バトルシップ (映画)
バトルシップ | |
---|---|
Battleship | |
監督 | ピーター・バーグ |
脚本 |
ジョン・ホーバー エリック・ホーバー |
製作 |
サラ・オーブリー ピーター・バーグ ブライアン・ゴールドナー ダンカン・ヘンダーソン ベネット・シュナイアー スコット・ステューバー |
出演者 |
テイラー・キッチュ 浅野忠信 ブルックリン・デッカー リアーナ アレクサンダー・スカルスガルド リーアム・ニーソン |
音楽 | スティーブ・ジャブロンスキー[1] |
撮影 | トビアス・A・シュリッスラー |
編集 | コルビー・パーカー・Jr |
製作会社 |
ハズブロ ブルーグラス・フィルムズ |
配給 |
ユニバーサル・ピクチャーズ 東宝東和 |
公開 |
2012年4月13日 2012年5月18日 |
上映時間 | 131分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | $209,000,000[2] |
興行収入 |
$302,836,260[2] 14.7億円[3] |
『バトルシップ』(Battleship)は、2012年のアメリカ映画(SF映画)である[4]。1982年、アルゼンチンの雑誌から発表されたボードゲームの『Battleship』(海戦ゲームの派生)を原案としている。
概要
ユニバーサル・ピクチャーズ100周年記念作品。2億ドル以上の高額な制作費が投入された。
全米公開は、元々は2011年公開を予定していたが、2012年5月18日公開に変更された[5]。そのため、2012年4月13日に公開された日本を含むアジア、ヨーロッパの各国では、制作国のアメリカより先行して上映された[6][7]。
日本でのキャッチコピーは、「人類の明日をかけた戦いは、海から始まる—」。
あらすじ
アメリカにて太陽系外の地球型惑星との交信を試みる国際ビーコンプロジェクトが立ちあげられ、ハワイ、オアフ島に造られた送信施設より、送信が開始されて数年後の2012年。世界14カ国の海軍将兵2万人が参集する環太平洋合同演習(RIMPAC / リムパック)が開催されようとしていた。参加艦艇の1隻である米海軍所属ミサイル駆逐艦「USSジョン・ポール・ジョーンズ」[8]の乗員であるアレックス・ホッパー大尉は恋人であるサマンサとの結婚を彼女の父親であるシェーン提督に認めさせようとしていた。が、同じく演習に参加している海上自衛隊のナガタ一等海佐と喧嘩沙汰を起こしたことから、結婚を認められるどころか、演習後の懲戒免職処分を突きつけられる。
そんな中開催された演習であったが、時を同じくして宇宙より正体不明の5つの物体が太平洋を目指して降下してくる。その内の一つは衛星軌道に浮かんでいた人工衛星と激突して分解し、中国、香港を中心として世界各地に落下、大規模な災害を引き起こす。残った4つの物体はハワイ近海のリムパック艦隊近辺に降下。その正体を調べるべく、リムパック艦隊はアレックスの兄であるストーンを指揮官とした分遣隊を派遣することを決め、「USSサンプソン」、護衛艦「みょうこう」[9]、そしてアレックスが乗艦する「USSジョン・ポール・ジョーンズ」の3隻が派遣される。アレックスらがボートにて海上に姿を現していた巨大な構造物を探索していたさ中、突如、物体から強大なエネルギーフィールドが展開され、ハワイ諸島全域を覆いつくし、分遣隊の3隻の駆逐艦はより外洋にいたリムパック艦隊から隔離されてしまう。更に構造物の周囲の海中から異星人の大型機動兵器3機が現れ、3隻の駆逐艦にむけ攻撃を開始。強力な電波妨害によって戦闘力を削がれた3隻は碌に応射も出来ないまま、集中砲火によりUSSサンプソンが撃沈され、ストーンを含めた乗員全員が戦死。「USSジョン・ポール・ジョーンズ」も至近弾を受け、艦長、副長を含んだ上級士官が多数戦死してしまい、艦内生存者中最先任のアレックスが急遽艦の指揮をとることとなる。アレックスは兄を殺された怒りにまかせて突撃をかけるが、援護をしようとしたナガタの護衛艦「みょうこう」も被弾して撃沈されてしまい、部下からの説得でアレックスは攻撃を取りやめ、ナガタを含んだ「みょうこう」のクルーの救助を行い、一時撤退。更に白兵戦を仕掛けてきた異星人の一部を何とか退けたアレックスらは、ナガタらの協力の元、反撃のプランを練る。
