マルカンドレ・アムラン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。2607:fcd0:100:2300::40c1:bca8 (会話) による 2015年12月27日 (日) 02:37個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎受賞歴)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

マルカンドレ・アムラン
Marc-André Hamelin
2003年
基本情報
生誕 (1961-09-05) 1961年9月5日(62歳)
出身地 カナダの旗 カナダ ケベック州 モントリオール
ジャンル クラシック音楽
現代音楽
職業 ピアニスト
作曲家
担当楽器 ピアノ
レーベル ハイペリオン・レコード

マルカンドレ・アムランMarc-André Hamelin, 1961年9月5日 - )は、フランス系カナダ人ピアニスト。一般にはマルク=アンドレ・アムランと表記されているが、名前のMarc-Andréアンシェヌマンするため、発音はマルカンドレとなる。

概要

ケベック州モントリオール出身。5歳でピアノを始め、9歳になるとカナダ音楽コンクールの首席を獲得した。父親は、職業は薬剤師であったが、ピアニストとしても辣腕で、まだ幼い息子をアルカンメトネルソラブジの作品に導いた。そして、ルドルフ・ガンツの練習法から編み出したという『対称的練習法(Symmetrical Inversion)』を教えた。これは、レもしくはラ♭を中心として右手と対称的な音形を左手に弾かせるというもので、アムラン曰く、「脳と手が直結する」練習だという。

イヴォンヌ・ユベールハーヴィ・ウィーディーンラッセル・シャーマンらに師事した後、モントリオールヴァンサン・ダンディ音楽院に学び、フィラデルフィアテンプル大学に進んだ。1985年のカーネギーホール国際アメリカ音楽コンクールで優勝。

芸風

演奏至難なことで名うてのレオポルド・ゴドフスキーシャルル=ヴァランタン・アルカンのような19世紀の作曲家、そしてソフィー=カルメン・エックハルト=グラマッテレオ・オーンスタインニコライ・ロスラヴェッツフレデリック・ジェフスキーなどの20世紀の比較的マイナーな作曲家の再発見に努めてきたことで知られる。かつては現代作曲家の初演を手掛けることもあったが、現在はほぼ行っていない。

苦労の跡を見せない超絶技巧と洗練された演奏様式によって国際的に有名で、多くの人から、コンスタンティン・シチェルバコフフレドリク・ウレーンと並んで、無上のテクニシャンと認められている。ハイペリオンへ移籍後は音色をじっくりと聞く姿勢もメトネルのソナタ集などで見られる。

なお、『ペトルーシュカからの3楽章』、ハンガリー狂詩曲第6番のような『技巧をひけらかすだけの曲』は演奏しないと語っており、あくまで取り上げるのは技巧と内容を兼ね備えた曲だけだと公言している[1][2]。2015年現在は技術的な難しさを伴わない作品[3]も数多く手掛けている。

ディスコグラフィー

ハイペリオン・レコードに多岐にわたる録音を残しており、ゴドフスキーの《ショパンのエチュードによる53の練習曲》全集は、2000年度グラモフォン賞に輝いた。カナダ政府からはカナダ勲章を、そしてケベック州政府からケベック国家勲章を叙勲された。ジュノー賞Classical Album of the Year - Solo or Chamber Ensemble部門を1996・97・98年、03年および08年に受賞。

最近の録音では、シューマンのピアノ曲やブラームスピアノ協奏曲第2番などが注目されている。

作曲作品

なお《短調による12の練習曲》など、作曲も手懸けている。抜粋演奏をフョードル・アミロフがチャイコフスキーコンクールの予選会で披露しているのがYoutubeで確認できる。

日本へは1997年(このときはファンによる自主公演)、2000年2003年2004年2005年2006年に来日している。2001年にはブゾーニピアノ協奏曲、2004年にはメトネルのピアノ協奏曲第2番の日本初演を行い、好評を博した。

プライベート

妻のソプラノ歌手ジョディ・カリン・アップルバウム(Jody Karin Applebaum)とは夫婦で共演したCDを出していたが、現在離婚協議中である。アムランは現在、ボストンのラジオ局WGBHのホストを務めるキャシー・フラーと共に同地に居住している[4]

以前は眼鏡をかけていたが、レーシック手術を受けて以降は外している[5]

編曲

完全な編曲作品としてはショパンエチュードからOp.10-2,Op.25-4,Op.25-11の3曲を融合させた『トリプル・エチュード』が有名で、難曲を好む学生を中心に人気が高い。この曲はゴドフスキーの構想を引き継いだものと思われる。本人の録音が存在する。

編曲ではないが「ハンガリー狂詩曲第2番」に挿入されている彼独自のカデンツァは比較的よく知られている。 カデンツァ自体が3分と長いのは珍しく、黒鍵グリッサンド、強烈な不協和音の連続が特徴的である。アルカンの影響が随所に見られ、彼の「両手ユニゾンのための大練習曲」作品76-3の引用も登場する。 これも本人の録音が存在する。

