ジム (ガンダムシリーズ)

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ジム (GM) は、『ガンダムシリーズ』に登場する架空の兵器。有人操縦式の人型ロボット兵器モビルスーツ 」(MS)の一つ。初出は、1979年放送のテレビアニメ機動戦士ガンダム』。

作中の軍事勢力の一つである「地球連邦軍」初の量産型MS。主人公「アムロ・レイ」が搭乗する「RX-78 ガンダム」の設計を基に、高価な機能や装備を廃した廉価版MSとして開発された。ガンダムにはおよばないが、敵である「ジオン公国軍」の主力MS「ザクII」を上回る性能を持ち、物量を活かした集団戦法で連邦軍を勝利に導く。赤と薄緑色のカラーリングと、ゴーグル状のカバーに覆われた頭部センサーカメラが外観上の特徴。

メカニックデザイン大河原邦男

劇中では活躍シーンもあるが、「シャア・アズナブル」といったジオン軍のエースパイロットの搭乗機に破壊されるなど、「やられ役」としての描写が多い。『機動戦士Ζガンダム』などの後発作品群でも、「ジムII」などの発展型、あるいは類似した外観や設計思想を持つ機体が登場し、総じて「ジム系」「ジムシリーズ」などという場合もある。これらの機体については、『ジムシリーズのバリエーション』などの各関連記事を参照。

本項で解説する「RGM-79 ジム」は、後発作品に登場する各派生機との区別のため、非公式に前期生産型[1]先行量産型[2]先行量産型前期型後期型[3]などの呼称を付ける場合もある。

機体解説

諸元
ジム
GM
型式番号 RGM-79
所属 地球連邦軍
生産形態 量産機[4]
全高 18.5m
頭頂高 18.0m
本体重量 41.2t
全備重量 58.8t
装甲材質 チタン系合金
出力 1,250kw/65000馬力[5]
推力 55,500kg
センサー
有効半径
6,000m
武装 60mmバルカン砲(内蔵:弾数50)×2
ビーム・サーベル×1(一部は×2)
ビームスプレーガン
ガンダムビーム・ライフル
90㎜ブルパップ・マシンガン
シールド
ハイパーバズーカ
搭乗者 シン少尉
サーカス・マクガバン少尉(小説版)
キリア・マハ中尉(小説版)
スレッガー・ロウ(THE ORIGIN)
地球連邦軍一般兵

開発の経緯

宇宙戦艦を中心とした戦力で地球圏を支配していた地球連邦軍は、一年戦争の序盤ではるかに国力の劣るジオン公国の新兵器・モビルスーツ (MS) により完敗を喫した。これにより連邦軍においてもMSの開発および生産が最重要事項とされ、極秘プロジェクト“V作戦”が発動された。これは以前から連邦軍内で進められていたMS開発計画“RX計画”の技術士官だったテム・レイ技術大尉を中心に進められ、その結果、RX-75 ガンタンク、RX-77 ガンキャノン、RX-78 ガンダムの3タイプのRXナンバー試作機の開発に成功した。

各機は計画どおり、もしくはそれ以上の性能をもったMSであったが、そのままではコストが高すぎ、短期間のうちに量産できる仕様ではなかった。そこで3機種のうち近距離戦用であるガンダムの量産タイプとして、再設計されたのがジムである[6]。後のムックや模型の解説書などの後付設定では「ジェネレーターの出力や武装および装甲素材などの性能をガンダムより落とすことで、前期生産型の生産コストはおよそ20分の1以下に抑えられた」とされるものや、「到底、大量確保など望めない“高性能機と超人的パイロットの組み合わせ”ではなく、“最低限の訓練で操縦でき、兵器として大量生産・投入が可能な機体”として開発・量産された」とされるものがある。初期生産型のジムの中には一年戦争から3年後には引退するものも発生したものの、ほとんどの機体はジムIIジムIIIといった形で近代化改修され延命、運用し続けている。「GM」の名前の由来は「Gundam type Mass-production model」の頭文字の略[7]、「General Mobile-suit(一般的なモビルスーツ)、あるいは、Gundam Model(ガンダム型)」[8]など様々な説がある。

開発のベース

新たに作られたアニメシリーズでジムのバリエーションが増えたことで、後付で公式・非公式を問わず設定が増えている。

最初のテレビシリーズの設定では、テレビ版第9話でマチルダ・アジャンの補給部隊が回収していったガンダムのデータが、ジムの開発の参考にされたという。

テレビシリーズより後の模型シリーズであるモビルスーツバリエーション (MSV) では、ガンダムの1 - 3号機の3機が最終試験のために宇宙へ上げられた後も、ジャブローに残されたガンダム4 - 8号機がRGM-79開発の実験台に利用された、とされている[9]

またOVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場する、寒冷地仕様ジムや、カスタム型のジム・コマンドなどは当初、他のジオンのMSと同様設定上は通常のジムであるが、公開時の視点に合わせてデザインのみリファインしたものとなる予定であった。その後の模型化の際に、テレビシリーズのジムとは別物の後期生産型と設定変更された[10]。これらは後期生産型と呼ばれ、より高性能、設計上はガンダムに匹敵する性能を引き出すことも可能とされ、先行量産型とされるジムは過度な生産期間の短縮と低コスト化により基本設計を無視する形で急造された、とする説もある[3]

オデッサ作戦以前から存在し先行量産型であるとされるRGM-79[G] 陸戦型ジムの位置づけ、開発背景については、ホビージャパンムック『08MS小隊戦記』(ホビージャパン・1996)の中で、サンライズの井上幸一が説明している。

さらに後のOVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に登場する初期型ジムや陸戦型ジムに至っては、先行試作量産型とされる機種との関連性も明確ではない。陸戦型ジムのデータが前期生産型に反映されているという説もある[3]が、アニメのスタッフによりこれらについて具体的な公式設定が作られたり、本編で語られたことはない[11][12]。『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』公式サイトでは、ジムと陸戦型ジムは事実上別の機体とされている[13]

生産機数

他のMSと同様に、具体的な生産数を記した公式設定は存在しない。

講談社「MSV 第3巻」では、ジャブローで生産された第一次生産型(前期型ともいう)42機と、6ヵ所の拠点で装甲材質など細かい改良を加えた実戦タイプ(後期型とも)288機の計330機生産されたと解説。バンダイ「B-CLUB 70号」では、あらゆる派生型を含めたジムの生産機は3,800機以上としている。

機体の特徴

基本的にはRX-78 ガンダムの設計をほぼ流用した量産機ではあるが、連邦軍の戦力建て直しという戦略目的を実現するために極めて短期間での大量生産を実現する都合上、試作機のためにコストを度外視して開発・生産されたガンダムと比べ、徹底的なコストダウンがなされている[14]

ベースとなったガンダムからの主な変更点は、次のとおり。

  • 装甲材を高コストで形成に時間のかかるルナ・チタニウム合金からチタン合金へ変更(ただし、最初期に生産された機体の一部には、ガンダム用の余剰部品が流用されたものもあるため、部分的にルナ・チタニウム合金が使用された機体もある)。
  • 一部の部隊の機体以外は学習コンピューターを簡易化(OSに最初から設定されている)。
  • ガンダムではコア・ファイターへの変形機構を持っていたコクピットを非変形のカセット式コクピットブロックに変更[15][16]
  • 白兵戦用兵器ビームサーベルを1本に削減(ただし、少数ながら2本装備した機体も確認されている)。
  • 中・長射程に主眼をおいた高出力兵器ビーム・ライフルを中・近距離が主眼で弾数の多いビーム・スプレーガンへ変更。一部機体は信頼性の高い90mmブルパップ・マシンガンへ変更。
  • 頭部カメラシステムをガンキャノンと同系列のゴーグル型センサーに変更。なお、この件には設定の変遷、錯綜がみられる(後述)。
  • ジェネレーターの低出力化(1380kW → 1250kW)。地上最高速度もRX-78の130km/hから120km/hに落ちている。ただし、機関軸馬力(65000馬力)は変わらないとされている。
  • 腰部前面中央の大気圏突入用耐熱フィルターカプセル、腰部前面左右システムコア、腰部側面の予備電動ボックスの省略。

ジェネレーター出力はガンダムを若干下回るものの、ビームスプレーガンとビームサーベルの併用が可能であった。機動性を左右するバックパック(ランドセル)および脚部のスラスターはガンダムと同じ推力のままで、各種装備を撤去した軽量化により推力比ではガンダムを上回っている。また、索敵能力(センサー有効半径)も向上している。デザイン上ガンダムと比べると頭部内に余裕ができたため、近距離戦闘に有効とされる60mmバルカン砲の装弾数が増加している[17]。防御力はガンダムに比べると見劣りし、ザクマシンガンで撃ち抜かれている[18]

小説版『機動戦士Ζガンダム』ではクワトロ・バジーナも搭乗した経験があるが、その性能は彼を満足させるものではなかった。[19]

