リコール (地方公共団体)

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住民投票の様子

リコールとは、有権者が地方自治体の公職や役員の解職を請求できる制度である。解職請求権ともいう。

日本におけるリコール

地方自治法第76条から第88条まで・地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地方教育行政法)第8条・漁業法第99条・農業委員会等に関する法律(農業委員会法)第14条で定められた直接請求制度の一つである。

制度

都道府県知事市町村長の解職
選挙権のあるもの(有権者)の3分の1以上(40万を超えるときは、40万を超える数の6分の1と40万の3分の1を合計した数以上、80万を超えるときは、80万を超える数の8分の1と40万の6分の1と40万の3分の1を合計した数以上)の署名を集めて選挙管理委員会に請求できる(地方自治法第81条第1項)。
請求が有効であれば、請求から60日以内に住民投票が行われる(地方自治法第81条第2項)。投票の告示は、都道府県知事については少なくとも投票日の30日前に、市町村長については少なくとも投票日の20日前にしなければならない(地方自治法施行令第116条の2)。
解職投票において有効投票総数の過半数が賛成すれば、その首長(都道府県知事・市町村長)は失職する(地方自治法第83条)。ただし、投票前に対象の首長が職を失い又は死亡した場合は解職投票を行わない(地方自治法施行令第116条の2)。
その首長の選挙から1年間(無投票当選を除く)又は解職投票日から1年間は解職請求をすることができない(地方自治法第84条)。
地方議会の解散
有権者の3分の1以上(40万を超えるときは、40万を超える数の6分の1と40万の3分の1を合計した数以上、80万を超えるときは、80万を超える数の8分の1と40万の6分の1と40万の3分の1を合計した数以上)の署名を集めて選挙管理委員会に請求できる(地方自治法第76条第1項)。
請求が有効であれば、請求から60日以内に住民投票が行われる(地方自治法第76条第3項及び地方自治体施行令第100条の2条)。投票の告示は、都道府県議会については少なくとも投票日の30日前に、市町村議会については少なくとも投票日の20日前にしなければならない(地方自治法施行令第100条の2条)。
投票において有効投票総数の過半数が賛成すれば、解散となる(地方自治法第78条)。ただし、投票前に議員が全て欠けた場合は投票を行わない(地方自治法施行令第102条)。
その議会の議員選挙から1年間又は解散投票日から1年間は解散請求をすることができない(地方自治法第79条)。
地方議員の解職
対象の議員の選挙区の有権者(選挙区が無い場合は地方自治体の全有権者)の3分の1以上(40万を超えるときは、40万を超える数の6分の1と40万の3分の1を合計した数以上、80万を超えるときは、80万を超える数の8分の1と40万の6分の1と40万の3分の1を合計した数以上)の署名を集めると、選挙管理委員会に請求できる(地方自治法第80条第1項)。
請求が有効であれば、請求から60日以内にその選挙区(選挙区が無い場合は全域)において住民投票が行われる(地方自治法第80条第3項及び地方自治法施行令第113条)。投票の告示は、都道府県議会議員については少なくとも投票日の30日前に、市町村議会議員については少なくとも投票日の20日前にしなければならない(地方自治法施行令第113条の2)。
解職投票において有効投票総数の過半数が賛成すれば、その議員は失職する(地方自治法第83条)。ただし、投票前に対象の議員が職を失い又は死亡した場合は投票を行わない(地方自治法施行令第112条)。
その議員に関して選挙から1年間(無投票当選を除く)又は解職投票日から1年間は解職請求をすることができない(地方自治法第84条)。
地方役員の解職
有権者の3分の1以上(40万を超えるときは、40万を超える数の6分の1と40万の3分の1を合計した数以上、80万を超えるときは、80万を超える数の8分の1と40万の6分の1と40万の3分の1を合計した数以上)の署名を集めると、副知事副市町村長選挙管理委員監査委員公安委員会委員、教育長教育委員の解職を都道府県知事・市町村長に請求できる(地方自治法第86条及び地方教育行政法第8条第1項)。
請求が有効であれば、首長が議会に付議し、議員の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の多数による同意があれば職を失う(地方自治法第87条第1項)。
副知事・副市町村長の解職の請求は、就任から1年間及び解職請求に基づく地方議会の解職採決日から1年間はすることができない(地方自治法第88条第1項)。
選挙管理委員・監査委員・公安委員会委員の解職の請求は、就任から6ヶ月間及び地方議会の解職採決日から6ヶ月間はすることができない(地方自治法第88条第2項及び地方教育行政法第8条第2項)。
海区漁業調整委員会公選委員の解職
海区漁業調整委員会公選委員の有権者の3分の1以上の署名を集めると、都道府県選挙管理委員会に請求できる(漁業法第99条第1項)。
請求が有効であれば、請求から60日以内に、その委員の選挙区(選挙区が無い場合は地方自治体全域)において住民投票が行われる(漁業法施行令第22条・地方自治法施行令第100条の2第1項)。解職投票の告示は、少なくとも投票日の30日前にしなければならない(漁業法施行令第22条・地方自治法施行令第100条の2第2項)。
解職投票において有効投票総数の過半数が賛成すれば、その委員は失職する(漁業法第99条第4項)。ただし、その委員が投票前に職を失い又は死亡した場合は投票を行わない(漁業法施行令第22条・地方自治法施行令第112条)。
選挙から6ヶ月間(無投票当選を除く)又は解職投票日から6ヶ月間は解職請求をすることができない(漁業法施行令第19条)。
農業委員会公選委員の解任
農業委員会公選委員選挙の有権者の2分の1以上の同意を得て、選挙された農業委員会の委員の解任を市町村の選挙管理委員会に請求ができる(農業委員会法第14条第1項)。
請求が有効であれば、農業委員会公選委員は解任される(農業委員会法第14条第2項・第3項)。
選挙から6ヶ月間(無投票当選を除く)は解任請求をすることができない(農業委員会法第14条第4項)。

