ノックアウト方式 (モータースポーツ)
ノックアウト方式(ノックアウトほうしき)とは、2006年からF1に採用された予選方式。2007年のSUPER GT の第7戦(もてぎ)でも試験的に導入され、2008年のフォーミュラ・ニッポンでは全レースで採用された。
特徴
予選を3つのラウンドに分けて、最終ラウンドでの最も早い者をポールポジションとする。第1・第2ラウンド(Q1・Q2)で遅かったものは次のラウンドへ進むことができない。
出走台数によって第1ラウンドと第2ラウンドで脱落する人数が異なってくる(第3ラウンドは台数に関わらず10人(台))
予選例
2006年ブラジルGPの予選結果である。
順位 | No | ドライバー | コンストラクター | マシン | 予選1回目 | 予選2回目 | 予選3回目 | タイム差 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 6 | フェリペ・マッサ | フェラーリ | 248F1 | 1'10.643 | 1'10.775 | 1:10.680 | - |
2 | 3 | キミ・ライコネン | マクラーレン | MP4-21 | 1'12.035 | 1'11.386 | 1'11.299 | +0.619 |
3 | 8 | ヤルノ・トゥルーリ | トヨタ | TF106B | 1'11.885 | 1'11.343 | 1'11.328 | +0.648 |
4 | 1 | フェルナンド・アロンソ | ルノー | R26 | 1'11.791 | 1'11.148 | 1'11.567 | +0.887 |
5 | 11 | ルーベンス・バリチェロ | ホンダ | RA106 | 1'12.017 | 1'11.578 | 1'11.619 | +0.939 |
6 | 2 | ジャンカルロ・フィジケラ | ルノー | R26 | 1'12.042 | 1'11.461 | 1'11.629 | +0.949 |
7 | 7 | ラルフ・シューマッハ | トヨタ | TF106B | 1'11.713 | 1'11.550 | 1'11.695 | +1.015 |
8 | 16 | ニック・ハイドフェルド | BMWザウバー | F1.06 | 1'12.307 | 1'11.648 | 1'11.882 | +1.202 |
9 | 17 | ロバート・クビサ | BMWザウバー | F1.06 | 1'12.040 | 1'11.589 | 1'12.131 | +1.451 |
10 | 5 | ミハエル・シューマッハ | フェラーリ | 248F1 | 1'11.565 | 1'10.313 | 計測タイムなし | - |
以下、予選第二ラウンド(Q2)脱落者 | ||||||||
11 | 9 | マーク・ウェバー | ウィリアムズ | FW28 | 1'11.973 | 1'11.650 | - | - |
12 | 4 | ペドロ・デ・ラ・ロサ | マクラーレン | MP4-21 | 1'11.825 | 1'11.658 | - | - |
13 | 10 | ニコ・ロズベルグ | ウィリアムズ | FW28 | 1'11.974 | 1'11.679 | - | - |
14 | 12 | ジェンソン・バトン | ホンダ | RA106 | 1'12.085 | 1'11.742 | - | - |
15 | 15 | ロバート・ドーンボス | レッドブル | RB2 | 1'12.530 | 1'12.591 | - | - |
16 | 20 | ヴィタントニオ・リウッツィ | トロ・ロッソ | STR1 | 1'12.855 | 1'12.861 | - | - |
以下、予選第一ラウンド(Q1)脱落者 | ||||||||
17 | 21 | スコット・スピード | トロ・ロッソ | STR1 | 1'12.856 | - | - | - |
18 | 19 | クリスチャン・アルバース | MF1 | M16 | 1'13.138 | - | - | - |
19 | 14 | デビッド・クルサード | レッドブル | RB2 | 1'13.249 | - | - | - |
