デッドマン装置

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東京地下鉄10000系のマスコンハンドル。赤い線で囲まれた部分がデッドマン装置の握り部
高松琴平電気鉄道20形の運転台。マスターコントローラの下の足踏みスイッチがデッドマン装置

デッドマン装置(デッドマンそうち)またはデッドマンブレーキ: Deadman brake)とは、車両安全装置の一つで、人間の操作者が死亡意識不明などの事態に陥ったときや、不用意に運転位置を離れた際に自動的に動作(あるいは停止)して事故を防止する装置である。

機構としては、自動復帰型(力をかけない開放状態にすると自動的にニュートラルになる)のボタンレバーペダルなどを持つ。運用中、それから手や足が離れ開放状態に戻ると、装置本体が動作する。

鉄道車両

列車運転中に運転士の意識喪失などの異常事態が発生した場合に、自動的に列車を停止させる運転保安装置がある[1]大手私鉄などで一般的に使用されている。

その言葉(Dead Man)が意味するように、「運転士が死んで車両が暴走するのを防ぐ」という発想から来た言葉とも言われる。

デッドマン装置が搭載されている車両には、運転中に運転士が常に保持していなければならない装置部品が取り付けられている。

マスター・コントローラーブレーキハンドルが分かれている2ハンドルタイプの車両では、手を離すとマスコンハンドルの握り部分が飛び出すもの・マスコン可動部分が跳ね上がるものなどが、マスコンとブレーキが一体化している1ハンドルタイプの車両では、ハンドルの握り部分に保持レバーがあるものが、それぞれ一般的である。その他、足元にペダルが設置された車両もある。

一般に、運転中にこれらの装置部品から手足を離すと即座に非常ブレーキがかかる仕組みになっているが、力行中のみ動作するもの、ハンドルがブレーキ位置にある場合は動作しないもの、ブレーキ位置にあってもブレーキ段数が一定以下の場合にも動作するもの、力行中のみ動作するが単に力行がオフになるだけのもの、さらに、ワンマン運転の路線・車両では動作時に無線による非常信号が発信されるものなど、様々なバリエーションがある。

なお、これらの装置を握り締めながら気絶するなど、運転士に異常が起こっても装置が動作しないケースも皆無とはいえない。

一方JR各社や第三セクター鉄道の場合は、一定時間運転操作をしないと非常ブレーキがかかる緊急列車停止装置(EB装置)が一般的である。この違いは、主に電車で運転されてきた私鉄と、もともと機関車の一人乗務化の際の安全対策として導入されたものが一般化したJR(旧国鉄)との違いによるものが大きく、JRの電車でも、マスコンハンドルのばね復帰によるノッチオフ機能は従来から装備されている。また、近年では私鉄でもEB装置を導入している事業者がいる。西日本旅客鉄道(JR西日本)では2016年導入予定の323系のEB-N形はデッドマン装置に近いものとなっている。

なお、2006年鉄道に関する技術上の基準を定める省令の改正により、同令第79条第3項に基づき車両にデッドマン装置または緊急列車停止装置(EB装置)を設置することが義務付けられた。これは従来、ワンマン運転を行う列車のみに設置が義務付けられていたものを、ツーマン運転を行う列車にも設置を義務付けたものである。ただし、地下式または高架式構造の区間をATO装置、ATC装置またはATS装置(常に制限速度を超過するおそれのない装置に限る)によって運転する車両は設置対象から除外されている[2]

アメリカの鉄道会社では、一定時間運転操作をしないと非常ブレーキが作動しリセットボタンを押すまでブレーキが解除できなくなる「Alerter」が導入されている。装置はモジュール化されているため、義務化以前の車両にも僅かな改造で導入できる。しかしCSX8888号暴走事故では車両の整備と操作ミスが重なり、非常ブレーキが動作せず車両は無人走行を始めてしまった。

その他の車両

  • リーチ式(立席型)フォークリフトに装置されたデッドマンブレーキは、放すと効くブレーキペダルによって、運転者が不用意に運転位置を離れた際の逸走を防ぐ。
  • 消防車(はしご車)にも導入されている。

脚注

  1. ^ Train Stopped Safely by ‘Dead-Man Feature’ By ANDY NEWMAN Published: April 28, 2010 The New York Times
  2. ^ 日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」2011年12月号「東京メトロにおける技術基準改正対応」

関連項目