異星人の攻撃部隊がハワイ各所を攻撃するなか、孤立無援となった「USSジョン・ポール・ジョーンズ」はアレックスの指揮の元、異星人に対して反撃を開始する。ナガタの発案により海上のブイを利用して敵の位置をつきとめ、3機の大型機動兵器を次々と撃沈する。一方、異星人の目的はハワイの送信施設を利用し仲間に通信して呼び寄せる事とわかり、アレックスはサマンサからアンテナを破壊してほしいと依頼を受ける。しかし、「USSジョン・ポール・ジョーンズ」は異星人船の最後の1機からの攻撃によって破壊されてしまう。アレックスは、すでに役目を終え記念艦となっていた70年前の戦艦「ミズーリ」を使い最後の反撃に出ることを提案するが、残っていた船員だけでは動かす事ができない。そこに退役したかつての軍人たちがミズーリに集合しており、彼等との活躍とアレックスの奇策で最後の1機に集中砲火を浴びせ、反撃を受けて砲塔を一つ失うもエネルギーフィールド発生装置を破壊し、展開していたエネルギーフィールドを消滅させる事に成功する。そして最後の砲弾を送信施設に向けて発射し、通信施設を破壊する事に成功した。だが、異星人船は完全に轟沈はしておらず、最後の反撃に出ようとするが、エネルギーフィールドに阻まれて救援に来られなかった味方の集中攻撃により、完全に轟沈した。
キャスト
- アレックス・ホッパー
- 演 - テイラー・キッチュ
- 主人公。アメリカ海軍大尉。「USSジョン・ポール・ジョーンズ」のCICに所属する海軍将校。内面的には非常に教養に富み優れた知性を持っているのだが、「自分でもどうしてかわからない」という衝動性が災いし、度々他人に迷惑をかけてしまう。海軍に入隊した経緯もサマンサへの一目ぼれの一件に端を発しており、直情的な性格でトラブルが絶えない。
- ユウジ・ナガタ
- 演 - 浅野忠信
- 準主人公。海上自衛隊一等海佐。「護衛艦みょうこう」艦長。過去のリムパックでのいざこざからアレックスとは犬猿の仲だったが、突如出現した異星人に対し共闘する内に友情が芽生える。レーダーの使えない状況下で津波ブイを利用した敵位置の推測方法を提案し、異星人の大型機動兵器を撃破する切っ掛けを作る。
- サマンサ・“サム”・シェーン
- 演 - ブルックリン・デッカー
- 理学療法士でアレックスの婚約者。軍の診療施設に勤める。自身の診療施設の患者の一人である傷痍軍人のミックと共に、彼のリハビリ目的のフィールドワークを行っていた際、異星人の攻撃に巻き込まれるが、ミックとともに異星人が送信施設を利用できないように奮闘する。
- コーラ・レイクス
- 演 - リアーナ
- アメリカ海軍兵曹。「USSジョン・ポール・ジョーンズ」のCICに所属する女性クルー。小柄だが気の強いアフリカ系女性で、アレックスの部下。
- ストーン・ホッパー
- 演 - アレクサンダー・スカルスガルド
- アメリカ海軍中佐。アレックスの兄で「USSサンプソン」の艦長。
- シェーン提督
- 演 - リーアム・ニーソン
- アメリカ海軍大将。アレックスとストーンの上官でサマンサの父。空母「USSロナルド・レーガン」にてリムパック艦隊の指揮をとる。アレックスとサマンサの結婚を最後は認める。
- ウォルター・“ビースト”・リンチ
- 演 - ジョン・ツイ
- アメリカ海軍上等兵曹。「USSジョン・ポール・ジョーンズ」の機関員。
- ジミー・“オーディ”・オード
- 演 - ジェシー・プレモンス
- アメリカ海軍上等水兵。「USSジョン・ポール・ジョーンズ」のブリッジクルー。アレックスやレイクスと親しい。
- ミック・キャナルズ
- 演 - グレゴリー・D・ガトソン
- アメリカ陸軍退役中佐。過去の受傷が元で両足が義足になっており、サマンサの務める診療施設に通いリハビリを受けていた。リハビリの一環として山を登っていた際に、異星人の襲来を受ける。サマンサとともに異星人の送信を妨害するために勇敢に奮闘し、異星人の1人と格闘し、最後は義足にて絞め落とした。
- キャル・ザパタ
- 演 - ハミッシュ・リンクレイター
- 国際ビーコンプロジェクトのオアフ島施設に勤める研究員の一人。
- ノグレディ博士
- 演 - アダム・ゴドリー
- 国際ビーコンプロジェクトのリーダー。
- ブラウリー中佐
- 演 - リコ・マックリントン
- アメリカ海軍中佐。「USSジョン・ポール・ジョーンズ」の艦長。
- 国防長官
- 演 - ピーター・マクニコル
- アメリカ合衆国国防長官。
日本語吹替
役名 | 俳優 | 日本語吹替1 | 日本語吹替2 |
---|---|---|---|