ジムのメインカメラに関する設定変遷
2014年現在、RGM-79の頭部メインカメラは「デュアルセンサー」(二ツ眼)であるという記述が多く見られるが[20]、現行の設定にたどり着くまでには、以下のような変遷があった。
1996年11月1日に発行される『ホビージャパンMOOK 機動戦士ガンダム/第08MS小隊ビジュアルブック08小隊戦記(1)』まで、「ガンダム」のカメラが「デュアルセンサー」であるのに対し、「GMタイプ」の頭部メインカメラは「安価なモノセンサー」であるとされてきた。そして「索敵能力の低下」を忍んだこのタイプのカメラの採用は「コスト削減」のためだとされている。この設定は1980年のホワイトメタル製フィギュア『メタルコレクション 地球連邦軍モビルスーツGM』(ツクダ)のパッケージ、1981年の『HOW TO BUILD GUNDAM』(ホビージャパン)、その他過去のメディアで、「簡略化」されていて量産に向き「視界」が広いガンキャノンのカメラを流用したためだと説明されてきた設定を踏襲するものでもある。そして、『ホビージャパンMOOK 機動戦士ガンダム/第08MS小隊ビジュアルブック08小隊戦記(1)』発行時には、プラモデル『1/100マスターグレード RX-78-2ガンダム』(MGガンダムver.1.0)が発売されたばかりであり同「ジム」は未発売、それゆえ同ムックの本誌(96年2月)掲載の「陸戦型ジム」の模型作例はMGガンダムver.1.0を改造したものであった。
しかしその後、MGガンダムver.1.0の金型を流用して商品化された『1/100マスターグレード RGM-79ジム』(1/100MGジムver.1.0)が発売されると、その付属解説書にジムのメインカメラについて「ジムのカメラはモノセンサー(一ツ眼)ではなく、ガンダムと同じ「デュアルセンサー」(二ツ眼)だ」とされ、ここで初めて図解イラストによって明確に解説された。
この後、ガンダムの「ツインアイ」(二ツ眼)と「ガンキャノン型」「ゴーグル型」のカメラは異なっているはずではないか、という指摘に対し、「“ツインアイ”は外観の名称、“デュアルセンサー”は中身の構造名であり、この二つの言葉の意味するところはイコールではない」とする説が『1/60パーフェクトグレード RX-78-2ガンダム』付属解説書に記載されている。即ち、「ガンダムタイプのような外見上“二つ眼”のデザインではなくとも、「ゴーグル」の奥には2つのカメラ=デュアルセンサーがある」という、ジム系MSの頭部メインカメラは、外見はガラス1枚の一ツ眼に見えるが中身は二ツ眼であるという設定が構築された。また、1/100MGジムver.1.0及び1/144HGUCジムの付属解説書には、ジムのカメラはガンキャノンの流用という従来の説明はなく「ガンダムのものと同等である」と記されている。
しかし、アニメ作画用の公式画稿設定において外見・内部構造共にモノアイ/モノセンサーとしてデザインされているRGM-79G/GSジムコマンドのメインカメラはRGM-79のものよりも「新型」であると、 1990年代の時点で既に設定されており[21]、これは作中後世のジムシリーズ後継機RGM-89ジェガンのデザインでも同様である。このため、ジムの頭部メインカメラの内部構造に関する矛盾は完全には解消されぬままとなっている。
なお、「マスターアーカイブ モビルスーツ RGM-79 ジム」では、ジムの頭部センサーは「RX-77系(ガンキャノン型)のデザインを踏襲したもの」とされており、“ゴーグル”に相当する部分の中央上部に工学レンズ系カメラを配置し、その左右に(不可視光線をカバーする)多目的アンテナが配置された内部構造図[22]が、G/GS型の頭部にはモノアイ式のカメラが搭載されている図[23]が掲載されている。
2013年、OVA『機動戦士ガンダムUC』では数多くのジム系MSが新規画稿で作画されているが、RGM-89は1996年以前のモノセンサー設定準拠、RGM-79派生機、MSA-003は1997年以降のデュアルセンサー設定準拠で描かれている。

