マカオグランプリ

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マカオグランプリ(2008年)

マカオグランプリGrande Prémio de Macau、澳門格蘭披治大賽車、Macau Grand Prix)は、1954年よりマカオの中心地の公道を使用して開催されている世界的に有名な市街地レースで、毎年11月中旬に開催される。

歴史

草レース

1962年当時
グランドスタンドとコントロールタワー
アイルトン・セナがドライブしたセオドールのF3マシン(マカオグランプリ博物館)
現在のギア・サーキット(リスボアホテル脇)
GTアジア選手権ディランタ・マラガムワ

ポルトガル植民地であった1954年に、地元に住むポルトガル人やイギリス人、アメリカ人や華僑モータースポーツ愛好家の手によって始められた。

なお当時は、アジアで唯一の自動車生産国である日本以外に、アジアにパーマネントサーキット(常設サーキット)は存在しておらず(アジア初のパーマネントサーキットである多摩川スピードウェイがオープンしたのが1936年。初の舗装されたパーマネントサーキットである鈴鹿サーキットがオープンするのは1962年のことである)、当然領土が狭いマカオにもパーマネントサーキットは存在しないため、マカオ政庁の許可を取って公道を閉鎖しいわゆる「市街地レース」として開催された。

当初は地元のマカオや香港フィリピンなどの東南アジア諸国に住む裕福な欧米人や華僑、日本のアマチュアの愛好家による「草レース」的なものであり、厳密なレギュレーションも存在せず、フォーミュラカーと箱型自動車が混走するなど、そのレース内容も低レベルなものであった。

本格化

その後1960年代に、フォーミュラ1チーム「セオドール」のオーナーで東南アジア有数の大富豪であるテディ・イップによるテコ入れなどによって、トヨタ自動車日産自動車などの日本の大手自動車メーカーが相次いでワークスやセミワークス体制で参入したことで、次第に世界的にも知られる市街地レースの一つになっていった。

また開催時期には香港やアジア各国から多くの観戦客が訪れることから、マカオ政庁も観光資源の1つとして積極的にプロモーションを行うようになっていき、併せてマカオ港の旅客ターミナル付近への本格的なピットエリアやグランドスタンド、ガードレールの設営などのインフラストラクチャーの整備も行われるようになっていった。

なお、1970年代まではフォーミュラカーツーリングカーが混走していたが、中級フォーミュラであるフォーミュラ・パシフィック(FP)の本格導入などにより、クラス別けされ複数のレースが開催されるようになり、これを受けて日本やヨーロッパのプロのレーシングドライバーが多数参戦するようになっていった。

F3規格の導入

その後、1983年より国際格式のF3マシンによって行われるようになって以来、各国のF3選手権の上位者が集結し、「F3世界一決定戦」として扱われるようになりその知名度、格ともに世界有数のものとなった。

なお1990年から1993年にかけては、マカオグランプリの2週間前に富士スピードウェイで行われる「インターナショナルF3リーグ」と併せて、日本やイギリス、ドイツイタリアフランスなどの世界のF3選手権の上位入賞者を集めた「F3世界一決定戦」シリーズとして開催されたこともある。

実際に、アイルトン・セナ(1983年優勝)やミハエル・シューマッハ1990年優勝)、デビッド・クルサード1991年優勝)、佐藤琢磨2001年優勝)など多くのレーシングドライバーがここで勝利を挙げた後にF1へとステップアップするなど、若手ドライバーにとっての登竜門的存在のレースとなっている。なおマカオGP公式サイトでは2003年以降毎年、現役のF1ドライバーのうち何人がマカオGP経験者であるかを紹介している。

現在

現在はF3によるレース(予選レース・決勝レースの2レース制)と、ツーリングカーによって争われる通称「ギア・レース」がメインレースとして開催され、さらにいくつかのサポートレースが開催されることが恒例となっている。

2005年からは世界ツーリングカー選手権(WTCC)の最終戦に「ギア・レース」が組み込まれ、事実上の2枚看板となったほか、サポートレースのメインレースとして、日本や中華人民共和国マレーシアなどのアジア各国で開催され、アジアの富裕層を中心としたジェントルマンドライバーから元F1ドライバーや元フォーミュラニッポンのドライバーまでが参戦するGTアジア選手権の最終戦も開催されるようになるなど、近年はその規模、内容ともに充実を深めている。

なお2013年は60周年記念という事で、11月9日と10日、14日から17日までの2週末に渡り複数のレースが開催される。なおこれに伴い今回初開催となるアウディR8・LMSカップやポルシェ・カレラカップ・アジア、ランボルギーニ・スーパートロフェオ・アジアシリーズ、ロータス・グレーターチャイナレースなどの、アジアの富裕層をターゲットにした複数のワンメイクレースがサポートレースとして開催される。

