ダスト8

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ダスト8』(ダストエイト)は、手塚治虫による日本漫画作品。原題は『ダスト18』。

概要

作品の原形と言える『ダスト18』は1972年1月から『週刊少年サンデー』(小学館)に連載されたが、人気が出ず5月に連載中止となった。作品は「生命の石」によって再び命を得た人々と、それを回収しようとする「キキモラ」という存在とのやり取りを描き、原題は18人分のエピソードを予定していたことに由来するが、打ち切りによって6人分しかエピソードを描くことができなかった。その後しばらく単行本化されなかったが、講談社により手塚治虫漫画全集が刊行された際に、2人分のエピソードを追加した上で全体に手直しを加え、タイトルも『ダスト8』と改題して同全集に収録した。

作品は最終的に生き延びた8人に1つずつエピソードが割り当てられ、各話のタイトルは順に「ダストx(xに数字)」となっている。それぞれのエピソード同士に関連性は殆どないため、一種のオムニバス形式とも取れる。

手塚マンガの人気に陰りが見えていた頃の作品であり、劇画調のマンガがもてはやされる中、それらの影響を受けたのか絵のタッチにバラツキが見られるなど、手塚の苦悩ぶりが作品自体にも現れている。


あらすじ

福岡行きの旅客機が見知らぬ島に墜落した。ほとんどの乗客が命を落とす中、10人だけは生き延びるが、それは旅客機が墜落する直前に「生命の山」に接触し、その破片の力で再び命を得たためであった。島を支配する黒い影(名前は設定されていない)は、その内の2人から石を取り返し、「生命の山」を護る「キキモラ」たちに残りの石を回収するよう命令する。2匹のキキモラは、石を手放した2人の体に入り込んで、元の生活に戻っていった残り8人の生存者の追跡を開始する。8人は自分たちが石の力で命を得ていることに直感的に気づき、ある者は石を守ろうとし、またある者は残された時間の中で生命を全うしようとする。

登場人物

登場人物の名前が記されていない場合があるため、登場話のタイトルを併記する。

キキモラ
旅客機が墜落した島に生息する、生物とも霊ともつかぬ存在。イタチのような外見をしており、死んだ人間の肉体に取り付くことができる。雑誌版では、ウーというメスのキキモラが石を回収し、ムーというオスのキキモラがそれを妨害する役割を与えられているが、単行本ではそれらの名前は無くなって2匹はつがいという設定となり、協力して石の回収にあたる。
ミサキ
生存者の1人である少年。「黒い影」の要求に応じて石を返す。その亡骸にオスのキキモラ(ムー)が取り付く。ミサキに取り付いたキキモラは、生活費を稼ぐため生存者に生き残る方法を吹き込んで報酬を得ようとする。
さつき
生存者の1人である少女。石を返すことをためらうが、ミサキに石を返すことを強要されたはずみで石を落とし、絶命する。その亡骸にメスのキキモラ(ウー)が取り付く。さつきに取り付いたキキモラは、石を返すよう生存者たちに容赦なく迫る。
(ダスト No.1)
生存者の1人。サラリーマン。救助され空港に着いた矢先、メスのキキモラによって石を奪われ、命を落とす。
(ダスト No.2)
生存者の1人。実業家で、姑息な手段でキキモラたちから逃れようとする。雑誌版では(ダストNo.3)。
阿沙みどり(ダスト No.3)
生存者の1人。ディスクジョッキー。キキモラから1週間の猶予をもらい、Z国で死刑に科されている政治犯の命を救おうとする。雑誌版では(ダスト No.2)。
柏木(ダスト No.4)
生存者の1人。レーシングカーで崖を飛び越える競技をしている。事故を生き延びたことで剛胆さを得たが、オスのキキモラが警告に現れて以来、ふんばりが利かなくなってしまっている。雑誌版では(ダスト No.5)。
エリ子(ダスト No.5)
母が借金を残して亡くなり、金を貸していた居酒屋のおかみにタダ働きさせられている。オスのキキモラは、石の持ち主であった彼女の母親を捜してエリ子に出会うが、彼女が難病を患っていることを知り、彼女のために奮闘する。雑誌版では、エリ子の母は石の持ち主ではなく、エリ子は久留島博士(雑誌では田田田博士)の娘で、エリ子の母に捨てられた博士に会うために北海道までやってきたという設定になっている。ムーとのラブストーリーも回を跨いで展開される。また雑誌版では(ダスト No.4)に登場する。
(ダスト No.6)
生存者の1人。小さな航空会社でパイロットをしている日本人。小型機でアメリカ人の動物学者を乗せている最中、ガソリン漏れによりフィリピンミンダナオ島に不時着し、そこで大戦中に日本兵に拾われた現地人に出会う。雑誌版では、パイロットにはタク、動物学者にはエミリーという名前があり、エミリーはタクの婚約者という設定となっている。生き残りの日本兵を探しにボルネオにやって来た2人は、終戦を知らずに潜伏しているタクの父親に出会う。
(ダスト No. 7)
生存者の1人である画家。作品が一向に評価されず、生活が行き詰まっているところにキキモラたちが現れる。画家は、石を差し出す代わりに、あの世に行く前に自分の絵が死後評価されているか知りたい、確かめたいと持ちかける。彼のエピソードは、単行本のために新たに描き下ろされたものである。
久留島博士(ダスト No.8)
生存者の1人でロボット研究の第一人者。彼は「生命の石」を砕いてロボットに与えている。雑誌板では田田田(たでんた)博士となっており、彼のエピソードは(ダスト No.4)の中に含まれている。

単行本

参考文献

  • 二階堂黎人 『僕らが愛した手塚治虫2』、小学館、2008年、244, 247, 256 - 259頁

外部リンク