フォトプシン

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フォトプシン: Photopsin)は、網膜錐体細胞に存在する光感受性タンパク質であり、色覚を支えている。 フォトプシンは、桿体細胞に含まれ夜間視力を確保するロドプシンに非常によく似た物質で、同じくオプシンレチナール等からできている。

機能[編集]

オプシンは光受容器細胞に存在するタンパク質の一種、Gn-xタンパク質共役受容体

11-シス-レチナール (11-cis-retinal) が光によりオールトランスレチナール (all-trans-retinal) へ異性化するとオプシンは構造変化を起こし、フォトプシンを活性化、Gタンパク質トランスデューシンへの巻き付きが進み、セカンドメッセンジャーカスケードを引き起こす。

種類[編集]

ヒトの3つのフォトプシンと、ヒトロドプシン(破線)の、正規化された吸収スペクトル

オプシンは少しのアミノ酸の違いでさまざまな種類があり、網膜上色素としてそれぞれ違う波長のを吸収する[1][2]

錐体細胞の種類 名称 吸収波長域 ピーク吸収波長 λmax 別名
S錐体 (OPN1SW)
"トリタン", "シアノラーベ"
β 400–500 nm 420–440 nm 430 nm(青) blue opsin, S opsin, SWS opsin
M錐体 (OPN1MW)
"デュータン", "クロロラーベ"
γ 450–630 nm 534–545 nm 530 nm(緑) green opsin, M opsin, MWS opsin
L錐体 (OPN1LW)
"プロタン", "エリスロラーベ"
ρ 500–700 nm 564–580 nm 560 nm(黄緑) red opsin, L opsin, LWS opsin

ヒトは三種類の光受容体タンパク質(フォトプシンまたは錐体オプシン)があり、これらは錐体細胞に存在し、色覚を司っている。

敏感な波長の長さが短い方から順にS、M、L錐体と呼ばれ、表の最大吸収波長(λmax)を持つ[3]

L錐体は「赤オプシン」とも呼ばれるが、λmax 波長は赤色領域スペクトルではないことに注意が必要である。しかし、他の2つのヒトオプシンよりも赤色に敏感である[4]。この受容体はまた、紫色の高波長で二次的な応答を持っている[5][6]

歴史[編集]

ジョージ・ワルドが1950年代にこれらロドプシンの吸収波長の違いを実験で示し、1967年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Wyszecki, Günther; Stiles, W.S. (1982). Color Science: Concepts and Methods, Quantitative Data and Formulae (2nd ed.). New York: Wiley Series in Pure and Applied Optics. ISBN 0-471-02106-7 
  2. ^ R. W. G. Hunt (2004). The Reproduction of Colour (6th ed.). Chichester UK: Wiley–IS&T Series in Imaging Science and Technology. pp. 11–12. ISBN 0-470-02425-9 
  3. ^ Rushton, W. A. H. (June 1, 1966). “Densitometry of pigments in rods and cones of normal and color defective subjects” (PDF). Investigative Ophthalmology 5 (3): 233–241. PMID 5296487. http://www.iovs.org/cgi/content/abstract/5/3/233 2006年11月14日閲覧。. 
  4. ^ The machinery of colour vision (PDF) neuro, April 2007
  5. ^ Color Space, Physical Space, and Fourier TransformsMathpages
  6. ^ University of California excerpts from "Theory of Color" Archived 2012-08-01 at the Wayback Machine.