アレックス・ホッパー | テイラー・キッチュ | 置鮎龍太郎 | |
ユウジ・ナガタ | 浅野忠信 | ||
サマンサ・“サム”・シェーン | ブルックリン・デッカー | 本名陽子 | |
コーラ・レイクス | リアーナ | 土屋アンナ | 東條加那子 |
ストーン・ホッパー | アレクサンダー・スカルスガルド | 平田広明 | |
シェーン提督 | リーアム・ニーソン | 石塚運昇 | |
ウォルター・“ビースト”・リンチ | ジョン・ツイ | 遠藤純一 | |
ジミー・“オーディ”・オード | ジェシー・プレモンス | 佐藤せつじ | |
ミック・キャナルズ | グレゴリー・D・ガトソン | 乃村健次 | |
キャル・ザパタ | ハミッシュ・リンクレイター | 落合弘治 | |
ノグレディ博士 | アダム・ゴドリー | 立川三貴 | |
ブラウリー大佐 | リコ・マックリントン | 山野井仁 | |
国防長官 | ピーター・マクニコル | 佐々木省三 |
- 日本語吹替1 - 劇場公開版。BD・DVD収録。
- 日本語吹替2 - お蔵入りバージョン。
- 日本語吹替は「吹替2」が先に制作されたが、その後一部声優をタレントに差し替えた「吹替1」が制作され、劇場公開された。映像ソフトにも「吹替1」のみが収録されている。「吹替2」は2015年に地上波放送される予定であったが、諸事情により「吹替1」が放送されることになった[10]。
登場兵器など
海上兵器
- ニミッツ級航空母艦9番艦「ロナルド・レーガン」
- アイオワ級戦艦3番艦「ミズーリ」
- アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦3番艦「ジョン・ポール・ジョーンズ」
- アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦52番艦「サンプソン」
- こんごう型護衛艦3番艦「みょうこう」 - 作中での艦影はあたご型護衛艦。
- 7メートル級RHIB
- タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦 - 戦闘シーンなし。
- むらさめ型護衛艦8番艦「あけぼの 」 - オープニングで、パールハーバーに停泊。
航空兵器
銃器等
製作
約2億5000万ドルの予算のもと、2010年にオーストラリアのゴールドコーストでの撮影開始が計画されていたが、製作会社側は同国政府の税制措置のためにロケ地を変更することにした[11]。
撮影はアメリカ合衆国ハワイ州のマウイ島、オアフ島のほかに、カリフォルニア州のシャーマンオークスやプラヤデルレイでも行われた[12]。さらにルイジアナ州バトンルージュでも撮影された[13]。
Science & Entertainment Exchangeが科学考証に協力した[14]。3Dでは撮影されなかった[15]。
本作では日本の防衛省は公式な協力はしていないが、冒頭のあるシーンの撮影時にたまたまパール・ハーバーへ寄港していた海上自衛隊イージス護衛艦「きりしま」及びその乗員が撮影に協力している。エンドロールでは「JDS KIRISHIMA」のクレジットが見られる。撮影は2010年9月である。
興行収入
2億ドル以上の製作費に対し、アメリカでの興行収入はわずか6500万ドルに過ぎず、苦戦を強いられる結果となった[2]。一方、日本では浅野忠信が出演していることもあって好評となり、2012年の日本国内洋画で7位の成績である14億円超のヒットを記録した。全世界興行成績は3億200万ドル[16]。
評価
批評家からは酷評されており、Rotten Tomatoesでは209件のレビューで支持率が34%、平均点が10点満点中4.6点と低い評価を下されている[17]。ローリング・ストーン誌のピーター・トラヴァースは2012年の年間ワースト映画の1つに挙げており、現在のところワースト1位であると評している。
第33回ゴールデンラズベリー賞において最低作品賞、最低監督賞、最低脚本賞、最低助演男優賞(リーアム・ニーソン)、最低助演女優賞(リアーナ、ブルックリン・デッカー)、最低スクリーンアンサンブル賞の系6部門にノミネートされ、その中で最低助演女優賞(リアーナ)を受賞した。
日本では一部のB級映画ファンから根強い支持があり、2015年5月のテレビ放送時には関連キーワードが相次いでTwitterのトレンドに入るなど、『コマンドー』同様にネットで話題性のある映画となっている[18]。