20 | 22 | 佐藤琢磨 | スーパーアグリ | SA06B | 1'13.269 | - | - | - |
21 | 23 | 山本左近 | スーパーアグリ | SA06B | 1'13.357 | - | - | - |
22 | 18 | ティアゴ・モンテイロ | MF1 | M16 | 計測タイムなし | - | - | - |
17位~22位は第一ラウンドでの脱落者。(グリッドは第一ラウンドでの予選タイム順)
11位~16位は第二ラウンドでの脱落者。(グリッドは第二ラウンドでの予選タイム順)
PPから10位は第三ラウンドでの順位がグリッドになる。
予選の流れ
選手権参加車両のうち第3(最終)ラウンド(Q3)に進出出来るのは10台と決まっており、進出できなかった残りの車両は選手権参加台数が偶数の場合は第1ラウンド(Q1)・第2ラウンド(Q2)で半数ずつが脱落し、奇数の場合はQ2での脱落数はQ1での脱落数より1台多くなる。なお、通常は1チーム2台のエントリーなので参加台数が奇数になることはないのだが、2日目のフリー走行3回目(P3)でマシンあるいはドライバー(若しくは双方)がダメージを追い出走できない場合もあるため(通常はTカーおよびリザーブドライバーを用意しているが予選前までに使い果たしている場合もある)、参加台数が奇数になる可能性はある。
- 選手権参加台数20台の場合:Q1でグリッド確定(5台)、Q2でグリッド確定(5台)、Q3でグリッド確定(10台)
- 選手権参加台数21台の場合:Q1でグリッド確定(5台)、Q2でグリッド確定(6台)、Q3でグリッド確定(10台)
- 選手権参加台数22台の場合:Q1でグリッド確定(6台)、Q2でグリッド確定(6台)、Q3でグリッド確定(10台)
- 選手権参加台数23台の場合:Q1でグリッド確定(6台)、Q2でグリッド確定(7台)、Q3でグリッド確定(10台)
- 選手権参加台数24台の場合:Q1でグリッド確定(7台)、Q2でグリッド確定(7台)、Q3でグリッド確定(10台)
またQ1・Q2でノックアウトされないタイムをたたき出してもそのラウンドでコース上に車を止めてしまう(ピットに戻れない)場合、次のラウンドで走行できない。この際タイムは有効なので次のラウンドに進んではいるが次のラウンドは「記録なし」となる。
2006年
選手権参加台数は22台
- 第1ラウンド
- セッション最初の15分間。全車22台が任意の燃料を積んだ(極めて軽い)状態で走り、ラップタイムを記録。セッション終了と同時にラップタイム計測も終了する。下位の6台は次のセッションに進めず、タイム順に17番手から22番手までのグリッドを埋める。
- 第2ラウンド
- 5分の休憩をはさみ、その次の15分間のセッションを残りの全車が任意の燃料を積んだ(極めて軽い)状態で走行する。セッション終了と同時にラップタイム計測も終了する。ここでも下位の6台は次のセッションに進めず、タイム順に11番手から16番手までのグリッドを埋める。
ここまでで脱落した12名については、この時点で、自らの車をピットまで戻し、セッティングに変更を加えることが許される。
- 第3ラウンド
- 5分の休憩の間に、残った10台は決勝スタート時の燃料を搭載し、その量をFIAに申告したうえで20分間の最終セッションに臨む。このセッションは第1〜第2ラウンドと異なり、セッション終了時点で走行している周回のラップタイムまでが有効となる。決勝のレース戦略によって各車の燃料搭載量は異なるので、全車が燃料を抜いて実質的に同じ重量で走る最初の2回のセッションと異なり、各車両の重量には差が生じ、これが順位に少なからぬ影響を及ぼすこととなる。速く走るには車が軽いほどよく、下記の通りこのセッションで使用した量と同等の燃料が予選終了後に補充されるため、セッションの前半にできるだけ走行して搭載燃料を減らし(バーンアウト)、セッションの終盤に軽くなった状態でタイムアタックする戦略が見られた。このセッションでのタイム順に従い上位の10グリッドが決定となり、決勝グリッドがすべて確定する。
- 予選終了後