武装

本機の武装は、ガンダム同様にビーム兵器が標準となっている。

ビームスプレーガン
型式番号BOWA BR-M79C-1[24]
小型で取り回しの良い拳銃型ビーム砲で、基本的な(普通の銃と同じ)攻撃を行う「シングルショット」、面制圧用の「バーストショット」、ビームを拡散させ広範囲にダメージを与える「レンジショット」の3つのモードを選択可能であり、塗装用のスプレーガンに似ている外見とともに、その名称の由来となっている[25]
ビームライフル
型式番号BLASH XBR-M79-07G
ガンダムと同じものを装備。劇中では、ジャブロー防衛戦に登場したジムが使用(このライフルの推奨ジェネレータ出力は1380kwとされている[26]ため、ガンダムの余剰部品として温存されていたジェネレータを搭載した機体が運用したとされる)。ただ、kW単位で出力が表現される「ジェネレータ」は1985年以前設定自体が存在せず、ビーム銃器のエネルギーがMS本体に依存するという設定も無かった。なお、ジムの機関出力がRX-78と同じ「65000馬力」であるとする設定は1981年に既に存在している。ちなみに、シャア専用ズゴックと対峙したジムが装備しているが、腹部を貫かれたシーンでは手持ちの武器がビームスプレーガンに入れ替わっている。
ビームサーベル
型式番号THI BSjG01
ガンダムと同じものを装備している。隊長クラス[17]の士官等が搭乗する一部の機体では2基装備していたケースもあるが、標準的な仕様では左側に1基だけである。後年、劇場アトラクション『GUNDAM THE RIDE』において護衛のアダム機としてサーベル2基装備の機体が登場した。
380mmハイパーバズーカ
型式番号BLASH HB-L-03/N-STD
ガンダムの装備と同じ携帯式の大型ロケットランチャー。最大口径380mm規格の各種弾頭(HEATAPFSDSHESH散弾の4種)を専用炸薬で射出できる。ビーム兵器と異なり装弾数は少ないが、実体弾を使用するためジェネレーター出力や射程距離に左右されない安定した破壊力を持ち、ソロモン攻略戦においてはパブリクによりビーム攪乱膜を放出された状況下でも使用できた。しかし、ビーム兵器と比較し弾速が遅く、標的の動きが速い対モビルスーツ戦には向いていない。そのため主に対要塞・対艦船に使用され、その後のア・バオア・クー戦でも使用された。
100mmマシンガン
型式番号YHI YF-MG100
『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』で設定された、主に地上で使われる近距離戦闘向けマシンガン。後の作品やゲームのムービーでも装備した機体がある。下部の箱型弾倉から給弾される。
90mmマシンガン
型式番号HWF GMG・MG79-90mm
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』で設定された、バレルの短いブルパップ型突撃銃風のマシンガン。OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO』やゲームのムービーでも装備した機体がある。元々はコロニー防衛用に開発された小口径の実体弾を発射する兵器で、ビーム兵器より威力は劣るものの、攪乱幕や大気の状態に影響されないという利点を持つ。宇宙でも使用できる。マガジンは本体上部から挿入され、全弾を打ち尽くした時点で空になったマガジンが自動排出される仕組みになっている。
60mmバルカン砲
ガンダムと同じものを頭部に2門装備する。映画『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』で、リック・ドムに白兵戦を仕掛ける際に使用した。
シールド
型式番号FADEGEL RGM-M-Sh-003(十字マークあり)及び RGM-M-Sh-007(十字マークなし)
ルナ・チタニウム製三重ハニカム構造で、ガンダムシールドと同規格のもの[5]。コストダウンのために表面の十字マークが簡略化された物は、チタン・セラミック複合材に変更されている。このシールドは、U.C.0093年の第二次ネオ・ジオン抗争に参戦したジムIIIにも装備されている。

編制・戦術

アニメ版の劇中では、ジャブロー内の陸戦では徒に右往左往するだけ、宇宙ではボールと混成で正面突撃するだけで、戦術と呼べる程の戦闘描写はされていない。

OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-』第3話に登場したルナツー基地所属のジム6機は、3機で1小隊編制をとっていた[27]。隊長機を含む4機が90㎜マシンガンを装備し、2機がハイパーバズーカを装備している。

後の非公式設定では、当初、隊長機用のチューン型ジム1機と通常型のジム3機、これに砲撃戦用のジム・キャノン1機の計5機でMS1個小隊を編制する構想だったとされる。しかし(TVでの描写に合わせて)さまざまな事情により何機かがボールなどに置き換えられるケースがあったという。

別の非公式設定[28]では、単一の機種3機で1個小隊を基本隊形として編制し、ジム1個中隊(4個小隊=12機)をボール10~20機が遠距離支援をするという構成になったとされる。つまり、ボールの長距離砲撃で弾幕を張り、その弾幕をかいくぐってきた敵機を中・近距離においてジムが殲滅する戦術が取られたという。

