スバル・BRZ
スバル・BRZ DBA-ZC6型 | |
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フロント | |
リア | |
概要 | |
販売期間 | 2012年3月 - |
設計統括 |
多田哲哉(トヨタ自動車) 増田年男(富士重工業) |
ボディ | |
乗車定員 | 4名 |
ボディタイプ | 2ドアクーペ |
駆動方式 | FR |
パワートレイン | |
エンジン | FA20型:水平対向4気筒 ポート噴射+筒内直噴(D-4S) |
最高出力 | 147kW (200PS)/7,000rpm |
最大トルク | 205N·m (20.9kgf·m)/6,400-6,600rpm |
変速機 | 6速MT/6速AT |
前 |
前:ストラット 後:ダブルウィッシュボーン |
後 |
前:ストラット 後:ダブルウィッシュボーン |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,570mm |
全長 | 4,240mm |
全幅 | 1,775mm |
全高 | 1,300mm |
車両重量 | 1,190kg-1,250kg |
その他 | |
最小回転半径 | 5.4m |
BRZ(ビーアールゼット)は、富士重工業(スバル)がトヨタ自動車と共同開発したスポーツカー。トヨタブランドでは兄弟車のトヨタ・86として販売され、生産は両車とも富士重工業群馬製作所本工場にて行なわれる。
概要
2012年3月28日発売。小型・軽量・低重心を狙って開発されたモデルで、車名の由来はBはボクサーエンジン (Boxer Engine)、Rは後輪駆動(Rear wheel drive)、Zは究極(Zenith)を意味している[1]。
エンジンは富士重工が開発したFB20型をベースに、トヨタの直噴技術である「D-4S」を組み合わせた新開発のFA20型。証としてインテークマニホールド上面のカバーには「TOYOTA D-4S」と「BOXER SUBARU」が併記されている[2]。高回転出力型を目指したためFB20型と比べてストロークが短縮された結果、ボアxストロークは奇しくも86x86mmとなった[3]。
共同開発車であるトヨタ・86と仕様上の大きな違いはないが、ヘッドランプ・フロントバンパー・フェンダー部のエンブレムや内装デザインなどが違う。開発技術は両社から持ち寄られており、開発費も両社で折半されている[4]。車両コンセプトやパッケージングなどの企画策定と全体デザインはトヨタが、実際の開発・設計と確認作業は富士重工が主導した。生産は一貫して富士重工が担当しており「トヨタから富士重工への開発委託」という単純な体制ではない[4]。
スバルの多くの車種に搭載されている運転支援システム「EyeSight」は、トヨタにもそれに相当する装置はあるが、システムの違いにより全グレードで搭載されていない。
歴史
2011年3月1日、ジュネーブモーターショーにて「BOXER Sports Car Architecture」(ボクサー スポーツカー アーキテクチャ)を世界初公開[5]。エンジンとシャシーの技術展示であるため、ボディは透明で外からエンジンとシャシーが見られるようになっていた。5月18日、人とくるまのテクノロジー展2011に「BOXER Sports Car Architecture」を出展[6]。8月23日には名称を「SUBARU BRZ」とし、フランクフルトモーターショーに出展することが発表された[7]。9月13日、そのフランクフルトモーターショーに「SUBARU BRZ PROLOGUE - BOXER Sports Car Architecture II -」を出展[8]。
11月1日、ロサンゼルスオートショーへの出展を公表[9]、11月13日、SUPER GT JAFグランプリにおいてSTIがR&D SPORTと共に「SUBARU BRZ」で2012年よりGT300クラスへ参戦することを発表した[10]。11月16日、前述のロサンゼルスオートショーにて「SUBARU BRZ CONCEPT - STI -」が公開、ボア×ストロークを86mm×86mmのスクエアとすることも公表された[11][12]。
2011年11月30日、東京モーターショーにて量産型プロトタイプとなる「SUBARU BRZ」と共に、SUPER GTに参戦予定の「BRZ GT300仕様」を世界初公開[13][14]。翌2012年1月14日、販売店となる東京スバル株式会社にて早期予約が開始 (5万円キャッシュバック&1.9%スペシャルクレジット特典付) された。2月3日の正式発表[15]の後、3月28日全国発売開始。富士重工業が2ドアクーペを販売するのは、クーペ専用車種としてはアルシオーネSVX販売終了以来16年ぶり、ボディバリエーションの一つとして実用タイプを含む2ドアクーペが存在した初代インプレッサリトナ、およびWRXクーペの販売終了以来12年ぶりとなった。2012年よりSUPER GT・GT300クラスにSTIとR&D SPORTが共同で参戦している。
2012年11月22日、トヨタの86用ワンメイクレースである「GAZOO Racing 86 Race」に協賛を発表。これによりレース名が「GAZOO Racing 86/BRZ Race」(仮称)になると同時に、同レースへの参戦用BRZをスバルテクニカインターナショナルから2013年1月に発売することを発表[16]。
