2000年シドニーオリンピックの体操競技
シドニーオリンピックにおける体操競技は、2000年9月16日から9月25日までの日程で実施された。体操競技は男女合わせて14種目、新体操競技およびトランポリン競技はそれぞれ2種目が行われた。なお、トランポリン競技は今大会から正式種目として実施された。
概要
男子
個人総合では、前回銀メダルのアレクセイ・ネモフ(ロシア)が首位を独走し、そのまま優勝を果たした。団体総合は、中国が初優勝した。中国は直前にメンバー変更を行い、つり輪のスペシャリスト董震(前年の世界選手権種目別で優勝)が代表落ちする等団体戦を重んじたことが功を奏した。
種目別ではゆかのイゴール・ビフロフ(ラトビア)が同国史上初の、あん馬のマリウス・ウルジカ(ルーマニア)が同国の男子体操史上初の金メダルを獲得した。
日本勢は、団体総合・個人総合・種目別すべてでメダルを獲得できず、低迷期にあった。団体総合は予選を5位で通過し、決勝第4種目の鉄棒で2位に浮上したが、第5種目のゆかでミスが相次ぎ4位に転落したため、惜しくもメダルに届かなかった。また個人総合では前年の世界選手権銀メダルの塚原直也に期待が集まったが、あん馬での落下という致命的なミスが響き18位に終わった。個人総合では斉藤良宏の12位が最高位だった。
女子
世界選手権を四連覇していたルーマニアが団体で優勝、個人総合で表彰台を独占と強さを誇った。金メダル(後に剥奪)のアンドレーア・ラドゥカンは、個人総合跳馬で新技も披露していた。ルーマニア女子の個人総合優勝は、ナディア・コマネチ以来24年ぶりの快挙[1]。なお個人総合では、跳馬の高さが規定と異なるミスがあり、該当18名中5名の選手が演技をやり直した。優勝候補だったスベトラーナ・ホルキナ(ロシア)はこの跳馬のミスが響き11位に終わった(なおホルキナはやり直しを希望しなかった)。
日本勢は、団体での出場資格が無く、山脇佳奈・竹中美穂が個人で出場。山脇は個人総合決勝の段違い平行棒で新技を披露する予定だったが、着地で失敗し新技として認定されなかった。
メダル剥奪問題
- 個人総合
個人総合ではルーマニア勢が表彰台を独占したかに見えたが、金メダルのアンドレーア・ラドゥカンが薬物検査で陽性を示したため、メダルが剥奪された。ルーマニアの女子選手は抗議のため、9月26日に行われたエキシビジョンを全員がボイコットした。
- 団体総合
団体総合に出場していた、中国の董方霄に2008年になって年齢詐称疑惑が浮上[2]。2010年2月26日に国際体操連盟が年齢詐称を認定したことを発表し、国際オリンピック委員会へ中国の女子団体の銅メダル剥奪を勧告している[3]。2010年4月28日に国際オリンピック委員会が中国の女子団体の銅メダルを剥奪した。[4]。なお、同国の楊雲にも年齢詐称疑惑があったが、証拠不十分のため警告処分に留まっている。
新体操
金メダル確実といわれていた世界女王アリーナ・カバエワがフープが場外に出てしまうミスを犯し銅メダルに終わった。優勝はロシアの2番手ユリア・バルスコワであった。1位と3位の差が僅か0.166点という大接戦となった。
トランポリン
今大会から採用された。
体操競技の結果
男子
個人総合
順位 | 選手名 | 国・地域 | ゆか | あん馬 | つり輪 | 跳馬 | 平行棒 | 鉄棒 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | アレクセイ・ネモフ | ロシア | 9.800 | 9.775 | 9.687 | 9.650 | 9.775 | 9.787 | 58.474 |
2 | 楊威 | 中国 | 9.700 | 9.750 | 9.712 | 9.712 | 9.750 | 9.737 | 58.361 |
3 | アレクサンドル・ベレシュ | ウクライナ | 9.675 | 9.762 | 9.550 | 9.675 | 9.750 | 9.800 | 58.212 |
団体総合
順位 | 国・地域 | 床 | あん馬 | つり輪 | 跳馬 | 平行棒 | 鉄棒 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 中国 | 38.524 | 38.874 | 38.487 | 38.574 | 38.849 | 38.611 | 231.919 |
2 | ウクライナ | 37.750 | 38.811 | 38.249 | 38.461 | 38.261 | 38.774 | 230.306 |
3 | ロシア | 38.037 | 37.974 | 38.487 | 38.736 | 38.411 | 38.374 | 230.019 |
4 | 日本 | 37.849 | 38.324 | 38.425 | 38.724 | 37.711 | 38.824 | 229.857 |