実例

解職請求

  • 日吉宗能 - 石川県穴水町長を1950年1月16日にリコールされる(石川県で初めての首長のリコール成立)。
  • 植松義忠 - 静岡県富士宮市長を1983年3月20日にリコールされ(下記の同市議会解散請求とのダブルリコールの成立)、次の選挙で敗れる。1987年市長選にも敗れる。
  • 中村勝人 - 山口県宇部市長を1993年6月12日にリコールされ、次の選挙に出馬せず引退。
  • 関口隆正 - 群馬県富士見村長を2003年2月16日にリコールされ、次の選挙で敗れる。
  • 大野和三郎 - 滋賀県豊郷町長を2003年3月9日にリコールされ、次の選挙で再選される。
  • 徳永繁富 - 長崎県香焼町長を2004年1月11日にリコールされ、次の選挙で再選される。
  • 辻嘉右エ門 - 福井県鯖江市長を2004年8月28日にリコールされ、次の選挙で敗れる。
  • 倉田定宣 - 香川県三野町長を2004年10月31日にリコールされ、次の選挙で敗れる。
  • 河野敏郎 - 静岡県川根町長を2004年11月21日にリコールされる。
  • 加藤新吉 - 青森県浪岡町長を2004年12月26日にリコールされる。
  • 野髙貴雄 - 茨城県河内町長を2004年4月10日にリコールされ、次の選挙で再選する。
  • 庄司忠夫 - 千葉県和田町議会議員を2005年1月30日にリコールされる。
  • 小林正明 - 神奈川県城山町長を2006年2月19日にリコールされる。
  • 岡野俊昭 - 千葉県銚子市長を2009年3月29日にリコールされ、次の選挙で敗れる。
  • 針谷育造 - 栃木県岩舟町長を2009年8月9日にリコールされる。
  • 小川利彦 - 千葉県本埜村長を2009年12月27日にリコールされる。
  • 竹原信一 - 鹿児島県阿久根市長を2010年12月5日にリコールされ、次の選挙で敗れる(2011年阿久根市長選挙)。2015年市長選にも敗れる。
  • 石田寿一 - 山梨県西桂町長を2012年10月21日にリコールされる(下記の同町議会解散請求とのダブルリコールの成立)。
  • 正木篤 - 広島県議会議員を2013年2月3日にリコールされる(都道府県議会議員に対してリコールが成立した初の事例)[1]

以下は住民投票における解職失敗例である。

  • 大久保司 - 茨城県八千代町長。2004年9月19日にリコールを問う住民投票が行われたが、過半数の賛同を得られなかった。
  • 箱山好猷 - 長野県真田町長。2004年12月5日にリコールを問う住民投票が行われたが、過半数の賛同を得られなかった。
  • 佐藤公敏 - 静岡県川根本町長。2012年3月18日にリコールを問う住民投票が行われたが、過半数の賛同を得られなかった。
  • 中村太郎 - 大分県別府市長。1989年3月19日リコールを問う住民投票が行われたが、過半数の賛同を得られなかった。

解散請求

  • 石川県山代町議会 - 1948年6月5日の住民投票で解散が成立したが、町側が提訴したので解散は凍結され、任期満了まで至った(全国初の地方議会のリコール成立)。
  • 静岡県富士宮市議会 - 1983年3月20日の住民投票で解散した(上記の植松義忠同市長とのダブルリコールの成立)。
  • 山口県熊毛町議会 - 2002年10月6日の住民投票で解散した。
  • 香川県東かがわ市議会 - 2003年10月26日の住民投票で解散した。
  • 山口県周南市議会 - 2004年5月16日の住民投票で解散した。
  • 山口県田布施町議会 - 2005年1月30日の住民投票で解散した。
  • 長崎県五島市議会 - 2005年1月30日の住民投票で解散した。
  • 徳島県吉野川市議会 - 2005年4月24日の住民投票で解散した。
  • 岡山県総社市議会 - 2005年8月28日の住民投票で解散した。
  • 茨城県城里町議会 - 2006年2月12日の住民投票で解散した。
  • 茨城県常陸太田市議会 - 2006年7月2日の住民投票で解散した。
  • 茨城県常陸大宮市議会 - 2006年7月2日の住民投票で解散した。
  • 茨城県桜川市議会 - 2006年8月20日に住民投票で解散した。
  • 名古屋市議会 - 2011年2月6日の住民投票で解散、同年3月13日に選挙が実施された(2011年名古屋市議会議員選挙)。
  • 鹿児島県阿久根市議会 - 2011年2月20日の住民投票で解散した。
  • 山梨県西桂町議会 - 2012年10月21日の住民投票で解散した(上記の石田寿一同町長とのダブルリコールの成立)。

以下は住民投票における解散失敗例である。

  • 静岡県川根本町議会 - 2012年3月18日のリコールを問う住民投票が行われたが、過半数の賛同を得られなかった。

脚注

関連項目

外部リンク