小説版
2012年4月24日、ピーター・デイヴィットによる小説版が発売された。日本でも鈴木詠崇による邦訳版がリンダブックスから5月5日に発売された。内容は概ね映画に沿っているが、退役軍人らが日本人をミズーリへ迎えることに反発する場面やトモダチ作戦への言及など映画にはない場面も追加されている。
参考文献
- ^ “Steve Jablonsky Confirmed to Score ‘Battleship'”. Film Music Reporter (2011年5月31日). 2011年6月6日閲覧。
- ^ a b c “Battleship” (英語). Box Office Mojo. Amazon.com. 2012年9月11日閲覧。
- ^ 2012年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟
- ^ “Hasbro Brands to Deliver Major Hollywood Blockbuster Film and Television Action, Adventure and Fun Worldwide This Summer and Beyond” (2011年6月15日). 2011年12月12日閲覧。
- ^ Weintraub, Steve (2010年2月5日). “Peter Berg's Battleship Is Now Sailing Memorial Day Weekend 2012”. Collider.com. 2010年7月10日閲覧。
- ^ “Battleship (2012) - Release dates”. IMDb.com, Inc.. 2012年6月14日閲覧。
- ^ 米国で先行公開したときに、このような新興国で起こる海賊版ソフト対策という理由がある。
- ^ 基本的には「ジョン・ポール・ジョーンズ」の実艦を使用して撮影されているが、場面によっては同艦には無いはずの艦尾ヘリ格納庫が存在しており、準同型艦であるアーレイバーク級フライトIIAが使用されている。
- ^ 登場シーンの殆どは「みょうこう」の実艦ではなく艦籍番号DDG177で艦尾にヘリコプター格納庫を備えた「あたご」で撮影されている。
- ^ 2015年4月29日のツイート - 東條加那子 (0303tojo)
- ^ Lewis, Maria (2010年3月27日). “$100m Film Deal Sunk”. goldcoast.com.au. 2010年7月10日閲覧。
- ^ “First Pictures of Rihanna and Taylor Kitsch on Hawaii Battleship Set”. Aloha Update. (2010年9月8日) 2010年9月13日閲覧。
- ^ “Production Weekly – Issue 715 – Thursday, June 3, 2010 / 125 listings – 26 pages”. Production Weekly (Scribd.com) (715): 3. (2010-06-03) 2010年7月27日閲覧。.
- ^ “Recent Projects”. National Academy of Sciences. 2011年7月7日閲覧。
- ^ “Peter Berg’s BATTLESHIP Will NOT Be in 3D”. Collider.com. 2011年11月15日閲覧。
- ^ “Battleship (2012)”. Box Office Mojo. 2012年10月20日閲覧。
- ^ “Battleship (2012)”. Rotten Tomatoes. 2012年10月20日閲覧。
- ^ “「バトルシップ」放送でツイート実況が大爆発 「チキンブリトー」もトレンド入りする謎のGWに”. ねとらぼ. ITmedia (2015年5月4日). 2015年5月8日閲覧。
関連項目
- 戦艦ミズーリ - 本作のタイトルに触れる「戦艦(バトルシップ)ミズーリ」は、クライマックスにおけるラストバトルに登場した。
- ブリート - 「チキンブリトー(ブリートとも言う)」は、本作の始まりと締めくくりを担ったトルティーヤの一種である。
- 『ジョン・カーター』 - 同時期に公開された映画であり、テイラー・キッチュが主演であることも共通している。