出た。

円尾坂の仕立屋

2009年12月に投稿された楽曲。悪ノPには珍しい和風曲となっており、江戸時代町人の街を彷彿させる。七つの大罪シリーズ、【嫉妬】を構成する楽曲。

2013年5月にミリオン再生を達成した。

悪ノPの一言
個人的にはこの曲の主人公が一番怖い。もっともリアリティがあるキャラというか。大罪シリーズで唯一、結末の書かれていない人物でもあります。[16]

ストーリー

キャラクター

首藤家

蛇国の中で唯一異国人の居住が許されている伊耶美藩「鬼ヶ島」の、円尾坂の片隅にある仕立屋。伊耶美奉行・奥戸家の親戚筋にあたるが、複雑な家庭事情から本家から勘当されていた。

首藤禍世(カヨ=スドウ)
円尾坂の片隅にある仕立屋の若き女主人。長い黒髪に片メガネをかけた和風美人。母が1年前に謎の死を遂げてしまうも、夫の楽我と生まれたばかりの息子・煉と共に幸せに暮らしてきた。気立てがよく、仕事になると周囲の音が一切聞こえなくなる程の集中力を持つ。亡き母から形見として「二丁の鋏」を受け継いでいたが、それがかつて「レヴィアンタの双剣」と呼ばれた「嫉妬の器」であり、母が奥戸家から持ち出した「妖刀」と呼ばれる物であるということを最後まで知らなかった。
円尾坂を襲った大火で逃げ遅れてしまい、彼女自身は酷い火傷を負いながらも助かったが、愛する夫と息子を失ってしまった。禍世は母方の親族である伊耶美奉行・奥戸家に引き取られ、4年後には再興した円尾坂で仕立屋を再開するも、家族を失った空虚は癒えることはなく、もう火傷は癒えた関わらず自分の顔には酷い火傷があると思い込むようになっていた。そんな時に、レヴィン教の宣教師であるエルルカ=‘Ma’=クロックワーカーと出会い、醜い火傷がある自分の身体と彼女の身体を取り換えることができると言われ、それを快諾しかつての先祖ルカーナ=オクトの姿となった。エルルカの催眠で姿が変わっても周囲からは驚かれることはなかったが、しかしそれ以降は謎の夢を見るようになり、また夫と息子が生きているような言動をしていることから、周囲からは気がふれたと敬遠されるようになった。そして街で見かけた三六悔を自分の夫だと思い込むようになり、彼に近づく女たちへの「嫉妬」から連続殺人を起こし、そして最終的には浮気を繰り返す「夫」の悔を殺し、血濡れのまま山を下りてきたところを捕えられて奉行である祖父の我斗に死刑を言い渡された。
実際は禍世は狂人ではなく、全ては自分から家族を奪った悔への復讐のためだった。本来の予定では禍世は本当に悔を夫と思い込み、彼の家族を浮気相手と勘違いして殺していき、最終的には「はじめましてこんにちは」と悔に言われて逆上し、彼の死の間際に大火の犯人が反異人「紅衣衆」に所属していた悔であったことを知るはずであった。しかし、裁きの場でそのことを公表したが為に、幕府と紅衣衆の全面戦争となり紅衣衆の拠点地の近くにある円尾坂が戦火に巻き込まれ消失するという未来を、ルカーナの能力である「紫の夢」で予知してしまい、自分から全てを奪っておきながら家族と共に幸せに過ごす悔への「嫉妬」から復讐を果たしながらも、大好きな円尾坂を守るために自ら狂人を装い、真相を隠したまま円尾坂に混乱に陥れた自分の刑の執行を望んだ。
実は「嫉妬の悪魔の娘」であった禍世は、先天的に大罪の悪魔の契約者と同じ体質になってしまうため誰も彼女を殺せないでいたが、息子の「煉」として可愛がっていた黒檀童子の持つ憤怒の器「グリムジエンド」によって刑は執行され、彼女は死ねない痛みから解放される。しかし元より「悪魔の娘」であったこと、そして罪のない悔の家族を殺したことから天界には受け入れられず、その魂は地獄へと落ちて行った。
姓名の由来はそのまま「ストーカーよ」から。[11]
首藤楽我(ガクガ=スドウ)/楽舎(ガクシャ)
首藤禍世の夫。元は奥戸家の現当主・奥戸我斗の孫のひとりであり、妻の禍世とは従兄弟同士になる。武家の出身でありながら若い頃から遊び放題・喧嘩放題の放蕩者で、左手には以前人妻に手を出してその夫につけられた火傷がある。実家から勘当され、落ち延びた先である円尾坂で禍世に一目惚れした。その後彼女の母から禍世とは従兄弟同士であると聞かされるも、互いに愛は変わらず祝言をあげ、相変わらず遊び呆けてはいたものの浮気はせず、妻を一途に愛していた。
その後円尾坂を襲った大火で妻や息子と共に逃げようとするも、逃げ遅れて炎に包まれようとしていた。しかし、その時に傲慢の器「ルシフェニアの四枚鏡」によって悪魔の姿になり空を飛んで助かるも、異形の姿になってしまったことから妻に声をかけることを躊躇してしまい、偶然見かけた放火犯を見かけ追おうとするが、悪魔の力が弱まり山の中腹に落ちて記憶を失う。その後に魏耶羅という徳の高い僧に発見され、廃寺で治療を受けた後に人間の姿に戻り、楽舎という名前を与えられて同行するようになる。しかし、左顔半分にも火傷痕が残ってしまい、その顔を隠すために常に深網笠を被っていた。
魏耶羅の死後に初心に帰る意味も含めて記憶を失った自分がいた円尾坂を訪れ、そこで打ち首にされた女性の首を見る。その処刑場の前で黒檀童子と出会い、直後に間違って冥界に行ってしまった魏耶羅の計らいにより全ての記憶を取り戻す。首藤禍世は目の前の打ち首の女性だと黒檀童子に言われるも、エルルカの催眠の影響を受けてない楽我はその話を信じず、愛する妻に会いに深網笠を捨て去って行った。
首藤煉(レン=スドウ)
禍世と楽我の息子で、生まれたばかりの赤ん坊。両親に似ない金髪であった。円尾坂を襲った大火で死亡した。
首藤流(ナガレ=スドウ)
禍世の父親。腕の良い着物職人であり、奥戸家の当主の娘であった神楽と駆け落ちし、円尾坂に辿りつき仕立屋をはじめた。既に病気で亡くなっている。
首藤神楽(カグラ=スドウ)/ラハブ=バリーゾール
禍世の母親。奥戸家の現当主・奥戸我斗の長女であり、嫉妬の器「レヴィアンタの双剣」の番人であったが、家宝を持ち出し着物職人・首藤流と駆け落ちした。夫が亡くなり禍世が祝言を上げた後、海に落ちてしまい死亡した。
その正体は本物の神楽の精神を「転身の術」で入れ替え、神楽の身体を得た「嫉妬の悪魔」ことラハブ=バリーゾール。かつてはレヴィア神の部下であり、母でもあったという。首藤流に恋をし一緒にいたいが為に、美貌と魔力に優れた神楽の身体を乗っ取り神楽の精神を嫉妬の器「二丁の鋏」に閉じ込めた。そのため娘の禍世は人間の身体である神楽の子として生まれながら、「悪魔の娘」と呼べる存在になってしまった。
流が死んだことで人間界には殆ど興味を失っており、禍世の結婚を見届けた後は死んだことにして「人魚」として海辺で暮らしていたが、人魚の肉を食べれば不老不死になれるという伝説から漁船(特にフリージス財団の商船)に追い掛け回されていた。また全てを終わらせないために黒檀童子として転生した「イレギュラー」の記憶を術の介入で改竄し、燐として転生していた「リリアンヌ」から引き離した張本人。
最終的には「鋏」に宿っていたのが嫉妬の悪魔ではないことに気付いたエルルカ=‘Ma’=クロックワーカーによって居場所を突き止められ、神楽の身体ごと再び「鋏」の中に閉じ込められた。
奥戸神楽(カグラ=オクト)
奥戸家の現当主・奥戸我斗の長女で、嫉妬の器「レヴィアンタの双剣」の番人であった女性。強い魔力の持ち主であった為に嫉妬の悪魔に目を付けられ、「転身の術」によって精神を入れ替えられ「二丁の鋏」の中に閉じ込められてしまった。自分の身体を奪った嫉妬の悪魔と共に「鋏」として首藤家に渡り、嫉妬の悪魔が生んだ禍世をずっと傍で見守ってきた。「鋏」はシャルテット=ラングレーによって本来の能力を封じられているが、神楽は「二丁の鋏」として「鬼ヶ島」のあらゆる場所を見通すことができる。
自分の身体を奪った人魚こと嫉妬の悪魔を憎んでいるが、禍世のことは娘として大切に思っており、彼女のおぞましい犯行をただ見守ることしかできなかった。禍世の死後、仕立屋を訪れてきたエルルカに一連の出来事を話し、嫉妬の悪魔が鋏に戻ったことで神楽の魂は鋏から解放された。その直後にビヒモに声をかけられて彼やアレンと共に天界へと旅立つことになり、眼下に広がる禍世が愛し守った円尾坂を見つめながら、地獄にいってしまった禍世の幸せを願っていた。

