タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦
基本情報
艦種 ミサイル巡洋艦
命名基準 古戦場 (5番艦は人名)
建造所
運用者  アメリカ海軍
建造期間 1980年 - 1987年(Mk.26装備艦)
1984年 - 1994年(Mk.41装備艦)
就役期間 1983年 - 2005年(Mk.26装備艦)
1986年 - 就役中(Mk.41装備艦)
建造数 27隻
原型艦 スプルーアンス級(DD)
前級 バージニア級(DLGN→CGN)
次級 CG(X)(計画中止)
DDG(X)
要目
#諸元表を参照
テンプレートを表示

タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦(タイコンデロガきゅうミサイルじゅんようかん、英語: Ticonderoga-class guided missile cruiser)は、アメリカ海軍ミサイル巡洋艦の艦級[1][2][3]スプルーアンス級駆逐艦を元に、イージスシステムを搭載するよう設計を修正した初の実用イージス艦として1978年度より建造が開始され、1983年から1994年までに同型艦27隻が就役した。

アメリカ海軍の巡洋艦としては、クリーブランド級軽巡洋艦と並び最多建造数を誇っているほか、1999年カリフォルニア級原子力ミサイル巡洋艦が退役したため、アメリカ海軍が保有する唯一の巡洋艦となっている。本級よりやや遅れて建造を開始したアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦と比べて戦闘指揮所の機能が充実し、艦砲やミサイルの搭載量も多く、また船体が大きいため居住性が良好で航続距離が長いという特長があり、また艦長が大佐職であることから、空母打撃群では対空戦指揮艦の任に就くことが多い。

来歴[編集]

イージスシステムの開発[編集]

アメリカ海軍は、第二次世界大戦末期より、全く新しい艦隊防空火力として艦対空ミサイル(SAM)の開発に着手していた。戦後も、ジェット機の発達に伴う経空脅威の増大を受けて開発は拡大され、1956年にはテリア、1959年にタロス、そして1962年にターターが艦隊配備された。これらは3Tと通称され、タロスはミサイル巡洋艦、テリアはミサイルフリゲート(DLG)、そしてターターはミサイル駆逐艦(DDG)に搭載されて広く配備された。また経空脅威の増大が続いていることを踏まえて、1958年からは、早くも3Tの次の世代の防空システムとしてタイフォン・システムの開発を開始していたが、これは要求性能の高さに対する技術水準の低さ、統合システムの開発への経験不足により難渋し、1963年にキャンセルされた[4]。ただしその過程で開発された改良型の固体燃料ロケットは、テリアとターターの共通化を進めた発展型であるスタンダードミサイルに引き継がれた[5]

タイフォンの挫折を受け、1963年11月より先進水上ミサイル・システム(ASMS)計画が開始され、1969年にはイージス計画と改称した。1967年のエイラート撃沈事件、1970年にソ連が行なったオケアン70演習を受けて開発は加速され、1973年からはテストサイトでの地上試験、そして1975年には試作機を実験艦「ノートン・サウンド」に艤装しての洋上試験が開始された[4]

原子力艦の検討と挫折[編集]

幻に終わったCGN-42 (想像図)

もともとイージスシステムは、次期原子力ミサイル駆逐艦(DXGN)の後期建造艦に搭載される予定であった。1970年に海軍作戦部長に就任したズムウォルト大将はこれを修正し、より小さく簡素なガスタービン主機の駆逐艦(DG/Aegis)に搭載することとしたが、1974年に海軍作戦部長がホロウェイ大将に交代すると、再び原子力艦への搭載へと修正された[6]