劇中での描写

量産機としては同じ敵役のザクと同様、弱い機体であるという印象を持たれている。その要因としては、演出上やられ役が大量に必要なビグ・ザムをはじめとする敵側秘密兵器の登場などが多く、設定やカタログデータがどうあれ劇中では「連邦の雑兵」、「単なるモブキャラ」扱いである。なお、ゲーム(『コロニーの落ちた地で…』など)では、主人公の乗る機体として使用できるが、性能は「安かろう悪かろう」の域を出ていない。

『機動戦士ガンダム』では、ホワイトベースがジャブローに寄港する第29話で、「ガンダムの生産タイプ[29]として初登場。ジオン軍の来襲に対して数機が出撃する。2、3機はガンダム用ビーム・ライフルを装備しており、この中の一機がシャア専用ズゴックと対峙している(漫画『機動戦士ガンダム U.C.戦記 追憶のシャア・アズナブル』では、このズゴックに貫かれたジムのパイロットを主人公にした物語が描かれている)[30]。続く第30話では、ジャブローの工場内で量産されたこの機体をジオンの特殊部隊が発見し起動する前に爆破すべく時限爆弾を仕掛けられるが、ホワイトベースの子供たちに排除された。

その後の宇宙要塞の攻略戦等では、地球連邦軍の物量作戦の象徴としてボールとともに大量に登場する。アニメ版のソロモン攻略戦では、敵の正面を埋め尽くす描写がなされた。だが「やられ役」というよりなかば背景として止め画で描かれている。敵モビルスーツの攻撃に次々と破壊されつつも後から後から後続の部隊が現れて立ち向かっていき、わずかながら敵機を撃破する場面もある。劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙篇』ではビームサーベルリック・ドムを斬るシーンが新たに追加されている。また、スタッフのお遊びで1コマだけ顔がイデオンになる。

テレビ版第42話でジム用シールドを持つ『ライディーン』および『ダイターン3』が混ざっているが、前後するモブシーンではハイパーバズーカを装備したジムが登場する。

小説版「機動戦士ガンダム」では、ビームライフルを標準装備としつつ、アムロ隊にも二機が配備されている。特にキリア・マハ中尉のジムは活躍が著しく、ガンダム、ガンキャノンに良く随伴して多数の敵MSを撃墜しアムロからも称賛された。ドズル艦隊との戦いでもアムロやカイ、ハヤトとともにビグ・ザムのビーム攻撃を回避し、さらに命中弾を当てて右足を破壊するという殊勲も上げた。直後にビグ・ザムと特攻をかけたグワジン級ガンドワの一斉攻撃に巻き込まれ撃墜されたが、「優秀なパイロットを失った」とクルー全員から惜しまれた。

OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-』第3話では、オデッサ戦から宇宙圏に脱出してきたジオン軍の敗残兵の落ち武者狩り役として、ルナツーから飛来したジム6機が登場[27]。機体のデザインはプラモデルマスターグレード ジム」のものが使用されている。それまでボールしか見たことがなかったオリヴァー・マイが「首と足があります」と発言するなど、地球連邦軍も本格的な量産型モビルスーツを投入したことを認識させている[31]。このジム部隊はヅダ2機と交戦し、ヅダ1機の喪失と引き換えに全滅した[32]。『MS IGLOO』におけるジムはその物量でジオン軍のモビルスーツを撃破している描写があり、他作品に比べ活躍している方であるが、本作はジオン軍の構成員が主人公側であるため、ジムのパイロットのほとんどが悪役として描かれている。

漫画『機動戦士ガンダム0079』ではザクやドムを仕留めるシーンがある。

指揮官仕様のジムが登場する作品もある。ビームサーベルを2本装備しているのが特徴で、『GUNDAM THE RIDE』でのアダム・スティングレイ機や漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』でのクワトロ・バジーナ機などがある。また、ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望 アクシズの脅威V』では、膝や腰の装甲形状の変更や通信アンテナの追加など、デザインの異なる指揮官機が登場している。

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』におけるジム

漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、アニメ版とは仕様や設定、描写などが大幅に変更されている。作者の安彦良和は「実はジムというのは非常に重要なアイテム」であり、戦局は量産機や一般兵の質や数によって左右されると述べ、下記に記す通り生産時期や機体設計によって数種類のバリエーションが存在するなど質の変化が描写される(形式番号は全て「RGM-79」で統一されている)。しかし、劇中描写はやはり「一般兵」どまりで、スレッガーやセイラが搭乗した機体以外はアニメ版と大差ないモブ扱いだった。

