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ゲイバー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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ゲイバーとは、男性同性愛者のバーであり、ニューハーフ(かつてはゲイボーイと呼ばれた)や女装家などの女装をした男性・元男性が接客する一般向けバーと、女装をしない男性同性愛者(ゲイ)が集うバーの2つがある。厳密な定義はないが、現在のゲイバーは、比較的後者を指すことが多い。後者は特にホモバーとも呼ばれていたが、近年は「ホモ」という言葉に差別的含意があるということで使われなくなってきている。

ゲイバーは世界中に存在しており、一つの大きな集合体としての街を形成している。本項では日本国内を対象とした内容で記述する。

歴史

三島由紀夫「禁色」には昭和20年代後半のゲイが集まる店の様子が出てくる。また美輪明宏が丸山明宏の著者名で出した「紫の履歴書」にも記されている。日本で最初のゲイバー「やなぎ」(1945年新橋の烏森神社境内付近に開店)、銀座「ブランス・ウィック」は有名だ。新宿にも戦後間もなく開店した「イプセン」(1951年要町)、「夜曲」(角筈町1丁目・現在アルタ裏)、「アドニス」(区役所通り)などのゲイバーがあった。1970年代半ばには美輪明宏が「クラブ巴里」を靖国通り沿いの新宿5丁目Qフラットビルに開店させ、1976年5月には伊藤文学の「談話室 祭」が同じビルに開店した[1]。さらにその地下には「ブラックボックス」というディスコができて、ゲイだけではなく外国人やパンク風スタイルの若者が集まった[2]

ゲイバーの分類

ゲイバー(ホモバー)

女装をしない男性同性愛者が集うのが「ゲイバー」で、数の上では最も多い。ホモバーとも呼ばれていたが、近年は「ホモ」という言葉に差別的な含意があるということで使われなくなりつつある。店により様々な特徴があり、個性的なママがいる店や客層が広い店があるほか、好みの体型や年齢で集まる店、趣味で集まる店など、テーマ性を打ち出している店もある。

  • 特徴・客層
    • 体型別…ガッチリムッリした人が好きなゲイが集まるガチムチ系バー、デブ専バーなど。
    • 年齢別…若い人同士の若専バー、30代~40代中心のバー、フケ専バー(50歳以上や60歳以上などを目当てにするゲイが集まるバーと、フケ専の若い人を目当てに年長者が集うバーがある)など。
    • 趣味別(スポーツ系)…テニスサークル系、バレーボール系、スキースノーボード系など。
    • 趣味別(音楽系)…松田聖子中森明菜中島みゆきなどの愛好家が集まる店がある。とりわけ「みゆきバー」は、「西海岸」、「碧珊瑚」、「36.5℃」の3軒があったが、90年代半ばに西海岸は閉店した。
    • その他… 外国人や外国人が好きなゲイが集まる「外専バー」、大抵の店では水商売の常道として「政治と宗教の話はご法度」であるが、ゲイリブ関係者が集う「リブバー」、沖縄が好きな人が集まる店などがある。

ママやマスターと親しくなり、至近で話し込むタイプのゲイバーと趣が異なり、店内で客同士が自由に語り合い、長居できるゲイバー。料金が1杯500円~とリーズナブルな為、客層は比較的若い。店内が比較的広く、テーブルや座席の間隔も開いていて、オーダー後も席を移動できる。クラブとゲイバーの中間的存在。拘束を嫌うゲイに好まれ、90年代以降に増えたが、歴史が長い店では「ANNEX」(旧CLUB・ZIP)などが有名。テーブルなど各所に3A(アタック・アピール・アポイント)カードとペンが置いてあり、タイプの男性にアドレスなどを書いて渡せる。パートナーを探している一人飲みのゲイ客も多い。因みに本格的なゲイドラマとして人気を博した「同窓会」には、「スプラッシュ」というゲイが集うショットバーが出てくるが、そこのセットはZIP(現ANNEX)がモデルだった。又スプラッシュという店名はNYの有名なゲイのショットバーから取っている[3]

売り専バー

ホストの男性を指名する店。ワンオーダー制の店が多い。かつては店のボーイにはストレートの男性が多かったことから、そう言われるようになった。ただし今では多くの店はゲイ、ストレート、バイセクが混在している。

ニューハーフ系バー

近年では女装をして、なおかつ性転換願望があるトランスセクシュアルのことをニューハーフ※1というが、彼女達がいる店を「ニューハーフの店」と呼び、女装をしない男性同性愛者が集う「ゲイバー」(ホモバー)とは区別するようになってきている。両方ひっくるめてゲイバーと呼ぶことも依然多いが、両者は別ジャンルである。またニューハーフの店で働いているのはニューハーフとは限らず、女装家(=性転換願望はない女装をする同性愛男性)もいる。カウンター越しで飲む通常のバーと、ショーを提供している「ニューハーフ系ショーパブ」がある。