この頃には、DXGN計画から発展したバージニア級(DLGN-38級)が既に建造に入っていたが、同級にそのままイージスシステムを搭載することは困難であった。このことから、イージス搭載に適合化した原子力ミサイル駆逐艦としてDG(N)計画が着手され、1974年1月の時点では満載10,708トンとなる予定であった。しかし同年7月、ホロウェイ大将はこの計画は消極的過ぎるとして中止させ、かわって原子力打撃巡洋艦(CSGN)計画を推進した。概念設計は1975年5月に完了し、満載12,700トンの強力な戦闘艦とされたが、当然のように高コストの艦でもあった。このことから、ズムウォルト大将が検討させていたようなガスタービン主機のミサイル駆逐艦の案が復活することになり、CSGN 8隻と在来動力型ミサイル駆逐艦(DDG)16隻によるハイ・ローミックスが予定された。この在来動力型ミサイル駆逐艦はスプルーアンス級の派生型として予定されており、これが本級の源流となった。DDGは1977年度計画から、CSGNは1978年度計画からの建造が予定されていたが、議会はこれらの計画を差し止め、かわりに「ロングビーチ」をCSGNのプロトタイプとして改装するよう予算を振り替えた。しかし1977年1月17日、フォード政権は改修を中止させ、続くカーター政権はCSGN計画の見直しを指示した。かわってバージニア級を発展させたCGN-42の設計が着手されたものの、当初5隻が予定されていた建造数は、1978年3月には1983年度計画の1隻のみに削減され、1981年2月にはその建造も中止された[6]

DDG-47からCG-47へ[編集]

1970年代初頭、ズムウォルト海軍作戦部長が検討させていたDG/Aegis計画では、5,000トン級のCOGOG推進艦を軸に検討が進められていた[6]。一方、スプルーアンス級はもともと、ミサイル駆逐艦としての設計変更を前提として設計されていたこともあって、同級の設計・建造にあたっていたリットン・インガルス造船所では、同級をもとにイージスシステムを搭載する案を独自に作成し、1974年に海軍に提案した。海軍は、この案はさしあたり採用しないことにしたものの、外部のコンサルティング会社であるJJMA社に検討を依頼した。JJMA社では、スプルーアンス級をもとにイラン海軍が発注していた防空艦(後にキッド級としてアメリカ海軍に編入)を土台として検討を進めた結果、大規模な改設計とマージンの見直しを必要とするものの、イージスシステムの搭載は可能と結論した[7]

これらの検討を踏まえて、上記の通り、1975年にはスプルーアンス級をもとにイージスシステムを搭載する案が正式に推進されることになり、海軍装備局(NavSea)による検討を経て、1978年9月、リットン・インガルス造船所が詳細計画と建造を受注した。これによって建造されたのが本級である[8]

このような経緯から、当初はミサイル駆逐艦(DDG-47級)として計画されていたが、期待される任務や性能を考慮して、1番艦の建造途中の1980年1月1日、ミサイル巡洋艦(CG-47)に種別変更された[1][3]

設計[編集]

船体[編集]

上記の経緯より、基本設計はスプルーアンス級のものが踏襲されており、2層の全通甲板を備えた遮浪甲板型を基本として、後端部を切り欠いた長船首楼型という船型も同じである。ただしイージスシステムの搭載に伴う排水量増加を吸収するため、隔壁甲板を第1甲板から01甲板に変更し、これに伴い艦内区画なども一部変更された。またAN/SPY-1多機能レーダーのアンテナを取り付けるため、上部構造物も大型化するとともに、アンテナの精度を保つために所定の剛性を確保している。艦首にはブルワークが追加されたが、これはスプルーアンス級の運用成績を加味したものと考えられている。またスプルーアンス級が後に改修されたのと同様、枢要部にはケブラー装甲が施されている[8]

しかし1979年2月に提出された受注後初回の重量重心計算書では、初期設計と比して、満載排水量は360トン増の9,270トン、キール上重心高さ(KG)は0.22フィート上昇して23.57フィートと、重量・重心面の問題が顕在化した。これを受けて、造船所は383トンに達する重量削減策を策定したが、海軍はこのうち開発に時間がかかるものや設計変更の範囲が大きいものは採用せず、80年8月の時点では、上部構造内のアルミニウム製フォールス・デッキのハニカム材への変更や通路敷物の廃止、排気系の変更など47トンの削減となった。しかしその後も重量増加と重心上昇の傾向が続き、82年4月の予想ではKGは27.74フィートとなったことから、スケグに110トンの鉛バラストが入れられることになった[8]

