ヘッドロック
ヘッドロック(Headlock)は、プロレス技の一種である。日本名は頭蓋骨固め。ヘッド・チャンスリーとも呼ばれる。単にヘッドロックと称する場合は相手の頭を脇に抱えて締め上げるサイド・ヘッドロックのことを指すことが多く、サイド・ヘッドロックはリバース・チャンスリー、サイド・チャンスリーとも呼ばれている。
概要
以下はサイド・ヘッドロックについて説明する。
ロックアップ(カラー・アンド・エルボー)の体勢から繰り出すことができ、派生技、連絡技、返し技も数多く存在するため[1]、プロレスにおいては基本技の一つとされている。極まった場合こめかみ、あるいは頚部が圧迫され激痛を伴う[1]。
第二次世界大戦前のプロレスではエド・ルイスらがフィニッシュ・ホールドとして使用していた。ルイスの弟子であるルー・テーズがフィニッシュ・ホールドとして愛用していたバックドロップは、相手にヘッドロックをかけさせた状態から相手の背後へ回り込み反り投げるものであった。ヘッドロックを仕掛ければ相手も同じ技で応戦したがるため、テーズ自身もバックドロップの布石としての、この技の仕掛けを研究していたという逸話が伝えられている。
しかし、1970年代以降は試合序盤での基本技または、つなぎ技として使われることが多くなり、フィニッシュ・ホールドとして使われることは少なくなっていった。時々、全日本プロレスで、小橋健太が渕正信をヘッドロック・ホールドで、そのままピンフォールを奪ったり(1994年)、秋山準が志賀賢太郎からヘッドロックでギブアップを取ったこと(2000年)があった。
また、総合格闘技においても時折使用される。戦極 〜第三陣〜において吉田秀彦はモーリス・スミスに対し袈裟固からのグラウンド・ヘッドロックでタップアウトを奪った。吉田が経営している吉田道場の門下生で同じく総合格闘家の中村和裕が語るところによれば、吉田のヘッドロックは極める部位や体重移動などに彼独自のコツがあり、無理に堪えればそのまま絞め落とされる可能性もあるという。
2019年には、ケンカでヘッドロックをかけた一般男性が相手を死亡させる事件も発生した[2]。
主な使用者
- 絞めの強さからザ・ストラングラー(絞殺者)の異名を取った。
- 並外れた怪力の持ち主だったため、その規格外の威力からホッジ・ヘッドロックという固有名称で呼ばれた。
- 素人乱入に対し相手を屈伏させるために使用することが多かったという。簡単な技でもレスラーが使うと凶器になることを示していた。
- 全盛期にはインターナショナルヘビー級王座やPWFヘビー級王座の防衛戦においてヘッドロックを多用していた。
- ビル・ロビンソンから指導を受けてグラウンド・ヘッドロックを使用していた。
種類
サイド式以外のヘッドロックには以下のものがある。
グラウンド・ヘッドロック
グラウンド上で横に倒れた体勢でサイド・ヘッドロックを仕掛けるもの。
ブルドッグ・チョーク(サイド・ヘッドロック・チョーク)
- 相手がうつ伏せ状態、又はよつん這いの状態で背後ではなく、真横から相手の首を右腕に抱え込み、後ろに体重を掛けて両腕で相手の首を締め上げるサイド・ヘッドロック・チョーク。
フロント・ヘッドロック
がぶり状態からヘッドロックを仕掛けるもの。立った状態でかける時と座った状態でかける時がある。この体勢からネックブリーカーに移行するパターンもある。
類似技に喉あるいは頸動脈を絞めるフロント・チョーク(ギロチン・チョーク、フロント・チョーク・スリーパー、フロント・スリーパー)や首関節を攻撃するフロント・ネックチャンスリー(フロント・ネックロック)がある。
ブルドッギング・ヘッドロック
単にブルドッグともいう。相手の頭をヘッドロックしたままリングを走り、ジャンプして倒れこみ相手の顔面を叩きつける。
この場合のブルドッグは犬種のことではなく、動詞のBulldog(牛や鹿の角を掴みねじり倒す)から由来している。誤った表記ではあるが日本ではブルドッキングという名称が使われることもある。
カウボーイが牛を捕える動作をプロレスに応用した技として、カウボーイ・ボブ・エリスが考案して日本で初公開する。その後もブラックジャック・ランザ、ボビー・ダンカン、スコット・ケーシー、サム・ヒューストンなど、カウボーイのギミックを用いたレスラーが得意技とした。アドリアン・アドニスは肘を首筋を当てて押しつぶすような独特のスタイルを用い、WWFではアドラブル・ドッグ(Adorable Dog)の名称で使用していた。日本人ではラッシャー木村、谷津嘉章、越中詩郎、中西学、菊タロー(初代えべっさん)などが主な使用者である。
