コメンテーター

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コメンテーター: commentator)とは、テレビラジオなどのニュース及びワイドショー(情報番組)解説者のこと。コメンテーターの仕事は視聴者にわかりやすい形で解説することであり、解説内容に対しての専門家ではないことが多いため、発言は正確ではなく間違っている場合すらあるので注意が必要である。

概要

政治、経済、軍事等の社会的事象に対して専門的な解説、説明を行う立場の事を指す。欧米、アジア、中東のニュースを扱うテレビや新聞等のメディアにおいて、元政治家退役軍人アナリストが報道機関と専属契約を交わして解説・発言を行う。ただし、欧米、アジア、中東のニュース番組ではアンカーマン制を取ってるため、討論番組とニュース番組の差別化が図られているため、日本のニュース番組の様にストレートニュースの中で解説をする番組は存在しない。

コメンテーターは解説者という意味を持つため、欧米ではスポーツ中継の解説者という意味に用いる[注 1][注 2]。そのため、日本のメディアでワイドショーで発言する人(コントリビューター)を指す。

元厚生労働省の官僚である中野雅至やフリーライターの中川淳一郎は、コメンテーターのギャラの相場として1回の出演に対して5万円[注 3]であると説明している、その理由としてテレビ、ラジオのギャラの枠として「文化人枠」の扱いになる[1]と述べている。そのため、中川は「出演日前、当日の打合せや番組構成の段取り等に時間を取られ、拘束時間と比較し割に合わない」と自身の見解を述べている[2]

また、放送局の側から見て「文化人枠」の定義を、「本業の収入源が別にある人」かつ「専門的な話ができる人」と示しており、その後、テレビ番組に頻繁に出演する様になると徐々にタレント扱いとなり、タレント枠のギャラへ変わって行くプロセスに発展する[3]。その後、2017年4月時点で公共放送民放キー局準キー局基幹局が番組編成の都合上、生放送であるワイドショー(情報番組)を増やした事で、芸能人をコメンテーターとして雛壇に着座させる機会が激増し、「タレント枠」と「文化人枠」の境界線が曖昧になってしまっている[4]。それに伴った、弊害は問題点の項目で説明する。

歴史

日本においては、報道番組が「ワイドショー化」する以前は、1つのニュースごとにクロスオーナーシップ及びテレビ局と資本関係の結び付きのある新聞社編集委員、放送局の解説委員、ならびに通信社の編集委員、外部の専門家や専門性の高い評論家等が加わりニュース解説を行っていた。

1980年代後半以降からのニュース番組の「ワイドショー化」により、1人のコメンテーターが複数のニュースを解説するようになった。そのため、解説の専門性は低下し、コメンテーター個人意見の比率が高くなった。 また、報道番組とワイドショーのコメンテーターの人選には歴然とした区別があった。報道番組のコメンテーターには編集委員・解説委員等がキャスティングされ、ワイドショーのコメンテーターは、庶民の声の代弁者であり、専門家としての役割は求められず、イエロージャーナリズムである芸能人のゴシップへの無責任なコメントを売り物にしていた。

1995年3月20日に発生した地下鉄サリン事件以降のオウム真理教事件の報道で、ワイドショーにおいても時事問題を積極的に扱うようになり、必然的にコメンテーターのキャスティングで弁護士やジャーナリストを積極的に起用し、時事問題をコメントするようになった[注 4][5]。庶民の声と称して、番組にある種の政治的傾向を帯びさせたり、かなりつっこんだ指摘をすることも可能となったが報道する側と報道される側の区別はあった。

1987年から2年間に渡って放送されたニュースシャトルテレビ朝日)にて、コメンテーターに俳優やジャーナリストが起用されはじめ、1997年から放送されているスーパーJチャンネル(テレビ朝日)は、俳優の他にお笑いタレントを起用し始め、2000年代に入ると、タレント以外にも弁護士を含めたの様々な職業である人間がニュース、情報番組(ワイドショー)コメンテーターとして出演するようになった。

コメンテーターの本業の肩書

批評

独立総合研究所の社長である青山繁晴は日本のメディアの問題点として、「ニュース、情報番組に出演しているコメンテーターの多くが芸能プロダクションと所属契約しており、生活の糧としている[6]。」「そのため現在の憲法をベースにした、平和主義の言い分(なんちゃってリベラル)を主張しないとテレビ等のメディアに出演出来なくなるので、迎合した主張しか出来ない。」と主張している[7][注 5]

