ベクトル解析

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ベクトル解析(ベクトルかいせき、英語:vector calculus)は主に空間のベクトルを用いた解析学ベクトル値関数微分積分学を展開する数学の分野の一部である。

概要

数学の分野の一部だが、そもそもは以下に記したような物理の学問が関連している。

一般的には、2次元または3次元のベクトル場のベクトル値関数を取り扱う。3次元ベクトル場の場合は、物理学の分野の、電磁気学流体力学のような空間変化解析などに用いられる初等的な学問である。そのような意味でベクトル解析は物理数学の一部と見なされ理工学の分野では広く活用される学問である。広義には、測度論多様体上の微分形式論の一部なども含む。とくにストークスの定理は一般次元における微分積分学の基本定理ということができる。

歴史

現代の学校教育では古典力学の導入からベクトルを用いた物理教育が行われ数学サイドでも幾何ベクトルや線形代数、ベクトル解析といったベクトルの概念が普通に教えられているが、古典力学の登場と同時にベクトルも誕生したのかといえばそうではなく、物理の法則などを表記するために、19世紀に生まれ[1]、20世紀になり高次元ベクトル場にまで一般化された。

ベクトルが誕生するまではデカルト座標を用いた解析幾何学やハミルトンが考案した四元数を用いた記法が主流であり、力学や電磁気学の教育・研究でも解析幾何学的な多変数の微積分を用いた力学や四元数表記の電磁気学が普通であった[1]。余談だが、同じようにベクトルを扱う数学理論である線型代数についても登場時期はほぼ同時期であり、こちらは完成が遅れたため教育に本格的に導入されるのは20世紀後半になってから数学教育の現代化が言われ出した頃である。当時(20世紀前半)は教えられている物理数学が現代とは違っていたのであり、ベクトルは数学ではなく物理学の授業で導入され行列式が先に教えられていたし[2]、行列の概念を用いて量子力学を定式化したハイゼンベルクも線型代数を習っていなかった。更に、日本でも明治初期の物理教育では電磁気学は四元数ベースのものが教えられていたことは有名である。

ベクトルを初めて教育に導入したのは統計力学で有名なアメリカのギブスであるとされ、1880年代のイェール大学の講義で記号こそ現代とは違うものの、外積・内積やベクトル解析の概念などが当時使われていたが、イギリスの四元数の著書もあるピーター・ガスリー・テイトという物理学者の評判も大変不評であったという[1]。今日用いられている記号や専門用語の大半は1901年に出版されたギブスとエドウィン・ウィルソン英語版の共著、ベクトル解析 (著書)によって確立された。

しかし、ギブス以降の物理学の教育ではベクトルは四元数を推進していたハミルトンやテイトのいたイギリスにおいて寧ろ盛んに用いられるようになり、物理学における常識的な概念となった[1]。しかしながら20世紀に入ってからはむしろスピンなどの概念も四元数に非常に類似しており、ハミルトンには先見性があったのではないかとされる[1]

関連概念

参考文献

  1. ^ a b c d e 湯川秀樹 『物理講義』、1975年、講談社、58-62頁
  2. ^ 銀林浩、『線型代数学序説』、現代数学社、2002年 まえがきより

関連項目