ハムスター

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キヌゲネズミ亜科
ゴールデンハムスター
(Mesocricetus auratus)
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネズミ目(齧歯目) Rodentia
上科 : ネズミ上科 Myomorpha
: キヌゲネズミ科 Cricetidae
亜科 : キヌゲネズミ亜科 Cricetinae

本文参照

ハムスター (hamster) は、キヌゲネズミ亜科に属する齧歯類の24種の総称。夜行性雑食性である。肩まで広がる大きな頬袋を持つのが特徴。狭義にはもっぱらゴールデンハムスター(別名シリアンハムスター)をさす[1]。野生のゴールデンハムスターは絶滅が危惧されているが、飼育・繁殖が容易であるため、ペットや実験用動物として繁殖されて知名度は高い。

1956年、ゴールデンハムスターが風邪に感染することが発見され、風邪に関する研究が大いに発展した(それまで、風邪のウイルスに高い感受性を示す小型の実験動物は知られていなかった)。

語源

日本語の「ハムスター」はキヌゲネズミの様々な種を指すが、元はゴールデンハムスターの俗称・通称として一般人に定着したものであり、英語やドイツ語のゴールデンハムスターであるhamsterに由来している。

古高ドイツ語には、hamustraという単語があり(元々1000年頃にコクゾウムシの意味で使われていた古い単語であったが)、1607年にはハムスター(クロハラハムスター)という意味で使われており[2]、ヨーロッパに広く生息していたクロハラハムスターの語源となった。しかし、実験動物用としてドイツにゴールデンハムスター(: Syrische Goldhamster)が伝来して増え、ゴールデンハムスターがHamsterの代名詞にとって変わった。

古高ドイツ語のhamustraにはもともと「強欲で大食い」というニュアンスがあり、一説として、その語源は古ロシア語のhoměstrǔあるいは、ペルシア語のhamaēstar(「圧迫者」)に由来していると説明されている[2][3]

ドイツ語の「買いだめする、溜めこむ」という動詞ハムスターン(: hamstern)は、hamsterの貯食の習性から相手を揶揄する言葉として派生した。

特徴

外見

尾は短く、多くのドワーフハムスターは、尻尾が毛皮の下に隠れてしまいほとんど目立たない。ただし例外としてチャイニーズハムスターには2-3cmほどの尾がある。穴を掘るのに適した太い頚部と丸い体形を持ち、進化の過程で地中生活に特化して、四肢が短くなったと考えられている。頬から肩にかけて、伸縮性のある頬袋と呼ばれるエサを収容しておくための袋をもつ。歯式は2 (1003/1003) の16本で、犬歯は退化し、2本の切歯(門歯)が一生伸び続ける[4]

体重は、ジャンガリアンハムスターは30-50g、ゴールデンハムスターで80-150g。ハムスターの中で最も大型になる種はクロハラハムスターで、その体重は250g-600gに達する。寿命はジャンガリアンハムスターで2年、ゴールデンハムスターで3年ほどであるが、稀に5年生きた個体などが報告されている。

習性

頬袋に餌を詰めるハムスター

野生ではヨーロッパからアジアの乾燥地帯に分布し、地中に掘ったトンネルで生活しているが、野生のゴールデンハムスターは数が少なく絶滅が危惧されている。

頬袋に餌を収納し、一杯になるとその袋は2倍から3倍にもふくれ上がることがある。ここに溜めた食料を、自分の巣穴で吐き出して貯蔵する習性がある。食性は穀食を中心とした草食性に近い雑食性で、野生状態では、木の実、穀物、野菜、果物、また昆虫やミールワームなども食べる。飼育時に適したエサについては下記参照。ハムスターは時に自分の糞を食べることがある。これは、一度では消化しきれなかった養分をもう一度吸収するためであり、異常行動ではない。

ハムスターの視力はあまり良くなく、また色盲である。そのため、外界の状況の把握は聴力と嗅覚に頼っている。臭腺の臭いを周りに散布することでなわばりを主張するとされており、特に自身の臭いに非常に敏感である。また、高周波を聴くことができるといわれており、超音波で互いにコミュニケーションしているとも考えられている[5]