サーキット

ギア・サーキット コース図

マカオ港の国際旅客ターミナル付近の直線道路をスタート地点に、旧市街地を中心に約6kmの一般道を走り抜ける「ギア・サーキット」と呼ばれるコースを使用する。

モナコグランプリが行われるモンテカルロ市街地コースよりも道幅が狭い地域も多く、世界でも有数の難関コースとして知られる。また安全面での充実が図られているにもかかわらず、2013年には2件の死亡事故が起きている。

レース内容

ギア・レースを走るホンダのアンドレ・クート(2008年)

練習走行、予選、予選レース、決勝レースが金曜日、土曜日、日曜日の3日間にそれぞれ開催される。また他にもスーパーカートのレースやパレードなど様々なイベントが開催される。

過去のF3での優勝者

  • 斜字は後にF1に参戦したドライバー
  • 太字はF1優勝経験者
  • ★はF1ワールドチャンピオン獲得者
優勝者 所属選手権 シャーシー エンジン
1983 ブラジル アイルトン・セナ イギリス イギリスF3 ラルト  トヨタ
1984 デンマーク ジョン・ニールセン ドイツ ドイツF3 ラルト フォルクスワーゲン
1985 ブラジル マウリシオ・グージェルミン イギリス イギリスF3 ラルト フォルクスワーゲン
1986 イギリス アンディ・ウォレス イギリス イギリスF3 レイナード フォルクスワーゲン
1987 アイルランド マーティン・ドネリー イギリス イギリスF3 ラルト  トヨタ
1988 イタリア エンリコ・ベルタッジア イタリア イタリアF3 ラルト アルファロメオ
1989 オーストラリア デビッド・ブラバム イギリス イギリスF3 ラルト フォルクスワーゲン
1990 ドイツ ミハエル・シューマッハ ドイツ ドイツF3 レイナード フォルクスワーゲン
1991 スコットランド デビッド・クルサード イギリス イギリスF3 ラルト 無限
1992 スウェーデン リカルド・リデル 日本 全日本F3 トムス トヨタ
1993 ドイツ ヨルグ・ミューラー ドイツ ドイツF3 ダラーラ フィアット
1994 ドイツ サッシャ・マーセン ドイツ ドイツF3 ダラーラ オペル
1995 ドイツ ラルフ・シューマッハ ドイツ ドイツF3 ダラーラ オペル
1996 アイルランド ラルフ・ファーマン イギリス イギリスF3 ダラーラ 無限
1997 フランス ソヘイル・アヤリ フランス フランスF3 ダラーラ オペル
1998 スコットランド ピーター・ダンブレック 無所属(F3000) ダラーラ トヨタ
1999 イギリス ダレン・マニング 日本 全日本F3 ダラーラ トヨタ
2000 マカオ アンドレ・クート 無所属(F3000) ダラーラ オペル
2001 日本 佐藤琢磨 イギリス イギリスF3 ダラーラ 無限
2002 フランス トリスタン・ゴメンディ フランス フランスF3 ダラーラ ルノー
2003 フランス ニコラ・ラピエール ヨーロッパ ユーロF3 ダラーラ ルノー
2004 フランス アレクサンダー・プレマ ヨーロッパ ユーロF3 ダラーラ メルセデス
2005 ブラジル ルーカス・ディ・グラッシ イギリス イギリスF3 ダラーラ メルセデス
2006 イギリス マイク・コンウェイ イギリス イギリスF3 ダラーラ メルセデス
2007 イギリス オリバー・ジャービス 日本 全日本F3 ダラーラ トヨタ
2008 日本 国本京佑 日本 全日本F3 ダラーラ トヨタ
2009 イタリア エドアルド・モルタラ 無所属(GP2) ダラーラ フォルクスワーゲン
2010 イタリア エドアルド・モルタラ ヨーロッパ ユーロF3 ダラーラ フォルクスワーゲン
2011 スペイン ダニエル・ジュンカデラ ヨーロッパ ユーロF3 ダラーラ メルセデス
2012 ポルトガル アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ 無所属(GP3) ダラーラ フォルクスワーゲン
2013 イギリスの旗 アレックス・リン 欧州連合の旗 ヨーロッパF3 ダラーラ メルセデス
2014 スウェーデンの旗 フェリックス・ロゼンクビスト 欧州連合の旗 ヨーロッパF3 ダラーラ メルセデス
2015 スウェーデンの旗 フェリックス・ロゼンクビスト 欧州連合の旗 ヨーロッパF3 ダラーラ メルセデス

F3規格導入以前での主な優勝者

関連項目

外部リンク