奥戸家

伊耶美藩を治める伊耶美奉行の武家。540年頃から始まった蛇国の天下統一の戦いで現幕府の涜革家(とくがわけ)に従い、「蛇ヶ原の戦い」で多大な貢献をした流浪の剣士ガオ=オクトの子孫。つまりルカーナ=オクトの血筋を汲むヴェノマニアの子孫でもある。

奥戸阿南(アナン=オクト)
奥戸家の現当主・我斗の孫のひとりであり、禍世や楽我の従兄弟にあたる。黒髪に髷を結った優男。
円尾坂の大火で禍世が奥戸家から妖刀を持って駆け落ちした神楽の娘であることが判明し、当主から禍世から家宝のありかを吐かせるよう厳命を受けるも、本当に刀のことはなにも聞かされていなかった禍世からは情報を得られなかった。結局目的を果たすことができず、奥戸家での居場所を失ったため、元々異国の地を見てみたいと思っていたこともあり、懇意にしていたペリエと共に蛇国を出た。
奥戸我斗(ガト=オクト)
蛇国の伊耶美藩の奉行で、奥戸家の十四代目当主。禍世、楽我、阿南の祖父。奥戸家に伝わる「妖刀」を持ち出して駆け落ちした神楽の娘であり、勘当した孫の楽我と結婚した禍世のことを快く思っておらず、円尾坂の大火での怪我が回復したらすぐに追い出した。その後殺人を犯し逮捕された禍世を、家から追い出したのは間違えであったと語りながら、奉行として処刑を命じた。
月本ブフ子
奥戸家に仕える使用人の女性。蛇国生まれの蛇国育ちだが、父親はルシフェニア人であり、金髪に青い眼を持つ。阿南の付き人であったが、円尾坂の大火で奥戸家に引き取られた禍世の世話役になり、高度な医療知識で禍世の火傷が殆どなくなる程に治癒させた。禍世とは仲良くなるが、彼女からは死んだ息子の「煉」の名で呼ばれており、本人ももう諦めている。阿南がフリージス財団商館に移る事が決まった為、ブフ子も住み込みで移る事になり禍世にメイド服を作って貰った。犬吉からは惚れられているが、あまり相手にしていない。
正体は双子神の弟ビヒモ神。つまり男である。天界「heavenly yard」で世界の成り行きを傍観していたが、三六燐として転生した姉リリアンヌに会いたいというアレンの願いを叶えるべく、アレンを黒檀童子として蛇国へ転生させたが、「天界の主」にバレて連れ戻して来いと言われ地上に落とされた。しかし、本人は「天界の主」に従う道理はないとして、アレンがリリアンヌに会うのに成功するか失敗するまで放置を決め込み、久しぶりの人間としての生活を満喫していた。レヴィアの記憶を持つエルルカとは館の中で互いに存在に気付いていたが、無視を決め込んでいる。
燐や悔が禍世に殺された後、奉行の目を掻い潜って嫉妬の器「二丁の鋏」を回収しており、黒檀童子の頼みで仕立屋に戻しておいた。そして嫉妬の器に引き寄せられてフリージス財団の商船に紛れ込んできた憤怒の器「グリムジエンド」でアレンの記憶を元に戻し、処刑することができない禍世を完全に殺すには「グリムジエンド」を使うしかないと伝える。そして黒檀童子が禍世を処刑して仲間たちとの別れを告げて、エルルカが嫉妬の悪魔を「二丁の鋏」に閉じ込めた後、解放された神楽の魂やアレンと共に「heavenly yard」に戻って行った。
奥戸我王(ガオ=オクト)
奥戸家の初代当主。元は外の国からやってきた流浪の剣士であり、当時蛇国を訪れていたエルルカ=クロックワーカーから依頼を受け、エルルカとその弟子のグーミリア、そして彼女らと旧知であった初代猿帝都(シャルテット=ラングレー)と共に涜革家の勢力として戦い、「蛇ヶ原の戦い」で当時涜革家と対立していた蛇姫及びジュリアIRの勢力を倒した。その後名前を蛇国形式に改め幕府のもとに仕えていたが、蛇国が鎖国政策に入ると異人であった為に疎まれ、僻地である伊耶美藩の奉行を命じられた。本人はそのことに叛意を持たず、以降奥戸家は伊耶美奉行を勤めていくことになる。
戦国時代の末期、ジュリアIRに挑む直前の猿帝都に、「二丁の鋏」に加工した嫉妬の器「レヴィアンタの双剣」を託されており、エルルカたちにも内密にしていた。その後伊耶美藩に移った時に、鬼ヶ島の岸沿いの洞窟の中に移して「二丁の鋏」を鉄箱の中に厳重に封印し、「妖刀」の入った箱を開けることを固く禁じた。そのため嫉妬の器が「二丁の鋏」の姿をしていたことは、エルルカはおろか代々守ってきた奥戸家の者たちですら知らなかった。

三六家