ジャーナリストの有本香は自身が出演している『バイキング』(フジテレビ)のCM裏にて、コメンテーターの雛壇にいる芸能人から2016年アメリカ合衆国大統領選挙にてメインストリームの報道と違う主張を放送中に解説していた事に対して質問され、自身の見解を示すとその度に芸能人同士ヒソヒソ話を行っている様子がムラ社会を形成しており、テレビ画面の中と現実世界と異質な空間を作る構造的な問題であり、芸能人のポジションで俗に言う左側の発言しか出来ない人が多いので、右側のポジションから発言出来る人間がいない点、また、日本の選挙権を所持していない外国人タレントが日本の政治に対して、極端な視点で物を言う事に対して義々がある事を主張している[8][9]

経済アナリスト森永卓郎普天間基地移設問題のVTRコメントにて「海兵隊は占領にいく部隊だから海兵隊が日本を守ることはありえない。日本がアメリカに逆らった時に、日本を占領するために常駐していると思っている」と発言した事に対し制作側からお蔵入りになり、またリベラル派を自称するコメンテーターがワイドショー(情報番組)、討論番組のオファーが減り干されており、その原因が安倍政権のプレッシャーと主張していた[10]。しかし、後に「国民からのニーズが無くなって来たから」だと自身で分析している[11]

ワイドナショー』(フジテレビ)の番組内で、春香クリスティーンの芸能活動休業原因の話題で、「中途半端なコメントしか話せない自分に悩みがあった」吐露に対し、歌手の武田鉄矢が「日本のコメンテーターで高学歴の方がいっぱい出てるじゃないですか? そういう人たちが今、日本のニュース番組(ワイドショー)を切り盛りしてるが、彼らの最大の欠点は『分かりません』って言わないこと。そういうコメンテーターってものすごく危険。」と専門的知識が無いのに関わらず、無理矢理上辺のコメントを発言していると述べている[12]


コラムニスト勝谷誠彦は、自身の情報、バラエティ番組降板理由に対して、NHKだけでなく民放であってもコメントの中に具体的な企業名などは入れてはいけないという暗黙のルールが有り、不祥事があればスポンサーの関連企業を批判するようなコメントを言って来たが、「テレビ、ラジオ局や制作スタッフに対して色々言ってたからですよ。例えば、[日本人がシリアで捕まっている時(ISILによる日本人拘束事件)に、そのニュースを冒頭だけで止めて、後は延々と芸能人の結婚のニュースをやるというのは、日本のテレビ局としてどうしたものか…]と言う事等を番組の幹部に前から意見していたら、クビになった」と分析している[13]

当時大阪市長であった橋下徹は自身が慰安婦問題について、自身の見解に対して異を唱えるコメンテーターに対して、2013年6月15日放送の『たかじんNOマネー』(テレビ大阪)において、番組メルマガ会員である番組視聴者の7割が橋下の発言に対して支持をした結果に対して、「やはり有権者の方は冷静だなと。小銭稼ぎのコメンテーターとは違う」と批判した。また、自身の大阪都構想に対して「分からない」と答えるコメンテーターに対しても、定例会見で怒りを示した事前に与えられたテーマについて情報収集、勉強をせずに出演していると述べている[14]

その発言を発端に生放送中に降板を表明し、後日、番組降板した水道橋博士浅草キッド)は「芸人であるから、自分の主張に対し白黒付けられず(慰安婦に対し、狭義の連行の調査報告が)グレーであると考えており、バラエティ番組として呼ばれているが、過去放送回(2011年8月20日)の内容でテレビの影響力があるのに、番組の内容が政治的になり過ぎていた事を加味し、パロディを含めて茶化した」と述べた。[注 6][15]

また、松本人志ダウンタウン)はコメンテーターとして、芸人ならではの「すっとんきょう」な発言を求められているとし「『すっとんきょうなことを言うな』とクレームがくる」とコメンテーターの難しさを語っている[16]

スポーツニッポンの記者で週刊現代専属契約記者の高堀冬彦は、文藝春秋2014年11月号の竹内洋 関西大学東京センター長のワイドショー(情報番組)批判記事を引合いに出し、「経歴や立場が不明確なまま世論を誘導する危険」と「曖昧かつ無責任な発言でミスリードする危険」と述べ、「テレビ業界は、コメンテーターのキャスティングに見識や経験より、数字(視聴率)を持っているタレントを使っているのかもしれない。万一、そうだとすれば、奇怪な形で世論の一部が生まれている不思議な先進国ということになる。」「視聴率は得られにくいかもしれないが、「分からない」「難しい」「知らない」と口にするコメンテーターは信用出来、単に「社会が悪い、政治が悪い」と叫ぶだけでは、アジテーターになりかねない」と述べている[17]

