ゲール (クレーター)

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ゲール
観測データから再現されたゲールクレーター。手前が北。中央にそびえるのがアイオリス山で、緑の点がキュリオシティの着陸点。
惑星 火星
地域 エリシウム平原
座標 南緯5度12分 東経137度18分 / 南緯5.2度 東経137.3度 / -5.2; 137.3座標: 南緯5度12分 東経137度18分 / 南緯5.2度 東経137.3度 / -5.2; 137.3
直径 154 km
名祖 ウォルター・フレデリック・ゲイル

ゲール英語: Gale)は、火星エリシウム平原の低地の端付近南緯5度12分 東経137度18分 / 南緯5.2度 東経137.3度 / -5.2; 137.3 (Gale Crater)に位置するクレーターである[1]直径は154kmで、35億年から38億年前に形成されたと考えられている[1]。このクレーターの名前は、19世紀に火星の観測を行ったアマチュア天文学者ウォルター・フレデリック・ゲイルから名づけられた[2]。クレーターの中央にある山(中央丘)は「アイオリス山」(非公式名であるがNASAはシャープ山と呼ぶ)と名付けられており、クレーターの底からの高さは5,500メートルに達する。

特徴[編集]

標高により色分けされたゲールクレーター

ゲールクレーターが一般のクレーターと異なるのは、中央丘(アイオリス山)の周囲が大きく盛り上がっていることである。その高さは、北側のクレーター底から5.5km、南側では4.5kmにもなる(ゲールクレーターでは、南側の外縁部が最も標高が高い)。この丘は複数の地層から構成されており、こうした地形は20億年かけて形成されたとみられている[1]。その起源はいまだはっきりとしていないが、研究ではこれらの地層は元々は湖底に堆積していた可能性があり、一度クレーターが完全に埋まった後に堆積物の層が侵食され、その名残が丘となっているのではないかという説が提示されている[1]。しかしながら、この説についてはいまだ議論が続いている[3][4]。観測では丘の上部に風成作用を示唆する斜交層理が見られている。しかし、下部についてはよく分かっていない状態である[5]

ゲールクレーターは火星上の南緯5度12分 東経137度18分 / 南緯5.2度 東経137.3度 / -5.2; 137.3 (Gale Crater)に位置している[1]。近隣に着陸した探査機では、スピリット (MER-A) が南緯14度34分 東経175度28分 / 南緯14.57度 東経175.47度 / -14.57; 175.47 (MER Spirit Rover (USA))[6]バイキング2号の着陸機が北緯47度56分 東経133度44分 / 北緯47.93度 東経133.74度 / 47.93; 133.74 (Viking 2 Lander (USA))である[6]

探査[編集]

侵食された中央丘の側面から地層の研究が可能と考えられており[1]、ゲールクレーターはNASAの火星探査計画マーズ・サイエンス・ラボラトリー (MSL) の着陸地点として選定された[7][8]。同計画の探査車キュリオシティは、2012年8月6日に中央丘アイオリス山の隣にあるアイオリス・パルス[9] "Yellowknife" Quad 51に着陸した[10][11][12][13]。9月27日には、過去にこの地域に広範囲に渡って水が流れていたことを示す証拠が発見されている[14]。 2014年12月に、NASAはゲールクレーターはかっては何千万年にもわたって湖だったと考えられ、長年の風化によってアイオリス山の浸食された地形が出来がったと考えられると発表した[15]

キュリオシティが写したロックネスト英語版と呼ばれる砂地のエリア。前方にアイオリス山が見える(2012年11月)

ゲールクレーターはMSL以前にも2003年マーズ・エクスプロレーション・ローバーで候補地として選ばれているほか、ESAExoMarsでも候補地の一つとして挙げられている[16]

火星地図[編集]

