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チョウチョウウオ科

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チョウチョウウオ科
ゴールデンバタフライフィッシュ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : スズキ亜目 Percoidei
: チョウチョウウオ科 Chaetodontidae
下位分類群
本文参照

チョウチョウウオ科 (Chaetodontidae) はスズキ目スズキ亜目に属する。世界中の暖かい海のサンゴ礁などに100種以上が生息し、日本近海でも約50種が見られる。木の葉のように丸くて薄い体型をしており、鮮やかな色彩をもつものが多い。英語ではButterflyfish(バタフライ・フィッシュ)と呼ばれる。また、チョウチョウウオの名の由来は「お花畑をひらひらと飛ぶちょうちょのようにさんご礁のなかをひらひらと泳ぐ様をちょうちょにたとえられた。」この種は種類も多く、今日には多くの種が観賞魚として流通している。そのため、人気の高い観賞魚の1種である。

科の学名 Chaetodontidae は、ギリシア語のchaiteodous に由来し、それぞれ「髪の毛」、「歯」を意味する。チョウチョウウオの口には毛のような歯が生えており、これを表したものであろう。キンチャクダイ科 Pomacanthidae に近縁だが、チョウチョウウオ科は鰓蓋に棘がないことで区別される。

形態

チョウチョウウオの仲間は小型で、最大のニセフウライチョウチョウウオ Chaetodon lineolatus でも30cm 程度にしかならない。ほとんどの個体がサンゴ礁や岩礁での生活に適応し、サンゴの間を移動できるよう体は左右に扁平(側扁体型)になった。口が尖がっているのでおちょぼ口である。横から見た形は円盤状で、背鰭と臀鰭(しりびれ)が後方まで延長し、尾鰭と接近する。様々な模様のものが多く中には似たような模様のものまでいる。鮮やかに彩られた体の模様は、同種個体間でのコミュニケーションに役立っているという。また、多くの種では体の後方に目玉模様(アイ・スポット)を備え、捕食者を混乱させる。本当の眼は黒い帯状模様に隠れていることが多い。また、チョウチョウウオ科は食性により大きく3つに分けられる。

  1. 雑食性(小型の甲殻類、サンゴのポリプ、コケなどの植物質のものなど様々なものを口にする)
    トゲチョウ、フウライチョウ、ニセフウライチョウ、チョウチョウウオ、ツキチョウ、アケボノチョウ、ミゾレチョウ、セグロチョウ、チョウハン、スダレチョウ、フエヤッコダイ、ブルーストライプバタフライフィッシュ、ゴールデンバタフライフィッシュ、インディアンバタフライフィッシュ、ハタタテダイ、オニハタタテ、ミナミハタタテ、ムレハタタテなど・・・口が尖がっている。
  2. ポリプ食性(主にサンゴのポリプを主食とする)
    ミスジチョウ、ウミヅキチョウ、スミツキトノサマダイ、トノサマダイ、ヤスジチョウ、オウギチョウ、コクテンカタギ、ミカドチョウ、ハナグロチョウ、ゴールデンストライプバタフライフィッシュ、レインフォーズバタフライフィッシュなど・・・口はそれほど尖がってはいない。
  3. プランクトン食性(プランクトンを主食とする)
    カスミチョウ、トンプソンチョウ、ブラックピラミッドバタフライフィッシュなど・・・雑食性ほどではないが口が若干尖がっている。

生態

浅瀬のサンゴ礁で一生を過ごすが、中にはウラシマチョウチョウウオ Prognathodes guyotensis など300m 以深の深海でしか見つかっていない種もいる。餌はサンゴのポリプや動物プランクトン海綿、その他の無脊椎動物などである。他の魚の体表についている寄生虫を食べるクリーニング行動を行う種も知られている(バーバーフィッシュ Johnrandallia nigrirostris)。昼行性で、夜はサンゴや岩の陰に隠れて眠る。また、夜は昼とは別の模様になるため、鮮やかではなく、黒ずんでいる。

