レトロニム
表示
レトロニム (retronym) とは、ある言葉の意味が時代とともに拡張された、あるいは変化した場合に、古い意味の範囲を特定的に表すために後から考案された言葉のことを指す。変化の激しい技術用語などに多く見られる。例えば、元来テレビはすべてモノクロ画面であったが、カラーテレビの登場とともに、従来のものを指すため白黒テレビというレトロニムが使われるようになった。
また、歴史などの用語で「第一次○○」と呼ばれるのはすべて、「第二次○○」が起こった後にそう呼ばれるようになったものである。例えば、現在第一次世界大戦 (World War I) と呼ばれている戦争は、第二次世界大戦 (World War II) 以前は単に「世界大戦争」(World War) と呼ばれていた。この場合「第一次世界大戦」がレトロニムである。他にも「○○朝○○帝国」など多くの例がある。
また、商品名、商標などが広く使われ、一般名詞あるいは動詞化したものをレトロニムと呼ぶことがある[要出典]。市場を独占、寡占したものの場合が多い。商標の普通名称化も参照のこと。
「レトロニム」という単語自体は、「過去」を意味するレトロ (retro) と「語」を意味する接尾語 (-onym) の合成による[1]。 1980年にナショナル・パブリック・ラジオ局長のFrank Mankiewiczが造語し、コラムニスト William Safireが、ニューヨークタイムズの中で使用したことで広まった[2][3]。
主なレトロニムの例
詳細は「レトロニム一覧」を参照
- 固定電話 - 携帯電話の登場により従来の電話を指す言葉として使われるようになった。
- アコースティック・ギター - エレクトリックギターの登場により従来のギターを指す言葉として使われるようになった。
- 銀塩カメラ、またはフィルムカメラ - デジタルカメラの登場により従来のものを呼ぶようになった。
- マニュアルトランスミッション - オートマチックトランスミッションの登場により従来のものを指す言葉として使われるようになった。
- 自然吸気エンジン - 過給器付きエンジンの登場により従来型を示す用語として使われるようになった。
- アナログ - デジタルの登場により従来のものはアナログと呼ぶようになった。例、電気・電子・情報工学、時計表示
- 露地栽培 - ビニールハウス栽培の登場により従来の栽培方法を呼ぶようになった。
- 天然物 - 促成栽培や養殖の登場により従来の収穫・漁獲方による農水産物を呼ぶようになった。
- 英語icebox - 英語において、「氷を使って冷やす装置」を意味する語として「refrigerator」が作られ100年以上使われていたが、電気冷蔵庫の登場によりこの語は専ら電気冷蔵庫を指す言葉となり、もとの「氷を使って冷やす装置」を表すために「icebox」が作られた(冷蔵庫#歴史)。以上が総て「拡張」の例であるとすると、これは「変化」に近い例であると言える。