夜行性で、低温環境下において、疑似冬眠と呼ばれる、体温が低くなって死んだように眠ってしまう状態になることがある[4]。野生のハムスターは、一日のほとんどを巣穴の中で過ごし、捕食者を避け明け方と夕暮れの短い時間のみに餌を探しに出掛ける。しかし、巣穴の中などでは一晩中活動している。ハムスターは穴掘りの能力に優れており、複数の入口に、寝床、食料の貯蔵庫などの様々な部屋が繋っている巣穴を掘ることができる。

ゴールデンハムスターは縄張り意識が強く、一般的には一匹で生活する。縄張りを侵すと殺し合いのケンカをすることもある。一方、ドワーフハムスターと呼ばれる小さめのハムスターは、同種であれば2匹以上一緒に生活することもありうる。

草原や川岸に生息する野生種のクロハラハムスターは、泳ぐ能力があり、頬袋に空気を貯めて浮き袋にする習性がある[4]。この習性は、元々砂漠地帯に生息していたゴールデンハムスターにも存在し、雨季の洪水などで水に落ちると、頬袋を膨らませて短時間ながら泳ぐことが確かめられている[6]

繁殖

生後間もないハムスター

ハムスターが繁殖可能になる年齢は、種類によって異なるが一般的には月齢で1ヶ月から3ヶ月で交配可能となる。メスのハムスターの交配可能な期間はおよそ3年であるが、オスはもっと長いこともある。規則的な発情期を持つ。4月から10月に、2週間から1ヶ月の妊娠期間の後、10匹前後の子を生む。ゴールデンハムスターは齧歯類の中でも特に性周期が安定しており、メスは4日の周期で発情を繰り返す。発情したメスは、背中側のお尻周辺を触ったり、甘噛みされると、尾を上げ交尾姿勢を取る。

また、種の違うもの(ゴールデンハムスター×ジャンガリアンハムスター、ジャンガリアンハムスター×キャンベルハムスター等)の交雑は、基本的に不可能であり、妊娠したとしても母体・子供に危険が及ぶ確率が高いので危険であるが、ジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターを交雑させたものは一般のペットショップにも出回っていることがある。

分類

進化

およそ600万年前には他のネズミ科から種分化していたと見られ、その後ヨーロッパから中国までユーラシア大陸各地に分布する。森林から草原生が多いが、他のネズミ科同様、幅広い環境に適応放散していた。絶滅した化石種も多数発見されている。現生種に近い個体が発見されるようになるのは160万年から数十万年前ほどからで、現在でもユーラシア大陸の各地に生息している。[要出典]

飼育

回し車を回すパールホワイト

ハムスターの中でもよく知られているのが、ゴールデンハムスター(シリアンハムスター)である。ペットとして飼われているゴールデンハムスターは、1930年シリアで捕獲された1匹の雌とその12匹の仔の子孫が繁殖し、世界中に広まったものである。その後、野生種は発見されていないため、現存するゴールデンハムスターは皆彼らの子孫である。1931年にロンドン動物園でハムスターが展示・一般販売され、それ以後ハムスターがペットとして飼われるようになった[4]。その後、体格が小さいドワーフタイプのハムスターがペットショップ等で扱われて一般化されている。

日本国内にジャンガリアンハムスターが輸入されたのは、昭和40年代で、ペットとして出回り始めたのは、1993年頃とされている[4]

ハムスターは人によく馴れて飼いやすいため、ペットとしてよく飼われている。親子・兄弟であってもケンカにより死亡することがあるため単独飼育が基本であるが、種類によっては複数飼育が可能である場合もある。縄張り意識が強いため、不用意に手を差し伸べたりすると噛み付いて外傷を負う事がある。特にメスは気が強いので、オスの方が比較的おとなしく飼いやすい。

歯が伸び続けるため、飼育下では、固い餌を与えたり、齧り木を与えるなどして歯を削る必要がある。また、ハムスターの大きさにあった回し車ハムスターボールを与えることにより、運動不足が解消される。