5 | アメリカ合衆国 | 37.600 | 38.099 | 38.111 | 37.937 | 39.024 | 38.212 | 228.983 |
6 | ルーマニア | 37.386 | 38.299 | 37.836 | 38.661 | 37.999 | 37.362 | 227.543 |
床
順位 | 選手名 | 国・地域 | 得点 |
---|---|---|---|
1 | イゴール・ビフロフ | ラトビア | 9.812 |
2 | アレクセイ・ネモフ | ロシア | 9.800 |
3 | ヨルダン・ヨブチェフ | ブルガリア | 9.787 |
鉄棒
順位 | 選手名 | 国・地域 | 得点 |
---|---|---|---|
1 | アレクセイ・ネモフ | ロシア | 9.787 |
2 | ベンジャマン・バロニアン | フランス | 9.787 |
3 | 李周炯 | 韓国 | 9.775 |
平行棒
順位 | 選手名 | 国・地域 | 得点 |
---|---|---|---|
1 | 李小鵬 | 中国 | 9.825 |
2 | 李周炯 | 韓国 | 9.812 |
3 | アレクセイ・ネモフ | ロシア | 9.800 |
あん馬
順位 | 選手名 | 国・地域 | 得点 |
---|---|---|---|
1 | マリウス・ウルジカ | ルーマニア | 9.862 |
2 | エリック・プジャド | フランス | 9.825 |
3 | アレクセイ・ネモフ | ロシア | 9.800 |
つり輪
順位 | 選手名 | 国・地域 | 得点 |
---|---|---|---|
1 | シルベステル・チョラニー | ハンガリー | 9.850 |
2 | ディモステニス・タンパコス | ギリシャ | 9.762 |
3 | ヨルダン・ヨブチェフ | ブルガリア | 9.737 |
跳馬
順位 | 選手名 | 国・地域 | 得点 |
---|---|---|---|
1 | ヘルバシオ・デフェル | スペイン | 9.712 |
2 | アレクセイ・ボンダレンコ | ロシア | 9.587 |
3 | レシェク・ブラニク | ポーランド | 9.475 |
女子
個人総合
順位 | 選手名 | 国・地域 | 跳馬 | 段違い | 平均台 | ゆか | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
- | アンドレーア・ラドゥカン [5] | ルーマニア | 9.706 | 9.575 | 9.787 | 9.825 | 38.893 |
1 | シモナ・アマナール | ルーマニア | 9.656 | 9.512 | 9.662 | 9.812 | 38.642 |
2 | マリア・オラル | ルーマニア | 9.656 | 9.600 | 9.700 | 9.625 | 38.581 |
3 | 劉璇 | 中国 | 9.331 | 9.725 | 9.750 | 9.612 | 38.418 |
団体総合
順位 | 国・地域 | 跳馬 | 段違い | 平均台 | ゆか | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ルーマニア | 38.461 | 38.237 | 38.986 | 38.924 | 154.608 |
2 | ロシア | 38.605 | 38.862 | 37.899 | 39.037 | 154.403 |
3 | アメリカ合衆国 | 37.685 | 38.875 | 37.699 | 38.674 | 152.933 |
4 | スペイン | 37.730 | 38.523 | 37.861 | 37.999 | 152.113 |
5 | ウクライナ | 37.185 | 38.674 | 38.625 | 37.362 | 151.846 |
失格 | 中国 | 38.073 | 38.962 | 39.099 | 37.874 | 154.008 |
※2010年4月29日、3位だった中国の出場選手における年齢詐称の発覚により失格、4位だったアメリカが繰り上がり3位となった。
床
順位 | 選手名 | 国・地域 | 得点 |
---|---|---|---|
1 | エレーナ・ザモロドチコワ | ロシア | 9.850 |
2 | スベトラーナ・ホルキナ | ロシア | 9.812 |
3 | シモナ・アマナール | ルーマニア | 9.712 |
平均台
順位 | 選手名 | 国・地域 | 得点 |
---|---|---|---|
1 | 劉璇 | 中国 | 9.825 |