また演奏する曲の中で彼の持ち味である技巧を駆使して個性的な編曲を入れていることがある。

作曲

短調のための12の練習曲

2009年に完成[6]。曲集の名はアルカン作品39を意識したものであり、本人によると曲集全体でアルカンとゴドフスキーへのオマージュとのこと。いずれの曲も大変難易度が高く、演奏至難な作品ばかりである。当初作曲していた1番[7]と11番[8]は撤回され、現在のものに差し替えられた。2番、5番、6番、8番、11番、12番はアムランの自作曲。なお、全曲に本人の録音が存在し、発売されている。全曲を通しての初演は、2010年8月にドイツのフズム音楽祭で行われた。

  • 第1番 イ短調「トリプル・エチュード」[9]
  • 第2番 ホ短調「昏睡したベレニケ(かみのけ座)」
  • 第3番 ロ短調「ラ・カンパネッラによる」[10]
  • 第4番 ハ短調「アルカンを讃えて」…アルカンの作品39-7[11]による。
  • 第5番 ト短調「グロテスクなトッカータ」
  • 第6番 ニ短調「スカルラッティを讃えて」
  • 第7番 変ホ短調「チャイコフスキーによる左手のための練習曲」[12]
  • 第8番 変ロ短調「魔王」…ゲーテによる
  • 第9番 ヘ短調「ラ・ダンツァ」[13]
  • 第10番 嬰ヘ短調「黒い想念のために」[14]
  • 第11番 嬰ハ短調「メヌエット」
  • 第12番 変イ短調「前奏曲とフーガ」

そのほか

  • ある架空のピアノ交響曲のための序奏-ソラブジを讃えて
  • 小さなノクターン[15]
  • ミニマル・リスト
  • 主題と変奏「Cathy's Variations」
  • Con Intimissimo Sentimento ~最も親密な思いをこめて~…ピアノのためのオリジナル曲及び編曲集[16]
  • パガニーニの主題による変奏曲(2011年)
  • ピアノの為のバルカローレ(2013年)

自動演奏ピアノのための作品

三曲とも自動演奏ピアノによるCD録音がMD+Gより発売されている。

出版

なお、アムランの作品のほとんどはソラブジ・アーカイブから出版されており、入手可能である。また、練習曲集やパガニーニ変奏曲、他はPeters社から出版されている。

受賞歴

  • 1985 – 1. Platz bei der Carnegie Hall American Music Competition (er wurde nach seinem Sieg von Harold Schonberg, dem Klavier-Spezialisten der New York Times, als Über-Virtuose bezeichnet)
  • 1989 – Virginia-Parker Preis (Kanada)
  • 1992 – Preis der deutschen Schallplattenkritik
  • 1994 – Preis der deutschen Schallplattenkritik
  • 1996 – Juno Award
  • 1996 – Cannes Classical Award
  • 1996 – Preis der deutschen Schallplattenkritik
  • 1997 – Juno Award
  • 1997 – Preis der deutschen Schallplattenkritik
  • 1998 – Preis der deutschen Schallplattenkritik
  • 1998 – Juno Award
  • 1998 – Opus Award (Kanada), Interpret des Jahres
  • 1999 – Juno Award
  • 1999 – Opus Award, Persönlichkeit des Jahres
  • 2000 – Preis der deutschen Schallplattenkritik
  • 2002 – Gramophone Award
  • 2002 – Australian Soundscape Award
  • 2002 – Preis der deutschen Schallplattenkritik (dreimal auf der Bestenliste vertreten)
  • 2003 – Internationaler Großer Preis der Franz Liszt-Akademie
  • 2003 – Order of Canada, Officer (höchste kanadische Auszeichnung für Zivilisten)
  • 2004 – Ordre national du Québec, Chevalier
  • 2004 – Internationaler Schallplattenpreis in Cannes

参考文献

脚注

  1. ^ CD Journal2006年11月号のインタビューより
  2. ^ ただし、自作のエチュードでは技巧を前面に押し出した作品が散見される。
  3. ^ CPE Bachほか
  4. ^ nytimes
  5. ^ 2006年「CD Journal」インタビューより
  6. ^ pianomania: What's New With Piano's Pied Piper? Some Words with Marc-André Hamelin
  7. ^ 熊蜂の飛行による」
  8. ^ タンゴ
  9. ^ ショパン練習曲による
  10. ^ パガニーニリスト
  11. ^ ピアノ独奏による交響曲 第4楽章)と作品76-3(両手ユニゾンのための練習曲
  12. ^ 歌曲「子守唄」作品16-1による。
  13. ^ ロッシーニによる
  14. ^ ショパン黒鍵エチュードによる
  15. ^ Clavier magazineのリクエストにより作曲
  16. ^ 日本から発売された
  17. ^ もとは一台用だが、処理落ちが出るということで、二台用に書き直された
  18. ^ "Pop Goes the Weasel"の編曲
  19. ^ 大変短いが、辞典初登場

外部リンク