円尾坂の呉服屋。首藤家とは友人だった先代同士が不仲になったことから一切交流はなかったが、妻の冥は内密で禍世と交流を持っていた。後に店主の悔が禍世に亡き夫と間違わられたことを切っ掛けに、一家全員が禍世に殺された。

三六 悔(カイ=ミロク)
呉服屋の店主。妻と二人の娘と共に暮らしている。普段は家に籠って仕事しており、滅多に外に出ることはないらしい。異国人の血が混ざっているが、母親が異国人に強姦されて殺された過去から純異国人を嫌っており、娘の三九がヤレラ=ザスコ商会の御曹司キジ=ヤレラと付き合っていることにも断固として反対していた。禍世とは先代同士が不仲であったことから一切面識はなく、左手の火傷が共通していることから気がふれた彼女から亡き夫と間違えられ、やがて一家全員が殺される事態へと繋がってしまう。夜ひとりで伊耶佐山に登っていたところを待ち伏せていた禍世に殺された。
実は反異人の過激組織「紅衣衆(くれないころもしゅう)」の一員であり、異人商館群を狙った円尾坂の大火の犯人。本来の未来では禍世に本当に夫だと勘違いされ、浮気を繰り返すことへの「嫉妬」から殺され、死の間際に自分が円尾坂の大火の犯人であることを告げる筈であった。しかし禍世が「紫の夢」でこれから起こること全てを予知した為、自分の全てを奪っておきながら家族と共にのうのうと暮らす悔への「嫉妬」を抱き、その家族もろとも殺すことで禍世は復讐を遂げた。
「紅衣衆」は10年後に軍船を率いて開国を迫ったマイスティア合衆国によって返り討ちにあい、組織は壊滅し幕府も解体され蛇国は開国を果たした。ちなみに「紅衣衆」は元はジュリアIRが率いていた蛇姫の魔導師集団であり、幕府への抵抗を続けていく内に反異人の過激組織へとなっていった。
三六 冥(メイ=ミロク)
悔の妻。「赤い着物の女」。円尾坂の医者の娘で16歳で三六家に嫁ぎ、主に商品の納品を担当している。父親は蛇国人だが、母親はルシフェニアの出身で、エルフェゴート人の血筋も引いている。
禍世とは家同士は商売敵ではあったがその腕を見込んでおり、時折仕事を依頼するなど以前から交流を持ち、円尾坂の大火で酷い火傷を負った禍世の看護を行っていた。夫とは仲睦ましい夫婦であったが、夫が円尾坂の大火の犯人であることに薄々気付いていた。
夫と歩いているところを禍世に目撃された日の夜、家に帰る途中で禍世と久しぶりに再会した直後に彼女が隠し持っていた「二丁の鋏」で殺された。
三六 三九(ミク=ミロク)
悔と冥の長女。「緑の帯の女」。母方の血筋にエルフェゴート人が混ざっている為、緑色の髪を持つ。
禍世のことは母から聞いており、4年ぶりに再興された仕立屋を訪れた禍世に家財のことの説明をしていた。ヤレラ=ザスコ商会の御曹司キジ=ヤレラと付き合っており、互いに結婚を考えているが、異国人を嫌う父親から真っ向から反対されている。
キジの子どもを身籠っており、そのことで父親と大喧嘩して家に帰ることができず夜の街を彷徨っていたところを、禍世によってお腹の子どももろとも殺されてしまった。
三六 燐(リン=ミロク)
悔と冥の次女。「黄色いかんざしの少女」。母方の祖母がルシフェニア出身であったことから黄色い髪を持つ。
年齢の割にはやや大人びた少女であり、生まれた時から「誰か」を待ち続けている。姉とキジの交際についてもキジは父親が言うような悪い人ではないと思っている。母と姉の死後は父の故郷の北の天読(あまみ)で静養していたが、丁度久しぶりに円尾坂に戻って父と一緒におゆかの店でかんざしを買ってもらっているところを、禍世に目撃されてしまう。
正体は「リリアンヌ=ルシフェン=ドートゥリシュ」の転生体であり、黒檀童子ことアレン=アヴァドニアが捜していた本当の人物。天読の地で傲慢の器「ルシフェニアの四枚鏡」を手に入れたことで前世の記憶と自分が待ち続けてる人物の正体を知り、そして自分が円尾坂で禍世に殺される未来を知る。アレンを待つためにも「ルシフェニアの四枚鏡」と契約し、海辺で待ち構えて禍世を返り討ちにしようとするも、傲慢の悪魔は力を殆ど失っていた為力を発揮できずに「鋏」で切り刻まれ、禍世を殺人鬼とののしりアレンへの謝罪を口にしながら事切れた。彼女の遺体は「ルシフェニアの四枚鏡」と共に放置された為、そのまま共に海に流されたとされ最後まで見つかることはなかった。

