リン酸カルシウム

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リン酸カルシウム(リンさんカルシウム、: calcium phosphate)はカルシウムイオンリン酸イオン(PO43-)または二リン酸イオン(P2O74-)からなるの総称である。の約70%はリン酸カルシウムの一種であるヒドロキシアパタイトからできている。 カルシウムと、リン酸の比率の違いにより、様々な相が知られている[1]。pH 4以下の酸性条件では、酸性相であるDCPD又は、DCPA(Brusite, Monetite)が安定相となり、それ以上のpHである中性、塩基性条件下では、ハイドロキシアパタイト(HAP)が安定相となる。弱酸性より高いpHの常温の溶液中でカルシウムリン酸を混合した場合、アモルファス相が初生相として出現した後、構造相転移により結晶相へと転移する[2][3]。一般にこの過程を経て形成した結晶相の結晶度は非常に悪い。

利用

リン酸カルシウムは肥料の製造に用いられる。しかし特定のリン酸カルシウムを過剰に使用すると表面流出を招き、水の華富栄養化などの公害に至ることもある。

E番号341の食品添加物として、チーズの製造などに用いられる。またサプリメントとしても用いられるが、カルシウム塩の種類により生物学的利用能が異なるとの指摘もある。歯の再石灰化を促すとして歯磨き粉にも使われている。

さらに、遺伝子トランスフェクションにも使われる[4]。機構については詳しく分かっていないが、リン酸カルシウムが沈着してDNAが複合体を作り、DNAが細胞を通り抜けられるようになると考えられている。

また、二リン酸と塩基性カルシウムを反応させることで二リン酸カルシウム Ca2P2O7が生成する。この物質は、歯磨き粉のマイルドな研磨剤として一般的に使用されているほか、関節への沈着によって偽痛風の要因にもなる。

関連する塩

 リン酸カルシウムと総称される化合物は、複数あり、Caイオンと、PO4イオンの比率が異なる。一般に、酸性条件下にて安定な塩ほど、Ca/PO4比が小さい傾向にある。

 このほか、TCPのCaイオンの一部がMgイオンに置換されることで安定化した、ウィットロカイト(whitlockite)などがある。また、水酸アパタイトのリン酸基及び、水酸基は、炭酸基に置換され、炭酸アパタイト(CO3Ap)となる。水酸基が置換されたものが、A型で、リン酸基が置換されたもののがB型と呼称される。さらに、結晶ではないアモルファス相(ACP)も知られている。

出典

  1. ^ Wang L. and Nancollas G.H. Chem Rev 108 4628-4669, 2008
  2. ^ Onuma K. and Ito A. Chem Mater 10 3346-3351, 1998
  3. ^ Onuma et al. J Phys Chem B 104 10563-10568, 2000
  4. ^ Calcium Phosphate Method for Gene Transfection of Mammalian Cells