これらの施策により、引き渡し時の満載排水量は約9,500トンになる見込みとなったが、区画浸水計算上の排水量限度が9,700トンであり、ダメージコントロール面の余裕が少なすぎることが問題になった。海軍装備局の検討により、後日装備予定の曳航ソナー(TASS)のための艦尾開口部がネックになっていることが判明したことから、TASSの投揚収時には非水密、曳航時には水密を保つ機構が開発され、これによって限度は10,200トンまで引き上げられた。また当初の計算では、今度は船体強度が排水量10,200トンに耐えられないと見積もられていたが、再計算の結果、実際には既に十分な強度が確保されていることが判明した。これは重量分布が最初の計算よりも曲げモーメントを減らす方向で変わっていたことと、型鋼の寸法規格について、スプルーアンス級ではフィート式であったのに対して本級よりメートル式に変更したことで、寸法が大きくなって断面係数が増えており、船体縦強度部材の強度が最初の計算よりも大きくなっていたためであった[8]

1981年度計画の3・4番艦では、01甲板と船側外板について、従来のHTS高張力鋼から、より強度が大きいHY-80高張力鋼に変更して板厚を減少、艦首ブルワークをHTSからアルミニウム合金に変更、4脚マストを3脚式に変更してその主脚を電路に転用するなど、よりいっそうの重量低減策が講じられた。そして82年度計画の6番艦以降ではミサイル発射機をVLSに変更することになり、よりいっそうの重量低減・重心降下策が必要となったことから、海軍とインガルス造船所は共同でTOTS(Take off Tons Sensibly)計画を発足させた。HY-80高張力鋼の採用範囲拡大、局部強度部材への高強度低合金鋼(HSLA)の導入、主船体の再設計、艦外受電設備の見直しによる受電ケーブル・関連回路遮断器の削減などにより、満載排水量は9,410トン、KGは23.21フィートとなった。もしTOTS計画がなければ、それぞれ10,100トン(バラスト250トンを含む)と23.35フィートになっていたとみられている[8]

機関[編集]

主機はスプルーアンス級で採用されたゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジン4基で可変ピッチ・プロペラ(CPP)2軸を駆動するCOGAG方式が踏襲された[1][2][3]

一方、イージスシステムの搭載に伴って電源は強化された。アリソン501ガスタービン発電機は4基に増備され、出力も2,000キロワットから2,500キロワットに強化された[1][3]。また400ボルト/60ヘルツ三相交流の艦内配電系への変電を行うコンバーターも、3基から4基に増設された。この増設余地は、もともとスプルーアンス級からミサイル駆逐艦としての改設計に備えて確保されていたものであった[8]

装備[編集]

本級の装備の配置(クリックで拡大)

イージス武器システム(AWS)[編集]

上記の経緯より、本級の中核的な装備となるのがイージス武器システム(AWS)である。搭載している全ての戦闘システムは、AWSの戦術情報処理装置である指揮決定システム(C&D)Mk.1および武器管制システム(WCS)Mk.1に連接されている。AWSは継続的な改良を受けて多数のバージョンが生じており、これらは大まかにベースラインとして区別される。本級の新造時には、1・2番艦ではベースライン0、3 - 5番艦ではベースライン1、6 - 12番艦ではベースライン2、13 - 18番艦ではベースライン3、19 - 27番艦ではベースライン4が搭載された。ベースライン0搭載艦のシステムは程なくしてベースライン1にアップデートされたほか、1996年より、ベースライン4搭載艦のシステムはベースライン5フェーズIII仕様にアップデートされ、統合戦術情報伝達システム(JTIDS)によるリンク 16の運用に対応した[3][7][9]

そして2008年度より着手されたイージス近代化改修(AMOD)により、ベースライン2搭載艦のシステムはベースライン8(CR2/ACB08)、ベースライン3・4搭載艦のシステムはベースライン9(CR3/ACB12)にアップデートされており、共同交戦能力(CEC)にも対応した[3][10]

レーダー[編集]

AN/SPY-1AのPESAアンテナ

その中核となる多機能レーダーはAN/SPY-1で、固定式4面のパッシブ・フェーズドアレイ(PESA)アンテナは、前後の上部構造物に2基ずつ(前部の構造物には艦首側と右舷に、後部の構造物には艦尾側と左舷に)設置されている。ベースライン0 - 2ではAN/SPY-1A、ベースライン3 - 4では改良型のAN/SPY-1Bが搭載されており、また1993年より、AN/SPY-1Aにもソフトウェアの書き換えやアンテナ感度変更などの改修が施された[9]