Map of Marsen:Acheron Fossaeアキダリア平原アルバ・パテラアマゾニス平原en:Aonia Planitiaen:Arabia Terraアルカディア平原en:Argentea Planumen:Argyre Planitiaen:Chryse Planitiaen:Claritas Fossae火星の人面岩en:Daedalia Planumエリシウム山エリシウム平原ゲールクレーターen:Hadriaca Pateraen:Hellas Montesヘラス平原en:Hesperia PlanumHolden crateren:Icaria Planumen:Isidis PlanitiaジェゼロクレーターLomonosov crateren:Lucus Planumen:Lycus SulciLyot crateren:Lunae PlanumMalea PlanumMaraldi crateren:Mareotis FossaeMareotis Tempeen:Margaritifer TerraMie craterMilankovič crateren:Nepenthes Mensaeen:Nereidum Montesen:Nilosyrtis Mensaeen:Noachis Terraen:Olympica Fossaeオリンポス山アウストラレ高原en:Promethei Terraen:Protonilus Mensaeen:SirenumSisyphi Planumen:Solis Planumen:Syria Planumen:Tantalus Fossaeen:Tempe Terraen:Terra Cimmeriaen:Terra Sabaeaen:Terra Sirenumタルシス三山en:Tractus Catenaen:Tyrrhen Terraユリシーズ・トーラスen:Uranius Pateraユートピア平原マリネリス峡谷en:Vastitas Borealisen:Xanthe Terra
The image above contains clickable links火星(記念碑の場所)の世界的な地形のインタラクティブな画像地図。画像の上にマウスを置くと、60を超える著名な地理的特徴の名前が表示され、クリックするとリンクする。ベースマップの色は、NASAのマーズグローバルサーベイヤーのマーズオービターレーザー高度計からのデータに基づいて、相対的な標高を示す。白色と茶色は最も標高が高い。(+12 to +8 km); ピンクと赤が続く。(+8 to +3 km)。黄色は0 km。緑と青は標高が低い(down to −8 km)。軸は緯度と経度。極域が注目される
(   名称  堆積物  ロスト )
Beagle 2
Curiosity
Deep Space 2
InSight
Mars 2
Mars 3
Mars 6
Mars Polar Lander
Opportunity
Pereverance
Phoenix
Schiaparelli EDM lander
Pathfinder
Spirit
Viking 1
Viking 2


画像[編集]

キュリオシティが写したアイオリス山(2015年9月)

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f Mars Odyssey Mission THEMIS: Feature File: Gale Crater's History Book
  2. ^ Wood, Harley (1981). "Gale, Walter Frederick (1865–1945)". Australian Dictionary of Biography (英語). Vol. 8. Canberra: Australian National University. 2013年4月10日閲覧
  3. ^ Cabrol et al. 1999. Hydrogeologic evolution of Gale Crater and its relevance in the exobiological exploration of Mars. Icarus: 139. 235-245.
  4. ^ Irwin et al. 2005. An intense terminal epoch of widespread fluvial activity on early Mars: 2. Increased runoff and palelake development. Journal of Geographical Research: 110. E12S15
  5. ^ Anderson and Bell, Geologic mapping and characterization of Gale Crater and implications for its potential as a Mars Science Laboratory landing site, Mars 5, 76-128, 2010, doi:10.1555/mars.2010.0004
  6. ^ a b Google Mars: spacecraft
  7. ^ The Associated Press (26 November 2011). “NASA Launches Sophisticated Rover on Journey to Mars”. The New York Times. http://www.nytimes.com/2011/11/27/science/space/nasas-curiosity-rover-sets-off-for-mars-mission.html 26 November 2011閲覧。 
  8. ^ 後藤和久, 小松吾郎『Google Earthで行く火星旅行』岩波書店、2012年、64頁。ISBN 978-4-00-029596-3 
  9. ^ NASA Staff (6AUG2012). “NASA Lands Car-Size Rover Beside Martian Mountain”. NASA. 6AUG2012-1閲覧。
  10. ^ Curiosity's Quad - IMAGE”. NASA (2012年8月10日). 2012年8月11日閲覧。
  11. ^ NASA's Curiosity Beams Back a Color 360 of Gale Crate”. NASA (2012年8月9日). 2012年8月11日閲覧。
  12. ^ Amos, Jonathan (2012年8月9日). “Mars rover makes first colour panorama”. BBC News. http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-19201742 2012年8月9日閲覧。 
  13. ^ Halvorson, Todd (2012年8月9日). “Quad 51: Name of Mars base evokes rich parallels on Earth”. USA Today. http://www.usatoday.com/tech/science/space/story/2012-08-09/mars-panorama-curiosity-quad-51/56922978/1 2012年8月12日閲覧。 
  14. ^ 火星に広範囲な水系、川床の跡を発見”. ナショナルジオグラフィック (2012年9月28日). 2016年6月13日閲覧。
  15. ^ “NASA’s Curiosity Rover Finds Clues to How Water Helped Shape Martian Landscape”. NASA. (2014年12月8日). http://www.nasa.gov/press/2014/december/nasa-s-curiosity-rover-finds-clues-to-how-water-helped-shape-martian-landscape/#.VOfWXTBbics 2015年2月21日閲覧。 
  16. ^ Mars landing sites down to final four - Worldnews.com

外部リンク[編集]