黒檀童子一行

黒檀童子(こくたんどうし)
桃弦郷(ももげんごう)という小さな村に住んでいた金髪碧眼の少年。黒檀の木から生まれ、黒翁(くろおきな)と金媼(きんおうな)という夫婦に引き取られて育つ。金髪碧眼という異人のような外見であることから、村の人間たちに疎まれており、唯一気味悪がることなく接してきたのは犬吉という同年代の友人だけであった。
成長するにつれて自分は何かやらなけれないけないことがあった筈だと思い悩むようになり、ある日海辺で出会った人魚に「本当の母親は鬼ヶ島で仕立屋をしている桃色の髪の女性」「本当の名前はれん」だと言われ、その本当の母に会うことが使命だと告げられ、犬吉と共に鬼ヶ島に向かう。それからすぐに目的地を同じくする猿帝都という刀鍛冶の女性に会い、三人の腕っぷしの良さで賊を返り討ちにしたり、悪代官を懲らしめたりして蛇国内で有名人になりながら鬼ヶ島に辿りついた。
そして鬼ヶ島で仕立屋を営む禍世に出会い、人魚から聞いた話をして禍世に息子の「煉」として受け入れられ、一緒に暮らすようになった。禍世のことは母なのか疑いつつも、彼女の辛い過去を知り支えになれればと大切に思っていたが、本当の禍世の息子「煉」は4年前に亡くなった時点でまだ赤ん坊であり、その時既に10歳程であった黒檀童子は禍世の息子「煉」の生まれ変わりですらないということ、そして宣教師として有名なエルルカに相談してみたところ人魚のお告げは全くの嘘だと言われ、徐々に違和感を感じるようになる。家で禍世の帰りを待っていたところ、猿帝都からキジたちが人斬りの犯人が禍世だと疑っていることを教えられ、三人でキジたちの後を追った先に血濡れの禍世を発見。その後裁きの場で彼女が死刑判決を受け、彼女の真意をキジに聞かされ、辛いながらも大切な時間をくれた彼女の最後を見届けることを決意した。
正体はビヒモ神によって地上に転生した「イレギュラー」ことアレン=アヴァドニア。本当の目的は転生したかつての姉リリアンヌこと三六燐に会うことであったが、二人を会わせない為に転生の際に人魚こと嫉妬の悪魔の術によって記憶を失い、更に嘘の目的を教えられていた(最もその転生したリリアンヌが禍世と同じ円尾坂にいたことは人魚にとっても想定外のことであった)。ビヒモが持っていた憤怒の器「グリムジエンド」によってアレンとしての記憶を取り戻すも、目的の燐は禍世に殺されていた為会うことは叶わず、そして「嫉妬の悪魔の娘」である禍世の処刑を決行するには自分が「グリムジエンド」で彼女の首をはねるしかないと告げられる。禍世を死ねないのに斬りつけられる痛みから解放するためにも自らの手で切り落とす決意を固め、最後に禍世の願いで彼女を「母さん」と呼び死刑を決行した。「グリムジエンド」は中身の悪魔がいなくなっていた為、悪魔に取り込まれることなく、また特殊な存在であるために怒りを持たずともアレンは効力を発揮できたが、禍世の首を刎ねた後その反動で何処かへ飛んで行ってしまった。
その後は異国へ旅立つと言って黒檀童子一行の解散を犬吉と猿帝都に宣言し、二人のそれぞれの行く先を聞いて見送った後、ビヒモや神楽と共に「heavenly yard」へと帰って行った。
犬吉
桃弦郷に住む黒檀童子の幼馴染。村の中では育ての親を除いて唯一黒檀童子を差別せず、仲の良い友人となった。異国に興味を抱いており、鬼ヶ島で異国のことを学ぶために共に旅に出た。腕っぷしは良いが女の子好きで、鬼ヶ島ではブフ子に惚れて積極的にアプローチしていたが、進展はなかった。黒檀童子一行解散後は、また三人で再会することを約束して故郷へと帰って行った。
猿帝都(さるていと)
桃弦郷の近くの集落で代々刀鍛冶を営む乱倶族の十六代目頭領の女性。代々の頭領しきたりに従い初代と同じ桃色の髪に染めており、また初代猿帝都を心から尊敬しているため同じように猿の仮面を被り、語尾に「ッス」をつけているが、なかなか定着していない。かつて初代猿帝都が作った「刀」を求めて奥戸家のもとを尋ねるために、鬼ヶ島に向かう黒檀童子と犬吉に同行していた。
結局「刀」は神楽が持ち出したことで行方不明になっており、目的こそ達せなかったが旅の中で様々なことを学べたと満足し、三人でまた再会することを約束して故郷へと帰って行った。