チョウチョウウオの仔魚はトリクティス幼生と呼ばれ、頭部の骨が大きく張り出してをかぶったような独特の体型をしている。成長すると変態し、頭蓋骨は普通の大きさになる。

分類

チョウチョウウオ科 Chaetodontidae は11 属約120 種を含む。中でもチョウチョウウオ属 Chaetodon は約75 種を含み、本科最大の属である。以下は属のリストと代表種。(主な代表種は下の項代表種を参照してほしい。)

ムレハタタテダイの群
ハシナガチョウチョウウオ
フエヤッコダイ(上)
チョウチョウウオ属 Chaetodon
チョウチョウウオ Oriental butterflyfish Chaetodon auripes (Jordan & Snyder, 1901)
トゲチョウチョウウオ
フウライチョウチョウウオ
アケボノチョウチョウウオ
ミゾレチョウチョウウオ
ヤリカタギ
ハタタテダイ属 Heniochus
ハタタテダイ Pennant coralfish Heniochus acuminatus (Linnaeus, 1758)
ムレハタタテダイ
ミナミハタタテダイ
オニハタタテダイ
ハシナガチョウチョウウオ属 Chelmon
ハシナガチョウチョウウオ Copperband butterflyfish Chelmon rostratus (Linnaeus, 1758)
タキゲンロクダイ属 Coradion
タキゲンロクダイ Highfin coralfish Coradion altivelis (McCulloch, 1916)
キスジゲンロクダイ
フエヤッコダイ属 Forcipiger
フエヤッコダイ Longnose butterflyfish Forcipiger flavissimus (Jordan & McGregor, 1898)
オオフエヤッコダイ
カスミチョウチョウウオ属 Hemitaurichthys
カスミチョウチョウウオ Pyramid butterflyfish Hemitaurichthys polylepis (Bleeker, 1857)
テンツキチョウチョウウオ属 Parachaetodon
テンツキチョウチョウウオ Sixspine butterflyfish Parachaetodon ocellatus (Cuvier, 1831)
ウラシマチョウチョウウオ属 Prognathodes
ウラシマチョウチョウウオ Guyot butterflyfish Prognathodes guyotensis (Yamamoto&Tameka, 1982)
Amphichaetodon
ロード・ハウ・アイランド・バタフライフィッシュ Lord Howe Island butterflyfish Amphichaetodon howensis (Waite, 1903)
Johnrandallia
バーバーフィッシュ Blacknosed butterflyfish Johnrandallia nigrirostris (Gill, 1862)
Chelmonopus
Chelmonopus truncatus (Kner, 1858)

代表種

以下の種はチョウチョウウオ科でも比較的有名な代表種を挙げる。世界には何百もの種類がいると言われる。また、模様が似ていたりと区別が難しい種もいる。今後、今まで一種として考えられてきた種に亜種や新種が発見される場合もある。下の各種は日本国内で観察された記録がある種で、沖縄などでは普通種でもある。

チョウチョウウオ
学名:Chaetodon auripes
「並チョウ」と呼ばれ、自家採集家に親しまれている。熱帯には少なく、奄美大島以北に多い。全長20cm。
アミチョウチョウウオ
学名:Chaetodon rafflesi
黄色地に網目模様が入ったチョウチョウウオ。全長15cm。
チョウハン
学名:Chaetodon lunula
タヌキ顔のような配色をしている。丈夫で餌付きやすい。全長25cm。
アミメチョウチョウウオ
学名:Chaetodon xanthurus
シルバーグレーの地色にやや大きめの黒い網目模様、後端部は鮮やかなオレンジ色をしている。フィリピン沿岸でよく見られるが、日本ではあまり見られない。全長15cm。
アケボノチョウチョウウオ
学名:Chaetodon melannotus
白地に黄色い縁取り、体側に黒いラインが斜めに入る。生息分布域が広く、日本のサンゴ礁でも普通に見られる。全長18cm。
カスミチョウチョウウオ
学名:Hemiaurichthys polylepis
黄色に白い模様が入ったチョウチョウウオ。自然下では、サンゴ礁外縁などに多数で群れている。プランクトン食性。全長13cm。
セグロチョウチョウウオ
学名: Chaetodon ephippium
背部に大きな黒斑をもったチョウチョウウオ。性質はおとなしく、やや臆病なところがある。全長20cm。
トゲチョウチョウウオ
学名:Chaetodon auriga
スダレチョチョウウオ
学名:Chaetodon ulietensis
フウライチョウチョウウオ
学名:Chaetodon vagabundus
ゴマチョウチョウウオ
学名:Chaetodon citrinellus
レモン色に細かい暗色の斑点が入ったチョウチョウウオ。全長13cm。
イッテンチョウチョウウオ
学名:Chaetodon unimaculatus
ミスジチョウチョウウオ
学名:Chaetodon trifasciatus

人とのかかわり

多くの種は観賞魚として利用されており、食用としてはあまり利用されない。ほとんどの場合、観賞魚として利用されるが、海水魚のなかでも餌付けが難しい種類が多い。食性に左右されたり、大きさなど、人口配合飼料だけでは飼育できない種もいる。以下のものは食性で分けてある代表的な種である。だいたい、食性で飼育の難易度が解かる。

雑食性グループ(小型の甲殻類、サンゴのポリプ、コケなどの植物質のものなど様々なものを口にする)
トゲチョウ、フウライチョウ、ニセフウライチョウ、チョウチョウウオ、ツキチョウ、アケボノチョウ、ミゾレチョウ、セグロチョウ、チョウハン、スダレチョウ、フエヤッコダイ、ブルーストライプバタフライフィッシュ、ゴールデンバタフライフィッシュ、インディアンバタフライフィッシュ、ハタタテダイ、オニハタタテ、ミナミハタタテ、ムレハタタテなど・・・雑食性の種は比較的環境に馴れると人口餌も口にする。そのため、このグループの種は飼育しやすい初級者向けに分類。また、入門種のアケボノチョウとミゾレチョウは特に餌付けがすぐできるので飼育しやすい。しかし、ハシナガチョウのようになかなか餌付かない種もいる。

ポリプ食性グループ(主にサンゴのポリプを主食とする)
ミスジチョウ、ウミヅキチョウ、スミツキトノサマダイ、トノサマダイ、ヤスジチョウ、オウギチョウ、コクテンカタギ、ミカドチョウ、ハナグロチョウ、ゴールデンストライプバタフライフィッシュ、レインフォーズバタフライフィッシュなど・・・この種はサンゴを与えないと難しい場合が多い。また、色彩も鮮やかな種もこのグループには多い。しかし、サンゴは高価なので経済的に悪い上、良くない。しかし、種によっては殻付きアサリを与えると餌付くので、徐々に人口餌に馴らせることもできる。このグループの種はどの種も難しい上級者向けに分類に入る。しかし、スミツキトノサマダイに関しては個体により人工餌を食べる場合もある。

プランクトン食性(プランクトンを主食とする)
カスミチョウ、トンプソンチョウ、ブラックピラミッドバタフライフィッシュなど・・・プランクトン食で難しそうだが、細かい粒状の人口配合飼料を水流に流して与えると食べる。この種は上のポリプ食に比べたら、飼育しやすい方で中級者向けに分類される。しかし、種としてはこのグループは小さく種類も少ない。また、入荷も少ないので、比較的価格も高めである。

なお、以上が全てが上に書かれたことに、当てはまるわけではなく、個体や種により雑食性なのにポリプ専食だったり、生息環境が特殊で深いところや汽水のようなところだったり、もともと食べているものが特殊だったりと、様々で例外の種もいるのでここで分けるのは難しい。

関連項目