相手をヘッドロックせず髪の毛や後頭部を掴んで顔面から叩きつけるとワンハンド・ブルドッグもしくは日本ではフェイス・クラッシャー(顔面砕き)とも呼ばれる。主な使用者には、クリス・ジェリコ、ジョン・シナ、武藤敬司などがいる。
スプリングショット・ブルドッギング・ヘッドロック
- ストラタスファクション
- トリッシュ・ストラタスのオリジナル技。
- スリングショット式の変形ブルドッギング・ヘッドロック。
- 相手をヘッドロックで捕らえた体勢からトップロープ上へジャンプ、その反動を利用して反転し顔面をマットへ叩きつける。
- ホーダラスは、ボードッグの技名で使用。
- ボードッグ
- 相手をスタンディングのヘッドロックに捉え、そこからコーナーを駆け上がり、その反動を利用して相手を顔面からマットに叩きつけるスプリングボード式の変型ブルドッキングヘッドロック。
スピニング・ブルドッグ
- チェックメイト
- ローマンレインズは、FCW時代から使用。
- 相手をスタンディング式ヘッドロックに捕らえた状態でリング内を助走して自ら、ジャンプをしてから遠心力で相手を顔面からマットに叩きつける変形ブルドッキングヘッドロック。
ハーフエルソン式・ブルドッグ
- ハーフネルソン・ブルドッグ
- エッジのオリジナル技。
- 相手の横側につき、相手の左腕から後頭部にかけてに片腕を回し、右手を相手の腰に沿え、ジャンプして顔面から叩きつける。ヒールターン後はほぼ使用していなかったが、2010年のベビーターンで再び使い始めた技。
派生技
リバーススリング・ブレイド
- 【使用者】棚橋弘至のオリジナル技。
- 相手の背後から繰り出す「リバース式(最終的にブルドッギング・ヘッドロックの形になる)」など様々な派生技が存在する。
ヘッドロック・ドライバー
- 【主な使い手】ジョン・モクスリー2014年9月まではこの技をダーティー・ディーズとして使用。、EC3は、TNA参戦時代は、ワン・パーセンターという名称で使用。、ROH所属のマット・ターバンは、クライマックスの名称で使用。
- 相手をサイド・ヘッドロックの体勢で捕らえ、そのまま勢いよく前方へ倒れ込むことで前頭部からマットに叩きつける変型スナップメア・ドライバー。
スナップメア・ドライバー
リバース・スナップメア・ドライバー
- 【主な使い手】マーティ・スカル、ホアキン・ワイルドは、フィリピン・デストロイヤーと言う名称で使用。
- 背中合わせの状態で右手で相手の後頭部を右肩に固定し、そこから勢いよく前方へ倒れ込むことで相手を後方回転させて脳天からマットに突き刺す文字通りリバース式変形スナップメア・ドライバー。
連絡技
スタンディングで相手をヘッドロックの体勢に捕らたとしても、完全に相手を制圧した体勢ではないため[1]、フライング・メイヤーなどの投げ技に移行する場合も多い[1]。初代タイガーマスクは相手をヘッドロックに捕らえた体勢からフックを解いて自分の体を錐揉み状に回転させて後方へ移動し、最後は相手をカニ挟みで倒すタイガースピンという技を得意としていた[3]。
類似技
- スリーパー・ホールド
- 相手の背面からの首締め。
- フェイスロック
- 相手の背面から顔面の輪郭を覆う様にロックする。
- チンロック
- チンとは「顎」の意で顎と上頭部をフックして首を捻る[要出典]。
返し技
ヘッドロックには多様な返し技が存在する[1]。以下に一例をあげる。
- バックドロップ
- ラテラル - バックドロップを狙う体勢から座り込みながら相手の足を払い倒す。柔道の抱分の類似技。
- 強引に首を抜いてバックを取る
- 強引に首を抜きながら相手をロープに振る
- ワンハンド・バックブリーカー
参考文献
- Hackenschmidt, Georg (2006). The Complete Science of Wrestling. Paladin Press. ISBN 978-1581605303
脚注
- ^ a b c d e Hackenschmidt (2006)
- ^ “けんか相手死亡 歌舞伎町のスナック 傷害容疑で男を逮捕”. 毎日新聞 (2019年9月22日). 2019年9月22日閲覧。
- ^ 詳細速報 <IGF 11・24名古屋> - ニッカンスポーツ、2008年11月25日、2010年2月19日閲覧。