メリタテス1世

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
メリタテス1世
第4王朝エジプト王妃

埋葬  
G-1b
配偶者 クフ
子女 カワブ
ジェドエフラー
メリタテス2世
カフラー?
ヘテプヘレス2世?
父親 スネフェル
宗教 古代エジプトの宗教
テンプレートを表示
メリタテスのヒエログリフ表記
mr
r
t
t
f
s

メリタテス(Merit ites)
Mrj.t jt=s
父の最愛の人[1]

メリタテス1世は、古代エジプト第4王朝の王妃。彼女の名前は「父の最愛の人」の意である。日本語の書籍ではメリトイトエス、メリエトイオテスとも表記される。彼女の持っていた称号が複数、ギーザの石碑から見つかっている。彼女はギーザにある王妃のピラミッドのうち中央にあるG-1bピラミッドに埋葬された。

メリタテスはスネフェル王の娘であり、兄弟(または異母兄弟)であるクフ王と結婚した[2]。彼女はクフとの間に王太子カワブを生み、恐らくジェドエフラーも彼女の息子である[3]カフラー王と、王妃ヘテプヘレス2世も同様にメリタテス1世とクフの子供である可能性もある[4]、恐らくメリタテス2世も同じく彼女の娘である[5]

オギュスト・マリエットはギーザでメリタテス1世がスネフェルとクフの寵愛を受けたとされている石碑を記録している。

王の妻、彼の最愛の人、ホルスに尽くす、メリトイティテス(Mertitytes)、王の妻、彼の最愛の人、メリトイティテス。二女神に愛される者に愛される。彼女の言った事は何であれ彼女のために実行された人。スネフェル(Snefr[u])の大いなる寵愛を受けた。クフ(Khuf[u])の大いなる寵愛を受け、ホルスに尽くし、カフラーの下で重んぜられた。メリトイ(ティテ)ス(Merti[tyt]es) [Breasted][6]

メリタテス1世は次の称号を保持していた。

  • クフの偉大なる錫杖[7](wrt-hetes-nt-khwfw)
  • スネフェルの偉大なる錫杖[8]wrt-hetes-nt-snfrw
  • 王の妻、彼の最愛の人(hmt-nisw meryt.f
  • ホルスに仕える者(kht-hrw
  • 二女神英語版の最愛の人の配偶者(sm3yt-mry-nbty[9]

ピラミッド[編集]

王妃のピラミッド G-1b

ピラミッド G-1bはメリタテス1世の墓であると考えられている。王妃達のピラミッドは王達のピラミッドの南によく建造された。しかし、クフ王のピラミッドの南には採石場があったため、小ピラミッドの位置は東に移動することになった。レイズナーはメリタテス1世のピラミッドの建造を、クフ王の治世15年頃と位置付けた。彼女のピラミッドの建造は、ピラミッドG-1aの建造直後に始まったであろう。この王妃達のピラミッド群は王家のマスタバ墓群があるギーザ東墓地英語版の一部である[10]

当初は、ピラミッドG-1a(ギーザの大ピラミッドの東にある三つの小ピラミッド群のうち、一番北にある物)がメリタテス1世に属する物であると考えられていた。しかし現在ではG-1aはクフの母ヘテプヘレス1世のものであると考えられている。最近になって、ピラミッドG-1bがメリタテス1世の墓であると考えられるようになった。G-1bには小さな葬祭殿と岩を削って作った船着き場(bort pit)が付属していた。しかしこの船着き場から船は見つかっていない[11]。小さな葬祭殿は、様々な場面を描いたレリーフで装飾されていた。偽扉と壁にあったレリーフの断片は、発掘中に回収された。メリタテス1世の王妃の称号はこの断片から発見されたものである。このレリーフの断片群は現在ボストン美術館(27.1321)にある。レリーフ断片には更に、奉納品のリストの一部、奉納品と動物を運ぶ男性、船を漕ぐ場面等を描いた物がある[12]

出典[編集]

  1. ^ Silke Roth: Die Königsmütter des Alten Ägypten von der Frühzeit bis zum Ende der 12. Dynastie (= Ägypten und Altes Testament 46). Harrassowitz, Wiesbaden 2001, ISBN 3-447-04368-7, page 354 - 358 & 388.
  2. ^ Dodson, Aidan and Hilton, Dyan. The Complete Royal Families of Ancient Egypt. Thames & Hudson. 2004. ISBN 0-500-05128-3
  3. ^ Joyce Tyldesley. Chronicle of the Queens of Egypt. Thames & Hudson. 2006. ISBN 0-500-05145-3
  4. ^ Gundacker: Genealogie. S. 24–26
  5. ^ Gizapyramids website Archived 2008-10-11 at the Wayback Machine., page for G 7650
  6. ^ James Henry Breasted, Ancient Records of Egypt, Vol. 1: The First through the Seventeenth Dynasties, 2001, ISBN 978-0-252-06990-1
  7. ^ 訳注:great one of the hetes-sceptre of Khufu 原文と異なるが、『古代エジプト 女王・王妃歴代誌』, p. 55 の訳語を用いた。
  8. ^ 訳注:great one of the hetes-sceptre of Snofru 原文と異なるが、『古代エジプト 女王・王妃歴代誌』, p. 55 の訳語を用いた。
  9. ^ Grajetzki, Ancient Egyptian Queens: A Hieroglyphic Dictionary, Golden House Publications, London, 2005, ISBN 978-0-9547218-9-3
  10. ^ George Andrew Reisner, A History of the Giza Necropolis I, Cambridge: Harvard University Press, 1942, pp 70–74, retrieved from Giza Digital Library: History of the Giza Necropolis Series Archived 2011-07-26 at the Wayback Machine.
  11. ^ Miroslav Verner. The Pyramids: The Mystery, Culture, and Science of Egypt's Great Monuments. Grove Press. 2001 (1997). ISBN 0-8021-3935-3
  12. ^ Porter, Bertha and Moss, Rosalind, Topographical Bibliography of Ancient Egyptian Hieroglyphic Texts, Statues, Reliefs and Paintings, Volume III: Memphis, Part I Abu Rawash to Abusir. 2nd edition; revised and augmented by Dr Jaromir Malek, 1974. p. 16. Retrieved from gizapyramids.org.

参考文献[編集]

  • ジョイス・ティルディスレイ『古代エジプト女王・王妃歴代誌』吉村作治監修、月森左知訳、創元社、2008年6月。ISBN 978-4-422-21519-8 

外部リンク[編集]

  • ウィキメディア・コモンズには、メリタテス1世に関するカテゴリがあります。