ヘビトンボ

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ヘビトンボ
ヘビトンボ
Protohermes grandis
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
上目 : アミメカゲロウ上目(脈翅上目) Neuropterida
: ヘビトンボ目(広翅目) Megaloptera
: ヘビトンボ科 Corydalidae
亜科 : ヘビトンボ亜科 Neurominae
: ヘビトンボ属 Protohermes
: ヘビトンボ P. grandis
学名
Protohermes grandis
Thunberg, 1781
和名
ヘビトンボ(蛇蜻蛉)

ヘビトンボ(蛇蜻蛉、Protohermes grandis)はヘビトンボ目(広翅目)・ヘビトンボ科に分類される昆虫の一種。ヘビトンボ科の昆虫を総称してヘビトンボと言うこともあるが、その場合は「ヘビトンボ類」の意である。

分布

日本(北海道、本州、四国、九州--対馬・屋久島・種子島を含む--)[1]、中国、韓国、台湾[2]

特徴

成虫は体長40mm、羽を広げた左右の長さ100mmと、この類では大柄な昆虫である。ナラ類などの広葉樹樹液を主食とする。乳白色のをもつ。体に比べて大きな翅である点はカゲロウに似た昆虫で、大あごが大きく噛み付く力も強い。単眼の基部は黒い。和名の蛇蜻蛉という名前の由来は、大顎で噛みつく習性を蛇に準えて付けたものである。

幼虫は渓流にすむ水生昆虫で、体は細長く、頭部は頑丈で顎が強く発達する。腹部には体節ごとに一対の鰓足がでる。

生活史

幼虫は一般に、清浄な河川の中流域より上流に生息することから、カワゲラ目トビケラ目等に属する多くの種と同様、清冽な水質の指標生物の一つである。強い肉食性で、この幼虫が一匹いると、周囲から他の水生昆虫がいなくなるともいわれ、その姿から川ムカデなどとも呼ばれる。噛み付かれるとふくれあがってしまうほどの威力があるが、ムカデのようには持たない。 蛹化に際しては陸上に這い登り、岸部の石の下などに潜り込んでとなる。尚、蛹にも大顎が発達し、蛹をいくつか一緒にしておくと、仲間同士で噛みあって殺し合う習性があるといわれる。

成虫は灯火にもよく飛来する。

利用

幼虫は古くから孫太郎虫(まごたろうむし)などと呼ばれ、子供のに効く漢方薬になる。かつては宮城県白石市斎川の特産とされ、江戸時代に土地の人はこれを炙って酒肴にしたという[3]。1930年代までも「奥州斎川名産孫太郎」の触れ声で行商されていた[4]

また、長野県伊那市付近では、幼虫を珍味のざざむしの一種として食用とする。

ギャラリー

日本のヘビトンボ科

タイリククロスジヘビトンボの幼虫

ヘビトンボ科の昆虫を総称して「ヘビトンボ」と言うこともある。日本に産するとされるヘビトンボ科は以下のとおり[1][5]

クロスジヘビトンボ亜科 Chauliodinae
モンヘビトンボ属 Neochauliodes van der Weele, 1909
  • ヤエヤマヘビトンボ Neochauliodes azumai Asahina, 1988
      石垣島西表島の固有種
  • モンヘビトンボ Neochauliodes sinensis (Walker, 1853)
      対馬、石垣島、西表島、朝鮮半島[6]、台湾、中国、東南アジア 
クロスジヘビトンボ属 Parachauliodes van der Weele, 1909
  • タイリククロスジヘビトンボ Parachauliodes continentalis van der Weele,1909 
      本州、四国、九州、対馬、韓国
  • ヤマトクロスジヘビトンボ Parachauliodes japonicus (MacLachlan, 1867)
      本州、四国、九州、奄美、沖縄本島、石垣島、西表島、台湾
  • ヤンバルヘビトンボ Parachauliodes yanbaru Asahina, 1987
      沖縄本島北部の固有種
ヘビトンボ亜科 Corydalinae
ヘビトンボ属 Protohermes van der Weele, 1907
  • ヘビトンボ Protohermes grandis (Thunberg, 1781)
      日本(北海道、本州、四国、九州--対馬・屋久島・種子島を含む--)[1]、中国、韓国、台湾[7][8]
  • アマミヘビトンボ Protohermes immaculatus Kuwayama, 1964 
      奄美大島、徳之島、久米島
  • ミナミヘビトンボ Protohermes sp.
      石垣島・西表島の固有種(石垣では産地は極限)。台湾~中国~インド東北部に分布するヒメヘビトンボ Protohermes costalis (Walker, 1853)に近縁とされる未記載種。

脚注

  1. ^ a b c 林文男 (2005) ヘビトンボ目(広翅目) Megaloptera pp.379-386. in 川合禎次・谷田一三(編著)『日本産水生昆虫』 東海大学出版会 ISBN 4-486-01572-X
  2. ^ 石原保・関本茂行 (2008) 1375~1429. p.237 in 朝比奈正二郎ほか旧版監修『新訂原色昆虫大図鑑 第3巻』北隆館 ISBN 978-4-8326-0827-6
  3. ^ 封内土産考』(『仙台叢書』第3巻438-439頁)は、大人でも食うべきではない、稀に食べて病む人がいる、毒があるのではないか、とけなしている。どこにでもいる虫だが他では食べないとのことである。
  4. ^ 山本金次郎編『宮城県名勝地誌』88頁。
  5. ^ 林文男 (2003) ヘビトンボ目(広翅目) Megaloptera pp.366-368. in 西島信昇(監修)西田睦・鹿谷法一・諸喜田茂充(編著)『琉球列島の陸水生物』 東海大学出版会 ISBN 4-486-01599-1
  6. ^ 林文男(2003)
  7. ^ 石原保・関本茂行 (2008) 1375~1429. p.237 in 朝比奈正二郎ほか旧版監修『新訂原色昆虫大図鑑 第3巻』北隆館 ISBN 978-4-8326-0827-6
  8. ^ 九大

関連項目

参考文献