- 22台の各車両は事前に申告した、Q3走行で減った量を給油された上で、翌日までパルクフェルメ(車両保管区画)に封印される。給油される量は実際に消費した量ではなくグランプリ毎に1周あたりの基準消費量が事前に決められており、その数字にQ3で走行した周回数をかけた量が給油される。ただし、ピットロード出口直後のセーフティーカーライン(SC2)からピットロード入口手前のセーフティーカーライン(SC1)の間の区間タイムが決勝グリッド確定タイムの120%より遅い周は周回数としてカウントされず、燃料の補充もない。
- 特記事項
- 第11戦フランスGPを前に見直しが行われ、第1、第2、第3ラウンドの名称がそれぞれQ1、Q2、Q3に変更され、Q3のセッション時間が15分に短縮された。またQ1、Q2のタイム計測がQ3同様セッション終了時点で走行中の周回まで有効となり、あわせてQ1〜Q2の休憩が7分、Q2〜Q3の休憩が8分に延長された。
2007年
選手権参加台数は22台
- 第1ラウンド(Q1)
- 2006年フランスGP以降と同様。
- 第2ラウンド(Q2)
- 2006年フランスGP以降と同様。
- 第3ラウンド(Q3)
- 2006年に引き続きセッション中に周回した分の燃料が補充されるが、上述120%ルールが廃止され、いかなるタイムの周回でも1周(SC2からSC1を走行)すれば燃料補充の対象となる。それ以外は2006年フランスGP以降と同様。
- 予選終了後
- 燃料補充ルールの変更以外は2006年フランスGP以降と同様。
2008年
選手権参加台数は22台
- 第1ラウンド(Q1)
- セッション最初の20分間となり2007年より5分長くなる。それ以外は2007年と同様。
- 第2ラウンド(Q2)
- 2007年と同様。
- ここまでで脱落した12名については、決勝用に給油はできるがパルクフェルメに保管された扱いになるのでセッティング変更はできない。
- 第3(最終)ラウンド(Q3)
- 残った10台は決勝で予定している量まで燃料を給油し、その燃料搭載量をFIAに申告し、8分の休憩をはさんで後に行われる10分間(2007年より5分短縮)の最終セッションに挑むことができる。このセッションに参加する10台は決勝スタート時の搭載量まで燃料が給油されているため重い。しかし2007年と違いQ3での燃料使用分の返却がなくなり、また時間も短くなったためバーンアウトは行われなくなった。[1]
- 予選終了後
- 22台の各車両は翌日までパルクフェルメ(車両保管区画)に封印される。部品の不具合などで禁止項目に該当しない場合は修理することができるが、禁止項目に該当する場合はグリッド降格ペナルティなどを覚悟の上で修理することになる(エンジンの場合10グリッド、ギアボックスの場合5グリッド、それぞれ降格、セッティング変更の場合ピットレーンスタート、など)。
- 特記事項
- 第4戦・スペインGPをもってスーパーアグリが撤退した。それに伴い、第5戦・トルコGP以降は参戦台数が20台となった。従って、前述のとおり、Q1でのグリッド確定は6台→5台、Q2でのグリッド確定も6台→5台に変更された(Q3はそのまま)。
2009年
選手権参加台数は20台
- 第1ラウンド(Q1)
- 前述の特記事項の通り、参加台数が20台となった為、選手権参加台数下位の5台は次のセッションに進めず、タイム順に16番手から20番手までのグリッドを埋める。
- 第2ラウンド(Q2)
- ここでも下位の5台は次のセッションに進めず、タイム順に11番手から15番手までのグリッドを埋める。他は2008年と同様。
- 第3(最終)ラウンド(Q3)
- 2008年と同様。
- 予選終了後
- 主に各ドライバーの決勝前に搭載する燃料量を公にするため、FIAがすべてのマシンの重量を公表することとなった。又、11位以下のドライバーは燃料搭載量を申告によって変更する事が許された。それ以外は2008年と同様。
2010年
選手権参加台数は24台。但し、レギュレーション上は26台であったがUS F1の不参加により事実上24台に置き換えたルールとなった[2]。
- 第1ラウンド(Q1)
- 参加台数が24台となった為、選手権参加台数下位の7台は次のセッションに進めず、タイム順に18番手から24番手までのグリッドを埋める。
- 第2ラウンド(Q2)
- ここでも下位の7台は次のセッションに進めず、タイム順に11番手から17番手までのグリッドを埋める。他は2009年と同様。
- 第3(最終)ラウンド(Q3)
