ハゴロモノキ

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ハゴロモノキ
ハゴロモノキ
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: ヤマモガシ目 Proteales
: ヤマモガシ科 Proteaceae
亜科 : Grevilleoideae
: Embothrieae
亜連 : Hakeinae
: シノブノキ属 Grevillea
: ハゴロモノキ Grevillea robusta
学名
Grevillea robusta A.Cunn. ex R.Br.
和名
ハゴロモノキ
英名
southern silky oak[1]
silky oak[2]
silk oak[3]
Australian silver-oak
silver-oak

ハゴロモノキ[3][4][注釈 1](羽衣木[4]、学名: Grevillea robusta[注釈 2]英語: southern silky oak, silky oak)とは、ヤマモガシ科シノブノキ属[3][5]グレビレア属[6]、グレヴィレア属[5]、グレウィレア属[7])に属する常緑高木である[3]

名称[編集]

ハゴロモノキの名は、葉を羽衣に見立てたものである[4]

シルキーオーク[1]シノブノキ[3][4][8](忍木[3])、キヌガシワ[3]とも呼ばれる。「オーク」という名が付いているが、ナラカシなどのコナラ属ブナ科)ではない[1]。また、シノブノキは葉の形がシノブ薄嚢シダ類)に似ていることから[4]

学名種形容語の robusta はラテン語で「強い」を意味する第1, 第2変化形容詞 rōbustus の女性単数主格形である[3][9]。なお、rōbustus には「オークの」という意味もある[9]

形態[編集]

ハゴロモノキの樹形

直立形から円錐形の大高木で、高さは8–40 mメートルにも達する[2][7][注釈 3]

葉は互生し、2回羽状複葉であるためシダ状となる[7][2][3][4]。葉の長さは15–25 cmセンチメートル[3][2]。細く鋸歯があり[8]小葉披針形で約20対ある[4]。葉の色は淡緑色で光沢がある[3]向軸面は無毛なのに対し、背軸面では銀白色の絹毛がある[3][4]

ハゴロモノキの(樹皮)
ハゴロモノキの(向軸面)
ハゴロモノキの(背軸面)

花は上向きで鐘状の花(筒状花)を長さ10 cm 以上の穂状花序(歯ブラシ状の総状花序とも[7][3])につける[2][4]。花色は明るい黄色から橙色[2][3][4]萼片が4枚で花弁状となり、雄蕊が萼片と合着する[6]子房上位で、胚乳を持たない[6]。花期は夏[8](5月–6月[3]または 6月[4])。変種ベニハゴロモ G. robusta var. forsteri は低木で、羽状に浅裂した葉を持ち、花は鮮紅色[3][4]

ハゴロモノキの
ハゴロモノキの花と葉
ハゴロモノキの種子と果皮
ハゴロモノキの未熟な果実

分布[編集]

本種を含むグレビレア属はオーストラリアとニュージーランドに250種が分布する[6]。本種はオーストラリア大陸東部(クイーンズランド州及びニューサウスウェールズ州)の熱帯多雨林に生息する[3][1][7][4]アフリカ大陸でも生育が良いため、造林樹種として取り入れ、植林のため移入しているもある[1]

生態[編集]

温暖で日当たりのよい、乾燥した環境を好む[3]。成長が早い[2]。種子の発芽には光が必要である(光発芽種子[3]

アレロパシー作用を持っており、一定の範囲内には、自分の子孫までもが生育できないような毒素を出す[1]

利用[編集]

観葉植物[編集]

日本でも明治末年に渡来し、古くから観葉植物として栽培されている[3][8][4]。日本において関東地方南部以西の暖地では露地で栽培可能であるが、普通は温室内で栽培する[3][8][4]。日本では、幼木を鉢植えにして室内植物にも用いられる[3]。温室内では過湿に弱く、枝葉は濡れるのを避ける必要がある[3]。耐霜性に弱く、生育可能な最低気温は5である[2][3]。繁殖は挿木および実生による[3][4]。挿木は夏に熟枝を挿して行われる[3]

そのほか、並木や庭園樹として植栽される[7]。同属のグレビレア・コッキネア Grevillea coccinea やグレビレア・イリシフォリア Grevillea ilicifoliaグレビレア・ユニペリナ Grevillea juniperina切り花用に栽培または直輸入される[8]

木材[編集]

ハゴロモノキの材

心材と辺材の境界は曖昧であることが多い[1]。心材は桃色がかった褐色から赤褐色なのに比べ、辺材はやや淡色である[1]。横断面において、小さい道管接線方向に並んで規則的に配置し、帯状となっている[1]。道管の配列様式はに特有のものである[1]。放射組織大きく、どの断面でも観察できる[1]。放射断面において幅の広い淡色の帯が認められ、それがオークの材と比較される[1]

肌目はやや粗く、木理は通直[1]。気乾比重は 0.62 で、やや重硬である[1]

装飾的価値が高く、以下のよう加工用の器具材として用いられる[3][1]。加工の際は柾目面で切削をすると大きい放射組織が壊れることがある[1]

画像[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 林ほか (1985)では、見出し語は「シノブノキ」で、ハゴロモノキは別名として挙げられている。
  2. ^ グレウィレア・ロブスタ
  3. ^ 30 mとも[2][3]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 須藤 1997, p. 125.
  2. ^ a b c d e f g h i 英国王立園芸協会 2001, p. 573.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab 林ほか 1985, p. 86.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 小林 2020.
  5. ^ a b 英国王立園芸協会 2001, p. 572.
  6. ^ a b c d 鈴木・横井 1998, p. 358.
  7. ^ a b c d e f Briggs 1997, p. 249.
  8. ^ a b c d e f 鈴木・横井 1998, p. 359.
  9. ^ a b robustus”. Wiktionary. 2024年2月18日閲覧。

参考文献[編集]

  • Barbara G. Briggs「グレウィレア・レウコプテリス」『朝日百科 植物の世界 種子植物 双子葉類[4]』朝日新聞社、1997年10月1日、249–250頁。ISBN 4-02-380010-4 
  • 英国王立園芸協会 監修 著、塚本洋太郎 監 訳、クリストファー・ブリッケル 責任編集 編『新・花と植物百科』同朋舎、2001年3月15日。ISBN 4-8104-2657-2 
  • 小林義雄「ハゴロモノキ」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館、2020年4月17日。 
  • 鈴木基夫横井政人 監修『山溪カラー名鑑 園芸植物』山と溪谷社、1998年4月1日。ISBN 4635090280 
  • 須藤彰司『カラーで見る世界の木材200種』産調出版、1997年1月10日。ISBN 4-88282-153-2 
  • 林弥栄、古里和夫、中村恒雄 監修『原色樹木大圖鑑』北隆館、1985年5月31日。 

関連項目[編集]