2013年1月25日、GAZOO Racing 86/BRZ Race参戦用BRZを「RA Racing」として発売[17][18]。
2013年8月19日、一部改良(同年9月24日販売開始)[19] 。「S」はこれまでオプション設定だったフルフロアアンダーカバーが標準装備となり、「RA」はオプションパッケージの「パフォーマンスパッケージ」において、16インチのフロントベンチレーテッドディスクブレーキ、トルセンLSDがオプションで選択可能となった。併せて、スバルテクニカインターナショナルの手により独自の装備を施した「tS」を発売[20]。ブレンボ製ベンチレーテッドディスクブレーキ、専用の18インチアルミホイール、アルカンターラと本革のコンビネーションシート等の専用装備が加えられている。更に、レカロ社製コンビネーションバケットシートやドライカーボンリアスポイラー等の装備を加えた「GT PACKAGE」も設定される。2014年3月9日までの500台限定(うち、「GT PACKAGE」は250台限定)販売。
2013年10月29日、特別仕様車「Premium Sport Package」を発表(12月26日販売開始)[21]。本仕様車は同年1月に開催された東京オートサロン2013に参考出品した「SUBARU BRZ Premium Sport Package CONCEPT」の仕様を折り込んだモデルとなっており、最上位グレードの「S」をベースに、シートやドアトリム(アームレスト・ニーパッド)に華やかなタンレザーと深みのあるモスグリーンステッチを採用するとともに、メーターバイザーやドアトリムのショルダーパッドにブラックのアルカンターラを採用し、「大人の遊び心」を感じるカラーレイアウトや洗練された質感高い仕立てとした。また、外観は印象の引き締めを図るため、電動格納式リモコンドアミラーとSTI製17インチアルミホイールにブラック塗装を採用し、STI製プッシュエンジンスイッチ(STIロゴ入り、レッドタイプ)も装備してスポーツマインドも刺激する仕様とした。
2014年4月22日に一部改良を発表(6月27日販売開始)[22]。サスペンションダンパーのフリクション特性や減衰力特性のチューニングを行い、乗り心地の質感を向上。ルーフアンテナはスポーツカーとしてのスタイリングをよりシャープにするシャークフィンタイプに変更し、ボディカラーは「WRブルー・マイカ」、「サテンホワイト・パール(オプションカラー)」、「スターリングシルバー・メタリック」と入れ替えで「WRブルー・パール」、「クリスタルホワイト・パール(オプションカラー)」、「アイスシルバー・メタリック」を追加。また、「S」にはカーボン調加飾のインパネや新デザインのアクセスキーを採用した。
2015年2月10日に一部改良を発表(4月16日発売開始)[23]。エントリーグレードの「RA」が廃止になり、代わりに「R」から一部装備を省いてマニュアルエアコン、フロアサイレンサー、トランクマットなどを備えたカスタマイズ用の「R Customize Package」が新設される。また、「S」にはクルーズコントロールと8スピーカーシステムが標準装備され、ステアリングホイールスポークやシフトパネルなどにはサテンシルバーの加飾が施される。また、全車で電動パワーステアリングの特性および車体剛性の見直しが図られ、ステアリングフィールと乗心地の質感が向上した。ボディカラーは「ギャラクシーブルーシリカ」から「ラピスブルー・パール」、「ライトニングレッド」から「ピュアレッド」の2色に差し替えられた。GAZOO Racing 86/BRZ Race用「RA Racing」は継続設定。
2015年6月30日に、特別仕様車「tS」を発売[24]。2015年10月12日までの限定受注(限定カラー「サンライズイエロー」32400円高・100台限定)。「シンクロナイズド・ドライビング」をコンセプトに、2013年版同様スバルテクニカインターナショナルの手により独自の装備を施したもの。ショックアブソーバーがSTI製ビルシュタインに、ブレンボ製ベンチレーテッドディスクブレーキはドリルドディスクにと言った変更が加えられている。インテリアも、STI専用設計RECARO製バケットタイプシートや専用スポーツメーターが装備されている。カラーリングには、「インプレッサWRX STI spec C」やXVの特別仕様車である「XV POP STAR」で採用されたサンライズイエローをはじめとした4色が用意される。
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BOXER Sports Car Architecture
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BOXER Sports Car Architecture エンジン
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BRZ CONCEPT - STI - フロント
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BRZ CONCEPT - STI - リア