なお本級では、AN/SPY-1を補完する早期警戒レーダーとして、2次元式のAN/SPS-49も搭載されたが[2]、こちらはAMOD改修の際に撤去されている。またAMOD改修の際に、砲の目標捕捉・射撃指揮レーダーとして搭載されていたAN/SPQ-9AはAN/SPQ-9Bに更新され、低空警戒性能を向上させている[3][10]

ミサイル[編集]

1番艦「タイコンデロガ」のMk.26 mod.1
 
24番艦「レイク・エリー」のMk.41 mod.0 VLS

艦対空ミサイルとしては、従来のスタンダードミサイル(SM-1)を発展させたSM-2を採用した。その発射機としては、当初は連装のMk.26 GMLSを使用していた。これは先行するターター-D・システム向けに開発されて、バージニア級原子力ミサイル巡洋艦およびキッド級ミサイル駆逐艦において、スタンダードSM-1MRを運用していたものと同系統であり、本級の場合、艦首尾側いずれも44発を収容できるMk.26 mod.1が設置されていた[1][2][3]

その後、6番艦以降より、新開発のVLSであるMk.41 mod.0が搭載されるようになった[1][2][3]。これは61セルのMk.158発射機2基を前後に搭載したもので、垂直発射方式の採用により、抗堪性、即応性、連射能力のいずれもが向上した。なおMk.41には、スタンダード用のショート・モジュールとトマホーク巡航ミサイルの運用にも対応したロング・モジュールがあり、当初は、上記のように船体の重量・重心が危惧されていたこともあって、一部はショート・モジュールにすることも検討されたが、運用の柔軟性を考慮して、結局は全てロング・モジュールとされた[8]

その後、近接防空能力向上の為、AMOD改修の際に、ESSM個艦防空ミサイルの運用能力が付与された。またこの際、ファランクス 20mmCIWS(Mk.15)もブロック1Bにアップデートされている[3][10]

なお艦対空ミサイルの終末誘導を担当するのがMk.99 ミサイル射撃指揮装置で、本級の場合、AN/SPG-62イルミネーターを前後に2基ずつの計4基搭載した[1][2][3]

ミサイル防衛[編集]

一部の艦にはイージスBMDシステムを搭載し、SM-3弾道弾迎撃ミサイルの運用に対応する改修がなされている。2002年より、まず「レイク・エリー」において試験が開始された[2]。また「シャイロー」(CG-67)はイージスBMD3.6システムを搭載し、2006年6月の試験によってミサイル防衛能力を確認したのち、横須賀海軍施設に配備された[9]。その後、2013年までに、CG-61、CG-70、CG-72、CG-73がイージスBMDシステムを搭載しており、更に少なくとも5隻の改修が見込まれている[3]

これらのイージスBMD搭載改修の成果はAMODで統合され、2014年度から2016年度にかけて、ベースライン4搭載艦ではBMD5.0の適用が予定されている[11]

対潜戦[編集]

対潜戦装備は、当初は基本的にスプルーアンス級の構成が踏襲されており、ソナーとしてはAN/SQS-53Aをバウ・ドームに収容して搭載、水中攻撃指揮装置はMk.116 mod.4であった。また対潜兵器としては324mm3連装魚雷発射管を装備したほか、Mk.26 GMLSからアスロック対潜ミサイルを発射できた[1]

その後、1983年度計画の8番艦よりAN/SQR-19 TACTASの搭載が開始された。10番艦からはAN/SQQ-89(V)3統合対潜システムも搭載され、これに伴って船体装備ソナーはAN/SQS-53Bに、水中攻撃指揮装置もMk.116 mod.6に更新された[1]。これは6 - 9番艦にもバックフィットされており、ベースライン2以降の全艦がAN/SQQ-89を装備するようになった[3]。またAMOD改修により、ベースライン2搭載艦では曳航ソナーをAN/SQR-20に更新、またベースライン3・4搭載艦では統合対潜システムもAN/SQQ-89A(V)15に更新されつつある[10]

対水上戦[編集]

