ヤブレガサ

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ヤブレガサ
福島県会津地方、2010年7月
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : キク亜綱 Asteridae
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
亜科 : キク亜科 Asteroideae
: ヤブレガサ属 Syneilesis
: ヤブレガサ S. palmata
学名
Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim. (1874)[1]
シノニム
和名
ヤブレガサ(破れ傘)

ヤブレガサ(破傘[4]・破れ傘、学名: Syneilesis palmata)は、キク科ヤブレガサ属多年草。和名の由来は、芽出しの頃の若い葉の様子が「破れ傘(やぶれがさ)」に似ることによる。

分布と生育環境[編集]

日本では本州四国九州に分布する[4]。平地から山地までの、雑木林の林下の斜面などに生える[4]東アジアでは朝鮮半島に分布する。

特徴[編集]

多年生草本[4]。若い個体は根出葉1枚のみで、花茎が出ない。年数が過ぎ、栄養が蓄積されると花茎を出す。は直立し、分枝せず、高さは 100センチメートル (cm) 内外になる[4]。根出葉は1枚。茎葉は2 - 3枚で互生[4]、下方のは長い葉柄を持ち、葉柄の基部は茎を完全にとり巻く。葉身は円形で、径 35 - 39 cm、ときに 50 cmになり、7 - 9個の裂片がある掌状に深裂する[4]。各裂片はしばしば2中裂し、その幅は 2 - 4 cmになり、縁に不ぞろいな鋭鋸歯がある。春に出た若芽の根出葉には白い絹毛があり、傘をつぼめたような姿をしているが[4]、後に無毛になる。

花期は夏(7 - 9月)[4]。茎の先に円錐花序をつくり、長さ 1.5 cmほどの白色から淡紅色の頭花をつける[4]総苞は長さ 9 - 10ミリメートル (mm) の筒状、総苞片は5個。頭花は7-13個の小花からなり、すべて両性の筒状花。小花の花冠は5裂し、花柱の先は2つに分かれ反り返る。

モミジガサ(キク科)と姿がよく似ているが、モミジガサの若芽には綿毛がなく、またヤブレガサのほうの葉は切れ込みが深くて、全体に茶色味を帯びている[4]

利用[編集]

芽出しのころの、高さ 15 - 30 cmほどに伸びた葉が展開する前の葉と茎は、山菜として食用にされる[4]。採取時期は関西地方以西が4月ごろ、関東・中部地方が4 - 6月ごろ、東北地方が6月ごろが適期とされる[4]。採取した若芽は、さっと茹でて水にさらし、おひたし和え物油炒め煮物にしたり、生のまま天ぷらにする[4]

脚注[編集]

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim. ヤブレガサ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月1日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Syneilesis tagawae (Kitam.) Kitam. var. latifolia H.Koyama ヤブレガサ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月1日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cacalia thunbergii Nakai ヤブレガサ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月1日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 高橋秀男監修 2003, p. 144.

参考文献[編集]

  • 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、144頁。ISBN 4-05-401881-5 
  • 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本III 合弁花類』平凡社、1981年。

関連項目[編集]