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GT300仕様 フロント
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GT300仕様 リア
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エンジンルーム
グレード
- R
- 標準仕様で6速MTと6速ATから選択可能。シリーズで唯一「17インチパフォーマンスパッケージ」「スポーツインテリアパッケージ」の2つのオプション(これらは単独装着不可でセットのみ)に加え、Sと共通の「エアロパッケージ」を設定。86の「G」に相当。
- R Customize Package
- RAに代わるベース仕様で、6速MTと6速ATから選択可能。Rからアルミホイールやスピーカー等を省いている。86における相当グレードは無い。
- S
- 上級仕様。6速MTとパドルシフト付き6速ATから選択可能。シリーズで唯一プッシュエンジンスタートと左右独立調整エアコンを装備。シリーズ唯一となる「レザー&アルカンターラパッケージ」と、Rと共通の「エアロパッケージ」の2つのオプションを設定。86の「GT」にほぼ相当するが、リヤブレーキディスクは15インチとなる。
- RA Racing
- 競技ベース仕様のRAに、更に以下の装備を付け加えている。
- フロント/リアベンチレーテッドディスクブレーキ
- 専用ブレーキダクト(フロント左右・車両搭載)&専用ブレーキバックプレート
- トルセンLSD
- 空冷式エンジンオイルクーラー
- 4点式シートベルト(FIA公認、競技専用部品・車両搭載)&アンカーボルト装着
- 6点式ロールケージ(サイドバー付)
- マニュアルエアコン(クリーンフィルター付)
- 専用フロアマット(運転席/助手席・車両搭載)
- フロントトランスポートフック&リアトランスポートフック(競技専用部品・車両搭載)
過去のグレード
- RA
- 競技のベース仕様。6速MTのみでエアコンはメーカーオプションとなる。86の「RC」にほぼ相当するが、HIDヘッドランプやカラードバンパーなどが標準装備。2015年の一部改良で廃止になった。
販売実績
アメリカ市場におけるスバル・BRZの販売台数は、2012年5月の販売開始から2013年4月末までの1年間で6,744台である[25]。
トヨタ・86との違い
エンジンなどの基本部分は共通だが、フロントグリルやフォグランプの形状などの外観や内装、オプションに一部違いがある。また、カラーリングはスバルブルーとして有名なWRブルー・マイカがBRZのみに設定される(逆に、86にはBRZに非設定のオレンジ・メタリックが設定される)。乗り味にも違いがあり、86がリアを滑らせて楽しませる(=ドリフト)志向なのに対してBRZはグリップを重視した安定志向のセッティングであると評されることが多い[26][27][28]。モータースポーツベースグレードの両者の違いとしては、エアコンが86ではオプションでも未設定であるのに対し、BRZはメーカーオプションで設定がある[29]。また、BRZはどのグレードでもHIDヘッドランプが標準装備されている。メーターに関しても、タコメーター内のデジタルスピードメーターは86ではGT及びGT Limitedのみ標準装備なのに対し、BRZは全グレード標準装備となっている違いもある。
受賞
- 2012年、英国のUKIPメディア&イベンツが主催する「VDI (ビークル ダイナミクス インターナショナル) アワード」のでトヨタ・86と共にカーオブザイヤーを受賞した[30][31]。
- 2012年、米国の自動車専門メディア「ワーズ オートワールド誌」が選ぶ「2013ワーズ テン・ベスト・エンジン」にBRZが搭載するFA20型エンジン選出された。この選考にはBRZのコストパフォーマンスも考慮された[32]。
- 2013年12月13日、日本流行色協会が主催する「オートカラーアウォード2014」において、前述の「Premium Sport Package」のダークグレー・メタリック(ボディカラー)とブラック+タンレザー(インテリアカラー)の組み合わせが、文化学園大学の学生が学生ならではの視点で評価し、最も優れているカラーデザインに表彰される「文化学園大学セレクション」を受賞した[33]。
その他
カーシミュレーションゲームである「グランツーリスモ5」に、BRZ Sが登場している。ダウンロードすることで乗ることができる。また、グランツーリスモ6にも登場している。[34]。
2013年からは86及びBRZによって争われるワンメイクレースとして「GAZOO Racing 86/BRZ Race」が開催されている。扱いとしては既存のネッツカップ・ヴィッツレースの上位カテゴリーとなる。
脚注
- ^ “富士重工業 新型スポーツ車の名称を「SUBARU BRZ」に決定”. 富士重工業 ニュースリリース. (2011年8月23日)
- ^ 1・4列目はそれぞれ小さめに「TOYOTA」「SUBARU」、2・3列目にそれぞれ大きめに「D-4S」「BOXER」と記述されている。 (また、互いのシンボルマークは表記されない。[要出典])
- ^ “【スバル BRZ 事前試乗】圧倒的低重心が生み出すスーパーカーフィール”. Response. (2011年12月15日)