54口径127mm砲とハープーン 4連装発射筒

艦砲はバージニア級以来の構成が踏襲され、艦首尾に1基ずつの127mm単装砲(Mk.45 5インチ砲)を搭載し、Mk.86 砲射撃指揮装置の管制を受けた。本級のMk.86の火器管制レーダーは目標捕捉用のAN/SPQ-9Aのみで、AN/SPG-60追尾レーダーを備えておらず、対空射撃には対応していなかったが[1]、1990年度の改修によって対応した[12]。またAMOD改修の際に、AN/SPQ-9Aは低空警戒性能を向上させたAN/SPQ-9Bに、艦砲は62口径127mm砲に、GFCSもMk.160 mod.11に換装され、Mk.34 mod.4 GWSを構成するようになった[2][3]

対艦兵器としては、艦の後部にハープーン艦対艦ミサイルの4連装発射筒2基を装備した。ただし多くの艦では、平時の搭載数は4発のみとなっている[3]

また上記の通り、6番艦よりMk.41 mod.0 VLSが搭載されたことから、トマホーク巡航ミサイルによる対地火力投射にも対応し、トマホーク武器システムの武器管制システム(AN/SWG-3 TWCS)も搭載された[2][3]

電子戦[編集]

電子戦システムとしては、電子戦支援電子攻撃両用のAN/SLQ-32(V)3電波探知妨害装置を搭載した[2][3]。ただしAMOD改修では、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦では新型のSEWIP電波探知妨害装置への換装が盛り込まれているのに対し、本級では対象外となっている[11]

1999年には、CG-58・59および63で、Mk.137を用いてNULKAアクティブ・デコイを発射する能力が付与された。その後、AMOD改修によって、専用のMk.53 mod.5発射機が追加搭載されている[3]

航空機[編集]

艦載機としては、当初のベースライン0では航空艤装がトップヘビーにつながることを危惧して、比較的簡素・軽量な装備で運用できるSH-2ヘリコプターを用いたLAMPS Mk.Iが用いられていた。

その後、ベースライン1以降では、より大型で強力なSH-60Bヘリコプターを用いたLAMPS Mk.IIIに更新され、これにともなってRAST(Recovery Assist, Secure and Traverse)着艦誘導・拘束装置が搭載された。なおヘリコプター用として、短魚雷36発分の弾薬庫が設置されている[3]

ヘリコプター対潜水艦飛行隊(HSL)はヘリコプター海上攻撃(HSM)飛行隊に変更され、2006年から2015年の間にSH-60BからMH-60Rに更新された。SH-60Bは2015年5月11日にアメリカ海軍から正式に退役している。

諸元表[編集]