ニューハーフ系の店は、東京は新宿2丁目の他、歌舞伎町、六本木、銀座などに多く、大阪は堂山の他、心斎橋などに多い。2丁目はゲイバーが多くを占め、ニューハーフ系の店は少ない。

※1 かつてはニューハーフや女装家はゲイボーイと呼ばれていたが、1980年代以降トランスセクシュアルについてはニューハーフと呼ばれるようになった。

ミックスバー

店員にニューハーフと女装家とゲイが混在しているバー。又は客にゲイと異性愛者が混在しているバー。後者は観光バーともいう。

ゲイ・クラブ

詳細はゲイ文化参照

ゲイバーではないが、ゲイの若者や20~30代くらいのリーマンゲイなどが比較的多く集まるクラブは、90年代以降に増え始めた。DJが音を鳴らしそれに乗って踊る。お立ち台があったり、ストレート向けのクラブと変わらない。週末などにゲイナイトやボーイハントなどの各イベントが催されている。かつて2丁目にゲイ向け常設クラブ「ディライト」があった。

観光バー

ゲイではないストレートの男女も入店が可能なバー。ただし2丁目の多くのゲイバーは会員制などの札が貼られ、ゲイの男性しか入店できないバーが今も最も多い。

エリア

大都市圏を中心に営業を展開している。

営業時間

正午前後より開店し、昼食を低価格で提供し、20時前後からはバーとして営業する店舗と、15時前後より開店し、喫茶(カフェ)を兼ねており、概ね20時前後からはバーとして営業する店舗、概ね18時~20時より営業する店舗がある。

二部構成店

夜間の営業を終え、日中は営業しない店舗がまったく違う名称で営業する店も存在する。料金は基本的にバーとして営業する時間帯と変わらない。おおむね夕方までの営業時間で夜の店に引き継ぐ。

サービス等

一般的にはお通しと呼ばれる惣菜やつまみとドリンク1杯のセットで1,200~1,500円が相場である。ボトルキープをしている場合、セット料金として1,500~2,000円程度となっている。ボトルの金額は店舗によってまちまちだが、4,000円前後が相場となっている。割り物はピッチャーグラス1回まではセット料金内としているが、店舗によりフリーとなっている場合もある。乾き物(つまみ)は前述した通りセットとして含んでいたが、自由に取れるようになっている店舗も存在する。また、カラオケを導入している店舗、置かない店舗、マスター(ママ)の個性など、多種多様な店がある。

大抵の店では水商売の常道として、「政治と宗教の話はご法度」であるが、ゲイリブ関係者が集う「リブバー」と呼ばれる店も存在する。

客層

  • 体型(デブ専)・年齢(若い人同士、若い人を目当てにする年長者、30代~40代中心)
  • フケ専(50歳以上や60歳以上などを目当てにする者)
  • 趣味(テニスサークル系、スキースノーボード、音楽など)のテーマを打ち出している店もある。

イベント等

  • 周年パーティー
  • スタッフのバースデイ
  • 旅行(参加者実費)
  • 年末年始のカウントダウン
  • お花見

バー存続の裏側

バブル期の1980年代には、新宿二丁目だけでも400店近くが存在していたが、1990年代からはインターネットの急激な普及によって次第にその数を減らしている。

若年のスタッフは流動的であるといわれる。別店舗の掛け持ちをしたり、店主の厳しさやうまく馴染めないなどの理由から数日~数か月の労働で嫌気が差して辞めていく者がいるのも現実である。

テナントビルオーナーとの付き合いがうまく行かない場合や、売上減少など店舗閉鎖の危機に瀕しているところもある。 店舗間でイベントチラシ(フライヤー)を相互設置して少しでもお店の存在を知ってもらおうと努力している。店舗によってはスタンプカードを希望者に発行し、特典として付加価値を提供している。また、協賛イベントなど、お客さん同士の交流を深めるための提供を行う。

脚注

  1. ^ 月刊『薔薇族』編集長伊藤文學の談話室祭,ネット版伊藤文学のひとりごと「祭の幕は上がった」[1]
  2. ^ 以上歴史についての出典は「オトコノコのためのボーイフレンド:ゲイ・ハンドブック」(1986年発行少年社・発売雪淫社)」
  3. ^ 1994年2月マルコポーロ「普段着のゲイ~ゲイの楽園新宿2丁目ボクたちの愉しみ方~」

関連項目