ホンダ・RC211V

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  1. MotoGPに参戦するために本田技研工業が開発した、ロードレースオートバイの名称。
  2. 上記のオートバイに搭載されているV型5気筒レシプロエンジンの名称。

2006年仕様[1]
基本情報
エンジン 990 cm3 4ストローク
水冷DOHC4バルブV型5気筒
最高出力 176.5kW(240PS)以上
車両重量 Over 148 kg
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RC211V(アールシーにいちいちブイ)は、2002年からのロードレース世界選手権の大幅な規定変更により、2001年から2006年の間に本田技研工業の子会社であるホンダレーシング(HRC、Honda Racing Corporationの略)によって開発されたロードレーサー(競技専用オートバイ)の名称である。

車名の「RC」はHondaの4ストロークグランプリマシンを意味し、「211」は21世紀におけるグランプリマシンの1代目であり、末尾の「V」は、5気筒の5を示すギリシャ文字、V型エンジンとVICTORYの頭文字という意味を持たせている。

概要

開発責任者は、元本田技術研究所上席研究員でロードレース世界選手権総監督の吉村平次郎である。

新しいレギュレーションでは2ストロークは500cc4気筒、4ストロークは990ccまでの気筒数は無制限(ただし最低重量制限は気筒数により異なる)となった。500ccクラスの名称はMotoGPとなり、使用できる車両はこれまで通りプロトタイプのみ。また、かつてホンダが開発した楕円ピストンエンジンにはハンディが課され、4気筒エンジンと5気筒エンジンでは同じ最低重量制限となったため、ホンダは4気筒よりも高出力の望める5気筒エンジンを、最も得意とするV型にまとめることにした。

エンジンは2002年から2005年までモリワキエンジニアリングにも供給され、同社のレーサー「MD211VF」に搭載された。2006年にはケニー・ロバーツが率いるチームロバーツにも供給され、翌2007年(RC212Vエンジン)まで供給は続けられた。

車両解説

2002年度のレギュレーションで最も有利とされる気筒数を選択したV型5気筒(前3気筒、後ろ2気筒)エンジンは、Vバンク角を75.5度とすることで、一次振動を低減させることに成功。バランサーを必要としないバランサーレスエンジンとして誕生した。またドライサンプとウェットサンプの良い所取りのようなセミドライサンプ方式を使用することで、エンジン内の抵抗を最小限に止め、初期開発段階で200psを優に超えていたと言われる。ホンダの公表によれば、2004年現在の最高出力は240ps(179kW)を超えている。また車体全体での乾燥重量は145kg、最高速度は330km/h以上とされている。

リヤサスペンションに用いられたリンク方式であるユニットプロリンクサスペンション。ショックユニットをフレームに接続する従来の方式に対して、スイングアームに直接ショックユニットをつり下げ、リンクを介してフレームに接続される。従来まではスイングアームの重量増加を避けるため、重量のあるショックユニットはフレームに吊されていたが、スイングアームに付けることによってスイングアームに重量を持たせ、タイヤを路面に押しつけるトラクション効果として利用した。また、リンクがスイングアーム内で完結しているため、フレームに与える影響は少なく、フレームの剛性設計の幅を広げると共に、シート下にスペースを確保、重量変化のあるガソリンタンクをシート下に移動させることに成功した。しかし、ショックユニットがフレームに接続されていないため、ライダーへのショックユニットのインフォメーションが少なく、感覚が薄いというデメリットもある。

ユニットプロリンクにより確保したスペースを利用して、重量変化のあるガソリンタンクをシート下に配置、ライダーの重心に近づけることにより、レース中の燃料残量によるハンドリングへの影響を最小限に止める。ガソリンタンクをシート下に配置したことにより、従来のガソリンタンク位置に大きなスペースを確保。エアボックスとして利用することにより、より新鮮で大容量の空気をエンジンに送り込み、出力を上げることができる。

ニュージェネレーション

2006年型ニュージェネレーション

2006年、990cc最終年となったシーズンに「ニュージェネレーション」と呼ばれる今までのRC211Vにはなかった発展車種が登場し、ニッキー・ヘイデンが操った。この背景には次年への後継車種のRC212Vの開発を兼ねていて、ヘイデンの今までのマシンへの不満を解消したモデルといえる。今までの「オリジナル」と呼ばれるモデルの基本からの性能を見直して、フレームをコンパクトに短く、そしてスイングアームを長くするなど車体、エンジンとも「オリジナル」からはほとんどが異なっている。

レース戦績

随所に最新のメカニズムを搭載したこの車両は、投入直後から圧倒的な強さを見せつけている。デビューイヤーの2002年、翌年の2003年バレンティーノ・ロッシにより勝者となった。その後2年間はヤマハへ移籍したロッシが駆るYZR-M1の後塵を拝するが、2006年にはニッキー・ヘイデンの手によりチャンピオンを奪還した。

マニュファクチャラーズ・ランキング
  ホンダ 優勝/レース 優勝ライダー
2002年 1位※注 14/16 バレンティーノ・ロッシ(11勝)、宇川徹(1勝)、アレックス・バロス(2勝)
2003年 1位 15/16 バレンティーノ・ロッシ(9勝)、セテ・ジベルナウ(4勝)、マックス・ビアッジ(2勝)
2004年 1位 7/16 セテ・ジベルナウ(4勝)、マックス・ビアッジ(1勝)、玉田誠(2勝)
2005年 2位 4/17 マルコ・メランドリ(2勝)、ニッキー・ヘイデン(1勝)、アレックス・バロス(1勝)
2006年 1位 8/17 マルコ・メランドリ(3勝)、ニッキー・ヘイデン(2勝)、ダニ・ペドロサ(2勝)、トニ・エリアス(1勝)

※NSR500(未勝利)での獲得ポイントを含む

ライダーチャンピオン
  • 2002年 - バレンティーノ・ロッシ(レプソル・ホンダ)
  • 2003年 - バレンティーノ・ロッシ(レプソル・ホンダ)
  • 2006年 - ニッキー・ヘイデン(レプソル・ホンダ)

参考画像

脚注

注釈

出典

参考文献

関連項目

外部リンク