ベースライン0, 1 ベースライン2 - 4
建造期間 1980年 - 1987年 1984年 - 1994年
就役期間 1983年 - 2005年 1986年 - 現在
隻数 5隻 22隻
基準排水量 6,997 t 7,242 t
満載排水量 9,460 t 9,763 t - 10,010 t
全長 172.46 m
全幅 16.76 m
水線幅 18.0 m
吃水 7.46 m (最大10.51 m)
機関 COGAG方式
GE LM2500-30ガスタービンエンジン(21,500bhp 16.04MW))×4基
可変ピッチプロペラ(5翔)×2軸
速力 最大30+ノット(56+ km/h)
航続距離 6,000海里 (11,000 km) (20kt巡航時)
乗員 358名(CG-48は312名)
兵装 54口径127mm単装砲×2基 54口径[注 1]127mm単装砲×2基
Mk.38 25mm単装機関砲×2基
Mk.15 20mmCIWS×2基
M2 12.7mm単装機銃×4基
Mk.26 mod.5 ミサイル連装発射機×2基
SM-2MRアスロック
弾庫容量: 44発
Mk.41 mod.2 VLS(61セル)×2基
SM-2SM-3ESSMVLATLAM
ハープーン艦対艦ミサイル(SSM) 4連装発射筒×2基
Mk.32 3連装短魚雷発射管×2基
艦載機 LAMPSヘリコプター×2機
C4ISTAR GCCS-M
NTDS mod.4/5リンク 4A/11/14/16
AWS Mk.7
AN/SQQ-89(V)3 ASWCS
Mk.37 TWS
FCS Mk.99 (SAM用)×4基
Mk.86 mod.9 → Mk.160 (127mm砲用)×1基
AN/SWG-1A (ハープーン用)
AN/SWG-3A (TLAM用)
レーダー AN/SPY-1A/B 多機能型(4面)×1基
AN/SPS-49 対空捜索用×1基 ※後日撤去
AN/SPS-55 対水上捜索用×1基
AN/SPS-64 航海用×1基
AN/SPQ-9B 目標捕捉/砲射撃指揮用×1基
AN/SPG-62 SAM射撃指揮用×4基
ソナー SQS-53B/C/D 艦首装備式×1基
AN/SQR-19 曳航式×1基
電子戦
対抗手段
AN/SLQ-32(V)3電波探知妨害装置
Mk.137 デコイ6連装発射機×8基
AN/SLQ-49 デコイ装置×4基
AN/SLQ-25対魚雷デコイ装置
イージス艦の比較
日本 まや型 オーストラリア ホバート級 大韓民国 世宗大王級
バッチ1
アメリカ合衆国 タイコンデロガ級
AMOD改修艦
アメリカ合衆国 アーレイ・バーク級
フライトIIA
船体 満載排水量 10,250 t 7,000 t 10,290 t 9,763 t - 10,010 t 9,648 t
全長 170 m 146.7 m 165 m 172.46 m 155.3 m
全幅 21.0 m 18.6 m 21.4 m 16.76 m 20.1 m
主機 方式 COGLAG CODOG COGAG
出力 69,000 ps 47,000 hp 105,000 hp 86,000 hp 100,000 hp
速力 30 kt 28 kt以上 30 kt以上
兵装 砲熕 62口径5インチ単装砲×1基 62口径5インチ単装砲×2基 62口径5インチ単装砲×1基[注 2]
20mmCIWS×2基 20mmCIWS×1基 30mmCIWS×1基 20mmCIWS×2基 20mmCIWS×2基[注 3]
87口径25mm単装機関砲×2基
12.7mm単装機銃×4基
ミサイル Mk.41 VLS×96セル
(SM-2, SM-3, 07式)
Mk.41 VLS×48セル
(SM-2, SM-6, ESSM)
Mk.41 VLS×80セル
(SM-2)
Mk.41 VLS×122セル
(SM-2, VLA, TLAM)
Mk.41 VLS×96セル
(SM-2, ESSM, VLA, TLAM)
K-VLS×48セル
(天竜, 紅鮫)
RAM 21連装発射機×1基
SSM[注 4] 4連装発射筒×2基 ハープーン 4連装発射筒×2基 海星 4連装発射筒×4基 ハープーン 4連装発射筒×2基 [注 5]
水雷 324mm3連装短魚雷発射管×2基
艦載機 SH-60K×1機[注 6] MH-60R×1機 スーパーリンクスMk.99×2機 MH-60R×2機
同型艦数 2隻 3隻 3隻 11隻(1隻退役) 47隻予定

同型艦[編集]

Mk.26 GMLS 装備艦[編集]

ベースライン 艦番号 艦名 造船所 起工 進水 就役 退役
0 CG-47 タイコンデロガ
USS Ticonderoga
インガルス造船所 1980年
1月21日
1981年
4月25日
1983年
1月22日
2004年
9月30日
CG-48 ヨークタウン
USS Yorktown
1981年
10月19日
1983年
1月17日
1984年
7月4日
2004年
12月3日
1 CG-49 ヴィンセンス
USS Vincennes
1982年
10月19日
1984年
1月14日
1985年
6月3日
2005年
6月29日
CG-50 ヴァリー・フォージ
USS Valley Forge
1983年
4月14日
1984年
6月23日
1986年
1月18日
2004年
8月30日
CG-51 トーマス・S・ゲイツ
USS Thomas S. Gates
バス鉄工所 1984年
8月31日
1985年
12月14日
1987年
8月22日
2005年
12月14日

Mk.41 VLS 装備艦[編集]