2 | エカテリーナ・ロバズニュク | ロシア | 9.787 |
3 | エレナ・プロドノワ | ロシア | 9.775 |
段違い平行棒
順位 | 選手名 | 国・地域 | 得点 |
---|---|---|---|
1 | スベトラーナ・ホルキナ | ロシア | 9.862 |
2 | 凌潔 | 中国 | 9.837 |
3 | 楊雲 | 中国 | 9.787 |
跳馬
順位 | 選手名 | 国・地域 | 得点 |
---|---|---|---|
1 | エレーナ・ザモロドチコワ | ロシア | 9.731 |
2 | アンドレーア・ラドゥカン | ルーマニア | 9.693 |
3 | エカテリーナ・ロバズニュク | ロシア | 9.674 |
新体操の結果
個人
順位 | 選手名 | 国・地域 | ロープ | フープ | ボール | リボン | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ユリア・バルスコワ | ロシア | 9.883 | 9.900 | 9.916 | 9.933 | 39.632 |
2 | ユリア・ラスキナ | ベラルーシ | 9.908 | 9.791 | 9.933 | 9.916 | 39.548 |
3 | アリーナ・カバエワ | ロシア | 9.925 | 9.641 | 9.950 | 9.950 | 39.466 |
団体
順位 | 国・地域 | クラブ | フープ/リボン | 合計 |
---|---|---|---|---|
1 | ロシア | 19.800 | 19.700 | 39.500 |
2 | ベラルーシ | 19.800 | 19.700 | 39.500 |
3 | ギリシャ | 19.550 | 19.733 | 39.283 |
4 | ドイツ | 19.533 | 19.366 | 38.899 |
5 | 日本 | 19.350 | 19.200 | 38.550 |
6 | イタリア | 19.250 | 19.233 | 38.483 |
7 | ブルガリア | 19.166 | 19.266 | 38.432 |
8 | ブラジル | 19.066 | 19.200 | 38.266 |
トランポリンの結果
男子個人
順位 | 選手名 | 国・地域 | 得点 |
---|---|---|---|
1 | アレクサンドル・モスカレンコ | ロシア | 41.7 |
2 | ジ・ウォラス | オーストラリア | 39.3 |
3 | マシュー・タージョン | カナダ | 39.1 |
女子個人
順位 | 選手名 | 国・地域 | 得点 |
---|---|---|---|
1 | イリーナ・カラバエワ | ロシア | 38.9 |
2 | オクサナ・ツィグレワ | ウクライナ | 37.7 |
3 | カレン・コックバーン | カナダ | 37.4 |
各国メダル数
順 | 国・地域 | 金 | 銀 | 銅 | 計 |
---|---|---|---|---|---|
1 | ロシア | 9 | 5 | 6 | 20 |
2 | 中国 | 3 | 2 | 3 | 8 |
3 | ルーマニア | 3 | 2 | 1 | 6 |
4 | スペイン | 1 | 0 | 0 | 1 |
ハンガリー | 1 | 0 | 0 | 1 | |
ラトビア | 1 | 0 | 0 | 1 | |
7 | ウクライナ | 0 | 2 | 1 | 3 |
8 | フランス | 0 | 2 | 0 | 2 |
ベラルーシ | 0 | 2 | 0 | 2 | |
10 | ギリシャ | 0 | 1 | 1 | 2 |
韓国 | 0 | 1 | 1 | 2 | |
12 | オーストラリア | 0 | 1 | 0 | 1 |
13 | ブルガリア | 0 | 0 | 2 | 2 |
カナダ | 0 | 0 | 2 | 2 | |
15 | ポーランド | 0 | 0 | 1 | 1 |
脚注
- ^ ラドゥカンのメダル剥奪後、同国のシモナ・アマナールが繰り上がりでメダルを得ている
- ^ 董方霄は1983年生まれ(シドニー五輪当時:17歳)としていたが、2008年の北京五輪の役員として1986年生まれ(シドニー五輪当時:14歳)で登録していたため、疑惑が浮上した。
- ^ 2010年2月27日 読売新聞「シドニー五輪「銅」体操女子、中国が年齢詐称」
- ^ 2010年4月29日 Record China「レコードチャイナ:中国のシドニー五輪銅メダル剥奪=中国女子体操選手の年齢詐...」
- ^ 当初金メダルはルーマニアのアンドレーア・ラドゥカンに与えられたが、検査の結果塩酸プソイドエフェドリンに関して陽性となり、金メダルを剥奪された。これにより2位以下順位繰上げ。