ジム(最初期型)
物語中最初に登場したジムで、時期としてはWBがジャブローに到着する前にあたる。たった1機のみで出撃し、ジャブローを包囲していたジオン軍の小陣地の一つを強襲、巨体で圧倒して殲滅した。ビームスプレーガンやシールドのような外部武装は装備しておらず、確認できる武装は頭部及び腕部バルカン砲のみ。
ジム(第一次制式生産型)
ジャブロー攻略戦時に生産体制に入っていたものはこのタイプに分類される。武装はビームスプレーガン、シールド。シールドは従来の十字マークのほか、ロレーヌ十字のような装飾入りのものも登場している。コア・ブロック・システムを搭載しており、ビームサーベルはアニメ版とは違い右肩に装備されている。ジャブロー防衛戦において急遽戦闘に駆り出される格好となったが、ジオン側からは超高性能と畏れられていたガンダムと誤認され、パニックに陥ったザクやアッガイを集団で追い詰めて撃破している。同戦闘では整備途中であったガンダムの代わりとしてアムロ・レイも搭乗し、反応の遅さなどに不満を感じつつもシャアの搭乗するズゴックを撃退する。スレッガー・ロウ率いるスレッガー中隊が運用していたジムもこのタイプで、胸部にスレッガー中隊であることを示すエンブレムが入っていたが、ジブラルタルにおいてシャア専用ザクと交戦の末全滅の憂き目に遭ってしまう。
ジム(第二次以降制式生産型)
オデッサ戦から投入されたタイプ。外見は第一次生産型と差異は見られないものの、やや戦力として不満の残る出来だった第一次生産型の戦闘データをフィードバックし、総合的な能力の底上げが図られている。武装はスプレーガン(地上用と宇宙用でデザインが異なる)の他にマシンガン、ビームライフルを装備した機体や、ショルダーキャノンを装備した機体も見受けられる。オデッサ戦においてはザク等ジオン軍MSと敵味方入り乱れる乱戦の結果勝利しているが、ジオン軍撤退戦においてはマ・クベ操るギャンに指揮されたグフの抜刀隊に飛び道具を持ったジム部隊が蹂躙されている。ソロモン戦においても敵MS相手に善戦するも、ドズル・ザビ操るビグ・ザムには有効な攻撃を与える事が出来ぬまま蹴散らされている。
ジム(近接戦闘タイプ)
星一号作戦より投入された一年戦争時における最終生産型のひとつ。その名の通り近接戦闘、白兵戦に特化したタイプで、機体全体に増加装甲を装着している。武装はビームライフルにビームサーベル2本、ハンドグレネード、シールドは曲面を主体としたシンプルなもの。部隊への配備はソーラ・レイによる戦局の混乱もあって遅々として進まなかった模様で、WB隊には1機のみしか配備されなかった。その1機にはセイラ・マスが搭乗し、作中ジオン軍ニュータイプ部隊のひとりシムス・アル・バハロフの駆るブラウ・ブロと交戦、撃墜するも、相打ちとなり脱出している。また、最終生産型の3タイプは宇宙空間における戦闘能力向上のため機体各部にスラスターやバーニアが追加されている。
ジム(中距離支援タイプ)
最終生産型のひとつで、名前の通り中距離戦闘支援を担当する。両肩部に装備された二対の7連装ミサイルポッドが最大の特徴で、他にも腰部に3連装ミサイルポッド、右腕に2連装ビームキャノンを装備している。また、ア・バオア・クー戦においてはビームライフルを装備している機体も描かれていた。
ジム(遠距離砲撃タイプ)
最終生産型のひとつで、両肩に装備されたキャノン砲を用いて遠距離から砲撃し、戦闘を支援するタイプ。ガンキャノンの設計思想を受け継いだモデルであり、キャノン砲には命中精度向上のためセンサーが取り付けられている。手持ち武装はビームライフル。ア・バオア・クー戦においてはその特徴とは裏腹に先陣を切って要塞内部に侵入している。WB隊にも少数配備されていた模様。

ジムが主役の作品

機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…』と『GUNDAM THE RIDE』がある。前者の主人公が乗る機体はジムに始まり、最終ステージで乗り込む最強の機体もジム系であるジム・スナイパーIIとなっている。また後者の観客は、ジムに曳航されるランチ(宇宙船の救命ボート)に乗り込んで戦場を駆け抜ける。これは、ジオン兵を主人公にすると「ジオン公国=悪役」と捉えるライトユーザーに楽しんでもらうことが難しくなり、主役メカにガンダムを登用するとガンダムの乱造を招き、世界観を損ねかねない。「地球連邦軍の一般的なMS」であるジムは、作品を宇宙世紀の世界観に違和感なく入り込めるものにするにはうってつけの存在だと言える[33]