ベースライン 艦番号 艦名 造船所 起工 進水 就役 改修 退役 母港
2 CG-52 バンカー・ヒル
USS Bunker Hill
インガルス造船所 1984年
1月11日
1985年
3月11日
1986年
9月20日
非改修 2023年
9月22日
CG-53 モービル・ベイ
USS Mobile Bay
1984年
6月6日
1985年
8月22日
1987年
2月21日
2023年
8月10日
CG-54 アンティータム
USS Antietam
1984年
11月15日
1986年
2月14日
1987年
6月6日
AMOD 2024年
(予定)
ハワイ州
パールハーバー海軍基地
CG-55 レイテ・ガルフ
USS Leyte Gulf
1985年
3月18日
1986年
6月20日
1987年
9月26日
バージニア州
ノーフォーク海軍基地
CG-56 サン・ジャシント
USS San Jacinto
1985年
7月24日
1986年
11月14日
1988年
1月23日
2023年
9月15日
CG-57 レイク・シャンプレイン
USS Lake Champlain
1986年
3月3日
1987年
4月3日
1988年
8月12日
非改修 2023年
9月1日
CG-58 フィリピン・シー
USS Philippine Sea
バス鉄工所 1986年
4月8日
1987年
7月12日
1989年
3月18日
AMOD 2025年
(予定)
フロリダ州
メイポート海軍補給基地
3 CG-59 プリンストン
USS Princeton
インガルス造船所 1986年
10月15日
1987年
10月2日
1989年
2月11日
非改修 2026年
(予定)
カリフォルニア州
サンディエゴ海軍基地
CG-60 ノーマンディー
USS Normandy
バス鉄工所 1987年
4月7日
1988年
3月19日
1989年
12月9日
2025年
(予定)
バージニア州
ノーフォーク海軍基地
CG-61 モンテレー
USS Monterey
1987年
8月19日
1988年
10月23日
1990年
6月16日
BMD 2022年
9月16日
CG-62 チャンセラーズビル
USS Chancellorsville
ロバート・スモールズ
USS Robert Smalls
インガルス造船所 1987年
6月24日
1988年
7月15日
1989年
11月4日
AMOD 2026年
(予定)
神奈川県横須賀市
横須賀基地
CG-63 カウペンス
USS Cowpens
バス鉄工所 1987年
12月23日
1989年
3月11日
1991年
3月9日
カリフォルニア州
サンディエゴ海軍基地
CG-64 ゲティスバーグ
USS Gettysburg
1988年
8月17日
1989年
7月2日
1991年
6月2日
フロリダ州
メイポート海軍補給基地
4 CG-65 チョーシン
USS Chosin
インガルス造船所 1988年
7月2日
1989年
9月1日
1991年
1月12日
2027年
(予定)
カリフォルニア州
サンディエゴ海軍基地
CG-66 ヒュー・シティ
USS Hue City
1989年
2月20日
1990年
6月1日
1991年
9月14日
非改修 2022年
9月23日
CG-67 シャイロー
USS Shiloh
バス鉄工所 1989年
8月1日
1990年
9月8日
1992年
7月18日
BMD 2024年 ハワイ州
パールハーバー海軍基地
CG-68 アンツィオ
USS Anzio
インガルス造船所 1989年
8月21日
1990年
11月2日
1992年
5月2日
AMOD 2022年
9月22日
CG-69 ヴィックスバーグ
USS Vicksburg
1990年
5月30日
1991年
9月7日
1992年
11月14日
2023年
(予定)
フロリダ州
メイポート海軍補給基地
CG-70 レイク・エリー
USS Lake Erie
バス鉄工所 1990年
3月6日
1991年
7月13日
1993年
7月24日
BMD 2025年
(予定)
カリフォルニア州
サンディエゴ海軍基地
CG-71 ケープ・セント・ジョージ
USS Cape St. George
インガルス造船所 1990年
11月19日
1992年
1月10日
1993年
6月12日
AMOD 2027年
(予定)
CG-72 ヴェラ・ガルフ
USS Vella Gulf
1991年
4月22日
1992年
6月13日
1993年
7月12日
BMD 2022年
8月4日
CG-73 ポート・ロイヤル
USS Port Royal
1991年
10月18日
1992年
11月20日
1994年
7月9日
2022年
9月29日

後継艦[編集]