- ^ a b モーターファン別冊 トヨタ 86のすべて p18
- ^ “富士重工業 2011年ジュネーブモーターショーで「BOXER Sports Car Architecture」を世界初公開”. 富士重工業 ニュースリリース. (2011年3月1日)
- ^ “富士重工業 人とくるまのテクノロジー展2011 出展概要”. 富士重工業 ニュースリリース. (2011年5月12日)
- ^ “富士重工業 新型スポーツ車の名称を「SUBARU BRZ」に決定”. 富士重工業 ニュースリリース. (2011年8月23日)
- ^ “富士重工業 2011年フランクフルトモーターショーで「SUBARU BRZ PROLOGUE」を公開”. 富士重工業 ニュースリリース. (2011年9月13日)
- ^ “2011年LAオートショーに「SUBARU BRZ CONCEPT - STI -」を出展”. 富士重工業 ニュースリリース. (2011年11月1日)
- ^ “STI、スバルとトヨタで共同開発のFRスポーツ「BRZ」でSUPER GT参戦”. Car Watch. (2011年11月13日)
- ^ “2011LAオートショーで「SUBARU BRZ CONCEPT - STI -」を公開”. 富士重工業 ニュースリリース. (2011年11月16日)
- ^ “BRZ FRスポーツ「スバルBRZコンセプト - STI -」公開【LAショー2011】”. webCG. (2011年11月17日)
- ^ “富士重工業「SUBARU BRZ」を公開”. 富士重工業 ニュースリリース. (2011年11月30日)
- ^ “スバル、BRZと新型インプレッサをお披露目”. webCG. (2011年11月30日)
- ^ 富士重工業 新型車「SUBARU BRZ」を発表 2012年2月3日
- ^ “富士重工業 ワンメイクレース「GAZOO Racing 86 Race」に協賛”. 富士重工業 ニュースリリース. (2012年11月22日)
- ^ “ワンメイクレース参戦用車両SUBARU BRZ 「RA Racing」を発表 ~「GAZOO Racing 86/BRZ Race」に参戦可能~”. 富士重工業株式会社 ニュースリリース. 富士重工業 (2013年1月25日). 2013年1月25日閲覧。
- ^ “ワンメイクレース参戦用車両SUBARU BRZ 「RA Racing」を発表 ~「GAZOO Racing 86/BRZ Race」に参戦可能~” (PDF). 富士重工業株式会社 ニュースリリース. 富士重工業 (2013年1月25日). 2013年1月25日閲覧。
- ^ “SUBARU BRZ を改良” (PDF). 富士重工業株式会社 ニュースリリース. 富士重工業 (2013年8月19日). 2013年8月19日閲覧。
- ^ “SUBARU BRZ 「tS」 を発売” (PDF). 富士重工業株式会社 ニュースリリース. 富士重工業 (2013年8月19日). 2013年8月19日閲覧。
- ^ “特別仕様車 SUBARU BRZ「Premium Sport Package」を発表”. 富士重工業株式会社 ニュースリリース. 富士重工業 (2013年10月29日). 2013年10月29日閲覧。
- ^ “SUBARU BRZ を改良”. 富士重工業株式会社 ニュースリリース. 富士重工業 (2014年4月22日). 2014年4月22日閲覧。
- ^ “SUBARU BRZを改良”. 富士重工業 ニュースリリース. 富士重工業 (2015年2月10日). 2015年2月10日閲覧。
- ^ “「SUBARU BRZ tS」を300台限定発売”. 富士重工業株式会社 ニュースリリース. 富士重工業 (2014年6月30日). 2014年7月28日閲覧。
- ^ 4月の86 と BRZ の米国販売実績…BRZは過去3番目に多い812台 Response. 2013年5月23日
- ^ “スバルBRZ S (FR/6MT)【短評】”. webCG. (2012年4月12日)
- ^ “【スバル BRZ 試乗】超安定の BRZ とドリフトの 86 / 竹岡圭”. Response. (2012年2月9日)
- ^ “【スバル BRZ 発表】トヨタ 86 との走りの違い”. Response. (2011年12月9日)
- ^ BRZ・86とも標準ではエアコンレス(ヒーター機能のみ)となっている。
- ^ “SUBARU BRZが2012年英国VDIアワードの「カーオブザイヤー」を受賞”. 富士重工業 ニュースリリース. (2012年5月14日)
- ^ “「スバル BRZ」と「トヨタ 86」が、英国でダイナミックス・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞!”. excite ニュース. (2012年5月15日)
- ^ スバル BRZ のエンジンが米10ベストエンジン賞を受賞、Response. 2012年12月14日
- ^ “富士重工業 「オートカラーアウォード2014」 エントリー2車種ともに受賞”. 富士重工業株式会社 ニュースリリース. 富士重工業 (2013年12月16日). 2013年12月20日閲覧。
- ^ スバル BRZ S '12