ツーリングカー

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ツーリングカー (Touring Car) は、20世紀初頭の乗用車のボディスタイル用語として使用された。この時期に、このボディスタイルの車が一般に広く普及し、ツーリングカーは乗用車の標準であった。のち、普通に実用されている乗用車または乗用自動車を指すようになる。"スポーツカー"に対する用語である。

20世紀初頭の乗用車の主流ボディスタイル

1903年、2座席ウィントン社製ツーリングカー『バーモント号』に乗って史上初のアメリカ横断に挑むホレィシォ・ネルソン・ジャクソン
1920 Studebaker Big Six ツーリング・カー(touring car) 屋根を閉じた状態。折りたたんだ屋根は「ファン(fan)」と呼ばれていた。

ツーリングカー (touring car) とは20世紀初頭に広く使用された乗用車のボディスタイル。ツアラー(tourer)ともよばれ、ラナバウトロードスターに比べ大型のもの。屋根のないオープンカースタイルであり、通常は、(のちにコンバーチブルトップと呼ばれるようになる)折りたたみ式の幌が付けられていた。当時ツーリングカーとよばれた乗用車は、ほとんどが後部にトノーと呼ばれるシート部を装備し、これにより4人以上の乗員を確保していた。初期のツーリングカーではエンジンは、車両前方だけでなく車両中央座席下部に配置されたものもあった。このツーリングカーは、その後、現代的なセダン・サルーンのボディ・スタイルにつながる。

ツーリングカーという乗用車ボディスタイルは、米国では、1910年代半ばまでには4ドアであったり、折りたたみ式幌が付属したりと、様々なバリエーションが作られるようになり、当時提供されていたボディスタイルの中で最も広く一般に普及していたタイプであった。

1908年から1927年にかけてフォード社が生産したフォードT型ではその多くは5人乗りツーリングカーであった。これは当初4ドア車だったが、のちに運転席外側に予備ホイールが常設されるようになり運転手が助手席から乗り込む3ドアのツーリングカーとなっている。18年以上もの間生産された乗用車、トラック、シャーシモデル合わせて1500万台ほど製造されたT型のうち、6,519,643台(約652万台)がこのツーリングカーであった。およそ44%がツーリングカーということになる。次いで多く生産されたタイプはトラックである。

特定モデルにはサイド・カーテンも付属していた。これは乗員を悪天候時に保護するためのものである。これが装備されていない車の場合、ドライバーと同乗者は自然に立ち向かわなければならなかった。折りたたまれた屋根(トップ)は、後席の後ろ側に「大きくかさばったでっぱり」となって畳まれ、これは「ファン(fan)」とよばれていた。屋根(幌)とその木製の支柱を保護するために「ファンカバー(fan covers)」が使用された。

ツーリングカーは米国では1920年代初頭には衰退しはじめる。それは乗車部分が覆われたクローズド・タイプの乗用車がより手に入りやすい値段となってきたからだった。こうしてオープンカーが主流だった時代が米国では終わることになった。

JISによる規定

日本工業規格(JIS)において、乗用車の区別の一形態として、スポーツカーとツーリングカーを規定している。

スポーツカー (sports car)
運転を楽しむために作られた軽快な乗用車または乗用自動車。
ツーリングカー (touring car)
普通に実用されている乗用車または乗用自動車(“スポーツカー”に対する用語) 。

自動車関連の規格として、社団法人自動車技術会が原案を作成しJISが取りまとめたものの一部であり、上記規定は乗用車のカテゴリー分類における切り口の一つである。 JISの規定としては記載されていないが、「車両の仕様の違い」および「運転の目的の違い」からこの区別がなされると考えられる。一般的な乗用車はほとんどがスポーツカーもしくはツーリングカーに分類され、その多くは実用車でありそれはツーリングカーに分類されることとなる。

モータースポーツにおける規定

ツーリングカー(一般に市販されている車両)によるレースをツーリングカーレースと呼び、そのレースに使用される車を指す。この意味では、上記JIS定義と異なり市販のスポーツカーの多くも市販車であればツーリングカーとなる。この点においてツーリングカーと対比する対象はフォーミュラなどレース専用自動車が想定されているが、モータースポーツにおける定義としては、正確には、個々のレースもしくは主催団体の規定(レギュレーション)によって定義されるものである。フォーミュラに対比し、使用される車が一般的に箱の形であることから日本では箱車(はこしゃ)と呼ばれ、雑誌等では専らハコ車と表記される。その多くは市販車に対しレースのための仕様変更(改造)がなされるが、それぞれのレースの規定において車両への変更は限定され、市販車の域を一定以上はみ出さないようにされている。(逆にもはや一見した印象以外は全く市販車と異なるような車となっているレースもある)

レース専用に製作されたフォーミュラカースポーツプロトタイプと異なり、ラリートライアルジムカーナなどは基本的にツーリングカーをベースとしたレースとして設定されている。ただし、実際にはカテゴリごとに規定も大きく異なっており、実態としてはかなりまちまちになっている。

ツーリングカーレースの種類

  • ツーリングカーの中でも、改造範囲の大小、最低生産台数義務等で様々なカテゴリーが存在する。現在国際的に主流なのは世界ツーリングカー選手権で採用されているスーパー2000規定(排気量2,000ccの4座席車両)に準拠したカテゴリーである。
  • 日本では、SUPER GTや、車両の改造範囲を大きく制限したスーパー耐久などが人気を博している。1994年から1998年までは、2,000ccの4ドアセダンで争われる全日本ツーリングカー選手権(JTCC)も行われていた。
  • SUPER GTについては、特にGT500クラスにおいて相次ぐ改造規制の緩和が行われた結果、GT500クラスに参戦するワークス車両は、ほとんど市販車と別物の車となってしまっている。そのため「もはやGT500クラスの車はツーリングカーではなくレーシングカーと呼ぶべきである」「GT300クラスこそが本来のツーリングカーレースである」と評する意見も一部にある。現在では、GT300においても大幅に改造された車両が参加し始めている。以上のようなことから、「GTカー」という別カテゴリが形成されつつある。

主な選手権

現行の選手権

過去の選手権

関連項目