アメリカ海軍は、1995年より、次世代水上戦闘艦としてSC-21(Surface Combatant for 21st Century)のコンセプト開発に着手しており、本級の後継艦としてCG-21計画艦も盛り込まれていた。その後、CG-21はCG(X)に発展し、スプルーアンス級駆逐艦の後継となるDD(X)とファミリー化して開発されることになっていた[13]。しかしDD(X)はズムウォルト級ミサイル駆逐艦として結実したものの、建造費用高騰もあって建造数は削減され、かわりに2010年度よりアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦フライトIIAの建造が再開された。そして2010年にはCG(X)計画の中止が決定され、その代替も兼ねて、2016年度からはフライトIIIの建造が開始されることになった[14]

その後、中国人民解放軍海軍055型駆逐艦の登場や対艦ミサイル戦力の拡充などを受けて、水上艦戦力の拡充が図られることになり、巡洋艦の開発計画も再開されることになった。アメリカ海軍の2021年度予算案には次期巡洋艦の開発費用が盛り込まれており、計画では、2025年までに1番艦建造に必要な全ての作業を終わらせることを目標にした。このように急速な開発が求められたことから、新技術の導入は避けて実証済みの技術のみで構成し、開発期間の短縮とリスクを軽減する計画とされた[15]。その後、2022年1月に議会に提出された報告書では、次期ミサイル駆逐艦DDG(X)がアーレイ・バーク級とともに本級の代艦も兼ねて、2028年度より調達を開始することとされた[16]

登場作品[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ AMOD改修艦は62口径に交換
  2. ^ DDG-79DDG-80は54口径。DDG-81から62口径
  3. ^ DDG-85から後部の1基のみ
  4. ^ 1番艦90式2番艦17式
  5. ^ フライトIIまではハープーン4連装発射筒が2基搭載されていたが、フライトIIA以降から搭載されなくなった。しかし、必要時には搭載できるようにスペースは確保されている。
  6. ^ 通常は搭載されていない。

出典[編集]

参考文献[編集]

  • Aviation Week (2011年). “U. S. Navy Cruiser and Destroyer Modernization” (PDF) (英語). 2017年8月19日閲覧。
  • Friedman, Norman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. pp. 116-119. ISBN 9781557502681 
  • Friedman, Norman (2004). U.S. Destroyers: An Illustrated Design History. Naval Institute Press. pp. 342-347, 394-395. ISBN 9781557504425 
  • Prezelin, Bernard (1990). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 1990-1991. Naval Institute Press. ISBN 978-0870212505 
  • Saunders, Stephen (2009). Jane's Fighting Ships 2009-2010. Janes Information Group. ISBN 978-0710628886 
  • Wertheim, Eric (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. ISBN 978-1591149545 
  • ロッキード・マーチン「米イージス艦--その近代化計画と将来構想 (特集 イージス艦のすべて)」『世界の艦船』第730号、海人社、2010年10月、90-97頁、NAID 40017240284 
  • 大塚好古「1番艦進水へ! DDG-1000級の超絶技術 (特集 近未来の米水上艦隊)」『世界の艦船』第788号、海人社、82-85頁、2013年12月。 NAID 40019837765 
  • 岡部いさく「現用イージス・システムの防空能力」『世界の艦船』第667号、海人社、76-83頁、2006年12月。 NAID 40015140493 
  • 泉徹「注目のフライトIIIはこんなフネ!?」『世界の艦船』第769号、海人社、78-83頁、2012年11月。 NAID 40019440577 
  • 野木恵一「紆余曲折を経た「ズムウォルト」級開発の経緯 (特集・米次期DDG「ズムウォルト」級を解剖する)」『世界の艦船』第676号、海人社、76-81頁、2007年7月。 NAID 40015488225 
  • 野木恵一「イージス艦の発達-その誕生から今日まで (特集 イージス艦のすべて)」『世界の艦船』第730号、海人社、75-81頁、2010年10月。 NAID 40017240282 
  • 藤木平八郎「イージス・システム開発の歩み (特集・イージス艦発達史)」『世界の艦船』第667号、海人社、69-75頁、2006年12月。 NAID 40015140492 
  • 吉原栄一「スプルーアンス・ファミリーの技術的特徴」『世界の艦船』第484号、海人社、70-87頁、1994年8月。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]