デザインと誕生の経緯

主に頭部と腰部が簡略化され、丸みを帯びた頭部にゴーグル状のメインカメラが見られる。胴体や四肢のラインもまたガンダムより線が少なく簡素化されている。胸部と爪先が赤色である他は、全体にやや緑がかった白色に塗装されている。

アニメの作画設定書は、総監督富野喜幸のラフスケッチをほぼそのままに、大河原邦男がクリンナップしている。

デザインの変遷

近年の映像作品に登場したジムの多くは、最初のテレビアニメ版と比較すると腰前部装甲のデザインに大きな違いが見られる。

アニメ版では平坦な一枚板で構成されていたが、1999年に発売されたバンダイのプラモデル「1/100 マスターグレード ジム」では、先行して発売されたマスターグレード版ガンダムの部品を数多く流用したため、ガンダムと同様に中央ブロックを挟む形の「二枚板」デザインとなった。その後、プラモデルの設計に用いたCADデータを流用して、サンライズの映像作品『GUNDAM THE RIDE』『機動戦士ガンダム MS IGLOO』では二枚板デザインで登場した。

ゲーム『機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…』のホワイト・ディンゴ隊機や、プラモデル「1/144 ハイグレード・ユニバーサルセンチュリー ジム」はテレビシリーズ同様の一枚板デザインとなっている。また、一枚板デザインにおいてもそのまま一枚の板としている場合や脚の動きに合わせて左右に分割されている場合など、作品によって描写が異なっている。

2009年に発売された「1/100 マスターグレード ジム Ver.2.0」は一枚板デザインになっているが、二枚板デザイン用のパーツも付属しているため、組み立てる際は一枚板と二枚板の選択が可能になっている。

脚注

  1. ^ 主にテレビシリーズに登場する機体を、後のGMコマンドなどと比較してこう呼ぶ場合もある。
  2. ^ OVA『第08MS小隊』第1話に登場する機体など、時系列的に最も初期に登場した機体をこう呼ぶ場合もある。
  3. ^ a b c 1/100プラモデル・マスターグレードジム Ver.2.0のパッケージ底面の解説より。
  4. ^ 以下数値は#IGLOO完全設定資料集134頁より。
  5. ^ a b 『講談社ポケット百科シリーズ ロボット大全集[1] 機動戦士ガンダム』(講談社・1979)
  6. ^ ガンキャノンの任務を受け継ぐ量産機としては、MSVのジム・キャノンがある。
  7. ^ センチネル0079
  8. ^ プラモデル『マスターグレード 1/100 ジム Ver.2.0』取扱説明書より。
  9. ^ プラモデル『1/144 プロトタイプガンダム』解説書より。
  10. ^ 「マスターアーカイブ モビルスーツ RGM-79 ジム」では、これらのバリエーションはオーガスタやルナツーで生産された仕様だとされている。また、『0080』に登場したジム以外の他のMSも同様であり、ジオン公国軍においては、ほとんどのMSをリファインした「統合整備計画」なる設定が生まれた。
  11. ^ この初期型ジムに関しては「マスターアーカイブ モビルスーツ RGM-79 ジム」56頁で、ルナツーで開発された空間戦闘仕様の先行生産モデル「RGM-79[E]」として紹介されているが、ジム・コマンド系列機の開発が早く進展したことで開発が中止されたと記載されている。
  12. ^ 陸戦型ジムは「マスターアーカイブ モビルスーツ RGM-79 ジム」70頁より解説があり、ガンダムの余剰部品とジム用に生産された部品の一部、RX-79[G]の設計を流用し、同機の生産ラインを使って50機程度生産する運びとなったとされる。
  13. ^ 機動戦士ガンダム第08MS小隊WEB「MS-連邦軍-陸戦型GM」
  14. ^ #IGLOO completep.46
  15. ^ 講談社『MSV3連邦軍編』(1984)による。同書は『コミックボンボン』連載記事「MSV」を単行本化したものなので、小田雅弘によるこの設定自体は1984年以前からある。
  16. ^ 1/100プラモデル・マスターグレードGMでは、変形はしないが、換装は可能な独立したブロック状のコクピットという設定になった。
  17. ^ a b プラモデル『1/100マスターグレード ジム』取扱説明書より。
  18. ^ 『機動戦士ガンダム MS IGLOO』第3話など。ボールと衝突して爆発したジムもある。
  19. ^ 小説『機動戦士Ζガンダム 第一部カミーユ・ビダン』106ページ。
  20. ^ プラモデル『マスターグレード』シリーズの各付属解説書、及び『1/144HGUC RGM-79ジム』(バンダイ)付属解説書等。
  21. ^ プラモデル『1/144RGM-79GSジムコマンド』(バンダイ)付属解説書による。
  22. ^ 「マスターアーカイブ モビルスーツ RGM-79 ジム」26~27頁より。
  23. ^ 「マスターアーカイブ モビルスーツ RGM-79 ジム」51頁より。
  24. ^ 『マスターグレード ジム』において『マスターグレード スーパーガンダム』の武装型番が誤って転載されており、以降の『ガンダムオフィシャルズ』『ガンダムファクトファイル』等に転載されつづけている。『U.C. ARMS GALLERY』の一部において、その誤植が初めて設定としてとりいれられた。
  25. ^ 機能解説と名称の由来は「マスターアーカイブ モビルスーツ RGM-79 ジム」90頁より。その一方、名称の由来は塗装用のスプレーガンに似ていることに由来している点のみで、ビームの拡散機能はその名称から来た誤解であるとする説もある。テレビ第36話でビグ・ザムにジムがビームスプレーガンを発射した時は、ビームが直進している。一方漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、(少なくとも地上では)距離によるビームの拡散現象があることが、セリフとして語られている。
  26. ^ 『マスターアーカイブ モビルスーツ ジム』91頁。
  27. ^ a b #IGLOO完全設定資料集134頁。
  28. ^ 書籍『機動戦士ガンダム 公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS』より。
  29. ^ テレビ版29話、Gブル出撃直後のアムロ・レイとセイラ・マスの会話より。
  30. ^ なお、この時ジムはビームライフルを持っているが、シャアに突かれたときにビームスプレーガンに装備が変わっていた。ゲームなどでこの場面が再現されている際、ジムは最初からビームスプレーガンを装備している。
  31. ^ この戦闘はオデッサ戦終了時の宇宙暦0079年11月9日に発生した。これにより、ジムの初登場時期はジャブロー戦より3週間前倒しされた。
  32. ^ ジャン・リュック・デュバル少佐が2機撃破し、残された4機はデュバル少佐が操縦するヅダを追跡中、3機空中分解している(エンジントラブルで離脱した1機はモニク・キャディラック特務大尉が撃破)直後にデュバル機も空中分解した。
  33. ^ グレートメカニック 2001年刊より。本書では、これに加え「ジオン兵を主人公にしてコックピット視点のゲームを作ると、敵がジムとボールばかりになってしまう」「アトラクションで観客をガンダムに乗せてしまうと『なぜガンダムに何十人も乗れるのか』、観客をジオン側にすると『ジオン公国の敗北という暗さをどう伝えればよいのか』という問題が発生する」とも語られている。