異国人

エルルカ=‘Ma’=クロックワーカー
フリージス財団商会と共に円尾坂にやってきた、レヴィン教の宣教師の女性。「宣教師」はあくまで船に乗せてもらう為の肩書きとのこと。長い時間を生き続けており、フリージス財団とは懇意で、時折不老不死に繋がる手掛かりを伝え莫大な報酬を貰っている(最も本人は核心を言うつもりはないらしい)。最近は面白い話をメモをするようにして、今後は小説や脚本にしようと思っている。
自らの新しい身体となる存在を探しており、ルカーナ=オクトとサテリアジス=ヴェノマニアの子孫にして巨大な魔力の持ち主である禍世に目を付け、彼女の心に付け入る形で「転身の術」を使いお互いの身体を交換し、黒髪の和風美女の姿になる。その後1年間は「転身の術」による負担で力が一時期弱まってしまい、かなり危険な嫉妬の器「二丁の鋏」には手を出さず、殆どフリージス財団商館に籠っていた。力を取り戻した後は改めて嫉妬の器「二丁の鋏」を手に入れに禍世が死んだ後の仕立屋を訪れるも、中身が別人になっていたことに気付き驚愕する。そして「二丁の鋏」に宿る神楽から禍世の話を取材し、改めて人魚こと嫉妬の悪魔ラハブを追い詰め、神楽の身体ごと鋏の中に戻した。
同じ商館にいたビヒモとは互いの存在に気付いていたが、レヴィアとしての記憶からかお互いに無視を決め込んでいたらしい。その後は本国へ戻るフリージス財団商会と共に蛇国を後にした。
ペリエ=キューティ=マーロン
フリージス財団商会マイスティア支部アクナ地方担当官の女性。蛇国の言葉が上手く話せず、カタコトで話している。フリージス本家との血の繋がりが薄いため、マイスティア合衆国から見て辺境の地である蛇国を任されているが、商売の才能はエルルカも認めている程。幕府には開国を迫っているが、なかなか聞き入れて貰えていない。
フリージス財団は深い繋がりを持っていたマーロン王家が王位を追われ、マーロン国の植民地であったマイスティア合衆国が独立を果たした事で全盛期より力を失っており、彼女自身も円尾坂の大火で財産や使用人を失うが、幕府への借りを作る為に円尾坂の復興金を寄付した。本国で蛇国の着物が流行っているため、三六家の呉服屋とは懇意である。
フリージス財団が成立後から秘密裏に行っていた不老不死の研究の成果で、四十代近くで子どももいるにも関わらず、禍世が「お嬢さん」と勘違いする程の若さを保っている。食べれば不老不死になれる「人魚」の噂を聞き、商船で本格的に捕獲しようと躍起になっている。後に本部から帰国命令が出た為、蛇国を出る事を希望していた阿南と共にマイスティア合衆国に戻るが、一番の目的である開国は果たせなかった為、今度蛇国に戻る時は軍艦を引き連れて脅そうと決意しており、10年後に有言実行し開国を果たした。
既婚者で息子がおり、息子は現在法律について勉強しているとのこと。ガレリアン=マーロンの先祖にあたる。
キジ=ヤレラ
エルフェゴート国に本部を構える、現在エヴィリオスに事業を拡大しつつあるヤレラ=ザスコ商会の会長の御曹司。エルフェゴート人。
いずれ後を継ぐ為の勉強として蛇国に3年前から派遣されてきた。事業の一環として対立関係にあるフリージス財団と同様に円尾坂の復興に奔走していた頃に、円尾坂に住む三六三九に出会い、同じ緑の髪から意気投合し付き合うようになるが、異人を嫌う彼女の父・悔からは交際を反対されていた。自らの地位を誇示することはなく一途な青年であり、三九の妹の燐からも好印象で、神楽も時折二人の恋路を微笑ましく見守っていた。
三九が妊娠した事をきっかけに、彼女との結婚を決意し実家への報告のため単身で1ヶ月ほど本国に戻っていたが、蛇国に戻る前に三九が殺されてしまい、彼女とお腹の子の復讐を誓う。独自の調査で犯人が禍世である可能性を突き止め、黒檀童子と対立しながらも禍世の後を追うが、悔を殺し血塗れで山から降りてきた禍世を見て犯人だと確信し刀で斬りつけようとするも、黒檀童子に止められた。
禍世の刑執行を前に三九の父親の悔が反異人「紅衣衆」の一員であったことを突き止めており、禍世の三六一家殺害の真相が悔への復讐であること、幕府と紅衣衆の全面戦争で円尾坂が戦火に巻き込まれてしまうことを防ぐために禍世が真相を隠したまま処刑されることを望んでいる事を、彼女と短い間ながら家族として過ごした黒檀童子に伝えた。帰国命令が出た為蛇国から出る事になるが、後継者としての勉学を終えた後に必ず三九の眠る円尾坂に戻ることを黒檀童子に宣言し、また会おうと握手を交わした。