また、元経産省官僚の古賀茂明が2015年3月27日放送の報道ステーション(テレビ朝日)番組放送中、自身の番組コメンテーター降板の件を安倍政権からの圧力だと思い抗議する事案があった。この件を契機に吉田慎一社長は4月28日の定例会見の中で謝罪と担当職員の処分、そして、コメンテーターとの調整部署として「コメンテーター室(仮称)」を置くと発表した[18][19][20]

脚注

注釈

  1. ^ ただし、欧米でのスポーツ解説は分析や視聴者を煽る役割も求められるのでカラーコメンテーターと呼称している
  2. ^
  3. ^ 源泉徴収の額を含め、総額55555円となる
  4. ^ コメンテーター枠で言う「コンプライアンス(法令遵守)枠」となる[5]
  5. ^ 概要の中川の説明のギャラ枠で芸能プロダクションに所属すると「タレント枠」にカテゴライズされ、ギャラの金額が跳ね上がる
  6. ^ 但し、番組内で青山は「公人なのだから、タレントでも有権者なのだから意見をすべきだ」と進言した

出典

  1. ^ 中野雅至『テレビコメンテーター ―「批判だけするエラい人」の正体』中央公論新社、2013年。ISBN 9784121504432 、38頁 - 41頁
  2. ^ “AOLニュース テレビの「文化人枠」さほど「おいしい仕事」とは言えない”. AOLニュース. (2013年12月27日). http://news.aol.jp/2013/12/26/bunkajinwaku/ 2015年9月24日閲覧。 
  3. ^ “【エンタがビタミン♪】“文化人ギャラ”って? テレビ出演料について『有吉ジャポン』プロデューサーが明かす。”. Techinsight. (2012年11月8日). http://japan.techinsight.jp/2012/11/naomaru20121107004.html 2017年3月30日閲覧。 
  4. ^ “情報番組“文化人枠”がインフレ気味? 外国人芸人も参入し大混戦”. Oricon. (2016年5月4日). http://www.oricon.co.jp/news/2071141/full/ 2017年3月30日閲覧。 
  5. ^ a b ネット時代 弁護士らTVコメンテーターで重宝される法令遵守枠 SAPIO 2015年5月号
  6. ^ 青山繁晴『ぼくらの真実』扶桑社、2014年、193-194頁。ISBN 9784594069827 
  7. ^ 青山繁晴『ぼくらの真実』扶桑社、2014年、94-95頁。ISBN 9784594069827 
  8. ^ 『真相深入り!虎ノ門ニュース』総集編(楽屋入り) 3/26放送分 - YouTube
  9. ^ 『真相深入り!虎ノ門ニュース』楽屋入り 5/19配信分 - YouTube
  10. ^ 特集ワイド:番組改編「政治家との力関係が変化している」【テレビから消えた、辛口コメンテーター】毎日新聞 2014年4月2日 東京本社版夕刊
  11. ^ NEWSポストセブン 森永卓郎氏 沖縄に米軍基地なぜあるかの解説収録ボツの理由 2015年4月5日 16:00
  12. ^ 泉谷しげる、休業宣言の春香クリスティーンに「テレビに必要なのは即戦力」”. ザ・テレビジョン (2017年11月26日). 2017年12月1日閲覧。
  13. ^ NEWSポストセブン 勝谷誠彦氏、数々の降板の理由を語る 番組への批判が背景か 2015年10月21日 18:00
  14. ^ 「勉強せずに『分からない』というコメンテーターは会見に来い」橋下氏、テレビ報道に怒り爆発産経WEST 2015年1月15日
  15. ^ 2013/06/16(前半)青山繁晴・水道橋博士ニッポンを考えナイト - YouTube
  16. ^ 絶滅寸前の“辛口コメンテーター” コメンテーター自体の役割に変化 2015年11月14日 8:40
  17. ^ 現代ビジネス 視聴率重視で起用されるテレビコメンテーターたちの危うさ 2014年11月19日
  18. ^ 「コメンテーター室」新設へ 産経ニュース 2015年4月28日 15:13
  19. ^ テレビ朝日の報道が「マイルドブレンド化」? メディアが政府に牙を抜かれる異常事態(水島 宏明) 東洋経済Online 2015年5月6日
  20. ^

関連項目