参考文献

  • 日本サンライズ『機動戦士ガンダム記録全集4』(1980年発行)
サンライズがテレビシリーズ制作後に出版した公式資料。編集作業は外部に委託しているが、使われた画像や設定書はサンライズから提供されたものである。これに対し、以下はムックの編集時や模型化の際に、アニメのスタッフ以外により作られた後付設定が多く加えられた非公式資料。ただし、内容の一部は後に新作のアニメ本編に用いられることで、公式設定となっていった。
  • みのり書房「月刊OUT」別冊『宇宙翔ける戦士達 ガンダムセンチュリー』(1981年発行。2000年、樹想社より再版)ISBN 4-87777-028-3
  • バンダイ模型情報」別冊『モビルスーツバリエーションハンドブック』第2集(1983年発行)
  • バンダイ1/144スケールプラモデル『MSV プロトタイプガンダム』(1983年6月発売)
  • 講談社 ポケット百科シリーズ32『機動戦士ガンダム モビルスーツバリエーション』3 連邦軍編(1984年発行)
  • バンダイ1/100スケール マスターグレード プラモデル「RGM-79 ジム」(1999年2月発売)
  • 講談社『機動戦士ガンダム 公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS』(2001年発行)ISBN 4-06-330110-9
  • バンダイ「U.C.ARMS GALLERY 02」BR-M79-L3/BR-M79-C1武器解説書(2006年発売)
  • エンターブレイン『機動戦士ガンダム MS IGLOO 完全設定資料集』2007年5月。ISBN 978-4-7577-3408-1 
  • 竹書房『機動戦士ガンダム MS IGLOO Mission Complete』2009年12月。ISBN 978-4-8124-4093-3 
  • ソフトバンククリエイティブ『マスターアーカイブ モビルスーツ RGM-79 ジム』(2010年9月24日初版発行)


関連項目