その他

おゆか
円尾坂で簪屋を営む女性。首藤家とは先代の代からの顧客であり、禍世は店の鮪たこやきが大好物である。桃弦郷の出身で、異国人のような外見を持つ黒檀童子には冷淡であったが、嫁いで円尾坂に来てからは多くの異国人やその混血と触れ合ってきた為、後に円尾坂に来た黒檀童子に謝罪している。
禍世のことは娘のように思っており、家族を失い気がふれてしまった禍世の事を誰よりも気にかけていた。禍世が人斬りの犯人として処刑された後も、夫に内緒で晒し首の下に通っており、同郷である岡っ引きの栄吉になるべく丁重に葬って欲しいと頼んでいた。
初代猿帝都/シャルテット=ラングレー
桃弦郷の近くの集落で刀鍛冶を営む乱倶族(らんぐぞく)の初代頭領。かつて神聖レヴィアンタ国で起きた「新生四騎士事件」で慕っていたジェルメイヌ=アヴァドニアをアビスIRによって失い、更に嫉妬の器「レヴィアンタの双剣」の持ち主となってしまった事から、アビスIRから大罪の器を守る為に追っ手から逃亡する。その後逃亡と観光を兼ねて蛇国を訪れた際に蛇国を気に入って永住を決意、父親の影響で兼ねてから興味を持っていた刀鍛冶を営むようになる。偏見の目が嫌で異人の顔を隠す為に猿のお面をするようになり、髪の色は桃色のままであった為にあまり意味はなかったが、そのおかげで猿フェチのイケメンと結婚し子宝にも恵まれた。
晩年に蛇国が戦国時代に突入した際、旧知であったエルルカ=クロックワーカーやグーミリアと再会し、彼女らや流浪の剣士ガオ=オクトと共に現幕府側の勢力に付いた。ジェルメイヌの身体をアビスIRことジュリアIRから解放したいという思いから、ジュリアIRに単身で挑むが、年老いた身では到底叶わず、その身は焼き尽くされた。ジュリアと戦う直前に「二丁の鋏」に加工し封印を施した嫉妬の器を、エルルカたちにすら内密にしてガオに託しており、以降嫉妬の器はガオの子孫である奥戸家に守護されることになる。
蛇姫
540年頃の蛇国の戦国時代で、最も有力であった天読の大名である初音信長の娘。父の死後に天下統一の悲願を果たすべく勢力を拡大させるも、その強引なやり方から抵抗勢力が生まれていき、その中心であった閣都の大名の涜革家と天下分け目を争った。
異国から来た魔道師ジュリアIR(後のジュリア=アベラール)を味方につけていたが、涜革家はそれに対抗してエルルカ=クロックワーカーとその弟子グーミリア、異国の剣士ガオ=オクト、刀鍛冶のシャルテット=ラングレー(猿帝都)を味方につけ、549年の「蛇ヶ原の戦い」で涜革家が勝利を収める。その後蛇姫は天読の地へ逃れ潜伏していたが、ジュリアIRに見限られ殺された。

悪徳のジャッジメント

2011年6月にニコニコ動画に投稿された楽曲。七つの大罪の【強欲】のストーリーを描く。

悪ノPの一言
大罪シリーズの中で唯一、能動的に「器」を集めようとした人物がガレリアン=マーロンです。それは彼が「物欲」の悪魔に憑かれたことと無関係ではないでしょう。[17]

ストーリー

キャラクター

ガレリアン=マーロン
  • モチーフ:KAITO
  • 国籍:USE
  • 人種:マーロン人
USE暗星庁長官。若年で才を発揮し、最年少にして裁判長に就いた男性。妻と1人の娘がいる。
マーロン王家の血筋を汲むカイル=マーロンの子孫。後世では「collecter」とも呼ばれる。
法の番人としての自らの立場を利用して、不当な判決と引き換えの賄賂による蓄財や証拠品の私的接収など犯罪行為に手を染め、これら司法の私物化から暗星庁最大の汚点と語られる。それも全て娘を元に戻すための「大罪の器」の収集の一環である。
983年、トニー=オースディン将軍の裁判について癒着が判明、「レヴィアンタ内乱」の原因を作る。暴動の中、激怒した民衆に自宅を放火され死亡した。死の前年に千年樹の森に「映画館」を建設しており、彼の莫大な遺産がそこに遺されているとの噂が流れる。
Ma(エムエー)/首藤禍世(カヨ=スドウ)
  • 年齢:NO DATA
  • 国籍:NO DATA
  • 人種:蛇国人
  • 宗教:NO DATA
脚本家。蛇国のキモノを纏い、眼鏡をかけた黒髪の美女。
ガレリアンの友人だが同時に不倫関係にもあり、妻の存在があるためガレリアンからは煙たがられている。
真実の歴史として、ガレリアンの元へ「ユキナ=フリージス」著『悪ノ娘』の直筆稿を持ち込み、これを元にした映画への出資と小説に登場した「大罪の器」収集を持ちかける。一度はすげなく断られたものの、”娘”を利用することで、ガレリアンに「大罪の器」を自主的に集めさせている。
ガレリアンの死後は彼の持つ「大罪の器」を相続し、死の間際にガレリアンが作った映画館に収集品たちを移した。器たちからは「時の魔道師」と呼ばれている。楽曲の声は巡音ルカが担当。
その正体は、レヴィア、イリーナ、イブの魂が融合した存在である。E.C.611年に起こった「メリゴド高地の決闘」時、三人の魔術がぶつかり合った際に三人の魂が融合した。
ミッシェル
ガレリアンが溺愛する彼の”娘”。
その正体は「Ma」がガレリアンの娘に仕立てた大罪の器「ぜんまい仕掛けの人形」。
奥戸我門(ガモン=オクト)
曹長。ヴェノマニアの子孫。兄ニョゼが犯行で使用したという先祖伝来の刀の返却を求め、ガレリアンの自宅で本人に掛け合うも却下され引き下がる。
ガレリアンの死後、ヴェノム・ソードを取り戻し自らの呪いを解く為にひとり映画館を訪れる。そこで墓場の主とサーヴァンツに喰われそうになり、必死で逃げた先で今度は人形館長に捕まって裁判にかけられ死刑判決を受けた。しかし、雑用係が欲しいという待つ者の気まぐれから処刑を免れ、「呪われた庭師(gardener)」として映画館に住むようになった。
冥界の主(master of the hellish yard)
  • モチーフ:?
ガレリアンが死後に冥界で出会った、仮面をつけた謎の少女。
悪魔たちから「冥界の主」と呼ばれ、「Ma」からは最後の器に関わる者とされている。楽曲の声はGUMIが担当。