急激な温度変化や乾燥には弱い。低温の環境下にみられる擬似冬眠状態のままにしておくと死亡するリスクがある。

エサ

主食は、獣医師が推薦するような専用ペレット、または市販の鳩の餌(トウモロコシ・ひえ・粟・麦など低脂肪で腐りにくい穀物のミックス)を与え、副食は少量ずつ水を切ったもの(にんじんや大根の葉、ブロッコリーなどの野菜や、農薬などに汚染されていないタンポポ、クローバー、レンゲなどの野草)をペレットと同量程度、与えれば良いとされている。また、ハムスターは下痢をし始めると致命的な状況になりやすく、また肥満させないような食事を与えるとよい[7][8][9]。 ピーナッツやヒマワリの種子は脂肪分が多いため、肥満を誘発しないように、おやつとして少量に制限することが推奨されている[7][8][10]。たんぱく質的なおやつとして、ゆで卵の黄身、白身、低塩チーズ、ヨーグルト、ペット用の煮干し、ミールワームを極少量与えると良いが、専用ペレットを与えていれば必須ではないとされている[8][10]

中毒を起こす物質

ハムスターに食中毒を起こさせる主な化学物質としては、アリルプロピルジスルファイド(ネギ、タマネギ、ニラ、ニンニクの類に含まれる溶血を引き起こす物質)、テオブロミン及びカフェイン(チョコレート、紅茶、コーヒーなどに含まれる嘔吐・下痢・昏睡を引き起こす物質)、ソラニン(ジャガイモの芽や皮に含まれ、催奇性、嘔吐・下痢などを引き起こすステロイドアルカロイド)、ペルシン(アボカドなどに含まれる中毒物質。嘔吐・下痢・呼吸困難・肺水腫を引き起こす危険のある物質)、アルコール飲料などがある[11]

卵については、生卵の白身だけ与えるとビオチン欠乏症を発症するが、白身を加熱したり黄身と一緒に与えるとビオチン欠乏症にならないとされる[11]

ハムスターにとってゆで卵の黄身は毒性はない。ハムスターの蛋白源として適量エサとして与えてもかまわないとされている。(ただしゆで卵は腐りやすい餌であるという指摘がなされている)[10][8][12]

飼育される種類

ゴールデンハムスター(学名:Mesocricetus auratus)
ペットのハムスターとしては大型で知能が高く、人になれやすい。多少のことでは噛むことはない。ただし人間を敵であると認識すると積極的に攻撃してくるほど気が強いところがある。ゴールデン、パールホワイト、ダルメシアンなどの品種がある。
ロボロフスキーハムスター(学名:Phodopus roborovskii)
体長は約7cm~10cmでペットとして最小のハムスター。臆病でなつきにくく、もっぱら鑑賞用として飼われているハムスター。興味のあるものは噛んで確かめにくる習性がある。
ジャンガリアンハムスター(学名:Phodopus sungorus)
ドワーフハムスターとしては温厚で慣れやすい。丸っこい体型で野生種は背中の濃い筋が特徴だが、品種改良によってスーパーホワイトやサファイヤなど様々な品種が存在する。
キャンベルハムスター(学名:Phodopus campbelli)
生物学的にはジャンガリアンハムスターと同じと言われているが、ロシアの研究で遺伝子に差が発見され、習性も異なるため、区別されている。野生種同士の外見は殆ど同じで区別は難しい。性格は臆病で警戒心が強く、比較的噛み付いてくる傾向がある。観賞用に向いているが、忍耐強く接すれば手乗りにもなる。体毛は背と腹の色が分かれているタイプと全身一色のタイプがあり、品種は野生種の他、アルビノやチョコレートなど数多い。全身黒いものは「ブラックジャンガリアン」と呼ばれている。

ハムスターが原因となる人間の病気

ハムスターに噛まれたりする事で、人間がアナフィラキシーショック(急性アレルギー反応)を引きおこす事が知られている。 2004年9月に日本人の男性がハムスターに噛まれたことによりアナフィラキシーが発生、更に持病であった気管支喘息を誘発し死亡した例がある。

そのため、気管支喘息や皮膚炎などアレルギー性疾患を起こした事がある人は、そのことに留意し、病院でハムスターアレルギーであるかを検査してもらうなどの対策が必要とされる。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク