チェアリフト

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イタリア南チロルの自動循環式6人用チェアリフト
アメリカ合衆国ユタ州パークシティの固定循環式3人用チェアリフト(トリプルリフト)

チェアリフト: chairlift)は、旅客用の高架索道で、両端のターミナルの間に張られて、連続して循環する環状の鋼製のケーブル(索)と、中間の塔とを有し、一連のいすを運搬するものである。主として山岳における交通手段であり、特にスキー場で用いられる(この場合にはスキーリフトと呼ばれる)。また、アミューズメント・パーク、種々の観光用施設でも見られ、都市交通としても次第に用いられるようになっている。

また、利用客がロープに取り付けたレバーに捕まることで移動するリフトも存在する(後述)

概要

旅客用ロープウェイは最も速いもので速度は秒速12m(時速 43.2km)に達する。これに対して、スキー場において長年にわたり主力の機器であった2人用チェアリフトは、1時間あたり約1,200人を、最高秒速2.3m(時速8.28km)で運ぶことができる。また、自動循環式4人用チェアリフトは、1 時間あたり約2,400人を、最高で秒速5m(時速18km)で運搬可能である。

用語

イタリア・アッレゲの固定循環式4人用リフト(クワッドリフト)
  • 固定循環式リフト:搬器(いす)がそれぞれ索の特定の点に固定されているもの。高速性では劣るが、低コストでメンテナンスが楽である。
  • 自動循環式リフト:搬器(いす)を索に固定する部分(握索装置と呼ぶ)が通常運転中に開閉可能になっており、乗降時に索から離脱して低速運行することができるもの。固定循環式に比べて2倍程度の速度で運行可能でありながら、乗降部分ではより低速で運転することができる。スキー場では、自動循環式リフトは高速リフトと呼ばれることが多い。握索装置の劣化や整備不良によるゴンドラリフト(チェアリフトと同じ構造を持つ)の事故が発生し(索の上を滑走するか、最悪落下する)、一時問題になったことがある。

歴史

人間用の索道は、アジアでは1600年代以前から山岳地帯で谷を越えるための手段としてよく知られていた。これは、編んだ線を、人が手で掴んで人力で横断するものであった。貨物を運搬するためのハーネスやかごにも革新的な改良が加えられた。

記録上で最初の機械式の索道は、ヴェネツィアのファウスト・ヴランチッチ(Faust Vrančić)が1616年に設計した複線式の乗客用のものである。業界では、一般にオランダ人ウィーブ・アダム(Wybe Adam)が1644年に初めての実用的なシステムを建設したと考えられている。この技術はヨーロッパのアルプス地方で発展したが、鋼索と電気駆動装置の出現によって急速に進歩し、広まった。第一次世界大戦は、イタリアオーストリアの間で軍事用索道が大幅に利用されるきっかけとなった。

分かっているうちで最初のスキーリフトは、アメリカ合衆国アイダホ州サンバレーのスキー場に1936年に設けられたものである[1]。このスキーリフトは、1939年以来サンバレー・リゾートの主要なスキーゲレンデとなったプロクター・マウンテン(より有名なボールド・マウンテンの3km東にある)に設置された。

このチェアリフトは、ネブラスカ州オマハにあるユニオン・パシフィック鉄道技術部のジェームズ・カラン(James Curran)によって1936年の夏に開発されたものである。カランはユニオン・パシフィックに務める前は、バナナを運搬船に積み込む輸送システムを開発する会社に勤務しており、バナナ用の鈎をいすに置き換えて、当時スキーヤーの運送用として一般的であったトボガン(toboggan)よりも収容人員が多く、Jバーリフト(滑走式リフト)よりも快適な機器を創り出した。カランの基本的な設計は、今日のチェアリフトでも未だに使用されている。最初のスキーリフトの特許は、1939年3月に、カラン、ゴードン・H・バナーマン(Gordon H. Bannerman)、グレン・H・トラウト(Glen H. Trout)に与えられた(U.S. Patent 2,152,235[2])。このプロジェクトを財政的に援助したのは、サンバレーの創設者であり、元ニューヨーク州知事W・アヴェレル・ハリマン(W. Averell Harriman)であった。オリジナルの1936年のリフトは、後にミシガン州ボイン・マウンテンに移設され、その部品は現在も使用されている[3]

世界で2番目のチェアリフトは、1938年オレゴン州マジックフッドに設けられたリブレット社(Riblet)のマジック・マイル(Magic Mile)と呼ばれるチェアリフトで、これは当時世界最長であった。これに先立って設けられたリフトもあったが、それらは採鉱運搬用に建設されたものをチェアリフトに転用したものであった(例えば、ユタ州パークシティにあった採鉱用索道は、1939年に人間用・スキー用に改造されている)。

ヨーロッパで最初のチェアリフトは、1940年チェコ(当時のチェコスロバキア)に建設されたものである。また、日本で最初のチェアリフトは、1946年(昭和21年)に北海道札幌市藻岩山に進駐軍が架設したものだが、現存せず、コンクリート台座の遺構だけが残っている。

乗車定員による区分

1人用、2人用、3人用、4人用、6人用、8人用がある。ただし、日本では8人用チェアリフトは設置されていない。スキー場では、1人用はシングルリフト、2人用はペアリフト、3人用はトリプルリフト、4人用はクワッドリフトと呼ばれる。6人乗りリフトについては現在独自の名称がない。フード付の場合、ビスタ~と呼ぶことがある。

乗車定員が2人以上のものも、定員以下で乗車可能である(例えば、6人乗りには1 - 5人でも乗車可能)。乗車定員が多いほど輸送力が大きい。

シングルリフト

天橋立ビューランドの下りシングルリフト(1993年3月20日)

シングルリフトは、1人乗りのチェアリフトである。

近年では輸送力に勝る他の種類のリフトが増え、その数は減少している。座席の背もたれ、手すりが小さく、また揺れが大きいため、何らかの理由で乗っている時にリフトが停止すると危険な状態となる場合もある。上級者専用コースに、スピードの速い「高速シングルリフト」なるものが設置されている場合がある。これは、乗降時のスピードも速いので、リフトの乗降に技術が必要である(初心者には不向きである)。

ペアリフト

アメリカ合衆国オレゴン州マウントフッドの固定循環式2人用チェアリフト(ペアリフト)

ペアリフトは、2人乗りのチェアリフトである。「ロマンスリフト」と言われることもある。

日本のスキー場で一番多く見かけるタイプのリフトである。ほとんどは乗降の際に減速しない固定循環式が採用されているが、距離の長いコースなどでは一部に高速運転が可能な自動循環式も設置されている。 しかし二人で乗る時は、お互いに真ん中に詰めあわないとリフトの手すりに太ももなどをぶつけることがあるのでその点は注意すること。(特に大人二人の場合や、おもに固定循環式の席の横幅が狭いリフトなど)自動循環式の場合は少しは幅があるので固定循環式よりはぶつける可能性は低いが、やはりペアリフトはペアリフトなので油断は禁物である。

比較的長距離のペアリフトにはスキー板やスノーボード板が乗せられる足掛けがついていることがある。

トリプルリフト

トリプルリフトは、3人乗りのチェアリフトである。

転落防止の可動式手すりがあるものもある。一時期、多く設置されたが、混雑時はペアの乗客の隣に1人の客を乗せざるを得ないという欠点があり、クワッドリフトが現れてからは、あまり新設されていない。

トリプルリフトの中でも、フード付きのトリプルリフトは特に珍しく、日本では北海道ニセコマウンテンリゾート グラン・ヒラフに1基、福島県裏磐梯猫魔スキー場に1基、会津高原だいくらスキー場に2基、長野県の菅平高原スキー場に1基の、計5基があるのみである。

クワッドリフト

クワッドリフトは、4人乗りのチェアリフトである。

いすが4人分横に並んだ形態をしている。いすを一人分ずつ区切ったものもある。可動式の屋根(フード)に覆われるものもある。これによりから体を守り、安全で快適に乗客を輸送することができる。この屋根は乗降場で自動で開閉する(半自動の場合もある)。また手動で開けることができるものもあり、天候の良い時は開けて乗車することができる。

基本的に転落防止の可動式手すり(セーフティバー)がついている。比較的遠距離間の輸送を担う場合は足(スキー・ボード板)掛けのある場合がある。また、トップシーズン前後に登坂用として使用される可能性のあるリフトについては、座席背後にスキー板ハンガーを装備するものもある。

輸送力が高いため、主に、人気の高い、混雑するコースや長距離のコースに使われる。輸送速度が特に高い高速リフト(自動循環式)の場合が多い。稀に固定循環式のものもあるが、その場合には乗車を補助するためにローディングカーペットを併設することがある。

6人乗りリフト

6人乗りリフト(ろくにんのりリフト)は、6人乗りのチェアリフトである。

構造はクワッドリフト同様に、転落防止の可動式手すり(セーフティーバー)があり、乗降時はメインケーブルから外れ速度が落ちる自動循環式を採用している。

シングルリフト、ペアリフト、トリプルリフト、クワッドリフトのような名称が付けられていないため、日本では「6人乗りリフト」と呼ばれている。

日本では2014年1月現在、広島県芸北国際スキー場に唯一設置されているだけだが、日本国外ではオーストラリアアメリカのスキー場ではよく見かけるリフトである。日本で製造しているリフトとしては、乗車人数の多いリフトであり、日本ケーブル株式会社のみ製造している。

牽引タイプ(ロープトゥ・リフト)

ロープトゥリフト全景、麓にモーター等を設置している
ロープトゥリフト終端、利用客の背中に支持具があり、それを腰のあたりにあてがう事で移動している様子を見ることができる

座席を持たずにケーブルに取り付けたレバーに捕まることで移動する。慣れた利用客は背中にあてがい降り場まで上り坂を滑走しながら移動することもできるが、反面移動中に転倒や無理な離脱を行うと後者の利用客と接触やケーブルのたわみにより振り落とされるなどの例もある。主になだらかな上り坂に設置され、比較的小規模のスキー場で使用される。メンテナンスも容易で、町営スキー場の一部ではレバーを取り付けず捕まるための簡易固定具のみ取り付けたワイヤーのみ設置して各々がそれに捕まる簡易型も存在する。さらにモーターでなくトラックのエンジンを利用した個人による改造・設置する例なども存在し、70年代までは地方のスキー場や個人所有の丘を利用したスキー場等・また駐車場からリフト乗り場まで距離があり移動がかかるスキー場等の移動用で比較的多く見られていた。現在では北海道北竜町営スキー場など一部のみ現存。また、設置のための経費が通常のリフトに比べ非常に安く済む利点と中間地点等にリフト支柱を設置する必要も無く撤収も比較的容易であり、大規模スキー場でも初心者向けコースへの近距離移動用に新たに設置される例もある。

脚注

  1. ^ どれが最初のチェアリフトかは、定義による。アラスカ州コネチカットの鉱夫が1920年代に採鉱用の索道をスキーに用いている。他にスキー用ではないチェアリフトは、19世紀末から20世紀初めにカナダブリティッシュコロンビア州に、1896年にカリフォルニア州グラスバレーに、1890年にコロラド州アスペンに、1874年にブリティッシュコロンビア州にあった。
  2. ^ AERIAL SKI TRAMWAY - Google Patents
  3. ^ Boyne USA Resorts - Company History

関連項目