映画館の住民

人形館長/法廷の主(master of the court)
ガレリアンが”娘”として最も愛していた、怠惰の器「ぜんまい仕掛けの人形(クロックワーカーズ・ドール)」。
ガレリアンの家に火が放たれた際に酷い火傷を負い、映画館に移された後もその命が尽きかけようとしていたが、マーロン・スプーンによって救われ復活した。
父親の跡を勝手に継いで映画館の館長兼法廷の主となり、父の見真似で映画館を訪れた人間を裁判にかけ、死刑判決を下し続けている。
墓場の主(master of the graveyard)
悪食の器「グラス・オブ・コンチータ」の化身。
同じくグラス・オブ・コンチータから生まれたサーヴァンツを従える。映画館周縁の墓所の主であり、訪れた人間たちを喰っている。表向きは「Ma」に従ってはいるが、裏では悪巧みをしている腹黒。モデルはバニカ=コンチータ。
サーヴァンツ(servants)
墓場の主と同じくグラス・オブ・コンチータから生まれた化身。映画館を訪れた人間を捕える役割を持つ。モデルはバニカ=コンチータに仕えていた双子の使用人・ポロ(ヘンゼル)とアルテ(グレーテル)。
歯車(gear)
強欲の器「マーロン・スプーン」の化身。
墓場の主からは「アダムの魂」と呼ばれている。時計塔の歯車となって人形館長を救った為、力を失い映画館への干渉が不可能となる。
待つ者(waiter)
傲慢の器「ルシフェニアの四枚鏡」の化身。
映画館の給仕人だが、我が儘で仕事はまったくしない。裁判にかけられ死刑判決を受けたガモン=オクトを、雑用係が欲しいという理由で映画館に置くように取り計らった。モデルは「悪ノ娘」ことリリアンヌ=ルシフェン=ドートゥリシュ。
イレギュラー(irregular)
人形館長の中に眠る謎の少年。赤い鎖と青い鎖で縛られている。
創造神の定めた世界の条理から乖離して生まれた存在で、その存在そのものが創世神にとって唯一の「イレギュラー」とされている。黒い箱の中で眠りながら時折地上へ介入を行い、帰還の時を待っていた。創造神からは「アレン」と呼ばれている。

