バクロニム

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バクロニム: backronym または bacronym)とは、ある単語の各文字を使って、新たに頭字語としての意味を持たせたものである。バクロニムを作る行為は、日本で言うあいうえお作文に近い。

バクロニムは1983年に back(後)と acronym(頭字語)を組み合わせて新造されたかばん語である。

概要

純粋なバクロニムは、その単語に新たな意味や解釈を与える。それらは公式のシリアスなものもあれば非公式のユーモラスなものもある。バクロニムが語源として広まっている状態は民間語源・語源俗解であると言える。しかしそれは大抵の場合ジョークとして理解される。

バクロニムの例

遭難信号として使われる「SOS」は、モールス符号として打ちやすいという理由で選ばれた文字列で、元々は意味を持たない。しかし、しばしば「save our ship(あるいは souls)」といった風に解釈される。ちなみに、SOS 以前に使われていた遭難信号「CQD」にも同様に「come quick, distress(あるいは danger)」というバクロニムがある。

Wiki」は、ハワイ語で素速いという意味の wikiwiki から命名されたものだが、ときに「what I know is」の略だと説明されることがある。

商品名などを決める際、まず語感だけで単語を考え、それから意味を持たせるといったこともある。

バクロニムには頭字語の一部の原語を入れ替えて不正確や時代遅れに対応する例がある。

DVD」は、元々「digital video disc」の頭字語であったが、ビデオ以外の記録にも利用できることから「digital versatile disc」との説明が考え出された[1](ただし、他にもいくつか提案があり、合意に至らなかったため、公式なものではない)。

GSM」は、フランスの研究グループによって開発されたため、フランス語の「groupe spécial mobile」から命名されたが、後に世界的な規格となると英語の「global system for mobile communications」の略語へと変更された。

米国でよく知られている例にはSATがあり、これは元々 scholastic aptitude test の略だったが、生徒の親達の団体から aptitude(適性)と言う語が生来の才能だけで、努力した分の能力を反映していないという文句があったため scholastic assessment test と変更された。現在はそれも変更されており、公式には元の語は設定されていない。

SAPは当初 Spanish audio program を意味していたが、secondary audio program に変わった。

GCCGNU C compiler(GNU Cコンパイラ)という意味だったが、さまざまな言語のコンパイラが追加された結果 GNU compiler collection(GNUコンパイラ集合体)へ拡張された。

news」という単語は、North(北)・East(東)・West(西)・South(南)の頭文字をとったもので、方々の話題を集めることに由来する、と説明されることがあるが、語源としては誤りである。綴りを覚えるための一種の語呂合わせが俗説として広まったと考えられる。

バクロニムが元の語に関係した句になる場合、それはアプロニム: apronym)と呼ばれる。これは真面目な場合も皮肉な場合もある。acronym という単語にも a clever representation of names you manufacture「あなたが創りあげた気の利いた名称の別表現」というアプロニムが作られている。このアプロニムを使って単語を憶えることも可能である。多くのふざけた(そしてしばしば侮蔑的でもあった)アプロニムが言葉遊びの一種として作られた。

例えばPCカードの旧称PCMCIApeople cannot memorize computer industry acronyms「人々はコンピュータ業界のアクロニムを覚えられない」と皮肉られ(本来は personal computer memory card industry association)、それはつまりアメリカ自由人権協会の保守的なグループにより作られつづける無数の頭字語を皮肉ったものである。

本来の意味とは異なる解釈によってバクロニムとなっている単語もある。

A.D.」は、ラテン語で「主の年に」を意味する「anno Domini」の略で、イエス・キリストの生誕からの年数を表しているが、英語圏では稀にこれを誤って「after death」の略、すなわち「(彼の)死後」の年数だと解釈している者もみられる。

R.I.P.」は、本来はラテン語で「安らかに眠れ」を意味する「requiescat in pace」の頭字語であって、必ずしも英語でやはり「安らかに眠れ」を意味する「rest in peace」の略ではなく、結果的にそうなったにすぎない。

RPG」と通称される携行兵器は、英語のrocket-propelled grenade(ロケット推進式榴弾)の略だと思われているが、実際はロシア語Ручной Противотанковый Гранатомёт(手持ち式対戦車擲弾筒)[1]キリル文字の頭文字 РПГ をそのままラテン文字に転記したものである。

バクロニムの中にはGNUPHPのような再帰的頭字語Jiniのような擬似頭字語(pseudo-acronym)がある。

脚注

  1. ^ ラテン文字転記:ruchnoy protivotankovy granatomyot

関連項目

外部リンク