- レース中の給油が禁止となった為、Q3では燃料搭載量を非常に軽量にして走行する事が可能であった[2]。
- 予選終了後
- レース中の給油禁止となった為、レース走行分の燃料を再充填された。
2011年
選手権参加台数は24台
- 第1ラウンド(Q1)
- 基幹となるルールは2010年と同様であるが、107%ルールが復活した為にQ1のトップタイムに107%を掛けたタイムを記録しなければ決勝レースの出場権利に対する審議に掛けられることとなった。107%ルールに抵触した後の審議で出走が認められなかった場合、予選落ちとなる。
- 詳細は「107%ルール」を参照
- 第2ラウンド(Q2)
- 2010年と同様。
- 第3(最終)ラウンド(Q3)
- 2010年と同様。
- 予選終了後
- 2010年と同様。
2012年
選手権参加台数は24台
- 第1ラウンド(Q1)
- 2011年と同様。
- 第2ラウンド(Q2)
- 2011年と同様。
- 第3(最終)ラウンド(Q3)
- 2011年と同様。
- 予選終了後
- 2011年と同様。
2013年
選手権参加台数は22台
- 第1ラウンド(Q1)
- HRTの撤退により、下位の6台がノックアウトとなる。
- 第2ラウンド(Q2)
- こちらも下位6台がノックアウト。
- 第3(最終)ラウンド(Q3)
- 2012年と同様。
- 予選終了後
- 2012年と同様。
- 特記事項
- 予選中、コース上にストップしたマシンに対する不可抗力条項を廃止。マシンには最低でもピットに戻るまでに必要な1周分の燃料と、サンプル提出用の1Lの燃料を搭載しなければならない。2012年のスペインGP(ルイス・ハミルトン)とアブダビGP(セバスチャン・ベッテル)の予選失格事例を受けての措置。
2014年
選手権参加台数は22台
- 第1ラウンド(Q1)
- セッション時間が20分から18分へ短縮。
- 第2ラウンド(Q2)
- 2012年と同様。
- 第3(最終)ラウンド(Q3)
- セッション時間が10分から12分へ増加。予選用のオプションタイヤがQ3進出者に用意される。このタイヤは予選後に返却するが、Q1・Q2敗退者は決勝に持ち越すことができる。
- 予選終了後
- 予選Q3進出者はQ2で自己ベストを記録したタイヤで決勝をスタートする(従来はQ3で自己ベストを記録したタイヤ)。Q1・Q2敗退者は従来と変わらず、タイヤを自由に選んで決勝をスタートできる。
2015年
選手権参加台数は20台
- 第1ラウンド(Q1)
- ケータハムの撤退により下位の5台がノックアウトとなる。
- 第2ラウンド(Q2)
- こちらも下位5台がノックアウト。
- 第3(最終)ラウンド(Q3)
- 2014年と同様。
- 予選終了後
- 2014年と同様。
新予選ルール
2016年より予選ルールが大きく変更され、ノックアウト方式をベースにした新たな予選方式が導入された。[3]
2016年
選手権参加台数は22台
- 第1ラウンド(Q1)
- セッション時間は16分。開始から7分後の時点でのタイムシート最下位がノックアウト、以後1分30秒ごとにその時点での最下位がノックアウトとなる。Q1では計7名がノックアウト、15名がQ2進出。
- 第2ラウンド(Q2)
- セッション時間は15分。開始から6分後の時点でのタイムシート最下位がノックアウト、以後1分30秒ごとにその時点での最下位がノックアウトとなる。Q1では計7名がノックアウト、8名がQ3進出。
- 第3(最終)ラウンド(Q3)
- セッション時間は14分。開始から5分後の時点でのタイムシート最下位がノックアウト、以後1分30秒ごとにその時点での最下位がノックアウトとなる。最後の1分30秒は残った2名でポールポジションを争う。
- 予選終了後
- 2014年と同様。
注釈
- ^ バーンアウトは実質的な計測ラップではない(バーンアウト時もタイム自体は計測されている)ため無駄に燃料を消費し環境に悪影響を与える、という理由で環境団体などからクレームがおきていた。
- ^ a b “2010年F1レギュレーション:予選手順などが変更”. F1 Gate.com. (2009年8月20日) 2011年5月12日閲覧。
- ^ “新予選、Q3のラスト90秒は1対1のタイムバトル ” (2016年2月25日). 2016年2月25日閲覧。