ネメシスの銃口

2014年8月にニコニコ動画に投稿された楽曲。GUMIをヴォーカルとし、七つの大罪の【憤怒】のストーリーを描く。

ストーリー

エヴィリオス歴983年。USE暗星庁の裁判官・ガレリアン=マーロンが人殺しの将軍・トニー=オースディンを無罪にしたことで、レヴィアンタの内乱が発生。

炎が燃え盛る家には、男に銃口を向ける緑髪の少女がいた。少女の名前はネメシス=スドウ。この時代における憤怒の器・黄金の鍵の所有者でもある。

男の名前はガレリアン=マーロン。USE暗星庁の裁判官として悪事を働いていたが、実は暗星庁特勤部隊・PNの首領にして、一番目のサンタだった。

一方ネメシスは、この時代におけるペールノエルの構成員。コードネームは「eight」だった。彼女は昔、ガレリアンからの命令で自分の恋人をリボルバー銃で殺害した。

その直後に自分自身も撃ったが、なぜか死ぬことはできなかった。彼女はその後、ガレリアンへの復讐のために生きてきたのだ。

彼女は燃え盛る家の中でガレリアンに対し被告人からもらった賄賂をもらった相手に返すよう要求するが、彼はこの交渉を拒否した。

キャラクター

ネメシス=スドウ / 冥界の主(Master of the Hellish yard) / eight
USE暗星庁特務部隊『PN(ペールノエル)』の構成員であり、『PN』の構成員としてのコードネームは「eight」。ガレリアン=マーロンが死後に出会ったという「冥界の主」と呼ばれる少女の正体。父親はガレリアン=マーロン、母親はカヨ=スドウの身体を借りたMaだが、その詳細は不明。この時代における憤怒の器・黄金の鍵の所有者。
とある森の廃屋で生まれ、幼少時は父親の顔を知らずに育った。過去にこの時代のペールノエルのリーダー・ガレリアン=マーロンの命令で恋人をリボルバー銃で殺害した。その直後に自分も撃ったが、憤怒の悪魔と契約していた為に死ぬことができなかった。その後は恋人の弟ガモンに説得されガレリアンへの復讐の為に生きてきた。屋敷に火を放った後「冥界の主」としてガレリアンに対し被告人からもらった賄賂をもらった相手に返すよう要求するが、彼はそれを拒否した為、父親をリボルバーで打ち殺した。
ガレリアンを殺害した罪で投獄されるも、恩赦で解放され民からは悪徳裁判長を殺した「英雄」として祀られ、反USE組織タサン党の副党首に就く。その後はレヴィアンタの内乱で機能を停止したUSEの中で頭角を現してエルフェゴートの政権を奪取、晩年は「独裁者」となる。
エルフェゴートの独裁者となった彼女がルシフェニアに進軍したことをきっかけに世界中を巻き込んだ戦争となり、戦争の末期に彼女が使用した新兵器『罰』によって世界(「サードピリオド」)を滅ぼすことになる。彼女自身にはその自覚は無くあくまで、『エヴィリオス』という名の『地獄』を滅ぼしたという認識である。
楽曲「最後のリボルバー」では、恋人との幸せな時間を思い出しつつも最愛の人を打ち殺した彼女の姿が描かれている。ちなみに、PVではジズ・ティアマを飼っていた描写がある。
ガレリアン=マーロン
「悪徳のジャッジメント」に登場するUSE暗星庁の裁判官で、ネメシスの父親。実はUSE暗星庁特務部隊『PN(ペールノエル)』首領「一番目のサンタ」でもあり、「最後のリボルバー」では実弾入りのリボルバーをネメシスに与え、彼女の恋人を殺すように命じた張本人。
ネメシスから被告人からもらった賄賂をもらった相手に返すよう要求されるが、彼女の要求を拒んだ。怠惰の器「クロックワーカーズ・ドール」を死んだ愛娘ミッシェルと思い込んでおり、最期までネメシスを娘として見ることはなかった。
ミッシェル=マーロン
ガレリアン=マーロンと彼の正妻ミラ=マーロンの娘。ネメシスの異母姉であるが、彼女は「義姉さん」と呼んでいる。優しく穏やかな性格でネメシスに対しても親しげに接しているのに対し、ネメシスからは憎悪を抱かれており、自分より父親に可愛がられている彼女の事が気に入らなかった。その為、未だに彼女を『姉』と認められていなかった。原罪者や「クロックワーカーズ・ドール」と同じ容姿を持つ。母親と共に旅行に行っていたが、帰りの船でネメシスの操る巨大なジズ・ティアマの襲撃に遭い、暗い海の底に沈んでいった。
ガレリアンはそれ以降、Maによって怠惰の器「クロックワーカーズ・ドール」を生き返ったミッシェルと思い込んでいる。
ニョゼ=オクト
  • モチーフ:?
レヴィアンタ軍の少尉で、ネメシスが春の桜の木の下で出会った男性。ネメシス曰く「正義側の人」であり、相容れない存在であると理解しつつも好意を抱き、2人は交流を深めやがて恋人同士になる。
ガレリアンによって無実の罪で投獄され、脱獄し恋人のネメシスのもとに身を寄せていたが、サンタ(ガレリアン)の指令を受けたネメシスによって冬にリボルバーで打ち殺された。銃口を向けられつつも最後までネメシスに優しい顔をしていたという。
ガモン=オクト
元レヴィアンタ軍の軍曹で、ニョゼ=オクトの弟。兄の死後に反政府組織を結成し、兄を殺したネメシスを説得してガレリアンへの復讐を誓う。そして恩赦で釈放されたネメシスを自らが党首を務めるタサン党の副党首に迎えた。その後千年樹の森に向かったきり失踪した為、ネメシスがタサン党の党首になっている。
Ma(メム・アレフ) / 首藤禍世(カヨ=スドウ)
  • モチーフ:不明
ガレリアンの友人で、ネメシスの母親。娘であるネメシスによると「自分を女手一つで育ててくれた」模様。
ジズさん(とてもすごいタコ)
ネメシスのペットであるジズ・ティアマ。ミッシェルとその母を殺すようにネメシスから言われていた。

小説

全てPHP研究所から発売。

コミックス

PHP研究所から発売。

脚注

  1. ^ a b c 悪ノ円舞曲『heavenly yard』
  2. ^ a b c d e f g 「the heavenly yard」質問回答その2より 2012-06-04
  3. ^ 小説悪ノ大罪『ヴェノマニア公の狂気』
  4. ^ 小説悪ノ大罪『悪食娘コンチータ』
  5. ^ 悪ノ叙事詩『霧ノ娘』
  6. ^ 小説悪ノ大罪『五番目のピエロ』
  7. ^ 悪ノ円舞曲33頁
  8. ^ 悪ノ円舞曲66頁
  9. ^ 悪ノ円舞曲66頁
  10. ^ 悪ノ円舞曲41頁
  11. ^ a b c d 「the heavenly yard」質問回答その1より 2012-05-29
  12. ^ MIKU-Pack music & artworks feat.初音ミク 03』アスキー・メディアワークス、2013年、20頁頁。ISBN 28067-10/29{{ISBN2}}のパラメータエラー: 無効なISBNです。 
  13. ^ 『悪ノ間奏曲 「悪ノ娘」ワールドガイド』PHP研究所、2011年、80頁頁。ISBN 978-4569798912 
  14. ^ 悪ノ円舞曲46頁
  15. ^ 悪ノ円舞曲55頁
  16. ^ 悪ノ円舞曲57頁
  17. ^ 悪ノ円舞曲60頁

外部リンク